勇者でも渡り人でもないけど異世界でロリコン魔族に溺愛されてます

サイカ

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なんだかとってもエッチぃよー!

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 クシェル様はわたしを横抱きの状態でベッドまで運ぶと、そのままそこに腰を下ろした。
 そして、その状態のままいつものように今日一日のことを聞かれーー案の定「羨ましい!俺もコハクからキスしてほしい!」という流れになってしまった。

「ジークにはしたんだろう?」

 恥ずかしさから少し戸惑いを見せると、すぐにそんな言葉が返ってくる。

「ぅ、そ、そうですけど……」

 わたしにとってそれはそんなに簡単なものじゃない。それなりの覚悟と勢いがないと、あんな恥ずかしいこと出来ない。

「ジークはよくて俺は」
「ち、ちょっと待ってください!今!今すぐ心の準備をしますから!」

 だからそんな泣きそうな顔しないで!どちらかが良くてもう片方がダメなんてことないから、絶対に!二人の笑顔が一番大事だから!

 そして、数回の深呼吸の後わたしは意を決して、ジークお兄ちゃんの時同様『ちぅー』とクシェル様の頬に少し長めのキスをした。

「コハクありがとうー!」
「っーー⁈」

 すると、クシェル様もすぐにキスを返してくれた。のだがーー

「狡いぞクシェル!俺は我慢したというのに!」

 クシェル様の唇が触れた場所は、わたしの唇だった。

 わたしのファーストキスはなんの前置きも心構えも無く突然に奪われてしまった。

「い、今口に……っわ!お、お兄ちゃん⁈」

 口にキスされたことに驚いたのも束の間、急に視界がグリンっと回転したかと思った次の瞬間、わたしはジークお兄ちゃんの腕の中に居た。
 そして、ヒタリと頬に添えられた手と、鼻が触れそうなほど近くにあるジークお兄ちゃんの顔。

 ーーなんか、嫌な予感がする。

「クシェルに許したんだから、勿論俺も良いんだよな?」

 そう問うジークお兄ちゃんは表情がなく、こちらの答えを求めているわけじゃないのが分かる。

「待って!別に許したわけじっんんー!!」

 嫌な予感的中!心を整理する暇もなく再び口を塞がれてしまった。更に今回は『チュっ』という軽く当たるものではなく、例えるなら『ブチューっ!』といった感じだろうか?唇を強く押し付けられた。しかも長い!!

「プハっ、ま、まって」
「はぁ、もう一回」

 顔を背けどうにかキスから逃れる。がすぐに頬に添えられた手によって上を向かされ、再び口を塞がれる。

「コハクここ開けて」

 ジークお兄ちゃんは数秒のキスの後一旦口を離すと、そう言って親指でわたしの唇を押す。

 あ、開けるって何を⁈口を?な、何のために?

「ほら、良い子だから。な、あーん」

 そう言いながらお手本のように自ら口を開けて見せるジークお兄ちゃん。毎日のように繰り返されたその慣れたやり取りに、考えるより先に身体が動く。

 ジークお兄ちゃんを真似て口を開き与えられるものを待つ。何が入ってくるかも分からないのに、ただお兄ちゃんを信じてーー

「良い子」
「あーんんっ⁈」

 そういう経験は勿論、親バカな父親から溺愛されて育ったわたしはそういうことに関する知識もないに等しい。
 だから当然キスに唇を触れ合わせる以上のものがある事も、それが愛を伝える行為の一つであるということも知らない。そんなわたしにその行為は恐怖でしかなかった。
 
 自分の意思とは関係なく動くそれが、自分の中を我が物顔で蹂躙するそれがただただ怖くて、逃げたかった。
 でも、後頭部を抑えられてはそれも出来ない。しかも今自分の中にあるそれはジークお兄ちゃんの舌なのだ。無理に動いたり口を閉じて痛い思いをさせたくない。ジークお兄ちゃんを傷付けたくない。

 ただその一心でわたしは口を開け続けた。

 お兄ちゃんの舌はわたしの舌の上を擦り、歯をなぞり、上顎を撫でる。

「んんっ!!」

 その瞬間、ゾワゾワと耳の時に似たあの感覚が走り身を震わせる。ジークお兄ちゃんはわたしのその反応が気に入ったのか、執拗にそこばかり撫でてくる。

 あ、ダメ、そこダメ!ゾワゾワが次から次へと押し寄せてきて、思考が霞む。頭も体もふわふわとしてまるで自分のものではないみたい。
 その自分が自分でなくなりそうな感覚がまた怖くて、それから逃げようと、舌でジークお兄ちゃんの動きを防ごうとする。しかし、逆に自分のそれを絡め取られ次は舌裏を舐められる。

「んあっ!」

 その瞬間またあの感覚が身体をかけ、甲高い声が出る。

 もうヤダっ、こんなの知らない、怖い、こんなの自分じゃない!

