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鬼喰いバクテリアを殺す鬼2
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「何ですって!」
店先の座椅子に座り、のんびりと煎餅をかじっていたモネがいきなり立ち上がった。
その後ろで肩もみをさせられていた骸とアイスティを運んできたドゥがその声にビクッとなって飛び上がった。
「ドゥ! 骸! ムドウが来るわ! ハナを殺しに! しかもムドウは鬼喰いバクテリアに感染してるかもしれないって!」」
「ええ?!」
「そんな!」
「早くハナをどこかに隠した方がいいって。ハヤテさんもすぐに駆けつけるだろうけど」
次の瞬間、どうん、と家が揺れた。
モネもドゥも骸も、咄嗟に何かにつかまらなければならないほどの衝撃だった。
「まさか!」
バラバラと家の壁が崩れる音がした。
モネは急いで店先からハナ眠っている部屋に走り込んだ。
「ハナ!……ムドウ……」
「よう、モネじゃねえか」
「何しに来たの? ここはハヤテさんが営んでる薬毒店よ。もうすぐハヤテさんが戻ってくる。こんなに散らかして、ハヤテさんは酷く怒るわよ」
モネは天井を見上げた。
空から急降下で下りてきたムドウは屋根も天井も突き破っていた。
破れた天井の穴から顔が出そうなほど巨大な塊、醜悪で邪悪な鬼だった。
とてもモネと眷属二匹で対抗できる相手ではなく、ひたすらハヤテが戻るのを祈るしかなかった。
「うるせえ、ハヤテがなんだ。ええ? ハヤテになんぞ用はねえ。こいつを始末しに来ただけだ!」
ムドウの手刀がベッドで横たわっているハナの胸に突き刺さるその瞬間、ドゥと骸が素早くハナの身体を抱き上げて避けた。
ムドウの手刀はハナのベッドすら突き抜け床に刺さった。
ムドウが勢いよく手を引き抜いた衝撃で床が壊れ抜けた。
ドゥと骸はハナを抱いたまま、抜けた床下に落ち込んだ。
「ムドウ! 止めなさいよ! もうすぐハヤテさんと壱が来るわよ! あんた、鬼喰いバクテリアに感染してるらしいじゃないの!」
「はあ?」
床下に落ち込んだハナと彼女を抱き締める眷属二匹に狙いを定めていたムドウはモネの方へ意識を移した。
「何だと? 鬼喰い?」
「その様子じゃ知らなかったみたいね。あんた、ハナを殺すって条件でサクラと交尾したんでしょ。サクラはガンキから鬼喰いを移されてるのよ」
「なんだと!!!」
「当のガンキはもう消滅して、ハヤテさんが始末したらしいわ。サクラも症状が出たそうよ。あんたも絶対感染してるはず」
ムドウはしばらく動かなかった。
鬼にとって鬼喰いバクテリアは絶対に関わってはいけない感染病だった。
感染は死。
死は消滅。
「くっそーーーーーー!!! サクラのやろう! 鬼喰いだと! ふざけやがって! こうなったら……てめえらもだ。俺だけ消滅してなるもんか! お前らも!」
ムドウの太く強い腕がモネの方へ伸ばされた。
モネは避けようとしたが狭い家の中ではどちらへ避けても長く太いムドウの手につかまる。
「はっ!!」
空中からにゅうっと大きな刃物が出てきて、ムドウの首をさくっと切った。
胴体から切り離されたムドウの首はころんころんと床下まで転り、骸の目の間で止まった。
「げ、げええ」
目の目に恐ろしい形相の鬼の頭が転がってきて、骸は目を背けた。
がっと開いたムドウの目は恐ろしく骸を睨みつけた。
頭部が離れた身体は均衡を失って二、三歩、うろうろとしたが、力任せに腕を振り回し辺りの壁などを叩き壊した。
ムドウの振り回した腕がモネの身体を吹き飛ばし折れた柱に突き刺さりそうになった瞬間、空間からハヤテの腕が出てきて、モネの身体を受け止めた。
「ハヤテさん!」
とほっとしたようなモネの声がしたので、ドゥと骸は全身の力が抜けた。
二人で抱き締めているハナは目を閉じたまま動かない。
少女のまま老婆になってしまい、その鼓動も打っていない時間の方が長い。
「ハヤテ~~!!」
ムドウの頭部が低い声で唸った。
空間から現れたハヤテはすぐにムドウの頭部を拾い上げた。
「ムドウ、お前の身体はタロウさんが今後の為に研究するらしい、切り刻むのはタロウさんに任せる」
とハヤテは静かな声でそう言った。
そしてうろうろとしているムドウの身体をとんっと突いた。
軽く突いたようだがムドウの身体は吹っ飛び、そして部屋の真ん中の空間で消えた。
「ハ、ハヤテ!!」
と身体が消えたムドウが声を上げた瞬間、その首は炎に包まれた。
「ギャー」
とムドウが悲鳴を上げた。
「頭部は有効に使ってやるよ、俺が」
ハヤテは炎に包まれているムドウの頭部を持ち上げた。
先程ムドウが屋根を突き破って突っ込んで来たせいで、部屋の中は壊滅状態だった。
ハヤテは先程モネが突き刺さりそうになった折れた柱の尖った先にムドウの頭を突き刺した。
「ギャー」
「そこで待ってろ」
頭部を包む炎は酷く痛く苦しく、ムドウの顔を焼き崩していく。
