勇者でも渡り人でもないけど異世界でロリコン魔族に溺愛されてます

サイカ

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みんなでピクニック!

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「うわぁ湖だ!」

 今日はみんなでピクニックに来ています!

 城の北側には大きな森があって、その森の中を馬に乗って進む。しばらくすると、開けた場所が見えて来てその先には湖があり、辺りにはたくさんの花々が咲いていた。

 本当は婚約発表の翌日にわたしへのサプライズプレゼントとして、計画されていたらしいのだが、わたしがあの状態だったせいで延期になって、婚約発表半月後の今日になったらしい。

 うぅ、わたしのために計画してくれていたのに、わたしのせいで台無しにしてしまって申し訳ないーーが、終わったことをいつまでもくよくよしていても仕方ない!二人はわたしを喜ばせるためにここまで連れて来てくれたんだから、今日は余計なことは考えず、全力で今を楽しむぞー!そう、余計なことは考えずに!


 クシェル様がわたしのことを恋愛感情的に『好き』かもしれないと分かってから、なんかクシェル様の距離感が以前に増して近いように感じる。

 移動の際いつも手を繋いでいたのが、時々腰を抱かれるようになり、食事の時のアレは昼食時のみクシェル様の膝の上に乗せられるようになり、頬擦りされる回数も増えたように思う。

 ここまでもクシェル様の馬に一緒に乗せてもらって来たのだが、終始「そんな必死にしがみ付いてコハクは可愛いな」「俺がコハクを落とすわけがないだろ?」「ハァ本当可愛い」と何度も頬擦りされた。

 し、心臓がもたないよ!!

 でも、そんなクシェル様の愛情表現を嫌だとは思っていない自分もいてーーむしろ嬉しいとさえ思う。

 もしかして、わたしもクシェル様のことがそういう意味で?いや、でも……うぅ~自分が自分で分からないよー!!


 クシェル様に馬から降ろしてもらうと、わたしは不整脈の原因であるクシェル様から逃げるように湖へ向かった。

「あ!急に走ると危ないぞー」

 クシェル様が心配して声をかけてくれる。それに内心『逃げてごめんなさい』と謝りつつ「はーい」と返事を返した。


「本当、すごく綺麗」

 近くで見ると更に綺麗。
 凪いだ水面に周りの木々が鏡のように反射して、そこに太陽の光も合わさりキラキラと輝いている。湖の周りの花々も色や大きさに規則性はなく、色々な花が自由に咲き乱れている。その花々が生き生きと思い思いに咲いている様は壮大で力強く、何者にも縛られないその様はとても美しい。

「コハクは本当に自然が好きなんだな」

 湖の辺りに立ち尽くし目の前の光景に魅入っていると、その間に追いついたジークお兄ちゃんが声をかけてくれる。

「だって、自然には誰かを感動させよう、美しくあろうなんて意思はないんですよ、それでもこんなにも美しい。個々が生きるためにそうあるだけなのに、結果的に目の前の美しい光景が出来上がっている。個々の生きようという意志がこれを作り出した!これは奇跡です!人の意思で作られたモノよりも何倍も美しく、素晴らしい!」
「生きようという意志……なるほど」
「気に入ってくれたか?」

 クシェル様も追いつき、声をかけてくれる。

「はいとっても!」
「それは良かった」

 そう微笑みながら、走って乱れたわたしの髪を直してくれるクシェル様。

 紳士的で、イケメン!好き!

 ッハ!いやいやこれはそういう好きじゃないから!紳士的でスマートで優しくて素敵だなぁっていう好きだから!恋愛的にではなく、人として!

「あ、ありがとうございます……あ、汗をかいたのでサアニャに拭く物借りて来ます!」

 そう言ってわたしは、再びクシェル様から逃げた。

「どうしようサアニャ!クシェル様がイケメン過ぎて心臓がもたないよ!」
「え?」
「え?」
「ええー!そっち⁈そっち行きますか!」
「そ、そっち?どっち?」

 ハンカチを貰いに行くふりをして、サアニャに助けを求めたら、何故か酷く驚かれた。しかも『そっち⁈』ってよく分からない驚かれ方ーー何と何を比べて?

「ま、魔王様は束縛系のわがまま男ですよ⁈」
「わがまま……」
「それに引き換えっ、と、兎に角考え直してくださいお願いします」
「お願、え?待って話が全然見えてこなっ!」
「さっきから二人で何をコソコソと話をしているんだ?汗はもう拭けただろ?」
「く、クシェル様……もう、驚かさないでくださいよ」

 サアニャと小声で話していたらいきなり背後から肩を掴まれた。かと思ったらクシェル様の声が聞こえて振り返ると、案の定わたしの肩を掴んでいたのはクシェル様だった。

「コハクの帰りが遅いから……」

 笑みから一転、シュンと眉を下げるクシェル様。

「あ、すみません心配かけてしまって」
「シイナ様とは、お昼の打ち合わせをしていたんです」
「昼食?」

 起点を利かせてさっきの話の内容を誤魔化してくれるサアニャ。

 流石サアニャ!グッジョブ!