 自分の身体のはずなのに何一つ言うことを聞かない。理解出来ない感覚が身体を襲い、勝手に身体が跳ねて、出したくもない声が出る。息も苦しくて、頭も目も霞んで、自分で自分が分からなくなってくる。それが怖くて仕方ない。

 何でジークお兄ちゃんはこんなことするの?何でそんな怖い目でわたしを見るの?怖いことするの?優しくしてくれないの?もしかして、怒ってる?

「っはぁ、コハク可愛…っな!何故泣いている⁈」
「じ、ジークお兄ちゃんが怒っ、たぁ」
「お、怒った⁈俺が?何故⁈」
「わっ、わたしが我慢っ、させたから、だから酷い子って」
「はあ?お前コハクにそんなこと言ったのか⁈」
「い、言ってないぞそんな……あ、いやアレは」

 ジークお兄ちゃんは言った、ジークお兄ちゃんに我慢を強いるのは酷いことだって。そして、恥ずかしいのを我慢したら褒めてくれた、良い子だなって。だからいつまで経っても、口へのキスを嫌がり「待って待って」とジークお兄ちゃんを止めようとしたわたしはーー

「良い子じゃない、悪い子だからっ、だから怒ってあんなこと」
「あ、あんなことって何だ⁈ま、まさかさっきのキスがそんなに嫌だったのか?え?でもコハクも途中から応えてくれて」
「キスじゃない!あんなのわたしの知ってるキスじゃない!」

 キスってもっとキラキラしてて幸せに満ちたもののはずだ。漫画とかではいつもそう描かれていた。

「あんな怖くて苦しいのキスじゃない!」
「怖くて、苦しい……だと」 
「お前……完全に見誤ったな」
「ううっ、あんなことするお兄ちゃんなんてお兄ちゃんじゃないっ、怖いことするお兄ちゃんなんて嫌ぃ「待ってくれ!頼む違うんだ!」

 怖いことするジークお兄ちゃんから逃げようと暴れたら、腕を取られ逃げられなくされてしまった。

「嫌だ!怖い!離してー!」
「こ、怖がらせてしまったのは謝る!だから、そんなこと言わないでくれ!さ、さっきのはコハクが可愛すぎてちょっと加減を間違えただけだ!まさかコハクがそこまで初心だとは思わなっ、と、とにかく違うんだ!」

 わたしは必死にジークお兄ちゃんの腕を振り解こうとするがびくともしない。その圧倒的な力の差がまた恐怖を増大させていく。

 嫌だ!怖い、怖いのに、逃げたいのに逃げれない!怖い怖い怖いっ!

「ジーク流石に……取り敢えず今日のところは諦め」
「アレは恋人同士では普通のことだ!みんなしてることなんだ!」
「み、みんな……?普通⁈」
「そ、そうだ!コハクは知らなかったのかもしれないが、アレは相手に気持ちを伝える手段の一つなんだ!決して怒りをぶつける為にしたわけじゃない!そもそも俺は怒ってなどいない!」
「き、気持ちを?」
「好いている者には触れたいと思うだろう?手を繋いで抱きしめて頬を摺り寄せて温もりを感じたいと、それと同じだ。肌を合わせるだけでは足りない!もっともっと相手の温もりを感じたい、自分を受け止めてほしいと思ったが故の行為だ!わ、分かってくれ、頼む」

 そう言って、ジークお兄ちゃんは握っていたわたしの腕を解くと、手を握り直しそこに優しくキスをした。

「えと、つまり……お兄ちゃんは、わたしのことが好きだから、その気持ちを伝える為にあんなことしたってこと?」
「あんな、こと……そ、そうだ」

 そして、世の中の恋人達はあんな怖くて苦しいのを耐えてるんだ。相手の為に、それが相手からの愛だと知っているから……。

「ご、ごめんなさい。わたし、知らなくて」

アレがジークお兄ちゃんからの愛だと知らなくて、だから……決して、ジークお兄ちゃんからの愛を否定したかったわけじゃないんだ。

「コハクが謝ることじゃない!悪いのは俺だ。俺が色々と先走ったから……コハクはそういうことには疎いと知っていたのに、配慮が足りなかった。すまない」
「あー、取り敢えず良かったな誤解が解けて、って事で今日はそろそろ」
「もう一度チャンスをくれないか!本来アレは怖いものでも苦しいものでもないんだ!」
「え⁈で、でも……」

 アレがジークお兄ちゃんからの愛だってことは分かった。でも、だからといって今すぐにそれを受け止められるかはまた別の話だ。アレはそれだけ怖かったんだ。苦しかったんだ。受け止めるにしても、今は少し時間が欲しい。

「頼む、やり直させてくれ!」

 そんな泣きそうな顔で必死に頼まれたらーー嫌なんて、言えるわけがない。

「うぅ、い、一回だけ、なら」
「あ、ありがとうコハク!今度こそ絶対良くしてみせる!」

 そう宣言するとジークお兄ちゃんは『ちゅっ』と優しく頬にキスをした。

「いや、隣でそれを見せられるこっちの身にもなってくれないか!」

 そ、そうだった!隣にはずっとクシェル様が居たんだった!今までのことクシェル様にずっと見られて、そして、今からすることもーー

「あ、待って、やっぱり恥ずかしっ!」
『ちゅ』
「好き」
「ひぇっ!」
「好きだ、大好き」
『ちゅ、ちぅ』
「あ、まっ」
「コハク、愛してる」

 ま、まま待って!ちょっと待って!こんなの聞いてない!

 頬におでこに、目尻にと至る所にキスをされて、その度に「好きだ、愛してる」と愛を囁かれる。そしてーー

「あ、んっ」

 わたしの目を見て、怖がっていないことを確認した後、『ちゅ』と優しく唇にキスを落とされる。

「っはぁ、こんなんじゃ足りない」

 チロっと自分の唇を舐め、ため息を漏らすジークお兄ちゃん。

「……え」

 え、エッチぃ。なんだかとってもエッチぃよー!

 そして、次に何を求めているのか示すように、わたしの唇に人差し指と中指を添えるとクッと僅かに力を込める。

「コハクのことが好きだから、愛してるから、コハクのことをもっと近くに感じたいから、ここに入りたい」
「んぁっ⁈」

 ゆ、指⁈指が口の中に!

「あ?うあっ」
「この滑らかで、薄く小さな舌も」
「っう、あ、あがっ」
「綺麗に生え揃った小さく滑らかな歯も」
「あんんっ!!」
「指二本程度で覆えてしまえるここも、そして、ここを撫でられて目を潤ませながら身体を震わせるコハク自身も」
「んぁ、らぇっ、んんっ!そこぁ」
「可愛いくて仕方ない」

 上顎ダメ、そこはゾワゾワして頭がーー

「可愛いよ、凄く可愛い」

 あ、耳、今耳撫でちゃダメ!おかしくなっちゃう!

「らめっ、こぁっ、こぁぃ」

 ふわふわと思考が霞んで来て、分からなくなってくる。自分が何故こんなことをされてるのか、なんでジークお兄ちゃんが笑ってるのか、分からない。

「怖い?何が怖い?」
「あ、あたまふぁふぁしてこぁっ、分かんなくなぅのこぁい」
「ふあ、ふわふわ?」

 ジークお兄ちゃんは少し考えた後、ニッと口角を上げ、嬉しそうに目を細めた。

「それは怖いことじゃない。大丈夫」

 大丈夫じゃない。こんなの普通じゃない!普通じゃないのはーー

「むしろ良いことだよ。偉い偉い」
「んあ⁈」
「ちゃんと俺の気持ちを受け止めてくれてる証拠だ。良い子」

 良い子?これが?このふわふわは良いことなの?

「今度は一緒にふわふわなろうなぁ」

 ジークお兄ちゃんはそう言ってわたしの口から指を抜くと、口を開けた。

 わたしはそれを迎え入れるために口を開けたまま目を閉じた。

 もう怖くない。このふわふわは良いことだから、わたしがジークお兄ちゃんの想いを受け止めてる証拠。そして、互いの舌を合わせて一緒にふわふわになるのはきっともっと良いこと。

 いっぱい好きって伝えて、受け止めてを繰り返す。

「んちゅ、んぁ、あ、ぅちゅっ」
「良い子、ん、こういう時は鼻で息するんだ。そしたら苦しくないから、な」
「ん、ぅん、おにぃっ、ぁん」

 そうか、怖いのも苦しいのも、わたしがこの愛し方を知らなかったからか、だから上手く応えられなくて、でも、今はーー

「っはぁ、なぁ怖くないし苦しくないだろ?」
「ん、らいじょうぶ、だった」
「伝わったか?俺の気持ち」
「うん、ふわふわいっぱい来たぁ。お兄ちゃんは?いっぱい来た?」
「嗚呼いっぱい来たよ」
「へへ、おそろいだぁ。おそろい好き」

 お揃いは仲がいい証拠だから。同じ気持ちを共有できるのは、それだけ相手のことを想い分かり合えてる証拠だから。

 好きな人にいっぱい想われて、自分の気持ちも受け止めてもらえるなんてーー

「幸せ」

 わたしはそのままふわふわと微睡みに身を委ねた。



「お前ら完全に俺のこと忘れてるだろ」


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