エッチな精気が吸いたいサキュバスちゃんは皆の癒しの女神

のっぺ

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第百三話『新人研修1』

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 朝食の準備を始めようとしたところでプレステスが降りてきた。
 おっかなびっくりに食堂を覗き、ガーブランドを見て引っ込んだ。

「す、すすす、すいません! お邪魔しましたぁ!」

 ドタバタ物音を立てて二階に逃げる途中、「〝お〝ん!?」と絶頂めいた声がした。ルルニアが淫紋を介して快楽を撃ち込んだらしく、階段の中腹で痙攣していた。

 服装は寝巻のワンピース姿となっており、男装時より似合っていた。ニーチャがやったのか髪はゆったりめにまとめられ、女性的な魅力が前面に押し出されていた。

「そこにいるのはガーブランドだ。見た目は怖いかもしれないが、優しい人だ。プレステスも世話になる機会があるだろうから挨拶はしておいた方がいい」
「だ、旦那様のお客様にとんだご無礼を……」
「その呼び方、もっと気安くていいんだぞ?」
「で、ではでは、ご主人様とお呼びした方がよろしいでしょうか? にに、人間の社会では雇い主をそういう風に呼ぶって、前に調べたのであのその」

 生まれ持った性分だろうか。プレステスはどうしても敬った呼び方をしたいようだ。アストロアスの住民に会話を聞かれた時に違和感がないのはどちらか、結論は一も二もなく定まった。

「……ご主人様呼びは無しだ、どこぞの王族や貴族みたいだしな」
「でしたら旦那様ですね。わたしもこれが良いと思います、です」

 朗らかな表情を浮かべるプレステスを連れ、食堂に戻った。

「プ、プレステスです! よろしくお願いしましゅ!」
「ガーブランドだ。お主らサキュバスにはサキュバス殺しの名で呼ばれている」
「へー、サキュバス殺し。へ、え、嘘ですよね……?」

 ガーブランドの風貌を下から上へと見つめ、顔を青ざめさせた。
「あびゃ、あびゃびゃびゃびゃびゃ……?!!?」

 足を小鹿のように震わせ、壁に張りつきながらまた二階に逃げようとする。ルルニアがクイと人差し指を上に向けると、「〝ほ〝きゅ!?」と叫びを上げてイった。

「ふむ、人喰いではないな。この者は安全であろう」
「は……ひ、あり、がとぅござゃ……ぃまじゅ」
「用事も済んだゆえ、邪魔者は去るとしよう。ではな」

 マントをなびかせて歩き、俺の肩に手の平をトンと乗せた。大切な者を最後まで守り通せと言われた気がし、去って行く背中に誓いの念を送った。

「じゃあニーチャもお外行く。今日はお仕事ないし、お友達と遊んでくる」
「朝食はどうするんだ?」
「ごちそうしてくれるって、言ってた。だからこれは先に食べていく」

 だいぶ小さくなったドーラの角をかじり、外に向かって駆け出した。
 途中まではガーブランドと一緒らしく、楽しそうな会話が聞こえた。

(……ニーチャが人間の食事を食べているのは、味を楽しめる味覚を持っているからだ。それがないルルニアが食事を求めるようになったのは、恐らく……)

 昨夜脳裏をよぎったのは『俺の子を妊娠したのではないか』という考えだ。
 妊娠の初期症状で有名なのは『生理が止まること』と『吐き気に関連した体調不良』だ。他にも胸のはりや微熱やおりものの変化などがあるが、こちらはルルニアに当てはまらない。

「妊婦の状態やそれに合う薬の知識は先生に叩き込まれたが、その先はな……」

 出産の場に男立ちいるべからず、それが一般常識だ。だがルルニアはサキュバスであり、相当信頼のおける相手でなければ任せられない。一日でも早く確証が欲しかった。
 考え事をしながらプレステスの朝食も作るが、だいぶ苦労して食べていた。

「食事のマナーを覚える必要がありますので、しばらくは食べてもらいますよ。後でアストロアス内の決まり事も勉強させますからね」
「……ふぁい。早く人間さんとエッチしたいです……」
「そういえばそちらも教えるべきでしたね。愛を知らずにエッチしたら大騒ぎになります。ニーチャと同じで新人研修をしましょうか」

 食後に皿の片づけをしようとするが、ここはルルニアが譲らなかった。身体を冷やすことはさせたくなかっため、せめて洗濯は俺が担当すると申し出た。

「見ての通り、今日は元気ですよ?」
「ここから酷くなることもあるだろ。俺は酒場の仕事も当分休んだ方がいいと思う」
「……大袈裟だとは思いますが、分かりました。ただ今月の終わりまではいいでしょうか? 引継ぎに私が抜ける分の人員確保と、やらねばならぬことがありますし」

 酒場はルルニアにとって大事な場所であるため、好きにさせた。仕事の長期休止を伝える際は俺も同席すると言い、昨日の夜の洗濯物を取り込むために外に出た。

 その後は一階の掃除をした。ルルニアとプレステスは俺の部屋で勉強中らしく、天井から声がした。掃除が済んだ後は薬の調合を行い、お昼になる前に家に戻った。

「あ、ルルニア」

 ちょうど階段から降りてくるところに出くわした。昼食の献立を聞こうとすると、瞳の輝きで身動きを封じられた。理由の説明を求めると、後ろ手に隠した縄を見せつけられた。何だそれは。

「────そういえば昨日のエッチ、中途半端でしたよね?」
 制止を乞う暇もなく、俺は拘束された。
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