勇者でも渡り人でもないけど異世界でロリコン魔族に溺愛されてます

サイカ

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【クシェル】パンツ一丁だった

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 夕食後部屋に案内され、案内が終わると母さんがコハクを風呂へと誘う。母さんにもコハクの肌は見て欲しくなかったが、コハクもたまにはシャワーを浴びたいのでは?女同士で話したい事がある、と言われたら、無理に止める事も出来なかった。

 コハクたちは母さん用の風呂へ向かったので、俺たち三人は親父用の風呂へ向かった。
コハクもいないしやる事もないし、親父が何か話したそうにしていたし…

 身体を洗い風呂に浸かる。と親父が唐突に口を開いた。

「異世界人とは本来は皆あんななのか?」

 上を向き独りごちる。

「さぁな…」

 それに俺は適当に相槌を打つ。
 コハク以外の者などなんの興味も無い。
 親父も俺に答えを求めてるわけでは無いだろうし。

「コハクが特別なのか、もしくは勇者はこの世界の人間に毒されているのかもしれませんね」

 多分両方だろう。
 コハクの話を聞く限りでは、コハクの世界にも戦争や差別があり、善人ばかりでは無い。しかしコハクは純粋で誠実で信じられないくらい優しい。そして、勇者は魔王は敵だと思い込んで疑わない…人間に丸め込まれていると考えるのが妥当だ。

「そうかもな、勇者は人間に召喚されて異世界から来るのだし……あの時も」

 親父は上を向いたまま目を瞑る。

 そんな事より、今頃二人は何を話しているのだろう、女同士で話したい事とは何だろう、早くコハクに会いたい、抱きしめたい。
 ジークも今度は親父の独り言には反応せず、数秒の沈黙の後はッと何かに気づいたように立ち上がり俺の肩を掴んだ。

「ど、どうした⁈」
「コハクにまだ話してない事がある!」
「え⁈」

 俺は首を傾げる。

「月一の吸血衝動のことを、それ以前にお前がヴァンパイアである事自体コハクは知らない」

 言われてみれば……確かにそうだ。
 容姿のことやこの国での俺の評価などを話しても、変わらず大好きだといってくれたのが嬉しすぎて忘れていた!

「え!クシェル、そんな重大な事を話さずに同じベッドで寝てるのか⁈」

 母親がヴァンパイアで、その血を引く俺は魔族とヴァンパイアのハーフだ。
 ヴァンパイアは人間と同じ食事を取れるがそれだけでは生きていけない。月に一度強い吸血衝動に襲われ、他者の血を口にしないと生きられない。
 子供の頃は母さんに血を分けてもらっていたが、今はジークに分けてもらっている。
 血なんて不味くて飲みたくないが衝動を抑えるには仕方ない。

 ジークには申し訳無かったが、母さんに自分に負の感情を持つ者の血は吐く程不味いと聞き、他の者の血を飲むという選択肢は早々に捨てた。

 本当、ジークには感謝しかない!

 そして今もそのジークのおかげで、俺は大事な事を思い出すことができたのだ!

「そうだった。ありがとうジーク!」

 俺は慌てて風呂から上がりコハクが居るであろう母さん用の風呂へ向かう。

 ーー早くコハクに伝えなくては!

 伝えるべき事は全て伝えたと、後ろめたい事はもう何一つないと思っていたため、そうでないと分かると急に焦りと不安がこみ上げてきた。

 俺はまだコハクに隠し事をしたままだった!
 コハクは俺がヴァンパイアである事を、俺の吸血行動を受け入れてくれるだろうか?
 俺が人を傷つけないと生きていけない奴だと知ったら、コハクは俺の事を怖がり、その牙をコハクに向けようとしていると知ると俺から離れていくのでは?恐怖するだけならまだしも……嫌われてしまったりしたらーー

 母さん用の風呂のドアを開けようとすると、ジークに止められた。

「とりあえず服を着ろ、それとここはコハクが出てくるのを待つべきだ」

 服を渡され改めて今の自分の姿を確認する。

 ーーパンツ一丁だった。

 ジークが持って来てくれた俺の服を着て、言われた通りコハクが出てくるのを待った。
 ジークがいてくれて良かった、あのままだったら、パンツ一丁でコハクが居る風呂場へ駆け込みあの時のようになるとこだった。

 ーー俺は本当に学習しないな、いつもコハクの事となると暴走してばかりだ

 と自分の行いを反省していると、扉が中から開き、そこには母さんが用意したらしいフリルとリボンで慎ましく飾られたふんわりとした少女用の寝巻きを着たコハクが立っていた。
 いつもの俺だったら「可愛い!」と心の中で発狂していたかもしれないが、今の俺はそれどころではなかった。
 思わずコハクの肩を掴んでしまった手が震えているのが自分でも分かる。

 俺は勢いに任せて自分がヴァンパイアである事を伝えたが、コハクの血を欲している事は隠してしまった。
 コハクを必要以上に怖がらせたくない、いや、ただ自分がコハクに恐れられたくなかった、嫌われたくなかっただけだ。

 それなのに何故かコハクの不安感と困惑が大きくなっていく。
 コハクがいた世界は人間を襲うバケモノなんていないらしい。だから、いくらコハク自身を傷つける気は無いと言っても、そんなバケモノが側にいるのは受け入れ難いのかもしれない。

 コハクは焦る母さんに頷いた。
 そこにはもう不安も困惑も無かったが、俺は逆に不安と困惑が増していく。
 しかしコハクはその必要はないのだというように首を軽く振り、ヴァンパイアの話はすでに母さんから聞いていて、俺のためにできる事があって嬉しいという。

 ーー俺がヴァンパイアであることだけでなく、吸血行動すらも受け入れてくれている⁈

「コハク…」

 ーー信じられない、あまりにも俺に都合が良すぎる
 
 しかし、コハクからはやはり恐怖や哀れみ等の負の感情を一切感じない。

「でもわたし痛いのが苦手で、出来るだけ痛く無いようにシてくれたら嬉しいです」

 そう微笑むコハクの頬は赤く染まっていった。

 あーどこまで、どこまで優しいんだ!

「ありがとうー!!」

 抱き上げるとコハクはフワッと簡単に持ち上がり思いの外高く持ち上げてしまった。コハクはいきなり高く持ち上げられ「っわ!」と身体を強張らせる。
 でも、俺がそのまま抱きしめると身体から力を抜き、俺の頭を抱きしめ返してくれた。

「コハク、ありがとう!こんな俺を受け入れてくれて本当にありがとう」

 愛しくて、嬉しくて、幸せでたまらない。
 次から次へと涙が出て止まらない。

「い、痛いです」

 コハクを抱きしめる腕の力が徐々に強くなってしまっていたようで、少し苦しげにそう言われた。しかしその声は笑っているようにも聞こえ、俺も「すまない」と力を緩めつつ笑った。


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