ムドウは呻いたり泣いたりしたがどうにも動けない。
店先の座椅子に座り、のんびりと煎餅をかじっていたモネがいきなり立ち上がった。
その後ろで肩もみをさせられていた骸とアイスティを運んできたドゥがその声にビクッとなって飛び上がった。
「ドゥ! 骸! ムドウが来るわ! ハナを殺しに! しかもムドウは鬼喰いバクテリアに感染してるかもしれないって!」」
「ええ?!」
「そんな!」
「早くハナをどこかに隠した方がいいって。ハヤテさんもすぐに駆けつけるだろうけど」
次の瞬間、どうん、と家が揺れた。
モネもドゥも骸も、咄嗟に何かにつかまらなければならないほどの衝撃だった。
「まさか!」
バラバラと家の壁が崩れる音がした。
モネは急いで店先からハナ眠っている部屋に走り込んだ。
「ハナ!……ムドウ……」
「よう、モネじゃねえか」
「何しに来たの? ここはハヤテさんが営んでる薬毒店よ。もうすぐハヤテさんが戻ってくる。こんなに散らかして、ハヤテさんは酷く怒るわよ」
モネは天井を見上げた。
空から急降下で下りてきたムドウは屋根も天井も突き破っていた。
破れた天井の穴から顔が出そうなほど巨大な塊、醜悪で邪悪な鬼だった。
とてもモネと眷属二匹で対抗できる相手ではなく、ひたすらハヤテが戻るのを祈るしかなかった。
「うるせえ、ハヤテがなんだ。ええ? ハヤテになんぞ用はねえ。こいつを始末しに来ただけだ!」
ムドウの手刀がベッドで横たわっているハナの胸に突き刺さるその瞬間、ドゥと骸が素早くハナの身体を抱き上げて避けた。
ムドウの手刀はハナのベッドすら突き抜け床に刺さった。
ムドウが勢いよく手を引き抜いた衝撃で床が壊れ抜けた。
ドゥと骸はハナを抱いたまま、抜けた床下に落ち込んだ。
「ムドウ! 止めなさいよ! もうすぐハヤテさんと壱が来るわよ! あんた、鬼喰いバクテリアに感染してるらしいじゃないの!」
「はあ?」
床下に落ち込んだハナと彼女を抱き締める眷属二匹に狙いを定めていたムドウはモネの方へ意識を移した。
「何だと? 鬼喰い?」
「その様子じゃ知らなかったみたいね。あんた、ハナを殺すって条件でサクラと交尾したんでしょ。サクラはガンキから鬼喰いを移されてるのよ」
「なんだと!!!」
「当のガンキはもう消滅して、ハヤテさんが始末したらしいわ。サクラも症状が出たそうよ。あんたも絶対感染してるはず」
ムドウはしばらく動かなかった。
鬼にとって鬼喰いバクテリアは絶対に関わってはいけない感染病だった。
感染は死。
死は消滅。
「くっそーーーーーー!!! サクラのやろう! 鬼喰いだと! ふざけやがって! こうなったら……てめえらもだ。俺だけ消滅してなるもんか! お前らも!」
ムドウの太く強い腕がモネの方へ伸ばされた。
モネは避けようとしたが狭い家の中ではどちらへ避けても長く太いムドウの手につかまる。
「はっ!!」
空中からにゅうっと大きな刃物が出てきて、ムドウの首をさくっと切った。
胴体から切り離されたムドウの首はころんころんと床下まで転り、骸の目の間で止まった。
「げ、げええ」
目の目に恐ろしい形相の鬼の頭が転がってきて、骸は目を背けた。
がっと開いたムドウの目は恐ろしく骸を睨みつけた。
頭部が離れた身体は均衡を失って二、三歩、うろうろとしたが、力任せに腕を振り回し辺りの壁などを叩き壊した。
ムドウの振り回した腕がモネの身体を吹き飛ばし折れた柱に突き刺さりそうになった瞬間、空間からハヤテの腕が出てきて、モネの身体を受け止めた。
「ハヤテさん!」
とほっとしたようなモネの声がしたので、ドゥと骸は全身の力が抜けた。
二人で抱き締めているハナは目を閉じたまま動かない。
少女のまま老婆になってしまい、その鼓動も打っていない時間の方が長い。
「ハヤテ~~!!」
ムドウの頭部が低い声で唸った。
空間から現れたハヤテはすぐにムドウの頭部を拾い上げた。
「ムドウ、お前の身体はタロウさんが今後の為に研究するらしい、切り刻むのはタロウさんに任せる」
とハヤテは静かな声でそう言った。
そしてうろうろとしているムドウの身体をとんっと突いた。
軽く突いたようだがムドウの身体は吹っ飛び、そして部屋の真ん中の空間で消えた。
「ハ、ハヤテ!!」
と身体が消えたムドウが声を上げた瞬間、その首は炎に包まれた。
「ギャー」
とムドウが悲鳴を上げた。
「頭部は有効に使ってやるよ、俺が」
ハヤテは炎に包まれているムドウの頭部を持ち上げた。
先程ムドウが屋根を突き破って突っ込んで来たせいで、部屋の中は壊滅状態だった。
ハヤテは先程モネが突き刺さりそうになった折れた柱の尖った先にムドウの頭を突き刺した。
「ギャー」
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頭部を包む炎は酷く痛く苦しく、ムドウの顔を焼き崩していく。
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