この醜悪な世界に咲いた、一筋の光を。

いじめ

　視界が狭窄してきた。視覚も聴覚も、痛覚すらも遮断されていく。
　でも不思議と、恐怖はなかった。
　僕はこのたった15年の人生で、誰よりも満足できたから。
　僕は願う。　
　人生最後の願いを。
　これからも“光”が、“光”として皆んなを照らせますように、と—
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　痛い。
　痛い。
　涙が出てくる。
　僕がいったい何をしたと言うんだ。
　そんな言葉は当然口に出せるはずもなく、心の中に鉛のように積み重なる。
　朝のホームルームが始まる15分前、まだ先生が教室に来ていない時間、この教室の後ろでは殴る蹴るのいじめが複数人の男の子により執行されていた。
　骨まで響く強烈な衝撃が突然止んだと思ったら、憎たらしい低い声が、僕を見下すように降りかかってきた。
「…なんだぁ、その反抗的な目は」
「…」
「何で被害者面してんだよ。俺らはなぁ、お前に罪があるから、“仕方なく”制裁を下してやってんだぞ」
　にやりと、1人の男が笑う。
「僕は何も…罪なんて…」
「はぁぁ⁉︎お前、自分の罪も覚えてねぇのかよ」
　数人がケラケラと笑う。
　すると、一際ガタイのでかい男が、気持ち悪い、まるで赤子をあやすかのような声で話してきた。
「はぁいよちよち!君は自分のお名前を言えるのかなぁ」
　心底寒気がした。構わず男は続ける。
「あれぇ、自分のお名前も言えないのかな？？」
「…角田優晴かどたゆうせい。」
「そーうでちゅかそうでちゅか!バカみたいな名前でちゅね！」
　もう、コイツに言語は通じないと思ったほうがいいのかもしれない。
「じゃあ次は、君が犯してしまった絶対に許されない罪とは、何だったかな？？」
「…だ、だから僕は何も罪なんて犯してないって」
「ぶぶ～!!!!不正解だよー!親切で優しいお兄さんが教えてあげるね!君はぁ!この世に存在してることが罪なんですぅ～!!!!」
　そいつが意味不明なことを言うと、男たちは大笑いし、笑いながら殴ってきた。
　そんな理不尽さに僕は思わず言葉を零してしまった。
「そんな…理由で…僕を…」
　次の瞬間、ガタイのいい男の声のトーンに真っ黒な怒りが混ざった。思わず身震いする。
「チッ。お前、そろそろ黙れよ。虫以下の分際なのに最近よく俺に反抗してくるようになったよなぁ。まぁ、お前も成長してるってことか。そうかそうか、それなら褒美をやらねぇとな」
「褒美…？」
「あぁ。泣いて喜べ、今日はたんまりとお仕置きしてやるよ!愛の鞭のフルコースだ‼︎」
　そう言って力いっぱい殴ろうとする男。
（あぁ、こいつらホンットに体の髄までクズなんだな）
と心の中で呟いて、目を閉じた。