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六章 時が過ぎても変わらないもの
みんなの勝利
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――ああ。そうか。
『みんな』という『みんな』には、ユリエナも入っていたのだ。
思えばユリエナが一番最初に、そして一番長く、ジンレイの夢を応援してくれていた。
「――――」
幼い頃のヒーローはご先祖様への憧れが生んだ子供特有の空想に過ぎない。
けれど、ユリエナの宿命を知って。本気で彼女を守りたいと思って。
本物の〝夢〟を見つけた。
――親父、ラクサス。俺、やっと解ったよ。
騎士とは何か。
それは――己が信念の下、持てる全てを賭けて主君を守る者のことだ。
長い時間をかけて、こんな遠い場所まで来て、ようやくその答えに辿り着いた。
負けられない。でもそれ以上に、負けたくない。
「愚直な小僧が」
ジンレイの斬撃を弾き返し、鋭い突きを繰り出すガリルフ。右手を戻すのは間に合わない。ジンレイは感覚が鈍くなった左手を半ば無理矢理動かし、腰の鞘を引き抜いて彼の剣を受け止めた。ご先祖様の相棒を長らく納めていたそれは、その男の斬撃を以ってしても砕けることはなかった。
ジンレイもまた彼の斬撃を躱しながら、懸命に反撃する。
しかし、敵はいつまでも打ち合ってくれるほど優しい相手ではなかった。
ガリルフはジンレイの上段からの攻撃を誘い、避けることの出来ないタイミングで左下から反撃を繰り出した。避ける機を失ったジンレイは左脇を庇い、防御の体勢を取る。
「――っ!」
間一髪で防ぐと、ジンレイは追撃を許さぬ素早さで身を引いた。
「もらった!」
ガリルフの口角が釣り上がる。
距離にして七歩。ジンレイが自ら開けた距離が、彼に決定打を与えてしまったようだ。
ガリルフは火炎魔法を発動。
相撃ち覚悟で踏み込むには遠く、火炎を回避するにはあまりに近すぎるこの距離で、防御手段のないジンレイは直撃をくらうしかない。
誘われたとはいえ、痛恨のミスだった。
せめて頭と手元が守れればと、剣を顔の前に構える。
その瞬間、ジンレイの剣に魔法陣が浮かび上がった。
「何っ!?」
それが放つ光はガリルフの火炎を弾き、ジンレイを包み込むようにして展開された。
「……リンファ?」
それは古城に乗り込む際に、リンファが掛けてくれた魔法。
魔法が使えず剣一本で戦うジンレイは魔法攻撃を防ぐことが出来ない。仲間と一緒なら充分それを補えるだろうが、単身の場合、魔法攻撃に対抗する手段は皆無だ。回避する他ない。
もし魔法攻撃をくらえば、いくらジンレイでも致命傷は免れない。故にリンファは、予めジンレイに対魔法防壁を施しておいてくれた。
『何のためにあたし達がいると思ってるの。ジンレイはジンレイに出来ることを、ただ全力でやればいいのよ』
ふと、彼女の言葉がよぎった。
「――ああ」
ジンレイはガリルフの懐へ駆け出す。
「やああああああああああああああああああっ!」
ジンレイが魔法攻撃を防ぐとは思ってもみなかったのだろう。僅かに動揺したガリルフの腹を狙って渾身の一撃を放つ。
「ぐぁあああっ――!」
鮮血を吹き出し、ガリルフは倒れ込んだ。
彼の装束がみるみる紅に染まっていく。鎧に守られて致命傷は免れたにしろ、先のような討ち合いを続けることは不可能だ。
よって勝負はついた。ジンレイの勝利だ。
「……ラクサスは、魔法に弱かったと、聞いていたのだがな」
「――――。俺もだよ。これは、俺の魔法じゃない」
ご先祖様は極力魔法に頼らず、己の剣一つで戦っていたのだと父から聞いたことがある。ジンレイは魔法を使えない人間であり、そこに違いはあるが、敵に伝えるには些細な違いでしかない。
ガリルフの魔法を防いだのはジンレイではない。
リンファのおかげ。そして、みんなのおかげだ。
アズミがいて、ワモルがいて、リンファがいて、キルヤがいて。
そしてユリエナがいて。
みんながジンレイを信じ、支え、守ってくれたからこそ勝てた。だからこれはみんなの勝利なのだ。
「ふっ」
灰汁が抜けたように力無く、しかしどこか清々しそうに、ガリルフは小さく笑った。
ジンレイは横たわるガリルフを一瞥し、場の闘志が穏やかに鎮火していくのを感じた。
そしてゆっくりと、ユリエナのいる奥の部屋へ歩き出す。
その直後、古城が大きく振動した。
「!?」
反射的にガリルフの方を振り返るが、彼が動いた様子はなく。原因は不明だが、生半可な揺れではない。
