12 / 24
#17 魔法少女の涙
第4.1話 10年と1時間前
しおりを挟む
地中から吹き出る魔力は光柱となって夜空を艶やかに照らしています。それは月か何かの光を反射してる、のではなく、噴出する魔力自体が発光しているのです。それは見事で綺麗な、そして神秘的な光景となって夜空を賑やかせています。これを目撃した人々は——冬の寒い時期でもあり、そう多くはありませんでしたが、チラチラと輝く光柱を遠くから眺めた、——いえ、その光景に目を疑った女性が居ました、それが新米記者の美津子です。ある専門家の元へ原稿を受け取りに車のハンドルを握っていたちょうどその時、山向こうにニョキッと聳える光柱を目撃、「なにっ! なになに? なんなのよぉぉぉ」と危うくあらぬ方向にハンドルを切りそうになり冷静さが吹き飛んでしまった美津子、あぁ、これまでか。
しかし、そこは防衛本能が働き急ブレーキ。これに後続車が巻き込まれ——る程の交通量ではなかったので何とか無事に停車。震える身体で車外に飛び出し、目と口を大きく解放、光柱に見とれてしまいました。因みに身体が震えていたのは武者震いです。
「あっ、あうぅぅぅ、あぁ」
美津子の口から飛び出した声は、言葉というよりも獣の叫び声、に近いもの。防衛本能の次に野生が目覚めたのかもしれません。そしてホゲー、と自然の脅威に圧倒されながら次第に我を取り戻した後(単に飽きてしまった)、条件反射的に携帯のカメラレンズを夜空に向けてパシャリ、そしてまたパシャリ。新米ながらも湧き出る記者魂がそうさせるのか、寒さも忘れて夢中になり心奪われた美津子、——でしたが、あくまで路上のこと、やって来た後続車の警笛で顔を顰めながらも現世に心を戻した、ようです。
そして幸運? はまだ続きます。美津子が撮影した光柱は翌朝の新聞、その片隅ではありますが、『夜空を騒がせた原因不明の発光』として掲載され、美津子は鼻を高くしたそうです。「これで私も一丁前」と胸を張った、かもしれません。
◇
流出する魔力を抑えるべく神社の地下で汗を流したオジさんたち、そのリーダー的存在のオジさんが全ての処置を終えて帰宅したのは午前零時も迫ろうかという時刻になっていました。そこに、眠い目をこすりながらトコトコとやって来たケイコです。
「魔王、お帰りなさい。今日も労働に励んだか? うん、良い心がけじゃ」
「あっ、ああぁ」
魔王と呼ばれたオジさんはケイコの父親で一族を代表する人物、のようです。よって、魔王と言われればそうかもしれません。ですが娘から魔王呼ばわりされることには、ちょっと抵抗があるようで、出来れば家庭内では魔法なんたらには触れたくない、普通の暮らしがしたいだけなんだ、だからあまり世間には知られたくない、と考えています。しかし今は気を使いすぎたせいか、どっと疲れが体を揺らしています。ですからもう、何かを言う気力もトボトボ状態、ササッと横になりたい年頃なので、適当に返事をしました。
「あらら、起きちゃったのね。もう寝る時間はとっくに過ぎてるから、さあ、寝ましょうね」
ケイコの背後から現れた母親は帰宅直後でグッタリとしている夫にチラッと視線を送っただけで、すぐにケイコの手を引いてベッドのある部屋へと歩いて行きます。その二人の後ろ姿を見送りながら、「俺に、お帰りの一言もないのかよぉぉぉ」と声にならないような声で呟く父親です。すると、それが聞こえたのでしょうか、歩みを止めずに横を向いたまま、
「後で、話があるんだけど」
と妻の声が。それに一瞬ドキッとした夫は思わず下を向いてしまいました。「出来ることなら付き合いたいところだが、今の俺は精も根も尽き果てようとしている。だから今は、今だけは勘弁してください」と言うか言うまいか途方に暮れる夫です。すると、それが伝わったのかそれとも漏洩したのでしょうか、
「魔王様は……お疲れのようね。まあいいわ、明日にでもしましょうか」
と妻の声が。それにホッとした夫は急に力が湧いかのようにサクッと寝室へと移動し就寝、疾きこと風の如しです。
◇
それは、月が綺麗な円を描く、この世ともあの世とも言えぬ佇まいに満ちた、または支配された夜、だったと記憶しております。穏やかに吹く風に乗って月の光を湛えた雲は、優雅でありながら儚さを人の心の中に置いて行かれました。そうして瞬く星の空に碧色が染み出す頃、静寂の内に力強さを秘めた光が訪れ、告げるのです、そう、新しい一日が始まると。
「ケイコぉぉぉ、お父さん、起こしてくれる?」
ケイコの母親が台所でトンタン・ガッタンしているところに、目覚めたばかりのケイコがフラッと顔を見せてきました。それは、如何にも通り掛かっただけ、と言いたげな表情でしたが、
「まかせてぇぇぇ」
と、大役を与えられた使命に体をシャキッとさせたケイコです。そしてトコトコ・スコトコと父親の眠る寝室へ、と向かいましたが、浮かない顔で戻ってきてしまいました。
「おきたぁ?」と尋ねる母親の声に、
「うぅうん、ピクともしない。あれはダメだよ」
と作戦の失敗を報告するケイコです。それに、
「仕方ないわねぇ、昨夜は遅かったからねぇ」と母親が言ったとこで、
「ハクショぉぉぉぉぉン」
が、どこからともなく聞こえて参りました。それに、「ムムムッ」と反応した母親です。視線と両耳をピクッと動かし、発生源を捜索・検索・追跡すると——分かりました。飽くまで推測ですが、すこぶる冷える外から聞こえる・聞こえたようです。更に、聞き覚えるのある声質でもある、という残念な結果も付いてきました。
