ソッチドッチ ~魔王と聖女の入れかわり! 入れかわれば、本当の姿が見えてくる?~

櫻恭史郎

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第181話 ブールジュの悪口講座

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 ブールジュの部屋で飲みはじめると、アミアンとダラム卿がまた勝負をはじめた。

 どちらから始めたのか、フランスがブールジュとイギリスと話している間に、すっかり勝負にのめりこんでいるらしい。

 ブールジュがそれを見て言った。

「あ~あ、あれじゃダラム卿、つぶされちゃうんじゃない?」

 フランスはイギリスに向かって聞いた。

「ダラム卿は、お酒は強いの?」

「まあ、強いほうだろうが、アミアンには勝てないだろうな」

 それが聞こえていたのか、ダラム卿がこちらに視線を向けて言った。

「これは、単に飲みの勝負ではありません。わたしにも勝ち目はあります」

 どうやらゲームをして負けた方が飲む、という勝負らしい。
 馬車でのダラム卿の負けっぷりを思い出す。

 やめといたほうがいいと思うけど……。

 だが、すっかりダラム卿は一生懸命な様子だった。アミアンといるときは、なんだか幼い顔つきになる。

 フランスは、微笑ましくて笑った。

 ブールジュが、高級なぶどう酒を、勢いよく飲んでから言う。

「陛下、さっきお聞きした話で、ひとつ気になるんですけど」

「なんだ」

「隣国のお姫様ってどんな人だったんですか?」

 ブールジュ!
 よくそんなこと聞けるわね!

 フランスの顔を見て、ブールジュが、なによ、という仕草をしてフランスに向かって言った。

「いや、だってほら、男ってあんまりやばいタイプの女の見分けつかないじゃない。もしかして、裏切る前から、そうとうやばいタイプの女だったんじゃないかなって」

 うーん……、なるほど。

 フランスはイギリスを見た。

 お酒を飲んで、ゆるんだ空気の中で、ブールジュが赤い竜の呪いについて聞きたがったので、フランスはイギリスに確認してから、帝国で聞いた話をざっくりとブールジュにした。

 イギリスと婚約関係にあった隣国のお姫様と、イギリスの弟が結託して裏切り、イギリスを赤い竜の討伐に向かわせた話をしたが、ブールジュはこれに相当腹を立てていた。

 イギリスは表情を変えずに、気を悪くするでもなく、考えるようにしてから言った。

「彼女は、かなり大人しいタイプだったと思う。儚げで、誰かが守らなければならないような雰囲気があった。言葉を荒げたりするようなこともなく、何かあってもじっと耐えているような……、なんだ」

 ブールジュが、途中から目もあてられないような、ひどい顔をしはじめて、イギリスが言葉をとめた。

 ブールジュ……、よく、皇帝陛下に向かって、その顔できるわね。

 ちょっと、尊敬するわ。
 かっこいいわよ、その変顔。

 ブールジュが、片手でぶどう酒の瓶をにぎりしめて言った。

「陛下、それは間違いなくクソ女です」

「くそ……?」

「隣国の姫君は、陛下にこんなことを言いませんでしたか?」

 ブールジュが、表情をはかなげにかえて、まるでお姫様みたいな仕草で言った。
 声の調子まで、姫っぽい。

「こうです。『あなただけが、たよりです』」

「……」

「それか、こんな感じ。『あなたの前でだけ、わたしらしくいられる気がします』」

 ブールジュが、うさいくらいまばたきした。

 フランスは吹き出しそうになりながら、イギリスを見た。
 イギリスは、ちょっとの間、目をさまよわせてから答えた。

「……言ってた」

「ほら、やっぱりー‼」

 ブールジュがどすの聞いた声でそう叫び、イギリスを指さして勢いよく立ち上がった。

 ちょっと、ブールジュ、やめて! 面白すぎる!
 皇帝陛下を指さして、ほれみたことか、みたいな顔するのやめて。

 フランスは、笑いすぎて、長椅子の上に倒れ込むみたいにして息も絶え絶えに言った。

「ブールジュ、それ、絶対偏見だって! 面白いけど」

「偏見じゃないって! ぜったいこういうタイプの女って、どこでだって同じようにするんだから! 陛下の弟にも同じこと言ってるわよ!」

 ブールジュの、根拠のない自信に満ちた様子にさらに笑ってしまう。

 ブールジュが、やれやれといった仕草をして、座ってから言った。

「陛下は、その隣国のお姫様に対する悪口とかないんですか?」

「悪口?」

 イギリスはしばらく考えてから言った。

「思いつかない」

「ええっ! そんな精神的に不衛生なことあります? 悪口は心の栄養ですよ」

 フランスはまた笑った。

 絶対、ちがうわよ。

 ブールジュが良いこと思いついた、みたいな顔で言う。

「あ、じゃあ、今、言ってみましょ! どぎつい一発お願いしますよ、陛下!」

 ええ、そんなの言えるのかしら。

 今まで、散々イギリスにむかつくことを言われてきたが、ほとんどがお上品な皮肉だった。

 イギリスがしばらく考えてから言った。

「……浮気女」

 それを聞いて、一度座ったブールジュが怒れる顔で、ふたたび立ち上がった。

「陛下は、悪口のなんたるかを、何もわかっていませんね」

「悪口のなんたるか?」

 フランスはたまらず、さらに笑った。

 なんたるか、とかある?
 悪口に?

 ブールジュが真顔で聞いた。

「陛下、隣国のお姫様は、直毛でしたか? それとも巻き毛でしたか?」

 なんなの、その質問……。

 イギリスも戸惑った様子で答えていた。

「え……、直毛だ」

 ブールジュが息を吸い込み、大きな声で言った。

「直毛ピンピン女!」

 フランスは、意味の分からない悪口に、口をつけていた飲み物をこぼした。
 咳き込む。

 それ、悪口みたいに言っているけど、悪口じゃなくない?

 ブールジュが、さらに真面目な顔で言う。

「陛下、もっと情報下さい。どんな女だったか」

「……白い服が多かった」

「幽霊か何かかな⁉ 白い服ばっかきた直毛ピンピン女!」

「うるさそうな耳飾りをしていた」

「幽霊みたいに白っぽい服装ばっかりの、耳飾りだけはうるさい、直毛女!」

「掃除できそうなくらい、裾が長かった」

「白服耳チャラ直モップ女‼」

 フランスも笑ったが、イギリスも笑った。

 最後の、なにそれ?
 意味がわからなさすぎる!

 フランスは息も絶え絶えに言った。

「それ、悪口なの?」


 三人で笑う。




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