12 / 27
困惑
しおりを挟む
「皇太子殿下とルミカが相思相愛で結婚したいのであればルミカが王妃ではいけませんの?」
とリリアン様が言った。
「リリアン、王家に嫁ぐのは自国、他国を問わず、侯爵家か公爵家の令嬢でなければならないのだ。だからエアリス嬢は五歳くらいから皇太子のご婚約者なのだよ」
とガイラス様が言った。
「まあ……そうですの……ばかばかしい」
とリリアン様が小声で呟いた。
「ウエールズ侯爵、あなたの妻は王家を愚弄するおつもりか?」
とゼキアス様がリリアン様を睨むように見据えた。
「ゼキアス様、そのようなつもりはありま……」
と言うガイラス様を遮って、
「あら、お気に障ったのなら申し訳ございませんわ。私、不敬罪で投獄されます? それとも国外追放でしょうか。それも面白そうですわ。常々、他国へも行ってみたいと思っておりましたし」
リリアン様は平気な顔でそう言ってのけた。
「リリアン、やめなさい、王子に対してのふるまいではないぞ」
リリアン様は、
「ガイラス様、私は言いたい事をいいますわ。ご存じでしょう? 私はどこででも生きていけるんです」
と言った。
「そんな事をされたら、君にここから去られたら、私が生きていけない。君は国外追放になるなら、もちろん私も一緒にこの国から出て行く」
とガイラス様はそう言い、リリアン様のブロンドの髪の毛の先にキスをした。
「ウエールズ侯爵、滅多な事を言うものでない。今、あなたはこの国よりも一人の女の方が大事だと言い放ったのですよ。我が国の騎士団の総指揮の立場にあるあなたが」
「国王陛下への忠義に嘘偽りはありませんが、リリアンを失っては生きるかいがないのも事実。もし、国がリリアンを投獄するのであれば、私はリリアンを助け出すことしか考えません。それに私は騎士団の退役願いを出しておりますし、後任には腕の立つ者を選び出しております」
と素顔でそう言い切ったガイラス様の格好いい事ったら。
「一人の女の為に国に反旗を翻すと? あなたの強さは騎士団員が束になっても敵わないではないですか! グランリーズに死神将軍ありと言われるからこそ他国からの侵略を受けずとも、成り立っておるのですよ! 将軍はいない、次の国王は兄上、その娶った妃が伯爵家の王妃教育も満足に受けられない贅沢しか頭にない女。ウエールズ侯爵、あなたもそう思うでしょう?」
「私からはそれは何とも申し上げられません。この地にこの身がある限りは陛下の為、身を捧げる覚悟ではございます」
「それは次の国王にも有効だろうか? 贅沢好きで執務もさぼりがち、パーティだの狩りだのばかりを優先する次期国王?」
「ゼキアス様、それは」
「ウエールズ侯爵、あなたの賛同を得られれば私も心強いのですが」
「私に第二王子派へ?」
「そうです。第二王子とはいえ私の生母は側室ですので、王妃派には何かと目の敵にされてまして。ですが私も王子、この国の行く末を憂う資格はあるはず。あの兄上よりはましな政治をして見せます」
「なるほど」
ガイラス様は困惑した表情で、リリアン様は盛り上がって参りました~みたいな顔をしている。
「盛り上がってきたわね!」
言った。
声に出して言っちゃったよ。
とリリアン様が言った。
「リリアン、王家に嫁ぐのは自国、他国を問わず、侯爵家か公爵家の令嬢でなければならないのだ。だからエアリス嬢は五歳くらいから皇太子のご婚約者なのだよ」
とガイラス様が言った。
「まあ……そうですの……ばかばかしい」
とリリアン様が小声で呟いた。
「ウエールズ侯爵、あなたの妻は王家を愚弄するおつもりか?」
とゼキアス様がリリアン様を睨むように見据えた。
「ゼキアス様、そのようなつもりはありま……」
と言うガイラス様を遮って、
「あら、お気に障ったのなら申し訳ございませんわ。私、不敬罪で投獄されます? それとも国外追放でしょうか。それも面白そうですわ。常々、他国へも行ってみたいと思っておりましたし」
リリアン様は平気な顔でそう言ってのけた。
「リリアン、やめなさい、王子に対してのふるまいではないぞ」
リリアン様は、
「ガイラス様、私は言いたい事をいいますわ。ご存じでしょう? 私はどこででも生きていけるんです」
と言った。
「そんな事をされたら、君にここから去られたら、私が生きていけない。君は国外追放になるなら、もちろん私も一緒にこの国から出て行く」
とガイラス様はそう言い、リリアン様のブロンドの髪の毛の先にキスをした。
「ウエールズ侯爵、滅多な事を言うものでない。今、あなたはこの国よりも一人の女の方が大事だと言い放ったのですよ。我が国の騎士団の総指揮の立場にあるあなたが」
「国王陛下への忠義に嘘偽りはありませんが、リリアンを失っては生きるかいがないのも事実。もし、国がリリアンを投獄するのであれば、私はリリアンを助け出すことしか考えません。それに私は騎士団の退役願いを出しておりますし、後任には腕の立つ者を選び出しております」
と素顔でそう言い切ったガイラス様の格好いい事ったら。
「一人の女の為に国に反旗を翻すと? あなたの強さは騎士団員が束になっても敵わないではないですか! グランリーズに死神将軍ありと言われるからこそ他国からの侵略を受けずとも、成り立っておるのですよ! 将軍はいない、次の国王は兄上、その娶った妃が伯爵家の王妃教育も満足に受けられない贅沢しか頭にない女。ウエールズ侯爵、あなたもそう思うでしょう?」
「私からはそれは何とも申し上げられません。この地にこの身がある限りは陛下の為、身を捧げる覚悟ではございます」
「それは次の国王にも有効だろうか? 贅沢好きで執務もさぼりがち、パーティだの狩りだのばかりを優先する次期国王?」
「ゼキアス様、それは」
「ウエールズ侯爵、あなたの賛同を得られれば私も心強いのですが」
「私に第二王子派へ?」
「そうです。第二王子とはいえ私の生母は側室ですので、王妃派には何かと目の敵にされてまして。ですが私も王子、この国の行く末を憂う資格はあるはず。あの兄上よりはましな政治をして見せます」
「なるほど」
ガイラス様は困惑した表情で、リリアン様は盛り上がって参りました~みたいな顔をしている。
