エッチな精気が吸いたいサキュバスちゃんは皆の癒しの女神

のっぺ

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第五十五話『ニーチャ4』

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 淫紋は子宮の真上を起点に描かれており、複雑怪奇な形状をしている。一点の曇りもなかった白い肌に黒い線が刻まれている様は、どこかイケナイ雰囲気を醸し出している。

「これがニーチャの……」
「身体に変な感じはありますか?」
「ううん。それよりこれかっこいい、好き」

 淫紋を仲間の証と認識したのか、宝物をもらったかのような目をしていた。

「これで人間、愛せる? お股の出っ張りのゴシゴシ、見れる?」
「相手を見つければですね。まぁ当分は先のことです」
「えへへ、愛し合うの楽しみ。早く色んな人に会ってみたい!」

 寝ながら足をパタパタさせ、俺の腕に顔をすり寄せようとした。だが触れ合う寸前でハッとなり、「触っちゃダメだった」と言って引き下がった。

「正解です。よく分かりましたね」
「うん、触れるのは愛した相手だけ」

 フンスフンスと息をつき、反対側にコロリと回った。
 ルルニアは疲労混じりの息をつき、普段の姿に戻った。


 それからほぼ全裸状態のニーチャに使ってなかった上着を着せた。かなりの身長差があるので片側の肩が大幅に露出するが、それでも最初よりは常識的な格好になった。
 次にびしょ濡れのシーツを俺が片付け、ルルニアとニーチャでシーツの張り替えを行った。すでに体力は限界ギリギリを迎えており、作業終了と同時に寝そべった。

「どうした? ニーチャは来ないのか?」
「むー……、行っていいの?」
「いい? あぁ、そういうことか」

 ニーチャの目線はルルニアに向いていた。律儀に接触禁止令を守って立っている姿がいじらしく、今日だけは許してもいいのではと説得してみた。

「……仕方ありませんね。ニーチャはとても良い子なので、特別な日だけ許すことにしましょう」
 ルルニアからの許可を得た瞬間、表情がパァッと明るくなった。ベッドの前で右往左往してどこの位置に寝るか悩み、最終的に俺とルルニアの間に飛び込んできた。

「んー、ふわふわで気持ちいい」
 干したてのシーツが気に入ったのか、ここでもまた右に左にと移動を続けた。期せず父と母と子が揃ったような絵面になり、感慨深さで胸の奥が熱くなった。

(……奇跡が起きてルルニアとの間に、何てな)
 叶わぬ妄想だが、もしもの未来を諦めたくはなかった。

「そういえばだけど、ルルニア」
「何です?」
「三人一緒が特別な日だけなら、ニーチャはどこで寝させるんだ?」
「隣の空き部屋を使ってもらいます。隙間時間に少しずつ掃除を進めていたので、中はもう綺麗な状態です。ベッドを整え直すぐらいですね」

 毎朝毎晩に横を通るが、中に入る機会が無かったので気づかなかった。ニーチャは驚き顔で部屋をもらえるのかと聞き、今日の夜から使えると知ると「わ、わ」と身体を弾ませた。

「えへへ、ここに来てから幸せいっぱい」
 純朴さに参って何度目かの頭撫でを行っていると、俺の腹がクゥと鳴った。

「そういえばもうお昼時でしたね」
「……腹が減ってないとは言わないが、とりあえずベッドから動きたくないな。このまま三人で寝て過ごして夕食をがっつり食べよう。それがいい」
「ですね。今日はお言葉に甘えます」

 思い返しても色々な事が多すぎた。夜の初めてに加えてドーラの襲撃騒動、自慰の見せ合いに淫紋刻みまでした。互いの身体をおもんばかって今夜の性行為は無しと決めた。

「ねぇねぇ、ゆうしょくって何?」
「人間のご飯ですよ。私たちの食事とは別物です」
「美味しいの? それニーチャも食べれる?」
「食べれないわけではないですが、私たちにとっては薄味……と、そういえばエッチの相手を見つけるまでのニーチャのご飯が必要ですね」

 あてがあるのか聞くと、ルルニアは俺を見て応えた。

「前に渡したサキュバスの角、あれってまだあります?」
「納屋の鍵棚にしまってる。試めそうにも高価な品だから手を出し辛くてな。いずれは加工する気だったから、やすりの錆落としはしてある」
「あれを私に預けていただけますか。サキュバスの角には凝縮した魔力が宿っていますので、削って使えばニーチャの当分の食事になります」

 粉を直接舐めさせるのかと思ったが、違った。ルルニアは俺と同じ食事をニーチャにも用意し、食材の上に削った粉を振りかけるつもりと言った。

「こうすればお腹を見たしながらテーブルマナーも覚えさせられます。薄味なので退屈な食事でしょうが、大事なことなので我慢してもらいましょう」
 ゆくゆくは家事全般も覚えさせるそうだ。人間の側に引き込むとは言ってたが、ここまで本格的な計画を立てているとは知らず驚いた。

「ニーチャのために俺が出来ることはあるか?」
「可能なら村での働き口を用意できますか? この子フラフラッとしているので、家に一人で置かせたくはないです。お金は稼げなくてもいいので、楽でも人と触れ合う機会が多い場所が理想ですね」

 酒場は様々な観点から考慮外だと言われた。ニーチャも早く愛し合う相手を見つけたいらしく、「がんばる」とやる気だ。俺は村にある店を順に思い浮かべ、ふと閃いた。

「……中古屋の爺さんになら任せても大丈夫か」

 店に人が来る頻度がそこそこ多く、棚替え以外で重労働はない。あくまで許可が取れたらの話ではあるが、のんびり気質なニーチャが働くにはこれ以上ない場だった。

「ちゅうこや? それってなに?」
「村一番の年寄り爺さんが営んでいる店だ。あの人は子どもの面倒を見るのが好きだから、働くとなればニーチャも可愛がってくれると思うぞ」

 先々の予定が決まると眠気が湧いた。気づけばルルニアが先に寝落ちしており、ニーチャも淫紋刻みの疲れからか寝た。俺は一度シーツの位置を直し、遅れて深いまどろみへと落ちた。
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