勇者でも渡り人でもないけど異世界でロリコン魔族に溺愛されてます

サイカ

文字の大きさ
41 / 123

【ジーク】何故そう自分を卑下するんだ?

しおりを挟む

 月経中はクシェルにコハクを近づけるわけにはいかない。それがお互いのためだ。そのため月経中、コハクには俺の部屋で生活してもらう事になった。
 コハクにそれを伝えると、クシェルに申し訳ないという。

 コハクは何故か自分自身を軽く扱うところがある。何かにつけて「申し訳ない」「迷惑がかかる」「わたしのせいで」と謝って、遠慮して、何かを望もうとしない。

 俺はそれがーー気に食わない

 思わず眉間にシワが寄ってしまった。

 風呂上がり俺はクシェルみたいに魔法で髪を乾かしてやる事はできないため、魔道具でコハクの髪を乾かす。それが気持ち良いのかウツラウツラとしだすコハク。

「もう寝るか?」

 まだ寝る時間には少し早いが無理に起きておく必要もない。

「…うん」

 コハクは目をこすりながら頷く。
 コハクをベッドへ運ぶために抱きかかえようとすると、俺の腕の中へ手を伸ばし自ら収まるコハク。

 ーー今日はやけに素直だ

 ベッドにコハクを寝かせると俺は入れ替わる様に風呂へと向かう。

 風呂から上がるとコハクは「ゔ~」と布団の中で身を丸めて苦しげに唸っていた。

「コハク大丈夫か?」

 唸るだけで返答はない。
 コハクが下腹部を押さえているのに気づき、俺は後ろからコハクを包み込むように横になり、コハクのお腹に手を添えてみる。
 するとコハクは手を下腹部から俺の手の上に重ね直した。

「っコハク⁈」

 コハクの唸りが止み、息が整っていく。
 痛みが和らいだのだろう。

「…良いのか?」
「うん、あったかい……気持ちぃ」
「グっ!ーー!」

 お、おおお落ち着け、俺。
 いやしかし、この体勢でそのセリフは想像するなって方が、反応するなって方がおかしいだろ!
 俺はコハクが完全に眠った後もう一度バスルームへと向かう羽目になった。


 コハクは眠たいと素直になるらしい。
 

 次の日コハクは更に具合が悪そうで、俺は仕事を休み1日コハクのそばにいる事にした。
 風呂やトイレに抱いて運ぼうとしたら、さすがに拒否されたが、出来ることは全てやった。
 夜、昨晩のようにお腹をさすろうとしたら、顔を真っ赤にして軽く抵抗されたが押し切ってさすっているといつのまにか体の強張りもとけ規則的な寝息が聞こえてきた。

 ーーやはり、素直なのは眠たい時限定らしい。

 そしてその日は俺もそのまま眠りについた。

次の日

 今日は朝食も残さず食べて、顔色も良い。もう腹痛も軽くなったようだ。
 今日は一人でも大丈夫かな(部屋の前にはもちろん護衛付き)と思っているとタイミングよく新しいメイドが到着したと報告が入り、すぐにこの部屋に来るように伝えた。
 新しいメイド、サアニャはあの学者の姪で種族間の偏見もなく異世界人への理解もある。


 これで俺たち(男性)には言えない事も大丈夫だな。
 俺はコハクの事をサアニャに任せて、仕事場へ向かった。

 しかし、大丈夫ではなかった。
 昼過ぎに「シイナ様の食欲が無く、元気が無い」という連絡がサアニャから入る。

 夕食は今朝と同じようにモグモグと頬張り食欲がないようには見えない。

「昼は食欲が無かったみたいだが、まだ具合が悪いのか?」

 俺がそう聞くとコハクはシュンとして「一人では食欲が湧かない」と言う。

 それって俺たちが居なくて寂しかったということか⁈それで元気が無かったのか⁈
 俺たちがそばに居なくて寂しくてシュンとするコハクーー可愛い。想像だけで可愛い!

 こんな事で喜んではいけない。緩む口元をコハクにバレないように手で隠し、つい目を逸らしてしまう。

 ーーよし、明日から食事の時はコハクの側にいるようにしよう、コハクも喜んでくれるはずだ

「え⁈でも忙しいのに」

 昼の時間くらい少し訓練の時間を短縮すれば済む。そんな気を使わなくて良いんだが。

「わたしなんかのために」

 ーーーーはあ?

