21 / 27
罠
しおりを挟む
「それで話は戻るけど、私が魔術師だという事をあなたはそっとルミカに教えてさしあげればいいわ」
とリリアン様が言った。
「リリアン様、あたは私を友と呼びましたわ。同じ転生者でもある。ですから遠慮無く意見を言わせていただきます」
「どうぞ」
「あなたはご自分を囮にして、魔石の闇取引の場を押さえ、潰すおつもりですのね? それは賛成できませんわ」
「何故ですの? では、このまま国中から魔術師を集め自分がそれを支配するなんてあのおっさんをそのままにしておけと?」
「いいえ、それは許されませんが、リリアン様が囮なんて危険すぎますわ」
「エアリス様、私はいつだって冒険者ですの。こんな国の一大事にお茶ばかり飲んでいられませんでしょう? 絶対耳に入ってるはずですのに、皇太子があれですのよ?」
「それは……そうですが」
「あなたは何の心配もしなくていいわ。ルミカの耳にそっとリリアンが魔法を使えるそうだと一報入れていだだくだけ結構ですの」
「ですが、モブでいたいのでしょう? もうこうなったら言ってしまいますが、国王様はあなたが死霊王を倒した聖女でないかと思っておりますわ。それが真実ならば、国はあなたを放っておきませんよ? 死霊王との戦いの折に聖女様も宮廷魔術師もお亡くなりになり、今、国は魔法力に関しては低迷しておりますわ。国王様が新たな聖女様を望むのも無理ありません。国はあなたを放っておきませんよ?」
リリアン様はふふふと笑って、
「エアリス様、お優しい方ね。私の心配をしていただいて、ありがとう。でも、大丈夫ですわ。今、やらずにうじうじと思い悩んで、後悔するくらいならいっそやってみようと思いますの」
私はずっと握っていた手の中の炎を出す石を見つめていた。
石は暖かくて、もう、一度くらいは炎を出せそうな気がした。
ふいっと私の膝の上に、先ほど紹介された妖精王の子孫だという小さなおじさまが現れた。腕組みをしてうんうんとうなずいている様子は私を説得しているみたいだった。
「分かりましたわ。でも危ない事はなさらないようすると、約束して下さいますか?」
「もちろんよ」
リリアン様はにっこりと笑った。
「なんですって?」
ルミカ嬢が眉をひそめた。
「本当なの? あなた、魔力が発現したの? 普通は魔力は五歳までに発現するものよ?」
「一時的なものかもしれませんわ。使えるといっても小さな炎を出すくらいですもの」
私は両脇に汗をぶしゃーとかいていた。
これば嘘だとばれたらどうなるんだろう?
けど本来なら国外追放の上の死亡という超バッドエンドのはずが、こうやって生きながらえている。
何か理由があり、私はそれを知らなければならない。
そして長生きするんだ!
