5 / 27
祝、初友人
しおりを挟む
リリアン様があちらでお茶でも、と誘ってくれたので、私達はその場を離れ、宮廷の中庭の四阿で腰を下ろした。
「ウエールズ侯爵様、リリアン様、ありがとうございました。みっともない所をお見せしてしまい、申し訳ありませんわ」
と言うと、
「あら、みっともないのはあの二人よ。王家に関わる婚約話をこんな場で、しかも正式でもない話をあんなに声高らかに」
とリリアン様が言って笑った。
「ですが、この婚約破棄は直に正式な発表となるでしょう。婚約者はルミカ様で、そして私は国外追放ですわ」
「あら、どうしてそう思うの?」
「それは……」
経験済みだから、と言えば、頭がおかしいと思われるだろうな。
「今更撤回などしないでしょうし、殿下のご要望ですもの。かなわないはずがありませんわ」
「国王陛下はともかく、皇后様は殿下にめっぽう甘いですからね。皇后様は四大公爵家筆頭のゲオドラ一族出ですし。殿下に非がないとう事実を国民に知らしめる為にはゴールディ公爵家でも追放がありうるかもしれんな」
とガイラス様が言ったので、私はうなずいた。
「ええ、そうなるでしょう。貴族籍は剥奪されるかもしれません。私には弟妹がおりますし、今後の事を考えると仕方ありませんわ」
それに、どうやってもどうせ死ぬしね。
「そんなの許せない! せめて王都から追放とかにならないかしら! そうしたらうちの領地へ来ていただいたらいいのに! ね、そう思いません? ガイラス様! 何とか国王様に働きかけられません?」
「そうだな」
とガイラス様が憤慨しているリリアン様を見て笑った。
可愛くて仕方のない、という表情だ。
「あ、でも、別に国外追放になった後、こっそりうちに来てもらったらいいんじゃない?」
「いけませんわ。もしそれが明るみでたら、ウエールズ侯爵様にもリリアン様にもご迷惑がかかります」
「えー、そんなのばれます? エアリス様のその後の行方まで追わないでしょう?」
「ですが万が一見つかったら、と思うとそのような恐ろしい事は出来ません。皆様にご迷惑がかかりますし」
死ぬのが決まっているのだ。
もしそれにこのお二人を巻き込んだらと思うと身震いがする。
「まあ、そんな事」
リリアン様は言ったが、結末でこんな優しい人に出会ったのは初めてだから今回はそれだけで良しとしてもいいと思った。
「リリアン様、初めてお会いしましたのに、親身になっていただきありがとうございます。最後にお知り合いになれて嬉しゅうございましたわ」
「最後なんて言わないでくださいな。私達はもうお友達なんですもの」
と言ってからリリアン様「あ」という顔をした。
「私、厚かましいですか? エアリス様、四大公爵家の中の令嬢ですよね。私なんか元伯爵の出だし、四大公爵家って公爵家の中でもトップオブ公爵家なんでしょう? そこのお嬢様とお友達なんてなれないのかしら? ガイラス様、どうお思いになります?」
とリリアン様が言い、ガイラス様はふっと笑った。
「現実的な身分の差はあれど、友情には上下はないのでは? と私は思うが、公爵家のお嬢様のご意見によるのでは?」
と言った。
「もちろんですわ。友達と言っていただいて嬉しゅうございます。私、初めて……」
そうだ。何度もバッドエンドを迎えるこの生き返り人生、初めて友達と言ってもらえたのだから。
「ウエールズ侯爵様、リリアン様、ありがとうございました。みっともない所をお見せしてしまい、申し訳ありませんわ」
と言うと、
「あら、みっともないのはあの二人よ。王家に関わる婚約話をこんな場で、しかも正式でもない話をあんなに声高らかに」
とリリアン様が言って笑った。
「ですが、この婚約破棄は直に正式な発表となるでしょう。婚約者はルミカ様で、そして私は国外追放ですわ」
「あら、どうしてそう思うの?」
「それは……」
経験済みだから、と言えば、頭がおかしいと思われるだろうな。
「今更撤回などしないでしょうし、殿下のご要望ですもの。かなわないはずがありませんわ」
「国王陛下はともかく、皇后様は殿下にめっぽう甘いですからね。皇后様は四大公爵家筆頭のゲオドラ一族出ですし。殿下に非がないとう事実を国民に知らしめる為にはゴールディ公爵家でも追放がありうるかもしれんな」
とガイラス様が言ったので、私はうなずいた。
「ええ、そうなるでしょう。貴族籍は剥奪されるかもしれません。私には弟妹がおりますし、今後の事を考えると仕方ありませんわ」
それに、どうやってもどうせ死ぬしね。
「そんなの許せない! せめて王都から追放とかにならないかしら! そうしたらうちの領地へ来ていただいたらいいのに! ね、そう思いません? ガイラス様! 何とか国王様に働きかけられません?」
「そうだな」
とガイラス様が憤慨しているリリアン様を見て笑った。
可愛くて仕方のない、という表情だ。
「あ、でも、別に国外追放になった後、こっそりうちに来てもらったらいいんじゃない?」
「いけませんわ。もしそれが明るみでたら、ウエールズ侯爵様にもリリアン様にもご迷惑がかかります」
「えー、そんなのばれます? エアリス様のその後の行方まで追わないでしょう?」
「ですが万が一見つかったら、と思うとそのような恐ろしい事は出来ません。皆様にご迷惑がかかりますし」
死ぬのが決まっているのだ。
もしそれにこのお二人を巻き込んだらと思うと身震いがする。
「まあ、そんな事」
リリアン様は言ったが、結末でこんな優しい人に出会ったのは初めてだから今回はそれだけで良しとしてもいいと思った。
「リリアン様、初めてお会いしましたのに、親身になっていただきありがとうございます。最後にお知り合いになれて嬉しゅうございましたわ」
「最後なんて言わないでくださいな。私達はもうお友達なんですもの」
と言ってからリリアン様「あ」という顔をした。
「私、厚かましいですか? エアリス様、四大公爵家の中の令嬢ですよね。私なんか元伯爵の出だし、四大公爵家って公爵家の中でもトップオブ公爵家なんでしょう? そこのお嬢様とお友達なんてなれないのかしら? ガイラス様、どうお思いになります?」
とリリアン様が言い、ガイラス様はふっと笑った。
「現実的な身分の差はあれど、友情には上下はないのでは? と私は思うが、公爵家のお嬢様のご意見によるのでは?」
