エッチな精気が吸いたいサキュバスちゃんは皆の癒しの女神

のっぺ

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第六十九話『ニーチャのお相手探し1』

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 …………さんさんと照りつける太陽の下をニーチャが独りで歩いていた。
 夏の虫の大合唱を横耳に山を下り、平地手前の木陰で額の汗を拭う。それが終わると麦わら帽子のつばを持ち上げ、村に続く長い道のりを見渡した。

「うー……、あっつい」

 ニーチャの服装は男物の上着から白のワンピースに替わっていた。通気性を考慮して首元はゆったりめに開いており、両腕に袖は無い。薄手の生地のスカートは微かな風でもよく揺れていた。

 少しでも涼しい場所をと思って小川の横を歩くと、白い鳥が頭上を通過した。
 影が見えなくなるまで軌跡を目で追い、ニーチャは澄み切った青空を眺めた。

「ドーラ、元気でやってるかな」

 あの夜の騒動から八日が経過した。長雨の一時的な収まりに合わせて中継地選別の動きが盛んになり、村周りの環境が変化し始めた。

 グレイゼルとルルニアは緊急の呼び出しを受け、早朝に家を出た。一人で村に行けるかと聞かれて大丈夫と応えたが、内心ではそれなりに緊張していた。

「魚、泳いでる。変な虫、飛んでる。気にはなる……けど」
 寄り道の誘惑に負けず、ニーチャは村の近くまで来た。

「おーい! 野菜の収穫が終わったら何人か山に来れるがぁ! 建材に使う木の分布を調べるとかでぇ、人が足りないんだべよぉ!」
「無茶いうなぁ! こっちも人が欲しいぐらいだべ!」
「ジェイムズのとこの畑がそろそろ終わる頃合いじゃねぇべが? たぶんそっちに行けば、一人ぐらいは借りられっと思うぞぉ!」

 一本道の両脇にある畑から男たちの大声が響いている。道を進みながら目についた中年男性におじぎをすると、相手も元気に挨拶を返した。

「お、今日は一人で来たんか。そんな細っこいのに体力あんなぁ」
「むん、ニーチャ強い。道まちがえなかった」
「はははは、元気でええなぁ。まぁお日様にやられる前に村に行くべよ。中古屋の爺さんも嬢ちゃんが来るのを心待ちにしてっからな!」

 快活に笑い飛ばし、中年男性は別の畑へと歩いて行った。
 ニーチャは汗にまみれた後姿を見つめ、ポツリと呟いた。

「んー……、あの人は良い人だけどちがう」
 歩みを再開して村の門をくぐり、大通りへと足を運んだ。途中で昆虫採集帰りの少年の集団と出くわし、ニーチャの方から駆け寄っていった。

「ピカピカしてる。その虫、どこで捕ったの?」
 一人が持っていたのは赤緑に光る昆虫だ。子どもの拳ほどの大きさがあり、立派な角を持っている。ウゴウゴ動く細足にニーチャは心惹かれるが、少年たちは戸惑った。

「うわ、びっくりした。ニーチャか」 
「お、おはよう。今日も良い天気ですね」
「お前、女子相手だからって敬語になんなって」

 ニーチャが一歩近づくと少年たちは一歩離れる。嫌われているわけではないが、どうしても距離を取らざる負えなかった。思春期の少年たちにとって、その巨乳はあまりにも目に毒だった。

「み、南の山から捕って来たんだ! ロア様が調査に使うって言ってたから、新しいのあげようかなって!」
「かっこいい。これ、さわってもいいの」
「女子なのに虫に興味あるの? リコレちゃんに見せに行った時は、そんな物近づけるなって怒られたのに……」
「女の子だと虫気になるのダメ? 何で?」

 小首を傾げて聞かれ、少年たちは悩み唸った。
 切り株の上に赤緑の昆虫が置かれると、ニーチャは前かがみになった。両手を膝の辺りに置く姿勢となっため、腕で巨乳が挟まれてこれでもかと強調された。

「……でっか」 
「……おっき」
「……やばっ」

 少年たちの思考は一瞬にして巨乳に支配された。昆虫に触れようとさらに前かがみになると、今度は胸の谷間が強調された。乳房の上には汗の雫が浮いていた。

「じゃ、じゃあおれたちは村の手伝いあっから!」
「だ、だな! 今度採取に連れて行ってやるよ!」
「ご、ごめんね! 別の機会にお話ししようね!」

 無自覚な性欲に翻弄され、少年たちは逃げるように駆け出した。
 それを手を振りながら見送り、ニーチャは麦わら帽子を被り直した。

「むぅ、あの子たちも面白いけどちがう」
 ニーチャが行っているのは『お相手探し』だ。

 中古屋で働くようになってから三日しか経っておらず、村人の全容は把握しきれていない。家でグレイゼルとルルニアのやり取りを見ていた影響もあり、大切な一人を見つけたい願望が強くあった。

「……少なめちょっと少なめだいぶ少なめ、他よりは多め」

 切り株に腰を据え、大通りを行き交う人々を見つめた。個人個人の精気の量を確認するが、多い者で常人の二倍程度だ。グレイゼルと比較すると誰も彼も見劣りしてしまった。

「この村には大切な人いない? それともまだ見つかってないだけ?」

 知り合った『男性の顔』を思い返すが、これというのはなかった。
 一人重要な相手を忘れていたが、思い出せぬまま切り株から立った。

「そろそろ、時間。お仕事がんばる」
 臀部の砂を払い、ニーチャは中古屋へと向かった。


ーーーーーーーーーー

 ここから二章後半です。六十九話も作品を読んで下さり誠にありがとうございます。
 これからも本気の執筆を心掛けて参りますので、今後ともお付き合い下されば幸いです。
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