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DV男に効く湿布4
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「おや、昨日の奥さん」
戸を開けると、昨日と同じ黒いドレスの少女がいた。
「湿布、効いたかい?」
美人なのに、何だか男の人のような話し方をする。
「はい、ありがとうございました。あの、これ、ケーキです。よかったら」
ケーキの箱を差し出すと、
「うっほー、いいのかい? こちとら甘いもんは久々だ! ま、入んなよ。嬢ちゃんもな、おーい、モネちゃん、ドゥ、昨日の奥さんがケーキくれたぞ!」
と少女は大きな声で中に入って行った。
「湿布、効いた?」
と店主代理だと言った女の人が笑いながら言ったので、私はうなずいた。
「はい、昨日は凄く濃い痣だったのに、朝には綺麗に消えてて、こんなに良く効く湿布は始めてです」
勧められたアイスティーを一口飲んで私は答えた。
「だろうね。二口女の湿布はうちの稼ぎ頭だもん。何でも喰らうからね。あはは」
と言って店主代理さんが笑った。
「二口女?」
「そうさ、悪食の二口女の湿布。彼女は満足に女房に飯を喰わせられない男を特に嫌うからさ」
「……あの……夢ですよね?」
薬屋さんの店内は冷房が効いているのか肌寒かった。
背筋がぞわっとした。
「ニャーオ」
とカウンターの上で里桜の相手をしていた黒猫が鳴いた。
身体を起こしトコトコと私の前に来てぽとっと咥えていた何かを落とした。
「モネさんに世話をかけてばかりじゃ、ハヤテさんに申し訳がたたないや。少しは働いておかないと」
猫がしゃべった。
里桜は目を丸くしている。
「こいつは夢見の薬毒。眠る前に白湯で服用してみな。あんたのみたい夢が見られる。真実ってやつさ」
と言って猫が笑った。
夜が来ても夫は帰って来なかった。
どこからも連絡もない。
里桜の好きなメニューをたくさん作って、二人でお腹いっぱい食べた。
食後にアイスクリームを出すと里桜は大喜びして、「パパ、帰ってこなかったらいいのに」と言った。
「そうだね。里桜、ママと二人で貧乏になって暮らしてもいい?」
「ママと二人?」
「うん、パパが帰ってきたらそう言ってみる。ママはお仕事に出かけなきゃならなくなるし、里桜は一人でお留守番しなきゃならない時もあるけど」
里桜はにっこりと笑って、
「いいよ。ママと二人の方がいい!」
と言った。
決心したら何だか身体が軽くなった。
里桜を寝かしつけて私もベッドに入る前に、もらった薬を服用する事にした。
言われた通りに白湯で飲む。
夕べは一晩中、床で寝ていたので睡魔はすぐにやってきて、私はまどろみの中に落ちていった。
「むしゃむしゃ、何だってこんな男にビクビクしなきゃならない通りがあるんだい。飯の一升や二升、ケチケチしないで喰わせろってんだ」
誰かがしゃべっている。
それは私の左方向から聞こえてきた。
左を見ると、私の二の腕がぱっくりと開いて、その中に人間の腕が見えた。
「え!」
「助けて……くれ……」
私は床に倒れていて、よく見ると私の前に夫がいた。
身体を起こしてよく見ると、夫は胴体と頭しかなかった。
両腕、両足は千切れている。
「あ……あなた……」
キッチンの床は血みどろで、散らばった肉片、折れた白い骨の欠片が散らばっていた。
「た、たすけてくれ」
と血だらけの顔で夫が呟いた。
私の左腕は何やらぶつぶつと呟きながらも咀嚼し続けている。
左腕が夫を食べているのだ。
私は動く事も出来ず、その場に座り込んでいるしかなかった。
食べている物がなくなると、左腕の割れ目からシュッと長い分厚いベロが飛び出し、継次に夫の頭部をポキンと折り千切った。その頭部を舌でぐるぐる巻きにしてまた割れ目の中に引っ込んだ。
夫の顔が割れ目の奥の方に見えた。
「タスケテー」
と夫の口が動いたがすぐにギザギザの歯で噛み砕かれ、頭も顔もぐじゃぐじゃになって奥へ飲み込まれていった。
またシュッと分厚い舌が割れ目から飛び出したと思うと、残っている夫の胴体を四つに裂いた。舌はそれを一塊ずつ割れ目の奥へ運びバリバリと噛んだ。
腕が重く、私は動けないでいた。
恐怖よりも、満腹でもう身体を動かしたくなかったのだ。
布団の中で目が覚めそうな心持ちだった。
うつうつと、そして窓の外で早朝の鳥が鳴いているのが聞こえる。
「今回は出血大サービスだ」
という声がして、目を開けると黒猫と不細工で可愛い小さな犬がいた。
「あんたの悪夢はもう終わりだ。嬢ちゃんを大事にしてやんなよ」