その正体とは、青天井の下、何故か乱れきった姿で寝ている、魔王と呼ばれる父親がベッドの上で大きなクシャミをしたところです。当然、真冬の朝、それも外で寝ていれば当然の結果でしょう。誰もが何故と首を傾げるところですが、そのような性癖なのかもしれません。
◇◇
しかし、そこは防衛本能が働き急ブレーキ。これに後続車が巻き込まれ——る程の交通量ではなかったので何とか無事に停車。震える身体で車外に飛び出し、目と口を大きく解放、光柱に見とれてしまいました。因みに身体が震えていたのは武者震いです。
「あっ、あうぅぅぅ、あぁ」
美津子の口から飛び出した声は、言葉というよりも獣の叫び声、に近いもの。防衛本能の次に野生が目覚めたのかもしれません。そしてホゲー、と自然の脅威に圧倒されながら次第に我を取り戻した後(単に飽きてしまった)、条件反射的に携帯のカメラレンズを夜空に向けてパシャリ、そしてまたパシャリ。新米ながらも湧き出る記者魂がそうさせるのか、寒さも忘れて夢中になり心奪われた美津子、——でしたが、あくまで路上のこと、やって来た後続車の警笛で顔を顰めながらも現世に心を戻した、ようです。
そして幸運? はまだ続きます。美津子が撮影した光柱は翌朝の新聞、その片隅ではありますが、『夜空を騒がせた原因不明の発光』として掲載され、美津子は鼻を高くしたそうです。「これで私も一丁前」と胸を張った、かもしれません。
◇
流出する魔力を抑えるべく神社の地下で汗を流したオジさんたち、そのリーダー的存在のオジさんが全ての処置を終えて帰宅したのは午前零時も迫ろうかという時刻になっていました。そこに、眠い目をこすりながらトコトコとやって来たケイコです。
「魔王、お帰りなさい。今日も労働に励んだか? うん、良い心がけじゃ」
「あっ、ああぁ」
魔王と呼ばれたオジさんはケイコの父親で一族を代表する人物、のようです。よって、魔王と言われればそうかもしれません。ですが娘から魔王呼ばわりされることには、ちょっと抵抗があるようで、出来れば家庭内では魔法なんたらには触れたくない、普通の暮らしがしたいだけなんだ、だからあまり世間には知られたくない、と考えています。しかし今は気を使いすぎたせいか、どっと疲れが体を揺らしています。ですからもう、何かを言う気力もトボトボ状態、ササッと横になりたい年頃なので、適当に返事をしました。
「あらら、起きちゃったのね。もう寝る時間はとっくに過ぎてるから、さあ、寝ましょうね」
ケイコの背後から現れた母親は帰宅直後でグッタリとしている夫にチラッと視線を送っただけで、すぐにケイコの手を引いてベッドのある部屋へと歩いて行きます。その二人の後ろ姿を見送りながら、「俺に、お帰りの一言もないのかよぉぉぉ」と声にならないような声で呟く父親です。すると、それが聞こえたのでしょうか、歩みを止めずに横を向いたまま、
「後で、話があるんだけど」
と妻の声が。それに一瞬ドキッとした夫は思わず下を向いてしまいました。「出来ることなら付き合いたいところだが、今の俺は精も根も尽き果てようとしている。だから今は、今だけは勘弁してください」と言うか言うまいか途方に暮れる夫です。すると、それが伝わったのかそれとも漏洩したのでしょうか、
「魔王様は……お疲れのようね。まあいいわ、明日にでもしましょうか」
と妻の声が。それにホッとした夫は急に力が湧いかのようにサクッと寝室へと移動し就寝、疾きこと風の如しです。
◇
それは、月が綺麗な円を描く、この世ともあの世とも言えぬ佇まいに満ちた、または支配された夜、だったと記憶しております。穏やかに吹く風に乗って月の光を湛えた雲は、優雅でありながら儚さを人の心の中に置いて行かれました。そうして瞬く星の空に碧色が染み出す頃、静寂の内に力強さを秘めた光が訪れ、告げるのです、そう、新しい一日が始まると。
「ケイコぉぉぉ、お父さん、起こしてくれる?」
ケイコの母親が台所でトンタン・ガッタンしているところに、目覚めたばかりのケイコがフラッと顔を見せてきました。それは、如何にも通り掛かっただけ、と言いたげな表情でしたが、
「まかせてぇぇぇ」
と、大役を与えられた使命に体をシャキッとさせたケイコです。そしてトコトコ・スコトコと父親の眠る寝室へ、と向かいましたが、浮かない顔で戻ってきてしまいました。
「おきたぁ?」と尋ねる母親の声に、
「うぅうん、ピクともしない。あれはダメだよ」
と作戦の失敗を報告するケイコです。それに、
「仕方ないわねぇ、昨夜は遅かったからねぇ」と母親が言ったとこで、
「ハクショぉぉぉぉぉン」
が、どこからともなく聞こえて参りました。それに、「ムムムッ」と反応した母親です。視線と両耳をピクッと動かし、発生源を捜索・検索・追跡すると——分かりました。飽くまで推測ですが、すこぶる冷える外から聞こえる・聞こえたようです。更に、聞き覚えるのある声質でもある、という残念な結果も付いてきました。
その正体とは、青天井の下、何故か乱れきった姿で寝ている、魔王と呼ばれる父親がベッドの上で大きなクシャミをしたところです。当然、真冬の朝、それも外で寝ていれば当然の結果でしょう。誰もが何故と首を傾げるところですが、そのような性癖なのかもしれません。
◇◇
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる