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寿里~kotori ~

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人形のからくり

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白珠旅人……14歳、K成学園中等部2年では久世に次ぐ成績を誇る優等生であり、バンド薬指のベース担当でもある。

そして、現在進行形でヤバイ状態になっている。

守り神の佳代さんがプンプンして叱っているが返事ができない。

「もう!タビちゃん!知らない人から貰った和三盆を食べて生き人形にされるなんてバカよ!」

そうなのだ。

根津にある実家近くを歩いていたら知らない男から和三盆を貰って迷わず食べたら人形にされた。

佳代神が守ってくれたが、知らせを聞いて駆けつけた久世が呆れたように息を吐いた。

「これ、人形使いの悪戯だから3日は白珠は人形のまんまだぞ」

人形使いは好みの人間を見つけると生きたまま人形にする化け物で佳代神がいなければ永遠に戻れないところだった。

つまり白珠は数日間、喋れず、無表情、無反応の人形になるのだ。

先程から久世と佳代神にバカを年末ジャンボ宝くじの1等賞バリに言われているが本当にバカなので仕方がない。

思考できるが言い返せず、動けないのだ。

久世は数日間は家でおとなしくしてろ、と言うが白珠としては絶対にイヤだ。

家には設楽玄という万年発情鬼が待っている。

白珠は設楽を愛しているが、この状況で設楽がどう反応するか分かりきっている。

発情鬼に念願のダッチワイフをプレゼントするのと同じである。

反応できない状態で設楽に一方的にセックスされるのは白珠としてもプライドが許さない。

数日間、どこかに隠れてやり過ごす。

そう考えても人形なので意思が伝えられない。

しかし、久世は白珠旅人という少年のプライドの高さを知っているので提案してきた。

「設楽にダッチワイフにされるのがイヤなら俺の母方の祖父母……十六夜の実家に預ける」

こうして白珠は数日間は人形として久世の祖父母の家に身を寄せた。

久世家には隠し通路が存在する。

それは、シュラさんが治める異世界……久世音の母方祖父母達が暮らす世界に行ける秘密通路だ。

本来、この通路を使える権限は久世家当主である久世千早にしかない。

しかし、千早もちょうど帰国中で化け物の父のもとに帰省したかったので好都合だった。

久世音の父……久世千早は化け物の子である。

実の親は人間だが厄介な遺伝で化け物になったのだ。

そのせいで人間の親との確執があったが現在は和解した。

そして、久世千早は化け物の父親が大好きなファザコンでもある。

久世音の化け物としての父方の祖父の名前は胡条(こじょう)といって女好きな軟派親父である。

この軟派親父の遺伝が久世音の父の千早に伝わり、久世家は化け物家族になっている。

「この父方の祖父ちゃんが十六夜の母親に惚れてた。でも、想いは届かず、十六夜の姉を嫁にした」

久世音の説明に佳代神がクスクス笑っている。

「なんだか、昼ドラみたいな関係ね!タビちゃんのお陰で楽しめるわ」

旅人は絶賛人形なので久世音の父の千早が抱えている。

そして、恐ろしいことをぶちかましてきた。

「胡条の親父は美人が大好きだ。旅人君は美しいから親父にレイプされるかもだけど耐えてね」

えっ?玄から逃れる先にレイプ魔がいるの?