「は、はいそうなんですよー。実は……」



「これ全部コハクが作ったのか⁈」
「はい、口に合えばいいんですけど……」

 実は今日出かけると聞いて、お弁当を作ってこっそり持って来ていたのだ!

 サンドイッチに唐揚げ、卵焼き、野菜の肉巻きに彩野菜のポテトサラダ、フルーツの詰め合わせ等々。少々張り切り過ぎた気もするけど。

 だって二人の喜ぶ顔が見たかったからーーというのもあるけど、久々の料理が楽し過ぎた!

「ん!美味い!しかし、食べたことない味だ香辛料の香りとほのかな酸味?しかしまろやかで食べやすい……これは?」
「それは卵サンドです。マヨネーズと塩コショウで味付けしています」
「マヨネーズ?」
「えと、卵と酢と油で作る調味料です!」

 この世界にはマヨネーズが無かったので作った。見よう見真似だからやっぱり市販のもののようにはいかなかったけど、どうにか分離することなく綺麗に出来た。慌てず丁寧にちょっとずつ油を加えていくのがコツだ!

 クシェル様はマヨネーズの味が気に入ったのか卵サンドをおかわりしてくれる。

「あ、ジークお兄ちゃんにはこれを!」
「お、俺にか?」
「はい!是非!」

 ハムと野菜のサンドイッチを手に取ろうとしたお兄ちゃんにすかさずお兄ちゃんのために用意したバケットサンドを手渡す。

「ありがとう。ん、ん!美味い!ピリッと辛いのに、甘い?でもそれがこの淡白な肉に合って、凄く美味い!」
「口に合って良かったです!それハニーマスタードっていうんですよ」

 お兄ちゃんに用意したのはグリル鶏のハニーマスタードサンドだ。お兄ちゃんはパンチのある味付けもだが、こう見えて甘い物も結構好きなのだ。この前おやつのスコーンにジャムを通常の二倍くらい乗せていたのを見た!

 それで思い付いたのがハニーマスタードだ。これならお肉にも合うし、パンも食パンではなくバゲットにすることで食べ応えを出してみた。

「ハニーマスタード?」
「ハチミツ、花の蜜と香辛料を合わせた調味料です」
「ハチミツ⁈ってあの黄金色のやつだろ?あれ美味いよな!こういう使い方もあるんだなぁ」

 ハチミツと聞いて目を輝かせるジークお兄ちゃん。どうやらハチミツは大好物だったらしい。

「フフ、ハチミツが好きなんてますます熊さんみたいですね」
「く、熊⁈」
「ッグ⁈ゴホゴホ」

 熊さんみたいだとわたしが笑うと、ジークお兄ちゃんは驚き、唐揚げを食べていたクシェル様は盛大にむせた。

「あ、本物の熊はハチミツが好きなわけじゃないんでしたね」
「本物の?」
「えと、ハチミツが好きなのは空想のキャラクターの熊さんで、どうしてもそのイメージが強くて」
「コハクにはジークが熊に見えるのか?」
「いや、熊に見えるっていうか、最初見た時熊みたいに大きい人だなぁと思ったのを思い出しまして」

 なんで熊に似てるって言っただけでこんなに驚かれるんだろう?もしかして、人を動物に例えるのは何か良くない意味が?

 名前の件みたいにこの世界独自のルールみたいなものがあるのかもしれない。この世界には獣人族も存在するしーーあり得る。

「……コハクは熊、好きか?」

 そう問うジークお兄ちゃんの声は何処か不安げだ。

「え?あ、はい好きですよ、本物は見たことないですけど……全体的に丸くて大きくて可愛いですよね。耳とか尻尾とかちょんってついてる感じが更に可愛いです!」
「そうか、なら良い。すまない変な反応をして困らせた」
「い、いえ全然……」

 ッハ!もしかして、ジークお兄ちゃんは熊に似てるって言われることになんらかのトラウマが⁈見た目が熊みたいだと街の人に恐れられているとか?熊みたいに大きい人は子供に人気がないとか?

「わ、わたしはジークお兄ちゃんが大きくても怖くないし、むしろ好きです!大きい方が強くて頼り甲斐があるし、カッコいいし男らしいし、何者からも守ってくれるっていう安心感がありますよね!あと、あと」
「も、もういい分かった」
「あ、だから熊さんみたいっていうのも別に変な意味じゃなくて、ただ可愛いなぁと思って」
「わ、分かったから!もうその辺で勘弁してくれ」
「あ、すみません」

 手で顔を覆い俯いてしまうジークお兄ちゃん。励ますつもりが返って困らせてしまったようだ。

「あれは照れているだけだから気にしなくて良い」
「本当?」

 ジークお兄ちゃんの顔を覗くと耳まで赤くなっていた。

 本当だ……か、可愛い

「それよりこの芋のサラダ美味いな!」
「あ、それにもマヨネーズが使われているんですよ」



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