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第2章・若い魔女の恋〈終章〉
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しおりを挟むサントは侍女の用意したティーカップを手にし二口飲み終えたころ、扉に駆け寄る何者かの足音がし、そして扉は勢いよく開け放たれた。
「お姉様!」
そこには髪色は違うがサントと同じ桃色の瞳と、サントと顔が似ている可愛らしい少女が現れた。
「リリー?8年ぶりかしら。私の事覚えてるの?」
「はい!お姉様の活躍はいろんな場所で耳にしています!お姉様は幼かった私に、優しくしてくれました!大好きなお姉様を忘れた事なんてありません!だから…お婆様をお怨みしました。お姉様を独り占めして、お姉様にあとを継がせてあの世に行ってしまうから…お姉様は、お忙しくてなかなかこちらに来れなかったのでしょ?今日戻って来ると聞いて嬉しくて嬉しくて!」
リリーはサントの隣に座るとサントに力いっぱい抱きついた。
「一週間はこちらに滞在しようと思うの。リリー、もしよければこの滞在中に街の様子とか領地がどうなったか聞かせてくれる?」
「勿論ですわ!」
すると扉をノックする音がした。
「サントお嬢様旦那さまと奥様が参られました。」
「ええ。」
そして部屋へと入るサントの父シュアと後に続いて入る母ルアがサントの向かい側の椅子へと腰かけた。
「サント~!また背か伸びたようだね。」
シュアは椅子に座ると同時に嬉しそうにサントの成長に笑顔をむけた。
「年頃ですもの、そろそろ婚約者を決めてもよいのでは?」
ルアの言葉にリリーは頬を膨らませサントの腕にしがみついて母を睨み、サントの後ろに立つシアンもまたサントの両親に怪訝な表情を向け、シュアはそのシアンの様子を不思議に思った。
「サントお嬢様のお部屋が整いました。」
ノックのあと…侍女が知らせると、シュアは妻ルアと視線で合図しサントへと視線を向けた。
「ルアとリリーはサントと部屋に行っててくれるかな?」
「久しぶりに女3人でお話ししましょ。」
ルアは笑顔で席を立ち、リリーもサントと同時に席を立った。
「私は皆でカードゲームがしたいわ!」
「そうね、楽しそう。」
ルアとリリー、サントが部屋を出、後を追う黒豹はあっと言う間に3人の先頭へと飛びだしてゆき、シアンが最後、一礼し部屋を出ようとすると、シュアはシアンを呼び止めた。
「シアン殿、悪いが少し私の話し相手になってくれないかね?」
「…えっ?あ、はい。」
「まあ、立ち話もなんだ…座ってくれるかい?」
「はい。」
シアンは緊張し直立。ゆっくりと、サントの座っていた椅子に腰掛けた。
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