と言った。
「もちろんですわ。友達と言っていただいて嬉しゅうございます。私、初めて……」
そうだ。何度もバッドエンドを迎えるこの生き返り人生、初めて友達と言ってもらえたのだから。
1
あなたにおすすめの小説
「婚約破棄だ」と叫ぶ殿下、国の実務は私ですが大丈夫ですか?〜私は冷徹宰相補佐と幸せになります〜
万里戸千波
恋愛
公爵令嬢リリエンは卒業パーティーの最中、突然婚約者のジェラルド王子から婚約破棄を申し渡された
残念な顔だとバカにされていた私が隣国の王子様に見初められました
月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
公爵令嬢アンジェリカは六歳の誕生日までは天使のように可愛らしい子供だった。ところが突然、ロバのような顔になってしまう。残念な姿に成長した『残念姫』と呼ばれるアンジェリカ。友達は男爵家のウォルターただ一人。そんなある日、隣国から素敵な王子様が留学してきて……
【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。
猫屋敷 むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で――
私の願いは一瞬にして踏みにじられました。
母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、
婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。
「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」
まさか――あの優しい彼が?
そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。
子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。
でも、私には、味方など誰もいませんでした。
ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。
白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。
「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」
やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。
それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、
冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。
没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。
これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。
※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ
※わんこが繋ぐ恋物語です
※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ
「いらない」と捨てられた令嬢、実は全属性持ちの聖女でした
ゆっこ
恋愛
「リリアーナ・エヴァンス。お前との婚約は破棄する。もう用済み
そう言い放ったのは、五年間想い続けた婚約者――王太子アレクシスさま。
広間に響く冷たい声。貴族たちの視線が一斉に私へ突き刺さる。
「アレクシスさま……どういう、ことでしょうか……?」
震える声で問い返すと、彼は心底嫌そうに眉を顰めた。
「言葉の意味が理解できないのか? ――お前は“無属性”だ。魔法の才能もなければ、聖女の資質もない。王太子妃として役不足だ」
「無……属性?」
助かったのはこちらですわ!~正妻の座を奪われた悪役?令嬢の鮮やかなる逆襲
水無月 星璃
恋愛
【悪役?令嬢シリーズ3作目】
エルディア帝国から、隣国・ヴァロワール王国のブランシェール辺境伯家に嫁いできたイザベラ。
夫、テオドール・ド・ブランシェールとの結婚式を終え、「さあ、妻として頑張りますわよ!」──と意気込んだのも束の間、またまたトラブル発生!?
今度は皇国の皇女がテオドールに嫁いでくることに!?
正妻から側妻への降格危機にも動じず、イザベラは静かにほくそ笑む。
1作目『お礼を言うのはこちらですわ!~婚約者も財産も、すべてを奪われた悪役?令嬢の華麗なる反撃』
2作目『謝罪するのはこちらですわ!~すべてを奪ってしまった悪役?令嬢の優雅なる防衛』
も、よろしくお願いいたしますわ!
元ヒロインの娘は隣国の叔母に助けを求める
mios
恋愛
両親のせいで、冷遇されて育った男爵令嬢モニカ。母の侍女から、「物語ではこういう時、隣国の叔母を頼ったりしますよ」と言われて、付き合いの全くない隣国の叔母に手紙を書いたのだが。
頼んだ方と頼まれた方の認識のズレが不幸な出来事を生み出して行く。
勝手に勘違いして、婚約破棄したあなたが悪い
猿喰 森繁
恋愛
「アリシア。婚約破棄をしてほしい」
「婚約破棄…ですか」
「君と僕とでは、やはり身分が違いすぎるんだ」
「やっぱり上流階級の人間は、上流階級同士でくっつくべきだと思うの。あなたもそう思わない?」
「はぁ…」
なんと返したら良いのか。
私の家は、一代貴族と言われている。いわゆる平民からの成り上がりである。
そんなわけで、没落貴族の息子と政略結婚ならぬ政略婚約をしていたが、その相手から婚約破棄をされてしまった。
理由は、私の家が事業に失敗して、莫大な借金を抱えてしまったからというものだった。
もちろん、そんなのは誰かが飛ばした噂でしかない。
それを律儀に信じてしまったというわけだ。
金の切れ目が縁の切れ目って、本当なのね。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる