3 / 27
リリアン・ウエールズ
しおりを挟む
「何ですの、あれ」
と声がした。後方の扉に立っていた令嬢が扇で口元を隠しながら言った声はそれほど大きくもなかったが、すうっ舞踏会の会場の中を通り抜けて、皆がそちらへ目をやった。
「ウエールズ侯爵!」
と会場のあちらこちらから声が聞こえてきた。
「あの方は……ウエールズ侯爵様? 元は我が国の騎士団の団長様で死霊王との戦いでなくなったと聞いてたけれど」
そんな声もこそこそと聞こえてきた。
「ウエールズ侯爵、よく来てくれた」
と皇太子が言い、ルミカ嬢もふふっと笑って、
「リリアン、お久しぶりね。お元気かしら? 戦でお亡くなりになったはずの公爵様がご無事で良かったわね」
と言った。
ルミカ嬢にリリアンと呼ばれたのは元伯爵令嬢で、今はガイラス様に嫁ぎウエールズ侯爵夫人となっている女性で、魔術師の一族出だけれど魔力が発現せず、学園に通う年になっても魔法学園には入学しなかったと聞いている。
金髪、碧眼の素晴らしい美少女だった。
「アレクサンダー皇太子、魔法学院ご卒業おめでとうございます」
とウエールズ侯爵が丁寧に挨拶をし、夫人であるリリアン様も素晴らしく美しい笑みを見せ、
「皇太子殿下、おめでとうございます」
と言った。
ルミカ嬢は、
「リリアン、あなた、侯爵様に嫁いでから何かお役にたってますの? 魔法も使えない、泣き虫では侯爵様にご迷惑をかけているのではなくて?」
とリリアン様に言った。
クスクスと笑い声が聞こえる。
確かに、リリアン嬢は魔法を使えないらしいけれど、こんな場で咎めるように言わなくても。
ところがリリアン様は、ふっと笑ってから、
「本日は国立魔法学院の晴れの卒業パーティ、さらに伯爵家以上のご令息、ご令嬢を招いての舞踏会ですよね? 優秀な成績を納めた方々をお送りするこんな華やかな場で他所様への罵詈雑言、更に皇太子殿下の賓客でもあるウエールズ侯爵夫人の私に向かってよくもそんな口がたたけるものですね。その空気の読めないっぷり、相変わらずですわね、ルミカ様。お元気でした?」
と言った。
「な、なんですって」
ルミカ嬢は顔を引きつらせたが、誰も何も言わなかった。
と声がした。後方の扉に立っていた令嬢が扇で口元を隠しながら言った声はそれほど大きくもなかったが、すうっ舞踏会の会場の中を通り抜けて、皆がそちらへ目をやった。
「ウエールズ侯爵!」
と会場のあちらこちらから声が聞こえてきた。
「あの方は……ウエールズ侯爵様? 元は我が国の騎士団の団長様で死霊王との戦いでなくなったと聞いてたけれど」
そんな声もこそこそと聞こえてきた。
「ウエールズ侯爵、よく来てくれた」
と皇太子が言い、ルミカ嬢もふふっと笑って、
「リリアン、お久しぶりね。お元気かしら? 戦でお亡くなりになったはずの公爵様がご無事で良かったわね」
と言った。
ルミカ嬢にリリアンと呼ばれたのは元伯爵令嬢で、今はガイラス様に嫁ぎウエールズ侯爵夫人となっている女性で、魔術師の一族出だけれど魔力が発現せず、学園に通う年になっても魔法学園には入学しなかったと聞いている。
金髪、碧眼の素晴らしい美少女だった。
「アレクサンダー皇太子、魔法学院ご卒業おめでとうございます」
とウエールズ侯爵が丁寧に挨拶をし、夫人であるリリアン様も素晴らしく美しい笑みを見せ、
「皇太子殿下、おめでとうございます」
と言った。
ルミカ嬢は、
「リリアン、あなた、侯爵様に嫁いでから何かお役にたってますの? 魔法も使えない、泣き虫では侯爵様にご迷惑をかけているのではなくて?」
とリリアン様に言った。
クスクスと笑い声が聞こえる。
確かに、リリアン嬢は魔法を使えないらしいけれど、こんな場で咎めるように言わなくても。
ところがリリアン様は、ふっと笑ってから、
「本日は国立魔法学院の晴れの卒業パーティ、さらに伯爵家以上のご令息、ご令嬢を招いての舞踏会ですよね? 優秀な成績を納めた方々をお送りするこんな華やかな場で他所様への罵詈雑言、更に皇太子殿下の賓客でもあるウエールズ侯爵夫人の私に向かってよくもそんな口がたたけるものですね。その空気の読めないっぷり、相変わらずですわね、ルミカ様。お元気でした?」
と言った。
「な、なんですって」
ルミカ嬢は顔を引きつらせたが、誰も何も言わなかった。
1
あなたにおすすめの小説
酔っぱらい令嬢の英雄譚 ~チョコレートを食べていたら、いつの間にか第三王子を救っていたようです!~
ゆずこしょう
恋愛
婚約者と共に参加するはずだった、
夜会当日──
婚約者は「馬車の予約ができなかった」という理由で、
迎えに来ることはなかった。
そして王宮で彼女が目にしたのは、
婚約者と、見知らぬ女性が寄り添う姿。
領地存続のために婿が必要だったエヴァンジェリンは、
感情に流されることもなく、
淡々と婚約破棄の算段を立て始める。
目の前にあった美味しいチョコレートをつまみながら、
頭の中で、今後の算段を考えていると
別の修羅場が始まって──!?
