エッチな精気が吸いたいサキュバスちゃんは皆の癒しの女神

のっぺ

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第二十九話『村に活気の風を1』

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 あれから数日が経った。どの村もロアが持ち込んだ中継地の話題で盛り上がり、収穫祭並みの活気が連日連夜続いている。
 今日は恒例となっている薬売りに加え、村長の屋敷で行われる会議に参加する日だ。もちろん議題は中継地の選定に関してだ。

「────ここを逃せば村の発展はない! ロア様にこの村を気に入っていただき、我らが故郷を活気ある町へと発展させるのだ!」

 村長であるミーレの父が熱意のこもった雄叫びを上げる。
 会議室に集まった代表者たちも割れんばかりの歓声で応えた。

 八百屋の旦那に肉屋の大将、大工のリーダーに酒屋の主人など、俺とミーレを含めた総勢八人が長四角いテーブルを囲んで議論を交わした。

「ロア様は選定基準として『一ヵ月以内に町づくりの成果を示すこと』とおっしゃられた。が、具体的に何を作るべきかは教えて下さらなかった」

 選定の基準が曖昧な上に期間が短い。言葉尻を捕らえるなら何か建てれば良さそうだが、それなら謎かけのような言葉を残す必要もない。
 すでに他の村は行動を開始していた。川上の村は大人数が泊まれる宿舎を建て始め、川下の村は村囲いの補強に取り掛かっている。俺たちの村だけが出遅れていた。

「他の村には負けられねぇ! あっと驚くもんを建てるしかねぇべよ!」
「言いたいことは分かるがお前、それで何を作るつもりだが?」
「建材の手配もある。あまり豪勢な物は作れねぇっぺよ」
「おいおい、若者が及び腰になったらいかんべや!」

 乱闘騒ぎというほどでもないが議論は紛糾した。俺は用意されたお茶に口をつけ、自分だったらどんな案を採用するか考えてみた。

(……村までの道を石畳に、さすがに期間が短いな。騎士団のために馬小屋を、不要になったらどうするんだ?)
 町づくりの成果の基準として『何かを作る』のは分かりやすい。が、いまいち腑に落ちなかった。

「西の小川にある橋を大きくすんのはどうだべ?」
「一ヵ月では無理だな。村の門を立派にしよう」
「んでも中がそのままじゃ失望されるだけでないべが?」

 村人が総出で動いたとしても、一ヵ月程度ではどうしても付け焼刃感が出る。ロアが求めているのはもっと別のもの、これといった形がある物ではない気がした。

「グレにぃはどう思う?」
 隣のミーレに問われ、率直な感想を告げてみた。

「向こうが求めてるのは建物じゃないかもしれない」
「どういうこと?」
「本格的に建築が始まるのは中継地が決まった後だ。川上の村みたいに立派な宿舎を建てたとして、それが採用されなかったら時間も労力も無駄になる」

 村囲いの補強も同じだ。村が発展するなら敷地面積が数倍にまで大きくなるため、今ある囲いは不要になる。いたずらに解体の手間を増やすだけだ。

「元あった物を使ってはくれんのか?」
 対面の村人に問われ、俺は頷きを返した。

「何なら今ある家も大半が建て替えになるだろうな」
「まだ築十年も経ってない家もあんべ?」
「村が町になるっていうのはそういうことだ。交通の便を確保するために区画を整理して、人の入退場を管理するために石の壁を築いて税を取る」

 身なりが怪しい者は中に入れず、金がない旅人の来訪も拒絶する。来る者拒まずだった村の慣習と相反する行為だが、そうせねば町は物乞いで溢れる。管理の不行き届きの果ては疫病による崩壊だ。

「建物を新しくするのは後でいいんだ。何で上がこんな回りくどいやり方をするのかは分からないが、俺たちはもっと別の方法を試すべきだと思う」
「具体的にはどうするの?」
「地形図はどうだ? 詳細な物はなかったはずだから、村周辺の高低差を正確に記した物を作成する。どこを削ってどこを盛るべきか分かれば、町づくりの助けになるはずだ」

 気がつけば全員が俺の話に耳を傾けていた。
 口をつぐむと村長が立ち、強く拳を握りしめた。

「グレイゼル先生の案を採用だ! 我らはあえて他の村と同じ土俵で戦うのを避け、ロア様の希望を完璧な形で叶えてみせる!」
 俺の考えが正しいという保証もなかったが、方針は定まった。ミーレもやる気になったため、後は流れに身を任せるしかなかった。

「んで、具体的に何から始めるべ?」
「やっぱ西の浅沼だべな。あれは間違いなく町づくりの邪魔になっから、真っ先に埋め立ての案を固めるべきじゃねぇか?」
「はいはい! あたしずっと前からこの丘が無ければ楽に村に来れるのにって思ってた場所があるよ。そこを調べようよ!」
「それならおらも思うとこあんべさ」

 今日のところはどこまでの範囲を地形図にするか話し合った。
 日暮れもだいぶ近く、本格的な始動は明日の朝からとなった。

「酒場で前祝いの宴をするが、グレイゼル先生は出られるか?」

 帰宅の準備を進めていると、村長から酒宴の出席を求められてしまった。
 村社会で酒の付き合いは大切にすべきだが、家でルルニアが夕食を作って待っている。村の命運を祈るための宴であるため、今回に限っては断り辛かった。

(……遅くなる前に店を出れば何とかなるか)
 絶対に帰ると決め、俺は参加の表明をした。
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