ありがとうございます、と声に出したかったけど、どうしても声を発する事が出来ないので、私は心の中で礼を言いながら胸の前で手を合わせた。
戸を開けると、昨日と同じ黒いドレスの少女がいた。
「湿布、効いたかい?」
美人なのに、何だか男の人のような話し方をする。
「はい、ありがとうございました。あの、これ、ケーキです。よかったら」
ケーキの箱を差し出すと、
「うっほー、いいのかい? こちとら甘いもんは久々だ! ま、入んなよ。嬢ちゃんもな、おーい、モネちゃん、ドゥ、昨日の奥さんがケーキくれたぞ!」
と少女は大きな声で中に入って行った。
「湿布、効いた?」
と店主代理だと言った女の人が笑いながら言ったので、私はうなずいた。
「はい、昨日は凄く濃い痣だったのに、朝には綺麗に消えてて、こんなに良く効く湿布は始めてです」
勧められたアイスティーを一口飲んで私は答えた。
「だろうね。二口女の湿布はうちの稼ぎ頭だもん。何でも喰らうからね。あはは」
と言って店主代理さんが笑った。
「二口女?」
「そうさ、悪食の二口女の湿布。彼女は満足に女房に飯を喰わせられない男を特に嫌うからさ」
「……あの……夢ですよね?」
薬屋さんの店内は冷房が効いているのか肌寒かった。
背筋がぞわっとした。
「ニャーオ」
とカウンターの上で里桜の相手をしていた黒猫が鳴いた。
身体を起こしトコトコと私の前に来てぽとっと咥えていた何かを落とした。
「モネさんに世話をかけてばかりじゃ、ハヤテさんに申し訳がたたないや。少しは働いておかないと」
猫がしゃべった。
里桜は目を丸くしている。
「こいつは夢見の薬毒。眠る前に白湯で服用してみな。あんたのみたい夢が見られる。真実ってやつさ」
と言って猫が笑った。
夜が来ても夫は帰って来なかった。
どこからも連絡もない。
里桜の好きなメニューをたくさん作って、二人でお腹いっぱい食べた。
食後にアイスクリームを出すと里桜は大喜びして、「パパ、帰ってこなかったらいいのに」と言った。
「そうだね。里桜、ママと二人で貧乏になって暮らしてもいい?」
「ママと二人?」
「うん、パパが帰ってきたらそう言ってみる。ママはお仕事に出かけなきゃならなくなるし、里桜は一人でお留守番しなきゃならない時もあるけど」
里桜はにっこりと笑って、
「いいよ。ママと二人の方がいい!」
と言った。
決心したら何だか身体が軽くなった。
里桜を寝かしつけて私もベッドに入る前に、もらった薬を服用する事にした。
言われた通りに白湯で飲む。
夕べは一晩中、床で寝ていたので睡魔はすぐにやってきて、私はまどろみの中に落ちていった。
「むしゃむしゃ、何だってこんな男にビクビクしなきゃならない通りがあるんだい。飯の一升や二升、ケチケチしないで喰わせろってんだ」
誰かがしゃべっている。
それは私の左方向から聞こえてきた。
左を見ると、私の二の腕がぱっくりと開いて、その中に人間の腕が見えた。
「え!」
「助けて……くれ……」
私は床に倒れていて、よく見ると私の前に夫がいた。
身体を起こしてよく見ると、夫は胴体と頭しかなかった。
両腕、両足は千切れている。
「あ……あなた……」
キッチンの床は血みどろで、散らばった肉片、折れた白い骨の欠片が散らばっていた。
「た、たすけてくれ」
と血だらけの顔で夫が呟いた。
私の左腕は何やらぶつぶつと呟きながらも咀嚼し続けている。
左腕が夫を食べているのだ。
私は動く事も出来ず、その場に座り込んでいるしかなかった。
食べている物がなくなると、左腕の割れ目からシュッと長い分厚いベロが飛び出し、継次に夫の頭部をポキンと折り千切った。その頭部を舌でぐるぐる巻きにしてまた割れ目の中に引っ込んだ。
夫の顔が割れ目の奥の方に見えた。
「タスケテー」
と夫の口が動いたがすぐにギザギザの歯で噛み砕かれ、頭も顔もぐじゃぐじゃになって奥へ飲み込まれていった。
またシュッと分厚い舌が割れ目から飛び出したと思うと、残っている夫の胴体を四つに裂いた。舌はそれを一塊ずつ割れ目の奥へ運びバリバリと噛んだ。
腕が重く、私は動けないでいた。
恐怖よりも、満腹でもう身体を動かしたくなかったのだ。
布団の中で目が覚めそうな心持ちだった。
うつうつと、そして窓の外で早朝の鳥が鳴いているのが聞こえる。
「今回は出血大サービスだ」
という声がして、目を開けると黒猫と不細工で可愛い小さな犬がいた。
「あんたの悪夢はもう終わりだ。嬢ちゃんを大事にしてやんなよ」
ありがとうございます、と声に出したかったけど、どうしても声を発する事が出来ないので、私は心の中で礼を言いながら胸の前で手を合わせた。
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