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六章 時が過ぎても変わらないもの
小魔で埋め尽くされた城
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「あの人置いてきちゃって大丈夫だったの?」
通路を駆け抜けながらユリエナが心配そうに言った。
「平気よ。簡単には外せないよう誰かが近付くと電気が走る仕掛けになってるから。小魔くらいなら簡単に追い払うわ。時間が経てば解けるように設定してあるし」
「リンファ……」
あの魔法に束縛されていた方がかえって安全だ。それを見込んだ上で彼女は反逆魔術士を置いてきた。冷たい言動の裏にちゃんと他人のことを考えているリンファの『らしさ』に触れて、ユリエナは目を細めた。
通路の隅には既に相当数の小魔が集まっていた。踏んで下手に刺激させるとまた集まってくるかもしれない。充分に注意しながら、ユリエナを助けるために進んできた道を戻っていく。
辿り着いた階段は手すりも壁も天井もあったものではなく、全て蠢く黒で埋め尽くされていた。予想していたとは言え、軽い吐き気を覚える。
「うへ……。ど、どうする? リンファ」
さすがのリンファも少し引いているようだ。
「階段を突破しようってのは賢くないわね」
どうしたものか唸り、彼女は親指で自分の背後にある窓を指して言った。
「というわけで、飛び降りましょう」
「飛び降りるのは賢いんですか!?」
「何よ。ビビってんの?」
「あの、リンファさん? ここ八階ですけど」
「だからどうしたの。飛ぶとなったら二階も八階も一緒よ」
「いやいや覚悟はだいぶ違うだろ!」
そうしていると、ぷきゅぷきゅという小魔の声が下の方から響いた。それは彼らの悲鳴であると理解すると同時に、彼らを踏み付けている正体に四人は目を疑った。
廃街で見た馬の悪魔と寸分違わぬ生物がそこにいた。その中級悪魔はゆっくりと階段を上ってくる。まだこちらの存在に気付いていないようだ。
階段を行くならあいつと戦うことは避けられない。そして一刻も早くアズミとワモルの許へ駆けつけたいなら、ここで戦っている場合ではないのも事実。どうやら選択肢はないようだ。
「やるしかないか」
ジンレイはユリエナを横抱きにして。
「きゃ、ジンレイ!?」
「しっかり掴まってろよ」
リンファがキルヤの襟首を掴み。
「え、あ、オイラまだ心の準備が……」
「つべこべ言わない。行くわよ。せーの!」
四人は八階という高さから潔く飛び降りた。
通路を駆け抜けながらユリエナが心配そうに言った。
「平気よ。簡単には外せないよう誰かが近付くと電気が走る仕掛けになってるから。小魔くらいなら簡単に追い払うわ。時間が経てば解けるように設定してあるし」
「リンファ……」
あの魔法に束縛されていた方がかえって安全だ。それを見込んだ上で彼女は反逆魔術士を置いてきた。冷たい言動の裏にちゃんと他人のことを考えているリンファの『らしさ』に触れて、ユリエナは目を細めた。
通路の隅には既に相当数の小魔が集まっていた。踏んで下手に刺激させるとまた集まってくるかもしれない。充分に注意しながら、ユリエナを助けるために進んできた道を戻っていく。
辿り着いた階段は手すりも壁も天井もあったものではなく、全て蠢く黒で埋め尽くされていた。予想していたとは言え、軽い吐き気を覚える。
「うへ……。ど、どうする? リンファ」
さすがのリンファも少し引いているようだ。
「階段を突破しようってのは賢くないわね」
どうしたものか唸り、彼女は親指で自分の背後にある窓を指して言った。
「というわけで、飛び降りましょう」
「飛び降りるのは賢いんですか!?」
「何よ。ビビってんの?」
「あの、リンファさん? ここ八階ですけど」
「だからどうしたの。飛ぶとなったら二階も八階も一緒よ」
「いやいや覚悟はだいぶ違うだろ!」
そうしていると、ぷきゅぷきゅという小魔の声が下の方から響いた。それは彼らの悲鳴であると理解すると同時に、彼らを踏み付けている正体に四人は目を疑った。
廃街で見た馬の悪魔と寸分違わぬ生物がそこにいた。その中級悪魔はゆっくりと階段を上ってくる。まだこちらの存在に気付いていないようだ。
階段を行くならあいつと戦うことは避けられない。そして一刻も早くアズミとワモルの許へ駆けつけたいなら、ここで戦っている場合ではないのも事実。どうやら選択肢はないようだ。
「やるしかないか」
ジンレイはユリエナを横抱きにして。
「きゃ、ジンレイ!?」
「しっかり掴まってろよ」
リンファがキルヤの襟首を掴み。
「え、あ、オイラまだ心の準備が……」
「つべこべ言わない。行くわよ。せーの!」
四人は八階という高さから潔く飛び降りた。
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