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罠
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「それで話は戻るけど、私が魔術師だという事をあなたはそっとルミカに教えてさしあげればいいわ」
とリリアン様が言った。
「リリアン様、あたは私を友と呼びましたわ。同じ転生者でもある。ですから遠慮無く意見を言わせていただきます」
「どうぞ」
「あなたはご自分を囮にして、魔石の闇取引の場を押さえ、潰すおつもりですのね? それは賛成できませんわ」
「何故ですの? では、このまま国中から魔術師を集め自分がそれを支配するなんてあのおっさんをそのままにしておけと?」
「いいえ、それは許されませんが、リリアン様が囮なんて危険すぎますわ」
「エアリス様、私はいつだって冒険者ですの。こんな国の一大事にお茶ばかり飲んでいられませんでしょう? 絶対耳に入ってるはずですのに、皇太子があれですのよ?」
「それは……そうですが」
「あなたは何の心配もしなくていいわ。ルミカの耳にそっとリリアンが魔法を使えるそうだと一報入れていだだくだけ結構ですの」
「ですが、モブでいたいのでしょう? もうこうなったら言ってしまいますが、国王様はあなたが死霊王を倒した聖女でないかと思っておりますわ。それが真実ならば、国はあなたを放っておきませんよ? 死霊王との戦いの折に聖女様も宮廷魔術師もお亡くなりになり、今、国は魔法力に関しては低迷しておりますわ。国王様が新たな聖女様を望むのも無理ありません。国はあなたを放っておきませんよ?」
リリアン様はふふふと笑って、
「エアリス様、お優しい方ね。私の心配をしていただいて、ありがとう。でも、大丈夫ですわ。今、やらずにうじうじと思い悩んで、後悔するくらいならいっそやってみようと思いますの」
私はずっと握っていた手の中の炎を出す石を見つめていた。
石は暖かくて、もう、一度くらいは炎を出せそうな気がした。
ふいっと私の膝の上に、先ほど紹介された妖精王の子孫だという小さなおじさまが現れた。腕組みをしてうんうんとうなずいている様子は私を説得しているみたいだった。
「分かりましたわ。でも危ない事はなさらないようすると、約束して下さいますか?」
「もちろんよ」
リリアン様はにっこりと笑った。
「なんですって?」
ルミカ嬢が眉をひそめた。
「本当なの? あなた、魔力が発現したの? 普通は魔力は五歳までに発現するものよ?」
「一時的なものかもしれませんわ。使えるといっても小さな炎を出すくらいですもの」
私は両脇に汗をぶしゃーとかいていた。
これば嘘だとばれたらどうなるんだろう?
けど本来なら国外追放の上の死亡という超バッドエンドのはずが、こうやって生きながらえている。
何か理由があり、私はそれを知らなければならない。
そして長生きするんだ!
「そうですの……ねえ、エアリス様、今度の我が家でのお茶会、是非いらして下さらない?」
とルミカ嬢が言った。
「は、はい、喜んで」
「早速、招待状をお届けするわ」
そう言ってルミカ嬢は去って行った。
私は罠を張った。
リリアン様の代わりに、潜入捜査をするつもりだ。
もちろん、それはゼキアス様にも相談済みで、ゼキアス様は大きなため息とともに、
「何を考えているんだ! 君達は!」
と猛反対の上、ガイラス様に言いつけるというのを必至に思いとどまらせた、
ルミカ嬢親子の罪を暴き、そして万が一皇太子がそれに加担しているのであれば、内々に事を収めるのが得策だ、と。
ゼキアス様にすれば皇太子がそのような悪事に加担しているのは一大事、国王に知れれば皇籍剥奪の可能性もある、と考えたようだ。
臣下の中には「国王にはゼキアス様の方が相応しい」という意見もあるし、ゼキアス様がそれを望むのならば、アレクサンダー皇太子の罪を暴けばいい。
「私は兄上とは幼い頃から親身に話をした事もないんだ。ただ皇太子とその弟、将来的には国王とそれを支える宰相。兄弟の情なんてないし、あの兄上には尊敬出来る箇所など一つも無い」
ゼキアス様は言葉を止めて、それから、
「兄上は魔法適性がない。魔力の発現は遺伝の要因が大きいから、魔術師の一族でもない王家に魔力が発現しないのは普通の事だ。国王にも王妃にもない。だが地位の低い母親から生まれた異母兄弟に魔法適性があった事は兄上を酷く傷つけたようだ。王家や貴族、庶民、身分に関係なく魔術というものは憧れるものだろう? 私は自分に魔法適性あった事が嬉しく、そして子供は残酷だ。兄が私に辛くあたる度に、魔法を見せつけてやったんだ」
「ゼキアス様」
「私がもう少し分別があり、兄上にそういった行為をしなければ、兄上も……」
「ゼキアス様、それは分かりませんわ。今どうこう考えても仕方ありません。一刻も早く、この魔法石の闇売買を撲滅しましょう。ご兄弟のお話しはそれからですわ! 兄弟ですもの。仲直りなんか簡単です! もういっそ、殴り合いでもしてみればいいんです! 本気で喧嘩したらわかり合える部分もきっと見つかります!」
「エアリス、君は……強いなぁ」
