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第七十一話『ニーチャのお相手探し3』〇
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目的の山のふもとに着くと同時、ニーチャはガーブランドの精気の匂いを感じ取った。山道に足を踏み入れながら鼻を鳴らし、とある地点で立ち止まった。
「これって……」
森の一角が嵐に見舞われたかと見紛うほど荒れていた。木々が所どころ傷つき、地面が大きくえぐれている。一帯には男性と魔物の足跡が散見された。
破壊の痕跡を辿ると木々の先に渓流が現れた。川の水には血が混ざっており、上流には全長三メートルはある狼の魔物の死骸が転がっていた。
その肉体には無数の傷があり、腹部には大剣が深々と突き刺さっている。所有者のガーブランドが見えず、どこにいるかと周辺を探し歩いた。
「あ、おじさん見つけた」
ガーブランドは手足を投げ出した状態で倒れていた。ニーチャと目が合うなり身体を起こそうとするが、背中を少し浮かせただけで元に戻った。
「……この地域に居座り続ける危険な個体がおったのでな。先ほど吾輩が討った。だがとどめの瞬間に道ずれの呪いを受けてしまった」
「みちずれののろい?」
「……討伐者の命を奪う術だ。常人六人分の精気を吸われ、見ての通り身体を動かせなくなった。もう数分ばかりはこのままであろうな」
常人の十倍もの精気を持つガーブランドでなければ即死だった。ニーチャが翼を生やして助けを呼びに行こうとすると、首を横に振って止めた。
「吾輩は魔物と人間の営みの守護者となった。それがこんな雑魚相手に一矢報いられたとあっては、信用の根底が揺らいでしまう」
「ニーチャに見られるのはいいの?」
「良くはないが、見れたものは仕方あるまい。今は大事な時期であるため、吾輩が失態を晒したことは秘密にしてもらえると助かる」
ニーチャは羽を戻し、しゃがんでガーブランドを観察した。顔には兜があって胴には鎖かたびらがあり、腰には軽装の鎧がある。露出しているのは両腕のみであり、そこに視線がいった。
「…………美味しそう」
チロリと舌を出して唇を湿らせる。ニーチャは四つん這いになり、たくましい腕の筋肉に触れた。上腕から前腕へと手を移動させていき、末端の大きな手の平に自分の小さな手を重ねた。
「待てお主、何をやっている」
「…………おっきい、それにゴツゴツしてる。……いぃ」
「まさか吾輩に……っ、動けん」
指と指を絡ませ、肌の硬さと柔らかさを比べ合った。
次第に身体の熱が高まっていき、唾液が喉を伝った。
「……この手、好き。強くて硬くてかっこよくて、良い匂い……する」
ニーチャはガーブランドの前腕を掴み、手を自分の顔の位置まで持ち上げた。続けて親指を口に咥え、つたない舌使いで先っぽから付け根までを舐めた。
「ん……んぁ、ちゅぷちゃぷ、んぁっぷ……ぁむ」
人差し指に中指に薬指と移動していき、小指の後に手の平を舐める。
直前まで大剣を振るっていたからか、汗の味と匂いが強く伝わった。
「…………正気を失っておるのか。先に言っておくがいくらそうやっても精気は渡さぬぞ。これは最愛の妻であったリゼットだけのものであるのでな」
そんなことはどうでも良かった。ニーチャは身体を舐める行為そのものに興奮していた。雨の夜に行われたグレイゼルとルルニアの夜伽、それをなぞっている事実が身の快感を高めた。
「はぁ……はぁ……、もっと……もっと……」
手首まで舐め取り、一度ガーブランドの腕を地面に戻した。
身体が熱くて心臓の鼓動がうるさく、それを止めたくなった。
ニーチャはワンピースの肩紐に親指を掛け、肩から外した。さらに肌着をめくり上げ、巨大な乳房を片方だけまろび出させた。そしてガーブランドの手を乳房の柔肌にくい込ませた。
