エッチな精気が吸いたいサキュバスちゃんは皆の癒しの女神

のっぺ

文字の大きさ
8 / 170

第八話『ルルニアとの生活5』

しおりを挟む
 角はやや内巻きに曲がっている。表面には光沢があり、黒曜石然とした質感だ。昨夜から今朝までは生えてなかったはずなので驚いた。

「精気を吸ってお腹が満たされたおかげですね。どちらかと言うとこの状態が本来の姿に近いです。ほら私サキュバスなので」
「角はそれ以上に大きくなるのか?」
「同族を参考にするなら拳大ほどになるはずです。身長も伸びて胸や腰の肉つきが良くなります。あなた好みに近づけますね」

 ルルニアの身体が貧相寄りな理由が分かった。サキュバスに限った話ではなく、一部の魔物には体力の消費を抑える小康状態の形態があるのだと知った。

「…………それ、触ってもいいか?」
 いい、と言われて撫でた。滑らかで癖になる手触りだ。

「…………これ、削ってもいいか?」
 えっ、と言われて引かれた。でもこれは仕方なかった。

 生き物の骨は薬の材料になる。とりわけ魔物の骨は貴重だ。ゴブリンのように価値の無い魔物もいるが、大体は何らかの効能を有している。気質と飼料的に畜産不可能なため、市場に出ると恐ろしい値がつく。

「あの、そんな顔で近づかれると怖いんですが……」
「貴重な素材を見逃がせないのは薬屋の性分だ。絶対に根元から折らないし形が変わるほど削らない。だから少しだけ分けてくれないか? 先っちょだけでもダメか?」

 熱心にお願いすると逃げられてしまった。
(……はっ、俺は何を)
 正気に戻って謝罪すると許しをもらえた。

「サキュバスの角はどんな薬になるんです?」
「粉末を吸えば一瞬で性欲が高まる。基本的な用途は媚薬だが、調合や加工によっては難病の特効薬になる。先生から教えられた」
「へぇ、これにそんな価値があったんですね」
「ルルニアの角の粉を混ぜた薬なら、ルルニアに合う吐き気止め薬だって作れるかもしれない。試しても良くなったら言ってくれ」
「考えてはおきますけど期待しないで下さい」

 拒絶されるのも覚悟の上だったため、可能性が残ったことに安堵した。二人で納屋を出ると突風が吹き、ルルニアが服代わりに巻いたシーツがまくれて丸みのある尻が露わになった。

「あ、もしかして見えちゃいました?」
「ミテナイ」
「好きなだけ撫でまわしてもいいですよ?」
 応じようとする股間の猛りを静め、返事をせずに横を通り抜けた。

「俺はこれから倉庫に入ってルルニアに合う服がないか探してくる」
「お任せします。それなら私はお食堂で夕飯の準備をしていますね」

 玄関口へ歩いていくルルニアを見送った。素足で土を踏みしめているのを見て、そちらも店で購入せねばと思った。出費はかさむが必要経費だ。

「…………一人で住むには広すぎる家だったからな」
 言ってから気がついた。俺はこの共同生活を受け入れつつあった。
 誤った思考を正すため倉庫に入り浸り、使えそうな品を見つけた。

 食堂に入ると夕食の目玉となるスープを煮込んでいるところだった。もう十数分ばかり煮込みに時間が掛かるらしく、待っている間に試着してみる流れとなった。

「どうです? 私、可愛いですか?」
 綿の白い上着にこげ茶色の革のベストを重ねて着ている。下は赤く染めたロングスカートを履いているが、その奥は素足のままに見えた。

「ズボンは履かなかったのか?」
「窮屈だから脱ぎました。こっちの流行は知りませんが、町だとスカートの下は下着以外何も履かないのが主流になってるんですよ」
「夏はいいが冬は寒そうだな」
「その時々で切り替える感じです。それにズボンを履いているといちいち脱ぐ手間がありますからね。こうした方が色々と楽です」

 スカートの端と端を摘み、スラリと長い生足を見せつけてきた。

「誘ってるのか? さすがに夕食が先だぞ」
「先に私を食べてもいいんですよ」
「食べない。一日二回以上はしないからな」

 えーと言ってしなを作り、性的な目を向けてくる。村娘風の格好で露出が減ったはずだが、シーツ一枚より所々の仕草に性的な魅力を感じた。何故だろうか。

「いいから後だ。それにしてもずいぶん濃い色のスープだな」
「野菜をふんだんに使って煮込みました。食料庫にイノシシか何かの骨がありましたのでそれも出汁に使ってます。よろしかったですか?」
「あぁ、どれも多めに余ってたからいい」

 食材の備蓄や火の使い方など、この家のことは大体把握されたようだ。
 ルルニアはスープをたっぷり皿によそい、俺の元に持ってきてくれた。

「はいどうぞ、冷めないうちに召しあがって下さい」
 立ち昇った湯気に鼻腔をくすぐられ、反射でスプーンを掴んだ。具材は軽く噛むだけで崩れ、スープは複数の出汁による奥深い旨味で構成されている。

「ルルニアの腕は本職顔負けだな」
「ふふっ、褒めても何も出ませんよ」
「食材があれば他の料理も作れるのか?」

 聞くといくつか聞き知った料理の名前が出た。この辺りでは手に入らない食材の料理もあったため、老夫婦の酒場とやらは遠方にあると察せられた。

(……そこら辺の話も後で聞いておくか)
 そんな思考を浮かべ、最後のひと口を呑み込んだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

乳首当てゲーム

はこスミレ
恋愛
会社の同僚に、思わず口に出た「乳首当てゲームしたい」という独り言を聞かれた話。

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

完全なる飼育

浅野浩二
恋愛
完全なる飼育です。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

一夏の性体験

風のように
恋愛
性に興味を持ち始めた頃に訪れた憧れの年上の女性との一夜の経験

処理中です...