ゼキアス様はははっと笑い、その笑顔は年相応の笑顔に見えた。
とリリアン様が言った。
「リリアン様、あたは私を友と呼びましたわ。同じ転生者でもある。ですから遠慮無く意見を言わせていただきます」
「どうぞ」
「あなたはご自分を囮にして、魔石の闇取引の場を押さえ、潰すおつもりですのね? それは賛成できませんわ」
「何故ですの? では、このまま国中から魔術師を集め自分がそれを支配するなんてあのおっさんをそのままにしておけと?」
「いいえ、それは許されませんが、リリアン様が囮なんて危険すぎますわ」
「エアリス様、私はいつだって冒険者ですの。こんな国の一大事にお茶ばかり飲んでいられませんでしょう? 絶対耳に入ってるはずですのに、皇太子があれですのよ?」
「それは……そうですが」
「あなたは何の心配もしなくていいわ。ルミカの耳にそっとリリアンが魔法を使えるそうだと一報入れていだだくだけ結構ですの」
「ですが、モブでいたいのでしょう? もうこうなったら言ってしまいますが、国王様はあなたが死霊王を倒した聖女でないかと思っておりますわ。それが真実ならば、国はあなたを放っておきませんよ? 死霊王との戦いの折に聖女様も宮廷魔術師もお亡くなりになり、今、国は魔法力に関しては低迷しておりますわ。国王様が新たな聖女様を望むのも無理ありません。国はあなたを放っておきませんよ?」
リリアン様はふふふと笑って、
「エアリス様、お優しい方ね。私の心配をしていただいて、ありがとう。でも、大丈夫ですわ。今、やらずにうじうじと思い悩んで、後悔するくらいならいっそやってみようと思いますの」
私はずっと握っていた手の中の炎を出す石を見つめていた。
石は暖かくて、もう、一度くらいは炎を出せそうな気がした。
ふいっと私の膝の上に、先ほど紹介された妖精王の子孫だという小さなおじさまが現れた。腕組みをしてうんうんとうなずいている様子は私を説得しているみたいだった。
「分かりましたわ。でも危ない事はなさらないようすると、約束して下さいますか?」
「もちろんよ」
リリアン様はにっこりと笑った。
「なんですって?」
ルミカ嬢が眉をひそめた。
「本当なの? あなた、魔力が発現したの? 普通は魔力は五歳までに発現するものよ?」
「一時的なものかもしれませんわ。使えるといっても小さな炎を出すくらいですもの」
私は両脇に汗をぶしゃーとかいていた。
これば嘘だとばれたらどうなるんだろう?
けど本来なら国外追放の上の死亡という超バッドエンドのはずが、こうやって生きながらえている。
何か理由があり、私はそれを知らなければならない。
そして長生きするんだ!
「そうですの……ねえ、エアリス様、今度の我が家でのお茶会、是非いらして下さらない?」
とルミカ嬢が言った。
「は、はい、喜んで」
「早速、招待状をお届けするわ」
そう言ってルミカ嬢は去って行った。
私は罠を張った。
リリアン様の代わりに、潜入捜査をするつもりだ。
もちろん、それはゼキアス様にも相談済みで、ゼキアス様は大きなため息とともに、
「何を考えているんだ! 君達は!」
と猛反対の上、ガイラス様に言いつけるというのを必至に思いとどまらせた、
ルミカ嬢親子の罪を暴き、そして万が一皇太子がそれに加担しているのであれば、内々に事を収めるのが得策だ、と。
ゼキアス様にすれば皇太子がそのような悪事に加担しているのは一大事、国王に知れれば皇籍剥奪の可能性もある、と考えたようだ。
臣下の中には「国王にはゼキアス様の方が相応しい」という意見もあるし、ゼキアス様がそれを望むのならば、アレクサンダー皇太子の罪を暴けばいい。
「私は兄上とは幼い頃から親身に話をした事もないんだ。ただ皇太子とその弟、将来的には国王とそれを支える宰相。兄弟の情なんてないし、あの兄上には尊敬出来る箇所など一つも無い」
ゼキアス様は言葉を止めて、それから、
「兄上は魔法適性がない。魔力の発現は遺伝の要因が大きいから、魔術師の一族でもない王家に魔力が発現しないのは普通の事だ。国王にも王妃にもない。だが地位の低い母親から生まれた異母兄弟に魔法適性があった事は兄上を酷く傷つけたようだ。王家や貴族、庶民、身分に関係なく魔術というものは憧れるものだろう? 私は自分に魔法適性あった事が嬉しく、そして子供は残酷だ。兄が私に辛くあたる度に、魔法を見せつけてやったんだ」
「ゼキアス様」
「私がもう少し分別があり、兄上にそういった行為をしなければ、兄上も……」
「ゼキアス様、それは分かりませんわ。今どうこう考えても仕方ありません。一刻も早く、この魔法石の闇売買を撲滅しましょう。ご兄弟のお話しはそれからですわ! 兄弟ですもの。仲直りなんか簡単です! もういっそ、殴り合いでもしてみればいいんです! 本気で喧嘩したらわかり合える部分もきっと見つかります!」
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ゼキアス様はははっと笑い、その笑顔は年相応の笑顔に見えた。
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