「くう……んんっ、あぅ……これ、気持ち……いぃ」
硬い皮膚と盛り上がった指だこが乳房と乳首をひっ掻く。心臓の鼓動を静めようと手を強く押し付けるが、鼓動は高まっていくばかりだった。
「おじさんの手……いぃ、のに……ドキドキ、取れなぃ……なんでぇ」
「ぐっ、久しく感じておらぬ温さが」
「もっと……もっと強くすれば……熱いの取れ……て、あぁぁう!?」
ニーチャは身体を跳ねさせ、乳房と乳首の快感だけでイった。
「………………落ち着いたか」
ガーブランドの声には怒りも失望もなかった。成人したてのサキュバスだから仕方ないと割り切っていた。それを理解した瞬間、ニーチャは目から涙をこぼした。
「ごめん……なさい。愛し合うじゃなきゃ……ダメなのに。おじさんのこと考えないで、自分だけ……気持ち良く、なっちゃっ……た……」
自分はあの夜のドーラと同じ過ちをしたのだと、遅れて実感した。相手と心を通じ合わせて愛し合いたかったのに、一方的に利用してしまった。
ガーブランドは麻痺の残る身体で起き上がり、ニーチャの涙を拭った。肩に手を乗せて「謝る必要は無い」と諭し、兜越しに目と目を交わした。
「吾輩の心は亡き妻、リゼットに預けてある。仮にお主が本当の意味で吾輩を好いていたとしても、応えるわけにはいかぬのだ。すまんな」
「……おじさん、愛し合う、しないの?」
「しない。どっちみち吾輩のような枯れ木に身を寄せることもあるまい。もっと将来のある伴侶を探し、幸せに別れの日まで暮らせばよい」
そう告げて立ち、身体をふらつかせながら歩いた。
闘気の力で魔物の死体を引きずり、林の中に捨て置いて大剣を引き抜いた。ガーブランドの後姿には孤高な気高さがあったが、ニーチャの目にはそれが寂しく映った。
「……死んだら、もう愛し合うのダメ? でも……」
それは悲しいことだと思った。愛し合うを知る以上に、ガーブランドが幸せに笑ってくれる方法を探したい。そんな淡い気持ちを胸に抱いた。
「これって……」
森の一角が嵐に見舞われたかと見紛うほど荒れていた。木々が所どころ傷つき、地面が大きくえぐれている。一帯には男性と魔物の足跡が散見された。
破壊の痕跡を辿ると木々の先に渓流が現れた。川の水には血が混ざっており、上流には全長三メートルはある狼の魔物の死骸が転がっていた。
その肉体には無数の傷があり、腹部には大剣が深々と突き刺さっている。所有者のガーブランドが見えず、どこにいるかと周辺を探し歩いた。
「あ、おじさん見つけた」
ガーブランドは手足を投げ出した状態で倒れていた。ニーチャと目が合うなり身体を起こそうとするが、背中を少し浮かせただけで元に戻った。
「……この地域に居座り続ける危険な個体がおったのでな。先ほど吾輩が討った。だがとどめの瞬間に道ずれの呪いを受けてしまった」
「みちずれののろい?」
「……討伐者の命を奪う術だ。常人六人分の精気を吸われ、見ての通り身体を動かせなくなった。もう数分ばかりはこのままであろうな」
常人の十倍もの精気を持つガーブランドでなければ即死だった。ニーチャが翼を生やして助けを呼びに行こうとすると、首を横に振って止めた。
「吾輩は魔物と人間の営みの守護者となった。それがこんな雑魚相手に一矢報いられたとあっては、信用の根底が揺らいでしまう」
「ニーチャに見られるのはいいの?」
「良くはないが、見れたものは仕方あるまい。今は大事な時期であるため、吾輩が失態を晒したことは秘密にしてもらえると助かる」
ニーチャは羽を戻し、しゃがんでガーブランドを観察した。顔には兜があって胴には鎖かたびらがあり、腰には軽装の鎧がある。露出しているのは両腕のみであり、そこに視線がいった。
「…………美味しそう」
チロリと舌を出して唇を湿らせる。ニーチャは四つん這いになり、たくましい腕の筋肉に触れた。上腕から前腕へと手を移動させていき、末端の大きな手の平に自分の小さな手を重ねた。
「待てお主、何をやっている」
「…………おっきい、それにゴツゴツしてる。……いぃ」
「まさか吾輩に……っ、動けん」
指と指を絡ませ、肌の硬さと柔らかさを比べ合った。
次第に身体の熱が高まっていき、唾液が喉を伝った。
「……この手、好き。強くて硬くてかっこよくて、良い匂い……する」
ニーチャはガーブランドの前腕を掴み、手を自分の顔の位置まで持ち上げた。続けて親指を口に咥え、つたない舌使いで先っぽから付け根までを舐めた。
「ん……んぁ、ちゅぷちゃぷ、んぁっぷ……ぁむ」
人差し指に中指に薬指と移動していき、小指の後に手の平を舐める。
直前まで大剣を振るっていたからか、汗の味と匂いが強く伝わった。
「…………正気を失っておるのか。先に言っておくがいくらそうやっても精気は渡さぬぞ。これは最愛の妻であったリゼットだけのものであるのでな」
そんなことはどうでも良かった。ニーチャは身体を舐める行為そのものに興奮していた。雨の夜に行われたグレイゼルとルルニアの夜伽、それをなぞっている事実が身の快感を高めた。
「はぁ……はぁ……、もっと……もっと……」
手首まで舐め取り、一度ガーブランドの腕を地面に戻した。
身体が熱くて心臓の鼓動がうるさく、それを止めたくなった。
ニーチャはワンピースの肩紐に親指を掛け、肩から外した。さらに肌着をめくり上げ、巨大な乳房を片方だけまろび出させた。そしてガーブランドの手を乳房の柔肌にくい込ませた。
「くう……んんっ、あぅ……これ、気持ち……いぃ」
硬い皮膚と盛り上がった指だこが乳房と乳首をひっ掻く。心臓の鼓動を静めようと手を強く押し付けるが、鼓動は高まっていくばかりだった。
「おじさんの手……いぃ、のに……ドキドキ、取れなぃ……なんでぇ」
「ぐっ、久しく感じておらぬ温さが」
「もっと……もっと強くすれば……熱いの取れ……て、あぁぁう!?」
ニーチャは身体を跳ねさせ、乳房と乳首の快感だけでイった。
「………………落ち着いたか」
ガーブランドの声には怒りも失望もなかった。成人したてのサキュバスだから仕方ないと割り切っていた。それを理解した瞬間、ニーチャは目から涙をこぼした。
「ごめん……なさい。愛し合うじゃなきゃ……ダメなのに。おじさんのこと考えないで、自分だけ……気持ち良く、なっちゃっ……た……」
自分はあの夜のドーラと同じ過ちをしたのだと、遅れて実感した。相手と心を通じ合わせて愛し合いたかったのに、一方的に利用してしまった。
ガーブランドは麻痺の残る身体で起き上がり、ニーチャの涙を拭った。肩に手を乗せて「謝る必要は無い」と諭し、兜越しに目と目を交わした。
「吾輩の心は亡き妻、リゼットに預けてある。仮にお主が本当の意味で吾輩を好いていたとしても、応えるわけにはいかぬのだ。すまんな」
「……おじさん、愛し合う、しないの?」
「しない。どっちみち吾輩のような枯れ木に身を寄せることもあるまい。もっと将来のある伴侶を探し、幸せに別れの日まで暮らせばよい」
そう告げて立ち、身体をふらつかせながら歩いた。
闘気の力で魔物の死体を引きずり、林の中に捨て置いて大剣を引き抜いた。ガーブランドの後姿には孤高な気高さがあったが、ニーチャの目にはそれが寂しく映った。
「……死んだら、もう愛し合うのダメ? でも……」
それは悲しいことだと思った。愛し合うを知る以上に、ガーブランドが幸せに笑ってくれる方法を探したい。そんな淡い気持ちを胸に抱いた。
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