「な、何だっ……!?」
地震にも似た大きな振動が再度足元を襲った。
『みんな』という『みんな』には、ユリエナも入っていたのだ。
思えばユリエナが一番最初に、そして一番長く、ジンレイの夢を応援してくれていた。
「――――」
幼い頃のヒーローはご先祖様への憧れが生んだ子供特有の空想に過ぎない。
けれど、ユリエナの宿命を知って。本気で彼女を守りたいと思って。
本物の〝夢〟を見つけた。
――親父、ラクサス。俺、やっと解ったよ。
騎士とは何か。
それは――己が信念の下、持てる全てを賭けて主君を守る者のことだ。
長い時間をかけて、こんな遠い場所まで来て、ようやくその答えに辿り着いた。
負けられない。でもそれ以上に、負けたくない。
「愚直な小僧が」
ジンレイの斬撃を弾き返し、鋭い突きを繰り出すガリルフ。右手を戻すのは間に合わない。ジンレイは感覚が鈍くなった左手を半ば無理矢理動かし、腰の鞘を引き抜いて彼の剣を受け止めた。ご先祖様の相棒を長らく納めていたそれは、その男の斬撃を以ってしても砕けることはなかった。
ジンレイもまた彼の斬撃を躱しながら、懸命に反撃する。
しかし、敵はいつまでも打ち合ってくれるほど優しい相手ではなかった。
ガリルフはジンレイの上段からの攻撃を誘い、避けることの出来ないタイミングで左下から反撃を繰り出した。避ける機を失ったジンレイは左脇を庇い、防御の体勢を取る。
「――っ!」
間一髪で防ぐと、ジンレイは追撃を許さぬ素早さで身を引いた。
「もらった!」
ガリルフの口角が釣り上がる。
距離にして七歩。ジンレイが自ら開けた距離が、彼に決定打を与えてしまったようだ。
ガリルフは火炎魔法を発動。
相撃ち覚悟で踏み込むには遠く、火炎を回避するにはあまりに近すぎるこの距離で、防御手段のないジンレイは直撃をくらうしかない。
誘われたとはいえ、痛恨のミスだった。
せめて頭と手元が守れればと、剣を顔の前に構える。
その瞬間、ジンレイの剣に魔法陣が浮かび上がった。
「何っ!?」
それが放つ光はガリルフの火炎を弾き、ジンレイを包み込むようにして展開された。
「……リンファ?」
それは古城に乗り込む際に、リンファが掛けてくれた魔法。
魔法が使えず剣一本で戦うジンレイは魔法攻撃を防ぐことが出来ない。仲間と一緒なら充分それを補えるだろうが、単身の場合、魔法攻撃に対抗する手段は皆無だ。回避する他ない。
もし魔法攻撃をくらえば、いくらジンレイでも致命傷は免れない。故にリンファは、予めジンレイに対魔法防壁を施しておいてくれた。
『何のためにあたし達がいると思ってるの。ジンレイはジンレイに出来ることを、ただ全力でやればいいのよ』
ふと、彼女の言葉がよぎった。
「――ああ」
ジンレイはガリルフの懐へ駆け出す。
「やああああああああああああああああああっ!」
ジンレイが魔法攻撃を防ぐとは思ってもみなかったのだろう。僅かに動揺したガリルフの腹を狙って渾身の一撃を放つ。
「ぐぁあああっ――!」
鮮血を吹き出し、ガリルフは倒れ込んだ。
彼の装束がみるみる紅に染まっていく。鎧に守られて致命傷は免れたにしろ、先のような討ち合いを続けることは不可能だ。
よって勝負はついた。ジンレイの勝利だ。
「……ラクサスは、魔法に弱かったと、聞いていたのだがな」
「――――。俺もだよ。これは、俺の魔法じゃない」
ご先祖様は極力魔法に頼らず、己の剣一つで戦っていたのだと父から聞いたことがある。ジンレイは魔法を使えない人間であり、そこに違いはあるが、敵に伝えるには些細な違いでしかない。
ガリルフの魔法を防いだのはジンレイではない。
リンファのおかげ。そして、みんなのおかげだ。
アズミがいて、ワモルがいて、リンファがいて、キルヤがいて。
そしてユリエナがいて。
みんながジンレイを信じ、支え、守ってくれたからこそ勝てた。だからこれはみんなの勝利なのだ。
「ふっ」
灰汁が抜けたように力無く、しかしどこか清々しそうに、ガリルフは小さく笑った。
ジンレイは横たわるガリルフを一瞥し、場の闘志が穏やかに鎮火していくのを感じた。
そしてゆっくりと、ユリエナのいる奥の部屋へ歩き出す。
その直後、古城が大きく振動した。
「!?」
反射的にガリルフの方を振り返るが、彼が動いた様子はなく。原因は不明だが、生半可な揺れではない。
「な、何だっ……!?」
地震にも似た大きな振動が再度足元を襲った。
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