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杉野結華
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しばらくの日数が経過して、俺は退院した。
僕は、家のベッドに寝転がりながら、坂田さんに言われたことを思い出す。
まだ緘黙はかけらも治ってないが、とりあえず日常生活ができる程度には精神的に落ち着いて、神経も安定してきたそうだ。
だが、あのクラスにまた戻らないといけないのかという思いが、俺の精神を再び不安定にさせたのは言うまでもないだろう。
ただ、僕は入院生活中に1つだけ決意を固めていることがあった。
それは……あの僕を救ってくれた少女、杉野さんにお礼を言うこと。そして、いじめに巻き込んでしまったことに対する謝罪。
ごめんなさいと、ありがとうを伝える。
いくら緘黙という病を患っていたとしても、これくらいはしなければ、人として終わってしまう。
「嫌われてなければいいな……」
そんなことを思いながら、僕の意識はまどろみへと消えていった……
次の日。
……すなわち、僕が久しぶりに学校に行く日だ。
少しだけ、緊張している。いや、実際はとてつもなく緊張しているのかもしれない。
理由は、彼女とちゃんと話せるかどうか。
言葉だけ見ると幼稚だが、僕にとっては至難の業だった。
……いや、話す必要はない。あくまでお礼と謝罪。これさえ伝えればいいのだ。
そんなことを心に留めながら、僕は家のドアを開けた。
偶然か、それとも運命の悪戯か。僕は登校中に彼女とバッタリ出くわした。
どう話しかけるか、少し迷っていたところ、彼女から話しかけてくれた。
「おはよ!」
「お、おはよ……」
伝えるなら、今しかない。
今なら邪魔する奴らはいない。
一度、深呼吸をする。
目は、見ない。
「……あの時、助けてくれてありがとうございました」
彼女は、少しだけ驚いた表情を浮かべた後、微笑んだ。
「いいよ、全然。あと、敬語はいらないよ。同い年なんだし」
坂田さんと同じくらい……いや、それ以上に話しやすい人だった。
「……わかった。僕は角田優晴」
「私、杉野結華。結華って呼んで!」
それは流石に、距離感が近すぎではないだろうか。出会ったその日から名前呼びとは…
僕がそんなことを思った瞬間だった。彼女が、膝に手をつき、荒く息をしているのを見たのは。
さっきまで元気に話していた彼女が、とても体調が悪そうにしている。
「だ、大丈夫!?」
一瞬驚いて固まってしまったが、すぐに近くにあるベンチまで誘導して、寝かせてやる。
彼女の顔は真っ青になっていて、いかにもしんどそうだ。
汗がすごかったので見えるところだけでも持っていたタオルで拭いてやった。
この症状はよく知っていた。なんなら、以前に僕がなったばかりだ。
パニック障害。
何かしらの要因で、自律神経が乱れている。
彼女が今見ている光景、感じている感覚はよくわかる。
おそらく、意識ははっきりあるが、視覚と聴覚が遮断されている。
つまり、視界がどんどん黒に染まり、耳は心音しか捉えることができない。
そして、感じるのは……不安。
僕ももう何度も経験しているが、それでも慣れないもの。こうなった時は、いつも名状し難い不安に駆られていた。
こうやって不安に感じている時、どうやったら安心するんだっけ…
僕は、家のベッドに寝転がりながら、坂田さんに言われたことを思い出す。
まだ緘黙はかけらも治ってないが、とりあえず日常生活ができる程度には精神的に落ち着いて、神経も安定してきたそうだ。
だが、あのクラスにまた戻らないといけないのかという思いが、俺の精神を再び不安定にさせたのは言うまでもないだろう。
ただ、僕は入院生活中に1つだけ決意を固めていることがあった。
それは……あの僕を救ってくれた少女、杉野さんにお礼を言うこと。そして、いじめに巻き込んでしまったことに対する謝罪。
ごめんなさいと、ありがとうを伝える。
いくら緘黙という病を患っていたとしても、これくらいはしなければ、人として終わってしまう。
「嫌われてなければいいな……」
そんなことを思いながら、僕の意識はまどろみへと消えていった……
次の日。
……すなわち、僕が久しぶりに学校に行く日だ。
少しだけ、緊張している。いや、実際はとてつもなく緊張しているのかもしれない。
理由は、彼女とちゃんと話せるかどうか。
言葉だけ見ると幼稚だが、僕にとっては至難の業だった。
……いや、話す必要はない。あくまでお礼と謝罪。これさえ伝えればいいのだ。
そんなことを心に留めながら、僕は家のドアを開けた。
偶然か、それとも運命の悪戯か。僕は登校中に彼女とバッタリ出くわした。
どう話しかけるか、少し迷っていたところ、彼女から話しかけてくれた。
「おはよ!」
「お、おはよ……」
伝えるなら、今しかない。
今なら邪魔する奴らはいない。
一度、深呼吸をする。
目は、見ない。
「……あの時、助けてくれてありがとうございました」
彼女は、少しだけ驚いた表情を浮かべた後、微笑んだ。
「いいよ、全然。あと、敬語はいらないよ。同い年なんだし」
坂田さんと同じくらい……いや、それ以上に話しやすい人だった。
「……わかった。僕は角田優晴」
「私、杉野結華。結華って呼んで!」
それは流石に、距離感が近すぎではないだろうか。出会ったその日から名前呼びとは…
僕がそんなことを思った瞬間だった。彼女が、膝に手をつき、荒く息をしているのを見たのは。
さっきまで元気に話していた彼女が、とても体調が悪そうにしている。
「だ、大丈夫!?」
一瞬驚いて固まってしまったが、すぐに近くにあるベンチまで誘導して、寝かせてやる。
彼女の顔は真っ青になっていて、いかにもしんどそうだ。
汗がすごかったので見えるところだけでも持っていたタオルで拭いてやった。
この症状はよく知っていた。なんなら、以前に僕がなったばかりだ。
パニック障害。
何かしらの要因で、自律神経が乱れている。
彼女が今見ている光景、感じている感覚はよくわかる。
おそらく、意識ははっきりあるが、視覚と聴覚が遮断されている。
つまり、視界がどんどん黒に染まり、耳は心音しか捉えることができない。
そして、感じるのは……不安。
僕ももう何度も経験しているが、それでも慣れないもの。こうなった時は、いつも名状し難い不安に駆られていた。
こうやって不安に感じている時、どうやったら安心するんだっけ…
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