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【ジーク】本人も自覚があるようだ
しおりを挟むクシェルはコハクをお姫様抱っこに抱え直すとそのまま寝室へ向かった。
部屋に着くとコハクをベッドに下ろす。
「クシェル様?」
コハクはベッドに座り、立ったままのクシェルを見上げ首を傾げる。
俺はクシェルの斜め後ろに立ち二人を見守る。
クシェルがいつもコハクへの吸血衝動を無理に我慢しているのは知っていたし、このままの勢いだとクシェルの抑えが効くとは思えない。
万が一の時は……
「コハク本当に良いのか?」
「はい」
コハクはクシェルを迎え入れるように両手を広げ、クシェルはコハクの腕の中に飛び入った。
勢いでコハクがベッドに倒れてしまう。
「だ、大丈夫か⁈」
俺はコハクの事が心配でベッドに駆け寄り二人を覗き込んだ。
「す、すまんつい嬉しくて」
「ビックリしたけど、大丈夫です」
クシェルがコハクの首を支えていたため、コハクは無事だった。
ヒートまで後数日あるため理性を失う程の暴走はないとは思うが、クシェルにとって初めての「自ら欲した者の血」であり、コハクも勿論初めての事で不安があるだろう。万が一の時のために俺もこのまま立ち会うと伝えると、クシェルもそれに同意した。
コハクの事となると暴走しがちだということは本人も自覚があるようだ。
そして、ベッドの枕側に背を向け俺が座り、俺の足の間に背を向ける形でコハクが座り、クシェルはコハクと向き合う。
コハクの頭は俺の胸のあたりまでしかなく、コハクは俺の腕の中に簡単に収まってしまう。そして、不安と緊張で、身体に力が入っている。
小さくてか弱くてーーでもクシェルのためにその不安に立ち向かおうとしているコハク。酷く庇護欲をそそる。
「コハク無理そうなら言え、すぐ止めさせる」
コハクの緊張を解くために手を繋ぎ頭を撫でる。
「はい」
するとコハクの身体から力が少し抜け、繋いだ手を握り返してくれた。
ーーこれは俺が護ってやらなくては
俺はコハクを支えるようにさっきまで頭を撫でていた腕をコハクの腰に回した。
「コハク」
クシェルはコハクの肩に手を添え、確認かのようにコハクの名前をよぶ。
「クシェル様、目が…」
クシェルの目から青が徐々に赤く染められていく。ヒート時と同じだ。
「怖いか?」
コハクは軽く首を振る。
「とても綺麗ーー優しい温もりが熱を帯びていって、煌々と燃える炎みたい……呑み込まれそう」
コハクは本当にクシェルの目に呑み込まれるように空いている手をクシェルの頰に添え、うっとりと語る。
クシェルのあの目は何度も見ているが、俺は未だに少し恐怖を感じてしまう、まるで自分が獲物になってしまったかのようなーー
それなのに、コハクは二色が重なる瞳は「夕暮れ時」の色で、金に黒の混じった金茶色の髪は「琥珀色」、吸血衝動で赤く変わった瞳は「炎」とクシェルの全てを美しいモノに例え綺麗だと、好きだと称賛し頬を染める。
ーーまるで始めからクシェルの全てを受け止め、愛す為に生まれ育てられたかのようだ
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