「そうですの……ねえ、エアリス様、今度の我が家でのお茶会、是非いらして下さらない?」
とルミカ嬢が言った。
「は、はい、喜んで」
「早速、招待状をお届けするわ」
そう言ってルミカ嬢は去って行った。
私は罠を張った。
リリアン様の代わりに、潜入捜査をするつもりだ。
もちろん、それはゼキアス様にも相談済みで、ゼキアス様は大きなため息とともに、
「何を考えているんだ! 君達は!」
と猛反対の上、ガイラス様に言いつけるというのを必至に思いとどまらせた、
ルミカ嬢親子の罪を暴き、そして万が一皇太子がそれに加担しているのであれば、内々に事を収めるのが得策だ、と。
ゼキアス様にすれば皇太子がそのような悪事に加担しているのは一大事、国王に知れれば皇籍剥奪の可能性もある、と考えたようだ。
臣下の中には「国王にはゼキアス様の方が相応しい」という意見もあるし、ゼキアス様がそれを望むのならば、アレクサンダー皇太子の罪を暴けばいい。
「私は兄上とは幼い頃から親身に話をした事もないんだ。ただ皇太子とその弟、将来的には国王とそれを支える宰相。兄弟の情なんてないし、あの兄上には尊敬出来る箇所など一つも無い」
ゼキアス様は言葉を止めて、それから、
「兄上は魔法適性がない。魔力の発現は遺伝の要因が大きいから、魔術師の一族でもない王家に魔力が発現しないのは普通の事だ。国王にも王妃にもない。だが地位の低い母親から生まれた異母兄弟に魔法適性があった事は兄上を酷く傷つけたようだ。王家や貴族、庶民、身分に関係なく魔術というものは憧れるものだろう? 私は自分に魔法適性あった事が嬉しく、そして子供は残酷だ。兄が私に辛くあたる度に、魔法を見せつけてやったんだ」
「ゼキアス様」
「私がもう少し分別があり、兄上にそういった行為をしなければ、兄上も……」
「ゼキアス様、それは分かりませんわ。今どうこう考えても仕方ありません。一刻も早く、この魔法石の闇売買を撲滅しましょう。ご兄弟のお話しはそれからですわ! 兄弟ですもの。仲直りなんか簡単です! もういっそ、殴り合いでもしてみればいいんです! 本気で喧嘩したらわかり合える部分もきっと見つかります!」
「エアリス、君は……強いなぁ」
ゼキアス様はははっと笑い、その笑顔は年相応の笑顔に見えた。
とリリアン様が言った。
「リリアン様、あたは私を友と呼びましたわ。同じ転生者でもある。ですから遠慮無く意見を言わせていただきます」
「どうぞ」
「あなたはご自分を囮にして、魔石の闇取引の場を押さえ、潰すおつもりですのね? それは賛成できませんわ」
「何故ですの? では、このまま国中から魔術師を集め自分がそれを支配するなんてあのおっさんをそのままにしておけと?」
「いいえ、それは許されませんが、リリアン様が囮なんて危険すぎますわ」
「エアリス様、私はいつだって冒険者ですの。こんな国の一大事にお茶ばかり飲んでいられませんでしょう? 絶対耳に入ってるはずですのに、皇太子があれですのよ?」
「それは……そうですが」
「あなたは何の心配もしなくていいわ。ルミカの耳にそっとリリアンが魔法を使えるそうだと一報入れていだだくだけ結構ですの」
「ですが、モブでいたいのでしょう? もうこうなったら言ってしまいますが、国王様はあなたが死霊王を倒した聖女でないかと思っておりますわ。それが真実ならば、国はあなたを放っておきませんよ? 死霊王との戦いの折に聖女様も宮廷魔術師もお亡くなりになり、今、国は魔法力に関しては低迷しておりますわ。国王様が新たな聖女様を望むのも無理ありません。国はあなたを放っておきませんよ?」
リリアン様はふふふと笑って、
「エアリス様、お優しい方ね。私の心配をしていただいて、ありがとう。でも、大丈夫ですわ。今、やらずにうじうじと思い悩んで、後悔するくらいならいっそやってみようと思いますの」
私はずっと握っていた手の中の炎を出す石を見つめていた。
石は暖かくて、もう、一度くらいは炎を出せそうな気がした。
ふいっと私の膝の上に、先ほど紹介された妖精王の子孫だという小さなおじさまが現れた。腕組みをしてうんうんとうなずいている様子は私を説得しているみたいだった。
「分かりましたわ。でも危ない事はなさらないようすると、約束して下さいますか?」
「もちろんよ」
リリアン様はにっこりと笑った。
「なんですって?」
ルミカ嬢が眉をひそめた。
「本当なの? あなた、魔力が発現したの? 普通は魔力は五歳までに発現するものよ?」
「一時的なものかもしれませんわ。使えるといっても小さな炎を出すくらいですもの」
私は両脇に汗をぶしゃーとかいていた。
これば嘘だとばれたらどうなるんだろう?
けど本来なら国外追放の上の死亡という超バッドエンドのはずが、こうやって生きながらえている。
何か理由があり、私はそれを知らなければならない。
そして長生きするんだ!
「そうですの……ねえ、エアリス様、今度の我が家でのお茶会、是非いらして下さらない?」
とルミカ嬢が言った。
「は、はい、喜んで」
「早速、招待状をお届けするわ」
そう言ってルミカ嬢は去って行った。
私は罠を張った。
リリアン様の代わりに、潜入捜査をするつもりだ。
もちろん、それはゼキアス様にも相談済みで、ゼキアス様は大きなため息とともに、
「何を考えているんだ! 君達は!」
と猛反対の上、ガイラス様に言いつけるというのを必至に思いとどまらせた、
ルミカ嬢親子の罪を暴き、そして万が一皇太子がそれに加担しているのであれば、内々に事を収めるのが得策だ、と。
ゼキアス様にすれば皇太子がそのような悪事に加担しているのは一大事、国王に知れれば皇籍剥奪の可能性もある、と考えたようだ。
臣下の中には「国王にはゼキアス様の方が相応しい」という意見もあるし、ゼキアス様がそれを望むのならば、アレクサンダー皇太子の罪を暴けばいい。
「私は兄上とは幼い頃から親身に話をした事もないんだ。ただ皇太子とその弟、将来的には国王とそれを支える宰相。兄弟の情なんてないし、あの兄上には尊敬出来る箇所など一つも無い」
ゼキアス様は言葉を止めて、それから、
「兄上は魔法適性がない。魔力の発現は遺伝の要因が大きいから、魔術師の一族でもない王家に魔力が発現しないのは普通の事だ。国王にも王妃にもない。だが地位の低い母親から生まれた異母兄弟に魔法適性があった事は兄上を酷く傷つけたようだ。王家や貴族、庶民、身分に関係なく魔術というものは憧れるものだろう? 私は自分に魔法適性あった事が嬉しく、そして子供は残酷だ。兄が私に辛くあたる度に、魔法を見せつけてやったんだ」
「ゼキアス様」
「私がもう少し分別があり、兄上にそういった行為をしなければ、兄上も……」
「ゼキアス様、それは分かりませんわ。今どうこう考えても仕方ありません。一刻も早く、この魔法石の闇売買を撲滅しましょう。ご兄弟のお話しはそれからですわ! 兄弟ですもの。仲直りなんか簡単です! もういっそ、殴り合いでもしてみればいいんです! 本気で喧嘩したらわかり合える部分もきっと見つかります!」
「エアリス、君は……強いなぁ」
ゼキアス様はははっと笑い、その笑顔は年相応の笑顔に見えた。
2
あなたにおすすめの小説
酔っぱらい令嬢の英雄譚 ~チョコレートを食べていたら、いつの間にか第三王子を救っていたようです!~
ゆずこしょう
恋愛
婚約者と共に参加するはずだった、
夜会当日──
婚約者は「馬車の予約ができなかった」という理由で、
迎えに来ることはなかった。
そして王宮で彼女が目にしたのは、
婚約者と、見知らぬ女性が寄り添う姿。
領地存続のために婿が必要だったエヴァンジェリンは、
感情に流されることもなく、
淡々と婚約破棄の算段を立て始める。
目の前にあった美味しいチョコレートをつまみながら、
頭の中で、今後の算段を考えていると
別の修羅場が始まって──!?
その夜、ほんの少しお酒を口にしたことで、
エヴァンジェリンの評価と人生は、
思いもよらぬ方向へ転がり始める──
婚約破棄された伯爵令嬢は隣国の将軍に求婚され、前世の記憶を取り戻す
nacat
恋愛
婚約者である王太子に身に覚えのない罪を着せられ、婚約破棄された伯爵令嬢エリシア。
廷臣たちの嘲笑の中、隣国の若き将軍ライナルトが現れ、「ならば、俺が君を妻にしよう」と求婚する。
彼はただの救い手ではなかった。エリシアの“前世の記憶”と深く結びついた存在だったのだ——。
かつてすべてを失った令嬢が、今世では誰より強く、愛され、そしてざまぁを下す。
溺愛と逆転の物語、ここに開幕。
地味令嬢、婚約破棄されたので隣国で拾われました~冷酷王太子様の溺愛が激しすぎて困ります~
sika
恋愛
社交界では目立たない“地味令嬢”として笑われてきたエリス。婚約者である公爵家の跡取りに裏切られ、婚約破棄された夜、彼女はすべてを捨てて隣国へと渡る。
行き倒れた彼女を拾ったのは、冷酷無比と恐れられる隣国の第一王太子・レオン。
「俺のそばにいろ。もう誰にも傷つけさせない」
愛を信じられなかった彼女が次第に心を開く時、元婚約者たちは地に落ちる――。
ざまぁと溺愛が織りなす、甘く痛快な再生ロマンス!
