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#17 魔法少女の涙
第7話 接近遭遇、そして、光り輝く何か
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ブロロ~ン。宵闇の中、町から町へと車で疾走する美津子、日が暮れると俄然やる気と申しましょうか行動的になる習性が……あったようです。そしてブロロ~ン、またブロロ~ンと勘を頼りに車を走らせて参ります。もちろん美津子が操る車は身の丈に合わない高級車、道案内をしてくれる機能は当然のように備わっているのですが、それを見ている暇はない、という貧乏根性全開で何度も道に迷うという特技の持ち主でもあります、ブロロ~ン。
そうして時間と移動する距離が進むにつれ、好い加減、目的地である魔王直営のガソリンスタンドに着いてもおかしくない、という頃、車を止めて辺りをキョロキョロする美津子です。「私の勘では」という特殊能力は発揮されず、まさしく陽も暮れ途方に暮れる状態。それでも、
「まあ、いいか」
と、前進あるのみの美津子、再び車を走らせ、迷宮に真っしぐらです。しかし真実は走り去る車の後方300メートルに目指すガソリンスタンドは在ったのです。……在ったのですが、スタンドの灯火は消えており、どうや本日は休業の様子。もう少し美津子の目が良ければ、……いいえ、ほんの少し注意してさえいれば気が付いたことでしょう。でも、「私の勘」がそれを許さず、気持ちを逸らせた、といったところかもしれません。
とにもかくにも、前へ前へと突き進む美津子の行く手が、何だか怪しくなって参りました。真っ直ぐ道なりに進んでいる「つもり」でしたが、現実は幹線から逸れ、次第に道幅も狭くなるころには、「いったい、ここはどこ?」状態に陥っていたようです。それでも、
「まあ、いいか」
と、前進あるのみの美津子、いつかは何処かに巡り巡って辿り着くだろうと、険しい山道をスイスイと……恐る恐る駆け抜けて行きます。くねくねとした山道はヘッドライトから明るい未来を奪い、お化け屋敷のように、見えない恐怖が容赦なく襲いかかってきます。そこをキュルキュルとハンドルを回し、時折、間違ってプップーとクラクションを鳴らしてしまい、響き渡るその音に、まさしく手に汗握るスリルを堪能していると、——どうやら、少し開けた場所に差し掛かり、これで緊張もひと段落、全ては「何とかなるものよ」と心に余裕が生まれた、——その時です。
「……」
本来は、「おぎゃあああぁぁぁ」と叫んでいるのですが、そんな声も出ない程、驚き(もしかしたら感動したのかもしれませんが)、渾身の力を込めてブレーキを踏ん付けた美津子、急停車です。これで、身も心も止まることが出来ました。では、その原因とは何だったのでしょうか。いいえ、それはまだ続いている? ので過去形では表わせません。
闇に支配された世界、または世間において繰り広げられる異様な光景。火柱と言うには小さく、それはちょうど人の背丈ほど……ということはアレなのでしょうか。そう、異様ついでに申せば人体発火現象……人の姿でユラユラとうごめいている何か、といったところでしょうか。それをもっと現実的に表現するなら、場所といい時刻といい、序でに辺りの雰囲気を加味すれば「焼身自殺している現場に遭遇し、声も出ず気が動転して何が何だかの美津子。逃げたいけれど身も心も言うことを効いてくれない、どうしよう、どうしよう」状態に陥っている、と言ったところでしょうか。
そんな時、悲鳴だけが頭の中で木霊する美津子に代わり、と言ってはなんですが、揺らめく人体発火なにがしらの方からも悲鳴に似た声が発せられました。それは、「キャァぁぁ」なのか「おキャァぁぁ」なのか判別しがたいところですが、まさしく、この世に残す最後の断末魔、そう聞こえたのですから、そう思っても間違いではないでしょう。この時この瞬間に遭遇してしまった、ある意味不幸な出来事に、生の実感を強く抱いた美津子、ただただ驚くばかりです。
しかし、これで終わるなんて誰が言ったでしょう。既に機能不全に陥っている美津子の、「これ以上、悪いことは起こらない、打ち止め」という希望と願望は、——大抵、そのようなものは打ち砕かれるものという相場で、美津子の方に「何か」が揺ら揺らと近寄って来ているではありませんか。それも一歩また一歩と確実に、とても炎に焼かれている断末魔のお方とは思えない程、それはもうしっかりとした足取りで(いえ、多少はフラついてはいますが)近づいて……迫って来るのでした。これは流石に、「あああああゔゔゔゔゔ」という本能に近い呻き声を上げた美津子です。
