妄想日記6<<EVOLUTION>>

YAMATO

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Chapter7(女優編)

Chapter7-③【Flick of the Wrist】前編

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「乾杯。」
紙コップに注がれたオリーブオイルを傾ける。
もうオリーブオイルを飲む事に慣れていた。
始めの頃の様に割る必要はない。
月夜の下でディナーが始まる。
ウツボは思いの外、旨かった。
小骨が多く難儀したが、それを上回る肉の美味さだ。
オリーブオイルを浸したパンを頬張る。
「ウニを乗せて食べると、更に美味しいです。」
テツヤがワタルの持つパンにウニを乗せてくれた。
空腹が満たされ、海に視線を向ける。
海面に月が揺れていた。
 
テツヤの後ろでラバーマンが待機していた。
給仕するばかりで何も食べていない。
「山下さんは食べないの?」
「彼がここで口にするのはオリーブオイルだけです。
ここに来た目的は彼のデトックスに付き合う為です。」
聞き慣れない言葉に首を傾げる。
「一定の行動を取る事で体内の毒素を抜くのです。
その為、食事は一切しません。
体内から不要な物を排出し、美しい物だけが残りのです。
彼の筋肉が人一倍美しいのはこのデトックスのお陰です。」
分かる様で分からない説明だ。
「でもテツヤの筋肉も充分美しいけど。」
これは決してお世辞ではない。
「彼のお陰で、ジムにいる輩に比べればそうかもしれません。
しかしこの神々しい美しさの前では塵と変わりません。
彼の美に対する執念は真似出来ません。
今も50センチのディルドを入れて、体内を洗浄しています。」
「今も!ごじゅう!」
ワタルは改めてラバーマンを見る。
饒舌だった山下が一言も発しない。
『これも一定の行動なのか?』
月夜に照らされたラバーに股間が疼いた。
 
「ワタルさんも挑戦してみますか?
神々しい美を手に入れる為に。」
その問に思い切り首を振る。
「そうでしょうね。
我々には無理です。
一週間、食事を抜くなんて、想像するだけでもしんどいです。
加えてラバースーツを着て、炎天下を過ごす。
彼は僕と知り合うずっと前から、このオリーブオイルのデトックスを年に一度行って
いたのです。
並大抵の精神力ではありません。
出来る事と言えば精々、彼の排出したオイルを美味しく頂く事位しか出来ません。」
「えっ?」
驚きが声に出た。
「冗談です。
ワタルさんには飲ませませんから、安心して。
僕の排出以外を飲むのは耐え切れません。
それが例えタケオさんのでも。」
微笑むテツヤが訝しく見えた。
 
「ワタルさんも僕の事を大切に思ってくれますか?」
「もっ、勿論…。」
唐突な質問に戸惑う。
「大切にするよ。」
口に出すと照れてしまう。
「では僕だけのヒーローになってくれますか?」
他愛もない願いに大きく頷く。
「テツヤだけのヒーローになるよ。」
抽象的な表現だと思い、大きく胸を張る。
「僕の理想のヒーローには三つの条件があります。
二つ目を叶える為にこれが必要です。
このプレゼントが無駄にならずに済みました。」
テツヤの掌の上でリングが輝く。
どう見てもコックリングだ。
「さあ、付けてあげます。
こっちに来て。」
月光に導かれ、ワタルは立ち上がった。
 
 
(つづく)
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