「わたし、なんか?」

 これは謙虚や気づかいという言葉では片付けられない。

「じ、ジーク様?」

 俺がいきなり険しい顔をしたためコハクは戸惑い俺の名前を呼ぶ。
 今更、様付けにコハクに一線を引かれているように感じて怒りが湧く。
 コハクに手を伸ばすと今の俺が怖いのかビクつくコハク、それを謝り目をそらすコハク。
 更に怒りが募る。何故そうすぐに謝る、コハクが悪いわけでは無いのに。

「コハクは何故そう自分を卑下するんだ?」

 目を合わせるように促し、怒りを抑え尋ねる。

「わ、わたしには何もないから」

 弱々しくそう答えるコハク。

 ーーーーはあ?

「誰かにそう言われたのか?」

 いつも「申し訳ない」とか「迷惑がかかる」とか言っていたのは単に気づかいや謙遜から来たものではなく…

 コハクは小さく首を横に振り否定する。

「じゃあ、何故ーー」

 そう自分自身の価値を貶めるような事を言うのか。

「それが、事実だからです」

 その言葉には迷いは感じられない。

 ーー何が誰がコハクにそう思わせているのか、前の世界で何かあったのか?いや、一般的な渡り人ならありえるが、コハクは不自由なく幸せに暮らしていて、夢もあったと言っていた。自分の価値を否定されるような環境ではなかったはずだ。ではやはり、この世界のせいか?

「ッコハク⁈」

 コハクの頰に添えた手が濡れる感覚がしてコハクを見ると目から大粒の涙を流していた。

「ご、ごめんなさい」

 俺と目が合うと慌てて謝る。

「すまない、怖かったな、コハクを責めているわけじゃないんだ」

 コハクがこんな風に泣くのは初めてでどうして良いかわからず、ついあやすような形になってしまった。
 膝の上に横抱きにするとコハクはしがみ付き頭をグリグリと押し当ててきた。

 ーーこれは甘えている、のか?

「コハクはもっと甘えて良いんだ、一昨日も言っただろう」

 俺はもっとコハクに甘えて欲しい。わがままを言って欲しい。
 コハクはコクコクと頷く。

 コハクは一人っ子ではあるが、家族は父親だけだと聞いた。誰かに甘えた事があまり無かったのかもしれない。甘えるのに慣れてなくて、寂しさも我慢するのが当たり前になってしまっていたのかもしれない。それがこっちの世界に来て俺たちに囲われて、必要以上に、寂しさを感じる暇もない程構われてーー月経という不安定な時期にふと寂しさを思い出し、不安になってしまったのかもしれない。

「不満や不安な事があったら言って欲しい」

 安心して欲しくて、強く抱きしめ頭を撫でる。

「ごめん、なさい、わたし二人が居なくて…寂しくて不安で…役に立てなくて、負担しかかけてなくて、二人が居ないと、こ、こんなにも不安定で…こんなんじゃいつか、二人にも愛想…つ、尽かされっ、て思ったら」

 コハクは言葉に詰まりながらも、どうにか伝えようとしてくれる。俺は途中出かかった言葉を飲み込み、コハクの言葉に耳を傾ける。
 しかし、最後のはさすがに耐えられなかった。

 俺たちがコハクに愛想を尽かす?

「そんな訳ないだろ?」

 またコハクを怖がらせないように優しい声を意識して言葉を発する。

 ーー愛想を尽かされるとしたら、俺たちの方だ。コハクが無垢で優しい事をいいことにこっちの要求を押し付けて、騙すような事もした。

「ごめんなさい」

 何故コハクが謝るーー責めているわけじゃないんだ。

「コハク?」

 どうしたら伝わる?どれほどコハクが大切で愛しくてたまらないのか、俺たちがどれほどコハクに助けられているか。

「役に立つ立たないじゃないだろ?」

 そんな自分を道具のように、駒のように言わないでくれ。

「コハクの事を負担に思ったことはない」

 コハクには俺たちの愛情が伝わって無かったのか?コハクを守るのも必要以上に世話をしてしまうのもコハクが大切で愛しいからだ。

「ジーク様」

 コハクがゆっくりと顔を上げ、俺を呼ぶ。

「ん?」

 少しでも伝わっただろうか。

「ありがとうジークお兄ちゃん、大好き」
『ギュー』

 ーーなっ!?なななな何が起きた!ジークお兄ちゃんって言わなかったか?お兄ちゃんって!で、で、大好きって…大好きって『ギュー』てぇ?ふぁ?

