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第1章・贄の花嫁【序】
迎え・後
しおりを挟むライカは身を乗り出しすぎ、次の瞬間手元が滑り屋敷の窓から落下した。馬車は邸内に入り調度真下で停車したところで、馬車から降りてきた総団長は悲鳴をあげた。
「ライカ様?」
ライカは風を発動させ、突風がライカを包み爆風とともに馬車の前に現れたのは…ひらりとスカートの裾をはためかせて地面に両足を着地させたライカの姿があった。
「総団長、私は何故あなたの屋敷に寝ていたの?」
「は、それは~その。」
総団長は冷や汗をかき、馬車内と、目の前に降りたったライカを交互に数回見ると、ライカを前に地面に膝をつけ、深々と両手と頭を地面にこすりつけていた。
ライカは馬車に目を向ければ、馬車がぎしりと傾きながら、ぎゅうぎゅうに入っていたマナが馬車から現れた。
「マナ様?!」
「驚いた。魔法か?」
ライカは馬車から現れた若い白熊の獣人に驚いたが、即座にお辞儀をすると…顔をあげられずにいた。
(久しぶりに見た昔の夢…あれで白熊さんの獣人とあったことを思い出した…けど…あれって、マナ様じやないよね?私はここに来てどれくらい眠っていたのかしら…彼らは私を国に留めたいことは知っていたけど…総団長の屋敷に連れてこられてたなんて…もしかして、お迎えの日?わあ~こんなこと一人じゃ無理だよね?総団長も手伝った人達も…ただではすまないんじゃないかしら。私のせいだ…贄に決まった時…ちゃんとお別れをできていなかったから…)
「らしくないな。贄として来た日のあの勢いはどこに言ったんだ?お前も…他のやつと…」
マナの言葉が終わるのを待たずに、ライカは不意に顔をあげて涙目で訴えた。
「マナ様!彼らの無礼をお許しください!もとはといえば私が彼らに別れを告げていなかったから!」
ライカはぽろぽろと涙をこぼし、躊躇いなく、マナにしがみついて懇願した。
「ライカは嫁になる気はあるのか?彼らと同じ意思なら今後を考え直さなくてはいけない。」
「逆に…マナ様は私で良いのですか?無駄に自信がある、生意気な娘です!獣人兵をあわよくば束ねる事ができるなら…故郷を護れるだろうと思ってたりする娘ですよ!」
「正直だな…。昔、狼獣人の子供を助けた人間がいた…少女は魔法で彼を救った。駆けつけた俺を見ても怖がらなかった…彼女だけかと思っていたが俺が生きてる間に怯えない人間はライカあなたで二人目だ。俺の嫁なら、肝の座ったやつが好ましい。」
ライカは目を丸くした。ハートを矢で射ぬかれたような、電気が走ったような感覚に襲われた。
「マナ様…あの時の子犬は獣人だったのですか?私はあの時のふわふわな白熊少年のマナ様が私を学園に送ってくれ…初めて獣人の優しさをしりました…私が獣人を恐れないのはあの時の優しい獣人にであったからです。あれがあなたなら…断る理由はありません。」
ライカはしがみついてマナの服を掴む手を離し、後ろに下がると、あの時のようにスカートの裾をつまみ、上品にお辞儀をしたライカはまっすぐマナを見て告げた。
「ライカ・ハクアともうします。マナ様…煮るなり焼くなり、ご自由にしてください。」
ライカは満面の笑みを向ければ、マナは瞳を潤ませわずかに口角をあげて微笑んだ。
「総団長殿、案内ご苦労だった。ライカ行こうか。」
マナは総団長に見向きもせず、ライカをひょいと抱き抱え右側の肩にのせると城へと歩いて戻っていった。地面にへたんとした総団長は唖然とし…ライカの思いを知り、己の不甲斐無さを恥じ…て一人地面を叩き男泣きした。
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