その夜、ほんの少しお酒を口にしたことで、
エヴァンジェリンの評価と人生は、
思いもよらぬ方向へ転がり始める──
婚約破棄された伯爵令嬢は隣国の将軍に求婚され、前世の記憶を取り戻す
nacat
恋愛
婚約者である王太子に身に覚えのない罪を着せられ、婚約破棄された伯爵令嬢エリシア。
廷臣たちの嘲笑の中、隣国の若き将軍ライナルトが現れ、「ならば、俺が君を妻にしよう」と求婚する。
彼はただの救い手ではなかった。エリシアの“前世の記憶”と深く結びついた存在だったのだ——。
かつてすべてを失った令嬢が、今世では誰より強く、愛され、そしてざまぁを下す。
溺愛と逆転の物語、ここに開幕。
地味令嬢、婚約破棄されたので隣国で拾われました~冷酷王太子様の溺愛が激しすぎて困ります~
sika
恋愛
社交界では目立たない“地味令嬢”として笑われてきたエリス。婚約者である公爵家の跡取りに裏切られ、婚約破棄された夜、彼女はすべてを捨てて隣国へと渡る。
行き倒れた彼女を拾ったのは、冷酷無比と恐れられる隣国の第一王太子・レオン。
「俺のそばにいろ。もう誰にも傷つけさせない」
愛を信じられなかった彼女が次第に心を開く時、元婚約者たちは地に落ちる――。
ざまぁと溺愛が織りなす、甘く痛快な再生ロマンス!
婚約破棄された幼い公爵令嬢、目覚めたら絶世の美女でした
鍛高譚
恋愛
『幼すぎる』と婚約破棄された公爵令嬢ですが、意識不明から目覚めたら絶世の美女になっていました
幼すぎる、頼りない――そんな理由で婚約者に見限られた公爵令嬢シルフィーネ。
心ない言葉に傷ついた彼女は、事故に遭い意識不明となってしまう。
しかし一年後、彼女は奇跡的に目を覚ます。
そして目覚めた彼女は――かつての面影を残しつつも、見る者すべてを惹きつける絶世の美女へと変貌を遂げていた!
周囲の反応は一変。婚約破棄を後悔する元婚約者、熱視線を送る他家の令息たち、さらには王太子からの突然の縁談まで舞い込み――?
「もう、誰にも傷つけられたくない。私は私の幸せを手に入れるの」
これは、冷たく突き放された少女が美しく咲き誇り、誇りと自由を手に入れる、ざまぁ&逆転恋愛劇。
婚約破棄された悪役令嬢ですが、私の”役目”に気づいたのは冷酷公爵だけでした
ria_alphapolis
恋愛
悪役令嬢と呼ばれ、
王太子から公衆の面前で婚約破棄された令嬢――
彼女は、何も語らぬまま王都を去った。
誰も知らない。
彼女が国を守るため、
あえて嫌われ役を演じ続けていたことを。
すべてを失ったはずの彼女の前に現れたのは、
冷酷無比と噂される公爵。
彼だけが、彼女の行動に違和感を覚え、
やがて“役目”の真実にたどり着く。
これは、
国のために悪役を演じた令嬢が、
役目を終え、
一人の女性として愛されるまでの物語。
『お前を愛する事はない』なんて言ってないでしょうね?
あんど もあ
ファンタジー
政略結婚で妻を娶った息子に、母親は穏やかに、だが厳しく訊ねる。
「『お前を愛する事は無い』なんて言ってないでしょうね?」
契約婚のはずが、腹黒王太子様に溺愛されているようです
星月りあ
恋愛
「契約結婚しませんか? 愛を求めたりいたしませんので」
そう告げられた王太子は面白そうに笑った。
目が覚めると公爵令嬢リリカ・エバルディに転生していた主人公。ファンタジー好きの彼女は喜んだが、この国には一つ大きな問題があった。それは紅茶しかないということ。日本茶好きの彼女からしたら大問題である。
そんな中、王宮で日本茶に似た茶葉を育てているらしいとの情報を得る。そして、リリカは美味しいお茶を求め、王太子に契約結婚を申し出た。王太子はこれまで数多くの婚約を断ってきたため女性嫌いとも言われる人物。
そう、これはそのためだけのただの契約結婚だった。
それなのに
「君は面白いね」「僕から逃げられるとでも?」
なぜか興味をもたれて、いつしか溺愛ムードに突入していく……。
「お前を愛することはない」と言われたお飾りの妻ですが、何か?
あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することはない!」「そんな事を言うために女性の寝室に押し入ったのですか? もう寝るつもりで化粧を落として髪をほどいて寝着に着替えてるのに! 最っ低!」
仕事大好き女が「お飾りの妻最高!」と恋愛感情無しで結婚したらこうなるよね、というお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる