勇者でも渡り人でもないけど異世界でロリコン魔族に溺愛されてます

サイカ

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そしたら、安心出来るから

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「おはようコハク」
「おは、よう?」

 気がつくとわたしは自分のベッドに寝かされていて、声のした方へ視線を動かすとそこには、椅子に座りわたしを愛おしそうに見つめるジークお兄ちゃんの姿があった。

 あれ、わたしいつの間に寝たんだろう?

 確か今日は朝から二人のために料理をして、でもクシェル様は来れないってなって悲しくて、でもジークお兄ちゃんが来てくれたから嬉しくて、「美味かった、ありがとう」って喜んでもらえて、キスしてもらって、ふわふわで幸せで、もっとふわふわなろうって言われて……

「すまん少しやり過ぎたな、大丈夫か?」

 そんな優しい言葉と共に、労わるようにゆっくりと頭に伸ばされるジークお兄ちゃんの手。大きくて暖かい大好きな手。でも、それだけじゃない事をわたしは知っている。知ってしまったのだ、その手が優しいだけじゃない事をーー

「いにゃああーーー!」

 眠る前のことを全て思い出したわたしは気がつくと、思いっきりその手をはたき落とし、逃げていた。

 安心出来る人の腕の中へーー
 

「クシェルさまー!!」
「っこ、コハク⁈」

 運良く、会議は既に終わっていたようで、クシェル様は執務室でいつものように書類に目を通していた。
 そして、部屋に入って来たのがわたしだと分かると、すぐに席を立ちわたしの元へ駆けてきてくれる。わたしはそんな優しいクシェル様の胸に飛び込み、泣いた。

「ジークお兄ちゃんがっ、お兄ちゃんがぁー!!」
「ああ゛⁈ジーク、だと?」

 わたしの涙の原因がジークお兄ちゃんと分かるや否や、滅多にジークお兄ちゃんに怒りを向けないクシェル様がーーキレた。

 その地の底から響くような低い声に縮み上がったわたしは、頭が冷え今更ながら自分の失態に気づく。

「あ、し、仕事中だったのに確認も取らずにごめ「そんな事はどうでもいい」
「ひぇっ!」
「で、何をされたんだ?事と次第によっては……」

 頭の中でジークお兄ちゃんを思い浮かべているのか空を睨み、無音で言葉を続けるクシェル様。
 しかし、声に出してもらわないとわたしは口の動きだけでは、この世界の言葉が分からない。クシェル様も絶対それが分かってやってる。そこに底知れない恐怖を感じる。

「あ、い、言えない……」

 言ってしまったらきっと、ジークお兄ちゃんの何かが終わる。

「言えないようなことをされたのか?」
「っ……」

 クシェル様のその言葉に思わずビクッと反応してしまった。こんなの肯定しているのも同じだ。

 だって、あんなこと人に言えない!あ、あああんなところに指を押し付けられて捏ね回されたなんて!挙げ句の果てには、わたしが寝てる間に綺麗にされてパンツまで変えられていたなんて!言えるわけがない!

 された事の淫らさに今更気づいて、一瞬で顔が熱くなる。

「許さん、ジークの奴絶対に許さん」

 クシェル様はそう低く呟くと、無言でわたしを身体から離し、部屋から出て行こうとする。

「っえ⁈ま、待って!駄目!暴力反対!」

 わたしはそんなクシェル様の袖を掴み必死に引き留める。

 だってクシェル様が何をしに行こうといてるかなんて、考えなくても分かる。
 肌を突き刺すような殺気、固く握られた拳、そしてさっきの言葉ーー絶対ジークお兄ちゃんに酷いことをしに行くつもりだ。

「そんなのわたし望んで無い!」

 じゃあ何を望んでここまで逃げて来たのか。わたしが泣いて逃げて来たらクシェル様がどんな反応をするか、そしてわたしを泣かせた相手をどうするかなんて容易に想像出来ただろうにーー

 わたしを見るルークさんの冷たい目がそう言っている気がした。

「わ、わたしはジークお兄ちゃんを叱って欲しくて来たんじゃない。ただ、クシェル様に抱きしめて、慰めてほしくて……」

 ーーそしたら、安心出来るから

「っ!そ、それはつまり……コハクは俺に甘えに来てくれたということか?そうか、そうだったのか。それなのに俺はっ、クソっ、せっかくコハク自ら俺に甘えて来てくれたというのにそれに気づくことも出来ず、怒りの感情に呑まれ、よりにもよってコハクの嫌うことをしようとするなんてっ、俺は、俺って奴は」
「クシェル様?」

 ドアノブから手を離し、こっちを向いてくれたのは嬉しいけど、今度は何故かその手で顔を覆い俯くクシェル様。
 そんなクシェル様の苦しそうな姿が心配で声をかけようとしたら両肩を掴まれーー

「すまない。俺が間違っていた。そうだよな今俺がすべきことはコハクを泣かせたあのクソ野郎に死ぬほど後悔させてやることじゃない!泣いているコハクを抱きしめていっぱい甘えさせてやることだ!」

 謝られたかと思ったら何か色々と凄いことを言われてしまった。顔を青くすれば良いのか、赤くすれば良いのか……。

「さぁ安心して飛び込んで来るといい。俺が全力で受け止めてやる!」

 そう言って盛大に両手を広げ、迎え入れる気満々のクシェル様。

 コレはやらないといけない感じのやつ?目が覚めてから大分時間も経って、冷静さを取り戻した今、それはちょっと、いや、かなり恥ずかしいんだけど……。

「遠慮することはない!さぁ!」

 うぅ、期待のこもった目が、その無邪気な笑顔が眩しい!っか、覚悟を決めろわたし!自分の発言に責任を持つため、あの笑顔を守るため、そしてジークお兄ちゃんの命を守るため!恥を捨てろーー!!

「……あ、ありがとう!クシェルしゃま大しゅきーー!!」

 あ、死にたい。勢いに任せてヤケクソにやったら、盛大に噛んだ。しゃまって、しゅきって何⁈わたしは舌足らずな幼児か!う、うぅ死ぬほど恥ずかしい……。

 でもクシェル様はそれをえらく気に入ったようでーー

「ッグ、か、可愛過ぎる!まさかこれほどまでとは……ありがとう。夢を叶えてくれてありがとう!」

 泣きながら感謝されてしまった。


 その後、クシェル様は何があったのか聞かないでいてくれたし、ジークお兄ちゃんを怒らない約束もしてくれた。
 そして、その日の夕食前、ジークお兄ちゃんが凄い勢いで謝って来て、わたしもそれに「あの時は驚いて逃げてしまっただけで、怒ってない」と伝え、一応仲直り?出来た。はずだったんだけどーー


 アレから2日、今日もジークお兄ちゃんとは気まずいままだ。

 何度誤解を解こうとしても、ジークお兄ちゃんは「無理しなくていい」「気を遣わせてすまない」と言って全然信じてくれないし、手を握るどころか目すら合わせてくれなくなってしまった。

 それもこれもわたしが未だにジークお兄ちゃんの手を意識してしまっているのが悪いんだ。

 視界に入ればつい目で追っていまうし、(わたしに触れるためではないと分かっていても)それが動き近づいて来るだけでビクついていまう。不意に体に当たりでもしたら思わず声を出して距離を取ってしまう。

 こんなの怖がっていると誤解されても無理はないーー


「アレでも我慢していた方なんです。多めに見てやってはくれませんか?」

 風呂上がりの毎日のケアの途中、サアニャからも、そんなことを言われてしまう始末。

 でも、仕方ないじゃん……どうしても思い出してしまうんだから。
 あの大きくて暖かい手がわたしの大事な所を包むように撫でるあの光景を、あの無骨で節くれだった指を入り口にピタリと合わされクチュクチュと捏ね回された時のあの熱を、上のちっちゃな粒をクリクリと撫でられ、押し潰された時のあの強烈な感覚を!

 意識するなって言う方が無理な話だ!

「多めにって、わたしは別に怒ってるわけじゃ……ん?ちょっと待って『アレでも我慢していた』ってどういうこと?」

 わたし結構際どい事までされてた気がするんだけど⁈我慢、してたの?アレで⁈

「そうは見えませんよね。でも本人はアレでも相当我慢してるつもりなんです。熊獣人は獣人族の中でも特に愛が重っ、愛情深くて番への執着が強いことで有名ですから」
「執着?……ジークお兄ちゃんもその血を引いてるから、そうだと?」
「いえ、もしかしたらそれ以上かもしれません。本人曰く、シイナ様を見つけたその瞬間、『運命』を感じたそうですから」
「運命……もしかして『運命の番』ってやつ?でもわたしは」
「本物の運命に魔力なんて関係ありません。なんせ、魂で求め合うんですから。魔力の相性はその結果であって、理由じゃない。皆勘違いしてるだけです。魔力を持っていようがいまいが、獣人族として純粋だろうがそうでなかろうが、本人が『運命』だと思えばそれは運命なんですよ。逆に魔力を流し合わないと確認出来ないのなら、そんなの運命でもなんでもありません!それはただ都合の良い相手ってだけです」

 そう言ってサアニャは視線を落とし、ため息を漏らした。

 過去に獣人族と何かあったのかな?それも『運命の番』に関わる何かーーもしかして、昔好きな人に魔力の相性を理由にフラれたとか?当時付き合ってた、その人の前に『運命の番』が現れて、別れることになってしまったとか?

「まぁつまりですね、長い間決して自分のものにはならないと思っていた『運命の番』が自分を選んでくれて、更にはキスまでしてくれたわけですよ!そんなの、理性的でいられる方がおかしいんですよ!普通は」
「そ、それであのキスじゃないの?」

 ふわふわするエッチぃキス。

「まさか。言ったでしょ?熊獣人は愛情深くて番への執着が強いんです。もし、あの時あの人が本能に負けていたら……今もシイナ様はベッドの中にいたでしょうね、確実に」
「それは、どういう……もしかして監禁⁈」

 え、怖い。咄嗟に頭に浮かんだ監禁という単語もそうだけど、サアニャのその笑みが怖い。

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