◇◇
さて、その人体発火なにがしらの方とは誰なのか。本当にアレでアレしてしまった挙句、アレをするしか選択の余地が無かった、まさしく絶望の極み、人生の終焉を迎えたアレの方——ではなく、記憶を遡れば、こんなアレをするお方といえば、そう、例のタカ・トビ・ワカの三人くらいしか該当しません。そして人体発火なにがしらは三人組のリーダー格であるタカ、そのタカが眩しい光で揺らめいてるため、側にいるトビ・ワカの二人は大変見辛いですが、しっかりとタカの両脇を固め、タカ同様に奇声を上げています。
では、何故そんなところに三人は居たのでしょうか。それは、この場所こそが例の場所、10年前に地中から魔力が吹き出た場所なのです。——もちろん、穴は殆ど塞がっていますが完全ではないので微量の魔力が漏れている、といった状況です。よって彼らは毎日一回、巡回監視を罰として課せられている、それで彼らがそこに居たという訳です。しかし彼らが素直に監視を続けている、と信じてはいけません。そう、あれから10年です、それも毎日欠かさずとなれば、彼らにとって何がしらの得がなければ続かなかったでしょう。その思惑を紐解いていけば、——そう、塞ぎきっていない穴から漏れ出す微量の魔力、その僅かに漏れ出す魔力を目当てにしているのは明確です、たぶん。
では、ここでお浚いをしておきましょう。タカ・トビ・ワカの三人が暮らす町の地下には魔法の源となる魔力が埋まっています。それはちょうど油田のようなもので、町に住む或る一族のみがその恩恵を受けていました。ということで、地中深くにある魔力から間接的に、というか直接触れることなくその力を得ることが出来るのです。これを直接浴びると、——それはそれはもう絶大な力が発揮できる、とか何とかです。よってそれが彼らの動機・目的であり、罰であるはずの見回りを悪用して森林浴ならぬ魔力浴に入り浸っている、という訳なのです。これらを纏めると地中から魔力が微量に吹き出る所に立ち、その影響でタカの体が発光していた、それを美津子が偶然見つけてしまったというのがこの事件の真相です、たぶん。
ところで、なぜ魔力を浴びると体が発光するのでしょうか。——さあ、それは何故なんでしょうか。きっと本人に尋ねても分からないことでしょうが、体に良いようには見えません。それでも敢えて考査すれば身体中の細胞が活性化しているとか、何かの限界か拒否反応あたりでしょうか。とにかく人間電球のようにピカピカと輝く異常な状態であることには間違いないでしょう。
◇◇
そうして時間と移動する距離が進むにつれ、好い加減、目的地である魔王直営のガソリンスタンドに着いてもおかしくない、という頃、車を止めて辺りをキョロキョロする美津子です。「私の勘では」という特殊能力は発揮されず、まさしく陽も暮れ途方に暮れる状態。それでも、
「まあ、いいか」
と、前進あるのみの美津子、再び車を走らせ、迷宮に真っしぐらです。しかし真実は走り去る車の後方300メートルに目指すガソリンスタンドは在ったのです。……在ったのですが、スタンドの灯火は消えており、どうや本日は休業の様子。もう少し美津子の目が良ければ、……いいえ、ほんの少し注意してさえいれば気が付いたことでしょう。でも、「私の勘」がそれを許さず、気持ちを逸らせた、といったところかもしれません。
とにもかくにも、前へ前へと突き進む美津子の行く手が、何だか怪しくなって参りました。真っ直ぐ道なりに進んでいる「つもり」でしたが、現実は幹線から逸れ、次第に道幅も狭くなるころには、「いったい、ここはどこ?」状態に陥っていたようです。それでも、
「まあ、いいか」
と、前進あるのみの美津子、いつかは何処かに巡り巡って辿り着くだろうと、険しい山道をスイスイと……恐る恐る駆け抜けて行きます。くねくねとした山道はヘッドライトから明るい未来を奪い、お化け屋敷のように、見えない恐怖が容赦なく襲いかかってきます。そこをキュルキュルとハンドルを回し、時折、間違ってプップーとクラクションを鳴らしてしまい、響き渡るその音に、まさしく手に汗握るスリルを堪能していると、——どうやら、少し開けた場所に差し掛かり、これで緊張もひと段落、全ては「何とかなるものよ」と心に余裕が生まれた、——その時です。
「……」
本来は、「おぎゃあああぁぁぁ」と叫んでいるのですが、そんな声も出ない程、驚き(もしかしたら感動したのかもしれませんが)、渾身の力を込めてブレーキを踏ん付けた美津子、急停車です。これで、身も心も止まることが出来ました。では、その原因とは何だったのでしょうか。いいえ、それはまだ続いている? ので過去形では表わせません。
闇に支配された世界、または世間において繰り広げられる異様な光景。火柱と言うには小さく、それはちょうど人の背丈ほど……ということはアレなのでしょうか。そう、異様ついでに申せば人体発火現象……人の姿でユラユラとうごめいている何か、といったところでしょうか。それをもっと現実的に表現するなら、場所といい時刻といい、序でに辺りの雰囲気を加味すれば「焼身自殺している現場に遭遇し、声も出ず気が動転して何が何だかの美津子。逃げたいけれど身も心も言うことを効いてくれない、どうしよう、どうしよう」状態に陥っている、と言ったところでしょうか。
そんな時、悲鳴だけが頭の中で木霊する美津子に代わり、と言ってはなんですが、揺らめく人体発火なにがしらの方からも悲鳴に似た声が発せられました。それは、「キャァぁぁ」なのか「おキャァぁぁ」なのか判別しがたいところですが、まさしく、この世に残す最後の断末魔、そう聞こえたのですから、そう思っても間違いではないでしょう。この時この瞬間に遭遇してしまった、ある意味不幸な出来事に、生の実感を強く抱いた美津子、ただただ驚くばかりです。
しかし、これで終わるなんて誰が言ったでしょう。既に機能不全に陥っている美津子の、「これ以上、悪いことは起こらない、打ち止め」という希望と願望は、——大抵、そのようなものは打ち砕かれるものという相場で、美津子の方に「何か」が揺ら揺らと近寄って来ているではありませんか。それも一歩また一歩と確実に、とても炎に焼かれている断末魔のお方とは思えない程、それはもうしっかりとした足取りで(いえ、多少はフラついてはいますが)近づいて……迫って来るのでした。これは流石に、「あああああゔゔゔゔゔ」という本能に近い呻き声を上げた美津子です。
◇◇
さて、その人体発火なにがしらの方とは誰なのか。本当にアレでアレしてしまった挙句、アレをするしか選択の余地が無かった、まさしく絶望の極み、人生の終焉を迎えたアレの方——ではなく、記憶を遡れば、こんなアレをするお方といえば、そう、例のタカ・トビ・ワカの三人くらいしか該当しません。そして人体発火なにがしらは三人組のリーダー格であるタカ、そのタカが眩しい光で揺らめいてるため、側にいるトビ・ワカの二人は大変見辛いですが、しっかりとタカの両脇を固め、タカ同様に奇声を上げています。
では、何故そんなところに三人は居たのでしょうか。それは、この場所こそが例の場所、10年前に地中から魔力が吹き出た場所なのです。——もちろん、穴は殆ど塞がっていますが完全ではないので微量の魔力が漏れている、といった状況です。よって彼らは毎日一回、巡回監視を罰として課せられている、それで彼らがそこに居たという訳です。しかし彼らが素直に監視を続けている、と信じてはいけません。そう、あれから10年です、それも毎日欠かさずとなれば、彼らにとって何がしらの得がなければ続かなかったでしょう。その思惑を紐解いていけば、——そう、塞ぎきっていない穴から漏れ出す微量の魔力、その僅かに漏れ出す魔力を目当てにしているのは明確です、たぶん。
では、ここでお浚いをしておきましょう。タカ・トビ・ワカの三人が暮らす町の地下には魔法の源となる魔力が埋まっています。それはちょうど油田のようなもので、町に住む或る一族のみがその恩恵を受けていました。ということで、地中深くにある魔力から間接的に、というか直接触れることなくその力を得ることが出来るのです。これを直接浴びると、——それはそれはもう絶大な力が発揮できる、とか何とかです。よってそれが彼らの動機・目的であり、罰であるはずの見回りを悪用して森林浴ならぬ魔力浴に入り浸っている、という訳なのです。これらを纏めると地中から魔力が微量に吹き出る所に立ち、その影響でタカの体が発光していた、それを美津子が偶然見つけてしまったというのがこの事件の真相です、たぶん。
ところで、なぜ魔力を浴びると体が発光するのでしょうか。——さあ、それは何故なんでしょうか。きっと本人に尋ねても分からないことでしょうが、体に良いようには見えません。それでも敢えて考査すれば身体中の細胞が活性化しているとか、何かの限界か拒否反応あたりでしょうか。とにかく人間電球のようにピカピカと輝く異常な状態であることには間違いないでしょう。
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