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空中疾走
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どうしたものか……と思っていると、子ドラゴンが「キューキュー」と鳴いた。
「どした?」
とおっさんが言い、白爺達もそわそわし出した。
「あ、やばいで」
というおっさんの声に子ドラゴンはふわっと浮いて窓へ突進した。
子ドラゴンが窓の外のベランダに出たので、それを追いかけて外を覗くと、
「わ、でっかくなってる」
さっきまで子犬くらいだった子ドラゴンは、ぶわっと十倍は大きくなっていた。
「どうしたの?」
「りりちゃん、親ドラゴンが助けを求めてるから子供が焦ってるんや、一緒に行ったってくれへんか」
「え……一緒にたってどうやって」
「ほら、この大きさやったら乗れるやろ!」
「まさか、子ドラゴンの背中に?」
「そうや! はよ!」
「えー」
宙を飛んで行くって事でしょ? い、嫌だなぁ。
と躊躇していると、子ドラゴンが顔をこちらへ向けて「ギュウウウウウウ」と鳴いた。
「りりちゃん、背中に乗るか、嘴で咥えてか、どっちかって言ってるけど」
「わ、分かったわよ」
仕方なく子ドラゴンの背中に乗るが「冷てえええええ」。
「何これ、ドラゴンの背中冷たいし、固いし、ってか、この季節、宙なんか飛んだら凍えて私が死んじゃうわ」
「結界張ったらええねん。対物理結界と対冷気遮断結界」
「えー結界なんか……きゃああああああああああああああ」
あっという間に子ドラゴンは宙に飛び立ち、もの凄い速度で空中を疾走した。
顔はびろーんと伸び、穴という穴から冷気が入りこみ、分厚いベルベット生地とはいえ所詮ドレスだ。
「た、たいぶつりけっかい! たいれいきしゃだん……けっか……いぃ……あ、死んだな。これ」
とぎゅっと身体を縮こめていたが、ふと顔をあげると、息が出来たのは結界が張られた証拠だろう。
「マジか、子ドラゴン、殺す気か、あんたの親の治療どうこうの前にこっちがまたどっかに転生することだったわ」
「ほんまやで、わしらも落ちるとこやったわぁ」
とおっさんや白爺達がドレスの裾のもこもこしたとこから顔を出した。
「あんたら隠れてたわね!」
「まあまあ、そう言うな。もうつくで」
落ち着いて子ドラゴンの背中から周囲を見渡すと、そこからはウエールズ領が広く見渡せた。さっきまでいた侯爵の城はもうかなり小さく見えて、遠くの方で白かった山がすぐ目の前に見える。
「ねえ、あれ、何?」
遙か下方に行列が見えた。
それは軍隊の行進だったが、私からはありの行列に見えた。
「あちゃー。早くも国が動いたな。手負いのアイスドラゴンがこの辺りに隠れていると軍がつかんで、調査に来たな」
とおっさんが言った。
「おっさんて、妖精のわりに国の情勢に詳しくない?」
「わしらの仲間はふんだんにいてる。村にも城下にも王宮にもな。わしらの情報は宙駆ける風より早いで」
「そっか」
「国はアイスドラゴンを討伐するやろ。それを止めへんと、アイスドラゴンが死んだら死霊王の呪い、穢れがこの地に放たれる。ドラゴンも氷の核になって国全体を凍らせて皆、死に絶える」
「じゃあ、それを早く知らせなくちゃ!」
「それよりドラゴンを治療したってや。自力で動けるようになったらここから移動するやろうし、今すぐあんたの説得が国に通るとは思えんしな。どっちにしてもドラゴンが死んだら終わりや、時間はない」
「そっか、分かった、じゃ、ドラゴンのとこに急いでね」
「キューーーーー」
と子ドラゴンが鳴いて速度を増した。
「どした?」
とおっさんが言い、白爺達もそわそわし出した。
「あ、やばいで」
というおっさんの声に子ドラゴンはふわっと浮いて窓へ突進した。
子ドラゴンが窓の外のベランダに出たので、それを追いかけて外を覗くと、
「わ、でっかくなってる」
さっきまで子犬くらいだった子ドラゴンは、ぶわっと十倍は大きくなっていた。
「どうしたの?」
「りりちゃん、親ドラゴンが助けを求めてるから子供が焦ってるんや、一緒に行ったってくれへんか」
「え……一緒にたってどうやって」
「ほら、この大きさやったら乗れるやろ!」
「まさか、子ドラゴンの背中に?」
「そうや! はよ!」
「えー」
宙を飛んで行くって事でしょ? い、嫌だなぁ。
と躊躇していると、子ドラゴンが顔をこちらへ向けて「ギュウウウウウウ」と鳴いた。
「りりちゃん、背中に乗るか、嘴で咥えてか、どっちかって言ってるけど」
「わ、分かったわよ」
仕方なく子ドラゴンの背中に乗るが「冷てえええええ」。
「何これ、ドラゴンの背中冷たいし、固いし、ってか、この季節、宙なんか飛んだら凍えて私が死んじゃうわ」
「結界張ったらええねん。対物理結界と対冷気遮断結界」
「えー結界なんか……きゃああああああああああああああ」
あっという間に子ドラゴンは宙に飛び立ち、もの凄い速度で空中を疾走した。
顔はびろーんと伸び、穴という穴から冷気が入りこみ、分厚いベルベット生地とはいえ所詮ドレスだ。
「た、たいぶつりけっかい! たいれいきしゃだん……けっか……いぃ……あ、死んだな。これ」
とぎゅっと身体を縮こめていたが、ふと顔をあげると、息が出来たのは結界が張られた証拠だろう。
「マジか、子ドラゴン、殺す気か、あんたの親の治療どうこうの前にこっちがまたどっかに転生することだったわ」
「ほんまやで、わしらも落ちるとこやったわぁ」
とおっさんや白爺達がドレスの裾のもこもこしたとこから顔を出した。
「あんたら隠れてたわね!」
「まあまあ、そう言うな。もうつくで」
落ち着いて子ドラゴンの背中から周囲を見渡すと、そこからはウエールズ領が広く見渡せた。さっきまでいた侯爵の城はもうかなり小さく見えて、遠くの方で白かった山がすぐ目の前に見える。
「ねえ、あれ、何?」
遙か下方に行列が見えた。
それは軍隊の行進だったが、私からはありの行列に見えた。
「あちゃー。早くも国が動いたな。手負いのアイスドラゴンがこの辺りに隠れていると軍がつかんで、調査に来たな」
とおっさんが言った。
「おっさんて、妖精のわりに国の情勢に詳しくない?」
「わしらの仲間はふんだんにいてる。村にも城下にも王宮にもな。わしらの情報は宙駆ける風より早いで」
「そっか」
「国はアイスドラゴンを討伐するやろ。それを止めへんと、アイスドラゴンが死んだら死霊王の呪い、穢れがこの地に放たれる。ドラゴンも氷の核になって国全体を凍らせて皆、死に絶える」
「じゃあ、それを早く知らせなくちゃ!」
「それよりドラゴンを治療したってや。自力で動けるようになったらここから移動するやろうし、今すぐあんたの説得が国に通るとは思えんしな。どっちにしてもドラゴンが死んだら終わりや、時間はない」
「そっか、分かった、じゃ、ドラゴンのとこに急いでね」
「キューーーーー」
と子ドラゴンが鳴いて速度を増した。
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