 俺はあまりの衝撃に固まってしまう。

 俺の気持ちがコハクに伝わったのだろうか。俺の言葉を信じて、甘えてみようとしてくれている、のか?

 俺に抱きつく力が弱まる。
 コハクを見ると不安げに俺を見つめていた。

 あー間違いない、俺を信じて甘えようとしてくれたんだ。それで、反応が無かったから不安になってしまったんだな。
 すまない、不安にさせて。大丈夫だぞ甘えて、俺が全て受け止めてやるから。
 そう思いを込めて笑いかけるとコハクは安心したようにふわりと微笑んだ。



しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました

iru
恋愛
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。 両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。 両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。 しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。 魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。 自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。 一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。 初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。 恋人になりたいが、年上で雇い主。 もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。 そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。 そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。 レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか? 両片思いのすれ違いのお話です。

ストーカーから逃げ切ったつもりが、今度はヤンデレ騎士団に追われています。

由汰のらん
恋愛
ストーカーから逃げていたある日、ハルは異世界に召喚されてしまう。 しかし神官によれば、どうやらハルは間違って召喚された模様。さらに王子に盾ついてしまったことがきっかけで、ハルは国外追放されてしまう。 さらに連行されている道中、魔族に襲われ、ハルの荷馬車は置き去りに。 そのさなか、黒い閃光を放つ騎士が、ハルに取引を持ちかけてきた。 「貴様の血を差し出せ。さすれば助けてやろう。」 やたら態度のでかい騎士は、なんとダンピールだった! しかしハルの血が特殊だと知った騎士はハルを連れ帰って? いっそ美味しい血と癒しを与えるダンピール騎士団のセラピストを目指します!

冗談のつもりでいたら本気だったらしい

下菊みこと
恋愛
やばいタイプのヤンデレに捕まってしまったお話。 めちゃくちゃご都合主義のSS。 小説家になろう様でも投稿しています。

記憶喪失の私はギルマス(強面)に拾われました【バレンタインSS投下】

かのこkanoko
恋愛
記憶喪失の私が強面のギルドマスターに拾われました。 名前も年齢も住んでた町も覚えてません。 ただ、ギルマスは何だか私のストライクゾーンな気がするんですが。 プロット無しで始める異世界ゆるゆるラブコメになる予定の話です。 小説家になろう様にも公開してます。

『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』

透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。 「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」 そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが! 突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!? 気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態! けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で―― 「なんて可憐な子なんだ……!」 ……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!? これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!? ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆

幼い頃に、大きくなったら結婚しようと約束した人は、英雄になりました。きっと彼はもう、わたしとの約束なんて覚えていない

ラム猫
恋愛
 幼い頃に、セレフィアはシルヴァードと出会った。お互いがまだ世間を知らない中、二人は王城のパーティーで時折顔を合わせ、交流を深める。そしてある日、シルヴァードから「大きくなったら結婚しよう」と言われ、セレフィアはそれを喜んで受け入れた。  その後、十年以上彼と再会することはなかった。  三年間続いていた戦争が終わり、シルヴァードが王国を勝利に導いた英雄として帰ってきた。彼の隣には、聖女の姿が。彼は自分との約束をとっくに忘れているだろうと、セレフィアはその場を離れた。  しかし治療師として働いているセレフィアは、彼の後遺症治療のために彼と対面することになる。余計なことは言わず、ただ彼の治療をすることだけを考えていた。が、やけに彼との距離が近い。  それどころか、シルヴァードはセレフィアに甘く迫ってくる。これは治療者に対する依存に違いないのだが……。 「シルフィード様。全てをおひとりで抱え込もうとなさらないでください。わたしが、傍にいます」 「お願い、セレフィア。……君が傍にいてくれたら、僕はまともでいられる」 ※糖度高め、勘違いが激しめ、主人公は鈍感です。ヒーローがとにかく拗れています。苦手な方はご注意ください。 ※『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。

処理中です...