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寿里~kotori ~

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化け物との契約

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加藤凛は久々に十六夜とデートをした。

場所は六義園である。

なんで、デートスポットが凛が暮らす北区滝野川近辺が多いのかはさておき、久世に教えられた件で凛は十六夜に確認したいことがあった。

少し前に友達である白珠と設楽の実家から人の気配が消えた。

正確には白珠旅人と設楽玄を除いた人間が忽然と姿を消したのだ。

佳代神は相変わらず、白珠の守り神だが、なんとなく異様である。

店には見なれぬ男性職人が働き、何事もなく繁盛している。

当の白珠も設楽も佳代神も動揺せず普段どおり。

凛がお使いで白珠庵に行っときには様子が変わっていた。

急いで久世に問いただすと久世は凛を個室に呼び出して説明したのだ。

「人間が私欲で化け物を利用するのは不都合。だから、消えたんだよ」

白珠と設楽の親は老舗の衰退を恐れるあまり、化け物の力を利用してしまった。

それは、化け物側を統治する久世のベビーシッターであり王様であるシュラさんにも由々しき事態らしい。

本来なら力を貸した化け物のみを処罰だが、利益優先で白珠を人身御供のようにした白珠家と設楽家に対して佳代神がぶちギレ。

佳代神が手を下すことも可能だが、シュラさんの秘書官アマネが代わって制裁したのだ。

「アマネが佳代神より迅速に白珠と設楽の家族を抹殺した」

さすがは元スパイだと久世は苦笑いする。

アマネとしては白珠と設楽の親代わりである佳代神が直接手を下す事態は避けたかった。

白珠がかわいそうというより、家神が人間の抹殺に絡むと面倒らしい。

「佳代神はシュラさんの支配下じゃないんだ。仮にも家神がキレると駆除対象にされる。その場合、俺が白珠の守り神を消すことになる」

久世がどれだけ鬼畜でも大切な友達の守り神を消すのは酷である。

アマネはそこまで計算して独断で白珠庵の大人を葬った。

シュラさんもそれを咎めず、むしろホッとしていた。

「そういう訳で白珠庵はアマネの旦那が責任持って経営してる。リヨはアマネと違い優しいから安心しろ」

ここまでが久世からの情報である。

化け物と人間が私利私欲で協力すると粛清される。

では、凛は粛清対象ではないのか?

成績アップに釣られて十六夜と恋人になった。

十六夜に私欲はなくても凛には欲が発生している。

十六夜本人に訊ねるのは非常に気まずいが、質問してみたのだ。

すると十六夜は特に動じずに教えてくれた。

「凛は少し特殊だよ。僕と凛は直接契約してない。凛が契約してるのは音だ。それに凛の成績が向上したのは凛の実力。音は久世家の者として本当に私欲に負ける人とは契約しないから」

久世音は十六夜の監視を任されていたので、適当な玩具が欲しかった。

病的な十六夜を和ませる玩具だ。

それに該当したのが凛だったのである。

「確かに久世なら俺をとっくに消すこともできた……化け物の契約って複雑ですね」

「そう。だから、凛は堂々と僕とラブラブしてればいいんだ。音にとってそれが目的だから」

六義園の地味に広い敷地を歩きながら凛はポツリと言った。

「別に久世の目的なんて関係ない。俺は十六夜さんが好きです。最初がムリヤリでも今は大好き」

「ありがとう。咲さんも言ってた。最初はムリにヤられたけど今は凪史が大好きって」

それ、例えとして聞きたくなかった。

咲さんとは十六夜の世話をする久世家の遠縁、近衛家の青年で凪史は咲を溺愛する近衛家当主である。

六義園に飽きてきた凛と十六夜は場所を変えて、根津に行くことにした。

白珠と設楽の様子を見るためだ。

根津駅から白珠庵に到着すると意外なことに久世が来ていた。

バンドの集まりでもあったのかと凛が心配すると久世は息を吐いて説明した。

「斗真も来てる。今日はリヨが急に新作和菓子の試食会をするから来てくれってさ。いま、お前らに連絡するとこだった」

「そうなんだ!よかった~!ところで白珠と設楽は?」

凛が訊ねると店から長身で黒髪、細身の若い男性が出てきた。 

彼がアマネさんの旦那であるリヨさんだと久世が紹介する。

鼻筋が綺麗な美男である。

凛が挨拶していると十六夜が微笑んでリヨに言った。

「お久しぶりです。リヨ叔父様!職人姿が素敵ですね」

忘れてたが、十六夜の母がこのリヨさんの兄である。

十六夜にとってはバリバリの血縁者だ。

凛がお辞儀をするとリヨさんは優しそうな笑顔で言ってくれた。

「君が凛君だね。十六夜の叔父のリヨです。スパイでシュラ殿の奥方の監視をしてたらミスして、アマネに罵られてメンタルがボロボロです。少し別居しろとシュラ殿に勧められ、こうして旅人君と設楽君と佳代殿の元に」

アマネ……まだ、怒ってるかな……とリヨさん、メンタルボロボロにされたわりに嫁が恋しいらしい。

話はそれたが白珠と設楽は仲良く寝てるので佳代神が叩き起こしている。

斗真は嫁が恋しいリヨに妖しい薬を渡している。

「俺の母ちゃんが父ちゃんとベッドで使う薬だから安全!」

斗真の母ちゃんは現在はイギリスのキングスクロス駅の9と3/4番線に行ってるらしい。
何しに向かったかは斗真も知らない。

いつもの賑やかさに凛が微笑むと久世が訊いてきた。

「加藤は俺が勝手な契約して怒ってないのか?」

珍しく真剣な表情の久世に凛は答えた。

「久世が勝手なのは普段と同じだ」

でも、その勝手さの裏で彼がどれだけ苦労して、大切な人間を守っているかも知っている。

それが分かれば何とも思わない。

そう凛が笑うと久世は珍しく笑みを見せた。

ようやく白珠と設楽が起きてきたので和菓子の試食会が行われる。

リヨさんが考案した和風パフェ「藤の蜜」は涼やかなスイーツだった。

文句なく美味しいがパフェのネーミングの由来がヤバい。

リヨさんとアマネさんは学校の先輩後輩でアマネさんの方が年下。

「このパフェは私が成人してアマネが未成年の時、初めて関係を持った頃を思い出した作品です!幼いアマネは生意気だけど可愛かった!!いまもキュンです!」

由来が生々しい新作和菓子である。

佳代神はクスクス笑いながら「リヨさん、うちは白珠庵なの。アマネさん色に染めないでね」と釘を刺している。

リヨさん……シュラさんに短期別居を勧められるレベルにアマネさんに罵られ、奴隷にされてるのにアマネさん大好きだな。

白珠と設楽はリヨさんの思い出スイーツを喜んで食べている。

ともかく、リヨさんの登場で白珠庵は新たな姿に変化したのだ。

設楽はリヨさんの気概を尊敬し、兄貴と慕って意気投合したという。

リヨさんは末っ子なので嬉しいらしい。

ちなみにシュラさんの秘書官であるアマネは自分が罵ったくせにリヨさんがいなくて寂しがる。

「シュラ!今度の音の世話!俺も付いてく!」

「わかった。アマネに任せるからリヨと仲直りしてくれ」

「ハァ!リヨなんてどうでもいい!あんな、ヘタレ旦那!!」

面倒な夫婦だな……シュラさんは書類を読みながら苦笑いしていた。

end




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