白珠旅人は人形のまま旋律したが、久世千早は慰めるように微笑んでくる。

「親父は優しいからセックスもうまいよ。だから、気にしないで」

「父さん!まさか胡条の祖父ちゃんとヤったの?」

久世音の追及に父の千早は曖昧に笑った。

こんな昼ドラにマヨネーズかけてバター足して、豚骨スープ状態の久世音の母方祖父母の屋敷に旅人は預けられるのだ。

佳代神がいるが彼女が胡条という久世のエロエロ祖父になびいたら旅人は色々と終わる。

おとなしく玄のダッチワイフの方が安全かと思っていたら視界が開けてきた。

大きな宮殿のような場所に出るとシュラさんが迎えてくれた。

「千早!音!話は聞いてる!旅人君の身の安全は任せろ!人形師を捕まえた!アマネが切り裂きジャックみたく八つ裂きにして吊るしたから時期に人形から人に戻る!」

ここの国は異世界なので下手に化け物が人を襲うと厳罰なのだ。

シュラさんの秘書官のアマネが得意の剣術で人形師の供述を聴かずに切り裂きジャックしたので旅人は助かる。

和三盆の効果が切れれば人形から人間に戻れるので久世音は安堵していた。

そうこうしているとアマネが何やら小瓶を持って旅人に近づいてきた。

「この薬を飲め!速攻で人に戻れる」

無理やり苦い液体を飲まされて旅人は咳き込んだが人間に戻れた。

ホッとしたがシュラさんは旅人に厳しく言い含めた。

「知らない人から貰った和三盆は食べるな」

政務があるシュラさんと秘書官のアマネはせっかく来たなら久世親子に親戚に会っていけと言っている。

「いまは十六夜の実家は焼けてて再建してる。仮設屋敷にみんないるから」

仮設住宅でなく仮設屋敷である。

久世家が異世界でも凄まじい権力者であると証明している。

シュラさんに案内されて宮殿の奥に進むと立派なお屋敷があった。

その入り口に小柄な男性がいたのである。

久世は彼を見るなり走りだして抱きついた。

「祖父ちゃん!」

祖父と言うには若いが男性は音を抱きしめて訊ねていた。

「十六夜は元気か?」

「うん!豆柴を愛玩してる!!」

「そうか、それでいい。元の屋敷を漆黒のドラゴンで燃やしてお前の祖母に殺されかけた」

どうやら、久世音の祖父の妻は恐妻らしい。

旅人が挨拶しようとしたら屋敷から男前な雰囲気の伊達男が出てきた。

彼を見ると久世音の父の千早が笑顔で抱きついている。

「親父!!会いたかった!!今日は一緒に寝よう!!」

ファザコンがドを越している久世の父の千早の発言に白珠旅人は佳代神に言った。

「人に戻れたし帰ろう」

なんか、無性に玄に会いたくなった。

アマネの案内で白珠旅人と佳代神は先に人の世界に帰っていった。

その姿を見守っていたシュラさんは久世音を叱りつけた。

「人形師なんて雑魚に友達を取られるな。白珠君は危険な状態だった」

心臓を操られたら植物人間になっていた。

しかし、白珠は無意識に人形師から身を守っていた。

「和三盆……食べないと死んでた」

和三盆を食べたことで白珠は完全に人形師に取り込まれず佳代神が助けた。

あの人形師の化け物は単に美しい白珠の追っかけである。

和三盆は白珠を少しだけ人形にする軽度の薬品だった。

しかし、あの和三盆……結構厄介な代物なのだ。

「あれは姫の体を作る薬だ。有効なら彼は妊娠する」

シュラさんが頭を抱えると戻ってきた秘書官アマネが報告した。

「あの旅人という子供の家は裏で危険な取り引きをした。佳代神の加護がないと店が衰退する恐怖から息子を人形師に売り飛ばした」

人形に戻すための薬品で姫の体にする効果は消えたが、簡単に欲を持つ人が異世界に関わるのは由々しきことだ。

「面倒なことになったな」

頭をかくシュラさんに対してアマネがニヤリと笑って告げたのだ。

「うちの旦那と部下に襲撃させた。白珠および設楽の一族は絶えました。旅人、玄、佳代神を除いて。あとは旦那たちが面倒みます」

この日を境に白珠旅人と設楽玄の家族は葬られた。

しかし、アマネの旦那の手配で店は通常営業である。

久世音としては友達の家族を奪ってしまった悲しい出来事だ。

だが、旅人と玄には親が消えたことさえ気付かない。

気付いてもどうでもいい。

旅人と玄と佳代神……この3人の絆があれば白珠庵は安泰だとアマネの旦那のリヨは報告している。

end









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