婚約破棄された幼い公爵令嬢、目覚めたら絶世の美女でした
鍛高譚
恋愛
『幼すぎる』と婚約破棄された公爵令嬢ですが、意識不明から目覚めたら絶世の美女になっていました
幼すぎる、頼りない――そんな理由で婚約者に見限られた公爵令嬢シルフィーネ。
心ない言葉に傷ついた彼女は、事故に遭い意識不明となってしまう。
しかし一年後、彼女は奇跡的に目を覚ます。
そして目覚めた彼女は――かつての面影を残しつつも、見る者すべてを惹きつける絶世の美女へと変貌を遂げていた!
周囲の反応は一変。婚約破棄を後悔する元婚約者、熱視線を送る他家の令息たち、さらには王太子からの突然の縁談まで舞い込み――?
「もう、誰にも傷つけられたくない。私は私の幸せを手に入れるの」
これは、冷たく突き放された少女が美しく咲き誇り、誇りと自由を手に入れる、ざまぁ&逆転恋愛劇。
婚約破棄された悪役令嬢ですが、私の”役目”に気づいたのは冷酷公爵だけでした
ria_alphapolis
恋愛
悪役令嬢と呼ばれ、
王太子から公衆の面前で婚約破棄された令嬢――
彼女は、何も語らぬまま王都を去った。
誰も知らない。
彼女が国を守るため、
あえて嫌われ役を演じ続けていたことを。
すべてを失ったはずの彼女の前に現れたのは、
冷酷無比と噂される公爵。
彼だけが、彼女の行動に違和感を覚え、
やがて“役目”の真実にたどり着く。
これは、
国のために悪役を演じた令嬢が、
役目を終え、
一人の女性として愛されるまでの物語。
『お前を愛する事はない』なんて言ってないでしょうね?
あんど もあ
ファンタジー
政略結婚で妻を娶った息子に、母親は穏やかに、だが厳しく訊ねる。
「『お前を愛する事は無い』なんて言ってないでしょうね?」
契約婚のはずが、腹黒王太子様に溺愛されているようです
星月りあ
恋愛
「契約結婚しませんか? 愛を求めたりいたしませんので」
そう告げられた王太子は面白そうに笑った。
目が覚めると公爵令嬢リリカ・エバルディに転生していた主人公。ファンタジー好きの彼女は喜んだが、この国には一つ大きな問題があった。それは紅茶しかないということ。日本茶好きの彼女からしたら大問題である。
そんな中、王宮で日本茶に似た茶葉を育てているらしいとの情報を得る。そして、リリカは美味しいお茶を求め、王太子に契約結婚を申し出た。王太子はこれまで数多くの婚約を断ってきたため女性嫌いとも言われる人物。
そう、これはそのためだけのただの契約結婚だった。
それなのに
「君は面白いね」「僕から逃げられるとでも?」
なぜか興味をもたれて、いつしか溺愛ムードに突入していく……。
「お前を愛することはない」と言われたお飾りの妻ですが、何か?
あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することはない!」「そんな事を言うために女性の寝室に押し入ったのですか? もう寝るつもりで化粧を落として髪をほどいて寝着に着替えてるのに! 最っ低!」
仕事大好き女が「お飾りの妻最高!」と恋愛感情無しで結婚したらこうなるよね、というお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる