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リリアン・ウエールズ
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「何ですの、あれ」
と声がした。後方の扉に立っていた令嬢が扇で口元を隠しながら言った声はそれほど大きくもなかったが、すうっ舞踏会の会場の中を通り抜けて、皆がそちらへ目をやった。
「ウエールズ侯爵!」
と会場のあちらこちらから声が聞こえてきた。
「あの方は……ウエールズ侯爵様? 元は我が国の騎士団の団長様で死霊王との戦いでなくなったと聞いてたけれど」
そんな声もこそこそと聞こえてきた。
「ウエールズ侯爵、よく来てくれた」
と皇太子が言い、ルミカ嬢もふふっと笑って、
「リリアン、お久しぶりね。お元気かしら? 戦でお亡くなりになったはずの公爵様がご無事で良かったわね」
と言った。
ルミカ嬢にリリアンと呼ばれたのは元伯爵令嬢で、今はガイラス様に嫁ぎウエールズ侯爵夫人となっている女性で、魔術師の一族出だけれど魔力が発現せず、学園に通う年になっても魔法学園には入学しなかったと聞いている。
金髪、碧眼の素晴らしい美少女だった。
「アレクサンダー皇太子、魔法学院ご卒業おめでとうございます」
とウエールズ侯爵が丁寧に挨拶をし、夫人であるリリアン様も素晴らしく美しい笑みを見せ、
「皇太子殿下、おめでとうございます」
と言った。
ルミカ嬢は、
「リリアン、あなた、侯爵様に嫁いでから何かお役にたってますの? 魔法も使えない、泣き虫では侯爵様にご迷惑をかけているのではなくて?」
とリリアン様に言った。
クスクスと笑い声が聞こえる。
確かに、リリアン嬢は魔法を使えないらしいけれど、こんな場で咎めるように言わなくても。
ところがリリアン様は、ふっと笑ってから、
「本日は国立魔法学院の晴れの卒業パーティ、さらに伯爵家以上のご令息、ご令嬢を招いての舞踏会ですよね? 優秀な成績を納めた方々をお送りするこんな華やかな場で他所様への罵詈雑言、更に皇太子殿下の賓客でもあるウエールズ侯爵夫人の私に向かってよくもそんな口がたたけるものですね。その空気の読めないっぷり、相変わらずですわね、ルミカ様。お元気でした?」
と言った。
「な、なんですって」
ルミカ嬢は顔を引きつらせたが、誰も何も言わなかった。
と声がした。後方の扉に立っていた令嬢が扇で口元を隠しながら言った声はそれほど大きくもなかったが、すうっ舞踏会の会場の中を通り抜けて、皆がそちらへ目をやった。
「ウエールズ侯爵!」
と会場のあちらこちらから声が聞こえてきた。
「あの方は……ウエールズ侯爵様? 元は我が国の騎士団の団長様で死霊王との戦いでなくなったと聞いてたけれど」
そんな声もこそこそと聞こえてきた。
「ウエールズ侯爵、よく来てくれた」
と皇太子が言い、ルミカ嬢もふふっと笑って、
「リリアン、お久しぶりね。お元気かしら? 戦でお亡くなりになったはずの公爵様がご無事で良かったわね」
と言った。
ルミカ嬢にリリアンと呼ばれたのは元伯爵令嬢で、今はガイラス様に嫁ぎウエールズ侯爵夫人となっている女性で、魔術師の一族出だけれど魔力が発現せず、学園に通う年になっても魔法学園には入学しなかったと聞いている。
金髪、碧眼の素晴らしい美少女だった。
「アレクサンダー皇太子、魔法学院ご卒業おめでとうございます」
とウエールズ侯爵が丁寧に挨拶をし、夫人であるリリアン様も素晴らしく美しい笑みを見せ、
「皇太子殿下、おめでとうございます」
と言った。
ルミカ嬢は、
「リリアン、あなた、侯爵様に嫁いでから何かお役にたってますの? 魔法も使えない、泣き虫では侯爵様にご迷惑をかけているのではなくて?」
とリリアン様に言った。
クスクスと笑い声が聞こえる。
確かに、リリアン嬢は魔法を使えないらしいけれど、こんな場で咎めるように言わなくても。
ところがリリアン様は、ふっと笑ってから、
「本日は国立魔法学院の晴れの卒業パーティ、さらに伯爵家以上のご令息、ご令嬢を招いての舞踏会ですよね? 優秀な成績を納めた方々をお送りするこんな華やかな場で他所様への罵詈雑言、更に皇太子殿下の賓客でもあるウエールズ侯爵夫人の私に向かってよくもそんな口がたたけるものですね。その空気の読めないっぷり、相変わらずですわね、ルミカ様。お元気でした?」
と言った。
「な、なんですって」
ルミカ嬢は顔を引きつらせたが、誰も何も言わなかった。
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