エッチな精気が吸いたいサキュバスちゃんは皆の癒しの女神

のっぺ

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第百十四話『天使の神託1』〇

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 …………多忙なる日々の中で、苛立ちを募らせる者がいた。名は『サハク』、アストロアス発展の要となる大工頭に任命された血気盛んな青年だ。

「────周りが見えてねぇだぁ!? ふざけんじゃねぇ!」

 サハクは自宅で酒をかっくらい、カップをテーブルに叩きつけた。
 酔いはかなり回っていたが、飲む手を止めてくれる者はいなかった。

「この地はなぁ! 女神様に選ばれた聖地なんだぞ! 怠惰に暮らして見捨てられちまったら、俺たちは終わりだって分からねぇのか!」
 元々サハクは信心深い男ではなかった。神などしょせん迷信だと、心の弱さを利用して金を集めるための方便だとバカにしていた。だが、

 真正面から魔物災害と相対したことで考えが変わった。自分は今日死ぬのだと、一度は心が折れた。全身の震えを止めてくれたのは、窮地に降り立った女神と天使の姿だった。

「……あれが、女神様」

 その神々しさに見惚れた。真正面からドラゴンと対峙する姿を見て、自分の愚かさを呪った。神に対する非礼を詫びるするため、町の発展に我が身を捧げるようになった。

「……俺の言う通りにやれば、三年で五年分の工程を短縮できんだ。……休みをなくして睡眠を削って……無心に槌を振って……れば……いつか」

 心身に溜まった疲労がサハクをまどろみに誘う。寝るのはほんのひと時だけだと、目が覚めたら夜中だろうと作業を再開しようと思って目を閉じた。

 静寂に包まれた室内に響いたのは、バサリとした羽音だ。半開きの窓から入ってきたのは、角と翼と尻尾を生やしたプレステスだ。プレステスはサハクの前まで歩き、告げた。

「あなたの頑張りを、女神様はちゃんと見てるですよ」
 慈愛の眼差しを送り、藍色の瞳を輝かせる。戦闘力に関してはニーチャ並のプレステスだが、こと淫夢に関しては突出した才能を持っていた。

「わたしの夢の中に、人間さんを招待するです」
 耳元で呼びかけられた瞬間、サハクは目を覚ました。あくびをして目元を擦り、酒のカップを探す。手元にないことを確認して顔を上げ、驚いた。

「…………んだ、この部屋は」

 いつの間にかサハクは豪勢な造りの一室にいた。壁は白く塗られ、床には赤い絨毯が敷かれ、家具には金の装飾がある。それらすべてを引き立て役にするように、天蓋つきのベッドが配置されていた。

 夢を見ているのかと思うが、それにしては現実感があり過ぎた。サハクは困惑のままベッドに近寄り、天蓋の影に視線を向け、そこで天使を見た。

「どうしましたですか、人間さん?」
 微笑みを向けたのは純白の翼を生やしたプレステスだ。自分の空間とも言える淫夢の中にいることもあり、臆病な性格は鳴りを潜めていた。

 服は着ておらず全裸で、絹質のシーツで胸元を隠している。
 人智を超えた美貌にサハクは心奪われ、頭を勢いよく下げた。

「す、すまねぇ! 俺ぁ、何て罰当たりなことを!」
「え、え? 罰当たり?」
「こんな節操なしじゃねぇんだ! でも美し過ぎて、その!」

 ズボンの中で陰茎が勃起していた。それに気づいたプレステスは微笑し、絹質のシーツを除けた。形よくふくらんだ乳房と股のワレメが露わになり、サハクの勃起の仰角はさらに増した。

 いくら強気に振舞おうとも、アストロアス内にいる男性は女性に対する免疫がない。透き通った肌とくびれた腰に目が移ろい、立ち尽くすことしかできなくなった。

 せめてそり立った陰茎だけでも隠そうとするが、そこにプレステスが手を添えた。ズボン越しに亀頭を上へ下へと回され、サハクは情けない声を出して見悶えした。

「……天使、様、これは……いったい」
「心に淀みを感じますです。何か許せないことがあるのではないですか?」
「……それは、ある……けど……うっ」
 言っていいものかと、サハクは歯を噛みしめて黙った。

「誰にも言えない悩みや辛さを、わたしが発散させてあげます。どうしてあんなに苦しむように飲んでいたですか? 私の身体を見て、何をしたくなっちゃったんですか?」
 許されざる行為だと思うが、それでも耐えられなくなった。

「ぁ……んっ、人間さんは胸をモミモミしたいんですね?」

 乳房に手を押しつけ、その柔らかさと弾力に声を失った。
 不敬と思うが指が止まらず、乳首をつねってしまった。

「────ひゃっ、あひゅん!?」

 ビクッと身体を跳ねさせるプレステスを見て、サハクは正気に戻った。冷や汗を大量に浮かべて謝罪するが、プレステスはこてりとベッドに寝そべった。

「…………もう終わりですか? もっと揉んでいいんですよ?」
「んなこと言われたら……俺……」
「…………どうぞ、これは人間さんが頑張ったご褒美ですから」

 働けば働くほど疎外感を味わってきたサハクに、その一言は深く刺さった。本能のままにベッドに身を乗り出し、広げられた両腕に飛び込むようにして乳房と乳首にしゃぶりついた。

「ん、あぅ! きゅうっ! ひゃ、ふみゅぅ!?」
「はぁはぁ……。天使様! 天使様! 天使様!」
「いい、れすよぉ。もっと強く……してくらさい」

 壊れるような力で揉んでもプレステスは嫌がらず受け入れてくれる。優しさに満ちた顔つきで頭を撫でられ、サハクは乳房の中に顔をうずめた。
 幼くして両親を失ったサハクにとって、プレステスの愛は想像を絶する心地良さだった。陰茎に触れずとも射精が起き、ズボンの中を濡らした。

「あ……、出ちゃいました……ですね。……気持ち良かったですか?」

 男として情けない姿だったが、プレステスはそれを嗤わなかった。
 倒れて乳房の間の匂いを嗅ぐサハクを、プレステスは抱きしめた。

「………………俺、その」
 数秒の沈黙を経て、サハクは涙声で心情を吐露した。

「どうしたらいいか分かんなくて。女神様と天使様のためって思って働いてんのに、周りがついて来やがらねぇ。こんなことしてもらう資格、俺には……」
「人間さんの気持ちは嬉しいですれけど、無理は禁物ですよ。あなたにはあなたの、他の人には他の人の限界があります。そこを分かってあげるべきです」

 弱ったサハクの心に、プレステスの言葉はストンと落ちた。自分は急ぎ過ぎたのではないか、周りの声にもっと耳を傾けるべきではと思い始めた。

 感謝を告げようと顔を上げると、周囲の景色が揺らぎ出した。
 プレステスの身体が薄く消え、温もりが徐々に離れていった。

「女神様に信仰を捧げるあなたを、わたしはちゃんと見てるです。身体を壊さず他者を思いやって、今後もお仕事に励んで下さい。そうしたら……」

 また会いに来ると、片目を閉じて言った。そこで幸せな夢は終わり、サハクは浮遊感と共に暗闇に落ち、誰もいない自室の中で目を覚ました。
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