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ネグレクトに効く薬毒2
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「ワオーン」
犬の遠吠えがして獅音は顔を上げた。
もう何時間もたっているが母親は迎えに来ないし、空腹だった。
不安で不安で泣きたい気持ちだったが、獅音はぐっと堪えていた。
泣けば信二に叩かれ蹴られるからだ。
「わんわん」
と獅音が鳴き真似をしてみると、
「グルルル」と野良犬が暗闇からのそりと姿を現した。
粗大ゴミ捨て場は灯りなど一つもないが、フェンスの向こうには大学が建っており、そこのグラウンドで部活動をしているため照明がついていた。
その明かりが粗大ゴミ捨て場も照らしているので真っ暗というわけでもなく、獅音には野良犬の姿が見えた。
「いぬたん」
と獅音が手を出したが、野良犬は低い音で獅音を威嚇しながら睨んでいる。
獅音の心に恐怖が生まれた。
恐怖は生まれて初めてというわけではなかったが、母親やその彼氏が与える恐怖とはまた違う。本能が逃げろというような恐怖だった。
だが母親にどこへも行くなと言われている獅音は逃げ出そうとはしななかった。
空腹と身体のだるさで立ち上がる気力もなかったからだ。
野良犬はウーッと唸りながら獅音に近づいてくる。
「ニャーオ」
今度は猫の声がした。
その声に野良犬がはっと頭を上げた。
積み重なった粗大ゴミの上に黒猫がいた。
「その子の噂を知らないのか? いじめるのは止めてやんな。哀れな子だ」
と黒猫ドゥが言った。
獅音が育児放棄を受けた子供だというのは近所の犬猫の間では評判だった。
獅音の部屋の隣で飼われている文鳥が流歌と信二の獅音への虐待を毎日、詳しくレポートすれば、アパートの前を毎朝走るレトリバーのロンがそれを近所に報告しながら走る。 それを聞いた野良犬、野良猫がまたあちこちでその話で盛り上がるのだから、獅音が虐待されている、というのをこの街で知らないのは人間だけだった。
だが野良犬は「知らねえな」と言い、ドゥから獅音に目をやった。
「よそ者か……なら仕方ない。だがこの子の事は放っておけ」
ドゥがゆっくりと背中を丸くしながら言った。
全身の毛皮を総動員で波立たせ、野良犬を威嚇する。
相手は黒くどう猛そうな大型犬だ。鬼の眷属である黒猫ドゥは野良犬を始末してしまうくらいなら出来る。だが元来戦闘要員ではなく、寝て暮らすのが大好きな猫だ。無駄な闘いは避けたかった。
「生憎、腹が減ってるんでな」
と牙を剥いた野良犬が言った。
「やめときな、人間のガキなんぞを襲ったりしたら、野犬狩りが始まるぞ」
ドゥの言葉に野良犬はケッと涎を吐き出した。
「野良猫なら問題なかろう?」
野良犬はべろりと分厚いベロで口の周りを舐めた。
「いいだろう、最強の鬼の眷属ドゥ様が相手になってやろうじゃないか」
黒猫ドゥの瞳がキラリと光った。
犬の遠吠えがして獅音は顔を上げた。
もう何時間もたっているが母親は迎えに来ないし、空腹だった。
不安で不安で泣きたい気持ちだったが、獅音はぐっと堪えていた。
泣けば信二に叩かれ蹴られるからだ。
「わんわん」
と獅音が鳴き真似をしてみると、
「グルルル」と野良犬が暗闇からのそりと姿を現した。
粗大ゴミ捨て場は灯りなど一つもないが、フェンスの向こうには大学が建っており、そこのグラウンドで部活動をしているため照明がついていた。
その明かりが粗大ゴミ捨て場も照らしているので真っ暗というわけでもなく、獅音には野良犬の姿が見えた。
「いぬたん」
と獅音が手を出したが、野良犬は低い音で獅音を威嚇しながら睨んでいる。
獅音の心に恐怖が生まれた。
恐怖は生まれて初めてというわけではなかったが、母親やその彼氏が与える恐怖とはまた違う。本能が逃げろというような恐怖だった。
だが母親にどこへも行くなと言われている獅音は逃げ出そうとはしななかった。
空腹と身体のだるさで立ち上がる気力もなかったからだ。
野良犬はウーッと唸りながら獅音に近づいてくる。
「ニャーオ」
今度は猫の声がした。
その声に野良犬がはっと頭を上げた。
積み重なった粗大ゴミの上に黒猫がいた。
「その子の噂を知らないのか? いじめるのは止めてやんな。哀れな子だ」
と黒猫ドゥが言った。
獅音が育児放棄を受けた子供だというのは近所の犬猫の間では評判だった。
獅音の部屋の隣で飼われている文鳥が流歌と信二の獅音への虐待を毎日、詳しくレポートすれば、アパートの前を毎朝走るレトリバーのロンがそれを近所に報告しながら走る。 それを聞いた野良犬、野良猫がまたあちこちでその話で盛り上がるのだから、獅音が虐待されている、というのをこの街で知らないのは人間だけだった。
だが野良犬は「知らねえな」と言い、ドゥから獅音に目をやった。
「よそ者か……なら仕方ない。だがこの子の事は放っておけ」
ドゥがゆっくりと背中を丸くしながら言った。
全身の毛皮を総動員で波立たせ、野良犬を威嚇する。
相手は黒くどう猛そうな大型犬だ。鬼の眷属である黒猫ドゥは野良犬を始末してしまうくらいなら出来る。だが元来戦闘要員ではなく、寝て暮らすのが大好きな猫だ。無駄な闘いは避けたかった。
「生憎、腹が減ってるんでな」
と牙を剥いた野良犬が言った。
「やめときな、人間のガキなんぞを襲ったりしたら、野犬狩りが始まるぞ」
ドゥの言葉に野良犬はケッと涎を吐き出した。
「野良猫なら問題なかろう?」
野良犬はべろりと分厚いベロで口の周りを舐めた。
「いいだろう、最強の鬼の眷属ドゥ様が相手になってやろうじゃないか」
黒猫ドゥの瞳がキラリと光った。
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