「盛り上がってきたわね!」
言った。
声に出して言っちゃったよ。
1
あなたにおすすめの小説
「婚約破棄だ」と叫ぶ殿下、国の実務は私ですが大丈夫ですか?〜私は冷徹宰相補佐と幸せになります〜
万里戸千波
恋愛
公爵令嬢リリエンは卒業パーティーの最中、突然婚約者のジェラルド王子から婚約破棄を申し渡された
残念な顔だとバカにされていた私が隣国の王子様に見初められました
月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
公爵令嬢アンジェリカは六歳の誕生日までは天使のように可愛らしい子供だった。ところが突然、ロバのような顔になってしまう。残念な姿に成長した『残念姫』と呼ばれるアンジェリカ。友達は男爵家のウォルターただ一人。そんなある日、隣国から素敵な王子様が留学してきて……
【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。
猫屋敷 むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で――
私の願いは一瞬にして踏みにじられました。
母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、
婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。
「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」
まさか――あの優しい彼が?
そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。
子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。
でも、私には、味方など誰もいませんでした。
ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。
白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。
「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」
やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。
それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、
冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。
没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。
これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。
※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ
※わんこが繋ぐ恋物語です
※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ
「いらない」と捨てられた令嬢、実は全属性持ちの聖女でした
ゆっこ
恋愛
「リリアーナ・エヴァンス。お前との婚約は破棄する。もう用済み
そう言い放ったのは、五年間想い続けた婚約者――王太子アレクシスさま。
広間に響く冷たい声。貴族たちの視線が一斉に私へ突き刺さる。
「アレクシスさま……どういう、ことでしょうか……?」
震える声で問い返すと、彼は心底嫌そうに眉を顰めた。
「言葉の意味が理解できないのか? ――お前は“無属性”だ。魔法の才能もなければ、聖女の資質もない。王太子妃として役不足だ」
「無……属性?」
助かったのはこちらですわ!~正妻の座を奪われた悪役?令嬢の鮮やかなる逆襲
水無月 星璃
恋愛
【悪役?令嬢シリーズ3作目】
エルディア帝国から、隣国・ヴァロワール王国のブランシェール辺境伯家に嫁いできたイザベラ。
夫、テオドール・ド・ブランシェールとの結婚式を終え、「さあ、妻として頑張りますわよ!」──と意気込んだのも束の間、またまたトラブル発生!?
今度は皇国の皇女がテオドールに嫁いでくることに!?
正妻から側妻への降格危機にも動じず、イザベラは静かにほくそ笑む。
1作目『お礼を言うのはこちらですわ!~婚約者も財産も、すべてを奪われた悪役?令嬢の華麗なる反撃』
2作目『謝罪するのはこちらですわ!~すべてを奪ってしまった悪役?令嬢の優雅なる防衛』
も、よろしくお願いいたしますわ!
元ヒロインの娘は隣国の叔母に助けを求める
mios
恋愛
両親のせいで、冷遇されて育った男爵令嬢モニカ。母の侍女から、「物語ではこういう時、隣国の叔母を頼ったりしますよ」と言われて、付き合いの全くない隣国の叔母に手紙を書いたのだが。
頼んだ方と頼まれた方の認識のズレが不幸な出来事を生み出して行く。
勝手に勘違いして、婚約破棄したあなたが悪い
猿喰 森繁
恋愛
「アリシア。婚約破棄をしてほしい」
「婚約破棄…ですか」
「君と僕とでは、やはり身分が違いすぎるんだ」
「やっぱり上流階級の人間は、上流階級同士でくっつくべきだと思うの。あなたもそう思わない?」
「はぁ…」
なんと返したら良いのか。
私の家は、一代貴族と言われている。いわゆる平民からの成り上がりである。
そんなわけで、没落貴族の息子と政略結婚ならぬ政略婚約をしていたが、その相手から婚約破棄をされてしまった。
理由は、私の家が事業に失敗して、莫大な借金を抱えてしまったからというものだった。
もちろん、そんなのは誰かが飛ばした噂でしかない。
それを律儀に信じてしまったというわけだ。
金の切れ目が縁の切れ目って、本当なのね。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる