12☆ワールド征服旅行記

Tro

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#8 近世 クミコ編

#8.3 修羅場 (1/2)

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ラウンジの天井。怪しいシミがないかと点検してみる。あんなシミや、こんなシミが、何かに見え始めたらヤバイかも。いくら天才のお姉さんでも、これ以上、いい案があるとは思えない。それに、何時までも頼っていては、いけない気がする。自分の問題は、自分で何とかしたいものだ。

「君。早いね」
「おはよう御座います」
「昨夜は勝ち逃げしたが、なかなか手強い相手だった」
「そうですね」
「君。元気ないね。ビタミン不足かね」
「そうですね」
「クヨクヨするな。次の手はきっとある」
「そうですね」
「君。もしかして諦めてしまったのかね?」
「そんな事は無いです」

「なら、いいのだが。今朝の大江戸ニュース地方版には、昨夜の件はまだ載っていなかった」

「そうですか」
「さて、次はどうしたものかと」
「俺、街を捜索してきます」
「ん? それで君はどうするつもりかね?」
「そりゃあ、見つけて……」
「たとえ見つけたとしても、昨夜の二の舞になるだけだ」
「それでも、探さないことには」
「君。これは、自分だけの問題だと思っているだろう」
「まあ、その、自分の問題ですから」
「そうだろな。君は彼女を取り戻したい。それは君の問題だ」
「そうです」
「それで、君は、君だけで問題を解決出来ると思っているのかね?」
「そうは思っていません。だけど、自分で出来ることは自分で」
「なあ、君。自分だけでは手に負えない時は、他人を頼ってもいいんじゃないか?」
「それは、そう思います」
「でも君は、一人で突っ走ろうとしている。違うかね」
「いや、そうじゃなくて。お姉さんに甘えてばかりじゃあ」

「君。分かってないね。甘えるのと、頼るのは同じ事じゃないよ」
「分かってます」

「現状、私は君に頼っている。ここでの生活費は、全て君持ちだ。これは、私が君に甘えているのだろうか?」

「そんな事は無いです。だって、お姉さんには手伝って貰ってますから」

「正直、私は君に甘えている。それと同時に頼ってもいるのだ。なら君も、私を頼り、甘えてもいいではないか?」

「でも、俺とお姉さんじゃ、俺は何も出来ないし」

「君と私は対等な立場だ。もし君が不足を感じるのなら、出世払いでもいい。でも、現状は君の方が負担は多いはずだ。違うかね?」

「そうですけど」
「頼りたまえ私を。そのために私は、ここにいるのだ」
「お姉さん!」
「君がいなくなると、私が困るのだ。お互い様だ」
「ここに来た時、お姉さんは一人で行こうとしてたのに」
「あれは、君を試しただけだ」

「分かりました。頼りにします」
「そうか。大いに頼りたまえ」

「分かりました。それで、給料日になったら、自分の分は支払ってくれるんですよね?」

「君。私はカードを……」
「大丈夫です。取りに戻ればいいんです。別に一方通行じゃないですから」

「そうか。……なら、そうしよう。給料日まであと10日だ。それまで待ってくれたまえ」

「5日って言ってませんでしたか?」

「君。分かってないね。あの会社は給料日が一人一人違うのだ。5日というのは君の場合だった。私とは違うのだよ」

「そうだったんですか。勘違いしてました」
「さて、次の手を考えようじゃないか」
「はい、お姉さん」



「お姉さん、写真を見せて貰ってもいいですか?」
「写真? ああ、いいとも」

お姉さんからスマホを受け取ったが。

「あの~。ロックを解除してくれせんか」
「ロック? そうだったね。何だったかな」
「あの~。見せたくないんですか?」
「そんな事は無い。決して無い、と思う」
「じゃあ、お願いします」
「分かった。……手が! 手が! 手が! 私の制御が利かないいい!」
「もういいです」
「そうか。すまん」
「いいえ、解除されましたから」
「なんだと!」

「あ~、分かりました。有り難う御座いました」
「それは良かった」
「記憶が無いって、こういう事だったんですね。写真を撮ったから大丈夫って」
「そんな事より、良いニュースがある。聞きたいかね?」
「聞きたいです」

「ブラック・ドッグ発足時の記事を発見した。それによると、9人が選ばれたとある。その内、女性は2名だ」

「確率は1/2ですね」
「いや、小娘で当たりだ」
「それは?」

「ゴースト・クレーマーズからの情報によると、ブラック・ドッグの構成員は、年齢層がかなり高いそうだ。要は年配者ということになる」

「なるほど」

「実力者を招集したと見るべきだろう。なら女性の内、一人はあの小娘だ。残る一人も若輩者じゃくはいものであるという可能性は、低いだろう。よって下手人は、あの小娘で決まりだ」

「さすがは、お姉さんだ。建てに年上じゃないですね」
「ん? 私は君と同じ歳だが」
「本当ですか?」
「それは君次第だ。私も君の歳を知らないし」
「え?」

「君の方の報告は、まだだったな。昨日の捜索。何か掴めたかね」
「特に何もなかったです。静かな街でした」
「そうか」

「ただ、おっさんが怒鳴っている家が有りましたね。あれは、昼間から酒を飲んで暴れてるんですよ。嫌ですね、ああいうのって」

「それは、可能性が高い」
「そうですか?」

「考えてみたまえ。昼間から酒とは、経済困窮者と思われる。それに、小娘が深夜労働をしてまで稼ぐ必要があるというのは、家計が破綻寸前なのだろう。この二つを結びつければ、答えは、”その家が怪しい”ということになる」

「少し強引なような気が」

「少ない情報で得た結論だ。だが、私達には選択する余裕が無いのだ。僅かな確率だが、それに賭けるしかあるまい」

「やりましょう! 賭けます」
「決まりだ」

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