この醜悪な世界に咲いた、一筋の光を。

不登校の少女

　が、しかし、いつまで経ってもそいつの拳が俺に届くことはなかった。
　恐る恐る目を開けると…
　知らない少女が僕に背を向け、男たちと対峙するように立っていた。
　その状況にただただ困惑していると、男が少女に言った。
「誰だ、お前」
「理由もなく人をいたぶるような輩に名乗る名はありません」
「理由ならさっき言っただろ。コイツがこの世に存在するから…」
「そんなの理由に入るもんですか」
　彼女を、どこかで見たことがあるような気がする。
　
　確か昨年のことだった。
　ある日の朝礼で、長すぎる校長の話を立って聞かされていた時、彼女は突然倒れたのだ。
　少し、その場が騒然としたのを覚えている。
　大方、熱中症にでもなって倒れたのだろう、可哀想に。なんて思った気がする。

「何で別のクラスのやつが俺の邪魔をするんだ」
「別のクラスではありません。私はれっきとしたこのクラスの9番、杉野結華すぎのゆいかです」
　確かに進級してからずっと9番の席は空いていた。不登校かと思っていたのに、何故こんなタイミングで…
「…クソが」
　流石に女を殴るのは気が引けたのか男は虫の居所が悪そうに教室から出て行った。
　それを見て、少女が話しかけてくる。
「大丈夫ですか？」
「…あ…ぁ」
「…？」
　心配そうな少女が顔を覗き込んでくる。
　が、僕は声にならない声しか出なかった。
　その時、朝のホームルームが始まるチャイムが鳴り、何も知らない担任が前のドアから入ってきた。