エッチな精気が吸いたいサキュバスちゃんは皆の癒しの女神

のっぺ

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第五十四話『ニーチャ3』〇

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 淫紋とは何か、その答えを得る前に変化が起きた。ルルニアの頭の両脇から太い角が生え、翼が刺々しい形状へと変わる。初めてを遂げた夜の形態へと変貌していった。

「────この姿は私のサキュバスとしての力を可視化させたものです。角が揃っていた時のドーラと比べて六倍、ニーチャと比較して数十倍、それぐらいの強さがあります」
 瞳の色は赤ではなく、翡翠の色を保っていた。

「ルルニア、かっこいい。お母さんより強そう」
「これほどの強さに成長したサキュバスはそういません。グレイゼルと愛し合ったからこその成果です」
「愛し合う、すごい。ニーチャもやってみたい」

 逸る思いのニーチャをトンと押し、仰向けでベッドに寝かせた。次いで身体の半分も覆えていない布切れをどかし、胸と腹と股を露出させた。改めて見ても乳房の大きさが異様だった。

「ふふっ、私にもこんな時期がありましたね」

 乳房の表面をつつかれ、ニーチャがくすぐったそうに笑みをこぼした。
 ルルニアは腕と足を伸ばすように指示し、無防備となった腹に指を当てた。

「おー……? ────ふぃみゅ!?」
 指の先端の光が眩く強まった瞬間、ニーチャは悲鳴と共に背筋をのけぞらせた。反射で伸ばしていた腕が戻り、異常の発生源たるルルニアの手を払った。

「あっ、えとその、ごめんなさい!」
「別に痛くないから構いませんよ。ただそうやってお腹を隠されると続きができませんので、淫紋を刻みやすいように手をどけていただけますか?」
「う、うん! 次はがんばる。ジッとする!」

 ニーチャはシーツを力いっぱい握りしめ、眉間にシワを寄せて耐えの姿勢になった。だが下腹部に指の光りが触れると、「ひゃう!?」と言って両足を跳ね上げた。

「ち、ちがうの! 動かないようにギューってしてるんだけど、お腹を触られたらキュウッてなって身体が動いちゃうの! ほんとにほんとだよ!」

 恐らく『キュウッ』の正体は性欲に類する快楽だ。サキュバスなのでそういった感覚は敏感だが、今まで感じることが無くて戸惑っている。無知で無垢が故の動揺だ。

「……瞳の拘束術でニーチャの動きを止められないのか?」
「出来ませんね。それだけ淫紋を刻む作業は集中が要ります」
 ルルニアの声に遊びは無く、終始真面目な顔をしていた。

 このままでは見限られると思ったのか、ニーチャは目に涙を溜めて焦った。もう一度腕を目いっぱい伸ばし、寝そべった状態で俺を見つめ、心細そうにお願いをした。

「あのねあのね。ニーチャの手、にぎってて欲しいの」
「手?」
「お手てか足、どっちかだけならちゃんと我慢するから」

 身体接触はご法度という取り決めだったが、ルルニアは無言で頷いた。言われるままニーチャの小さな手を握ると、ホッと安心した微笑みを浮かべてくれた。

「お兄さんの手、おっきいしあったかいね」

 繋いだ手と手から信頼が伝わってくる。それ自体は良い事だが、構図が問題だった。大人二人が幼い子をベッドの上で抑えつけているようにしか見えず、凄まじい犯罪臭がした。

「準備はできましたか? 特別にグレイゼルの力を借りることを許したんですから、今回で決めますよ。足は絶対に上げないで下さい。閉じるのもダメです」

 ニーチャは「うん」と言って俺の手を強く握った。
 ルルニアの指が臍の下辺りに触れると、電流のごとき魔力の波動が走った。ニーチャは明滅の度に身をよじるが、約束通りに足をシーツに押し付けて耐えていた。

「ひぃぅきゅ!? んん、はぁうくひゅ!!?」

 ちょっとずつ声に艶が混じり、顔にも赤みが出てくる。
 小ぶりな乳首がツンと立つのを見て、俺は目を逸らした。

「話を戻しましょうか。今重要なのは私の力がニーチャを凌駕しているという点です。これほどの差があるからこそ、同族相手でも刻印を刻めるわけです」
「は、え? この状態で説明を始めるのか?」
「あぅぅん!? ふぅいっ、きゅぅぅいっ!?」
「やはり愛し合うための課題となるのは性行為で相手を殺してしまう部分です。なのでそこを重点的に抑制するようにします。刻印で強引に精気の吸収を抑えるわけですね」

 困惑する俺と真面目なルルニア、加えて身悶えするニーチャがいる。この状況でムラつきそうになっている自分がおかしいのだろうか。たぶんおかしいのだろうなと思った。

「…………精気の吸収が抑制されば人間側の負担が減る。サキュバスは必要な分だけ食事を摂れる。両方にとって利のある行為ってわけだな?」
 説明を噛み砕くと、ルルニアは淫紋を刻む手を止めずに肯定した。
 
「元々人間一人分の精気で二ヵ月ぐらい持つんです。お腹の減りを一週間度ぐらいに調整すれば、片方にだけ負担がのしかかることもありません」
「あうっ! おなかにゃか、ジクジクしゅるっ!?」
「一度精気を吸い尽くす味を覚えたサキュバスにこの方法は使えません。刻印による制限に我慢が効かなくなり、精神に異常をきたすはずです」
「おにぃひゃん、手、もっと強くっ、あぁぅん!?」

 我慢の限界が近いのか、ニーチャは無意識に抵抗を強めた。シーツに押し付けていた足が離れ、ルルニアをどかそうと暴れる。だが接触は翼の防備によって防がれた。

「上質な精気を持った人間と強大な力を持つサキュバス、加えてニーチャのように人殺しの経験がない無い子、それら三点が揃って初めてこの選択が取れます」

 ルルニアは淫紋の下部分に指を当て、ワレメの真上付近までツゥと一本線を引いた。あまりの気持ち良さからかニーチャはカヒュッと息を吐き、声にならない叫びを上げた。

「はぁうはふ……あぁう、はう……ひゅう、はふ……」
「よく耐えましたね。これで作業は終了です」
「え、えへへ……ニーひゃ、がんばった……えぅぅ」

 内股になった足の間から尿が漏れている。肢体は断続的に震え、乳房の谷間に大量の汗が溜まっている。そっと繋いだ手を離すと、ニーチャはかすれ声で感謝を紡いだ。

「これで……ここに……いれる? ちゃんと……あいしあえる?」

 もちろんだ、と言って頭を撫でてやった。
 こうしてニーチャはこちら側のサキュバスとなった。
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