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第9話 あの男からの報告
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金曜日の夜、実際に何があったのか。
それを知るには、須田から聞くしかない。
しかし、土日は仕事が休みなので会って聞くことができない。
連絡先は聞いているので、メールや電話で聞くことも可能だが、どう聞けばいいのか。
どうせなら、須田の方から「聞いてくださいよ」と連絡をくれたらいいのに。
そんなことを思いながら週末を過ごした。
結局、須田からの連絡はなく、ましてや自分から聞くこともできないまま月曜日になった。
待ちきれず、午後は無理やり得意先のアポを取り、いつもの飲み屋に少しでも早く行けるように外出した。
そんな思いもむなしく、店に須田の姿は無かった。
まさか今日は来ないのか?
少し不安になりながら飲みはじめる。
何時計と店の入り口を交互に何度も見ていた。
いっそのこと、今から職場に行けば会えるかもしれない。
などということまで考え、席を立とうとしたところで、須田が店に入ってきた。
「お久しぶりです」
彼もすぐにこちらに気づいたらしく、隣に座った。
「こんばんは。今日は休肝日かと思いましたよ」
自分の焦りを悟られないよう、余裕がある風を装って言った。
「いや、機械の故障があって、業者の修理が終わるのを待たなきゃ行けなくて」
「それは大変でしたね」
「いやぁ、ただ待ってただけなんで、何もしてないんですけどね。でも、森山さんに早くこれを見せたくて、気が気じゃなかったんですよ」
と言って操作しながらスマホを差し出した。
画面には、薄暗い部屋を横から撮った画像が映っている。
画面の外からバスタオルを体に巻いた女性が入ってきた。
妻だ。シャワーから出てきたところらしい。
少し遅れて、腰にタオルを巻いた男が入ってきて、妻を背後から抱きしめる。須田だ。
「この女性ですよね。この間森山さんが写真を見せてくれた女性」
動画にくぎ付けになったまま、黙ってうなづく。
「やっぱり。これが、この間言っていた職場の女性です」
須田はいきなり起動画面に切り替え、自分の元に戻した。
店員さんがビールを運んできたのだ。
「とりあえず、乾杯をしましょう。……穴兄弟になった記念に」
後半は、周りに聞こえないよう小声で言った。
この男が妻と寝たのであれば、そういうことになる。
複雑な思いで頭が切り替えられないまま、ビールを飲み干した。
須田も半分くらい一気に空けると、話し始めた。
「金曜日に約束通り飲みに行ったんですけど、店を出てから、少し酔いを醒ますために公園に寄ったんです。人目がないところで、彼女を抱きしめてキスしたら、抵抗はありませんでした。
それで、もう一度キスして、舌を入れてみたら、彼女も舌を絡めてきたんです。キスしながら彼女の息が荒くなってくるのを感じました。それで、『行こうか』と言うと、彼女も黙ってうなづいたので、そのままホテルに向かいました」
ビールを一口飲んで続ける。
「部屋に入ってもう一度キスしながら、胸や下半身を触っていたら、股間はストッキングの上からでも分かるくらい蒸れて湿っていました。
僕はもう我慢できなくなって、彼女を後ろ向きにさせてスカートをまくり上げて、ストッキングとパンティを膝まで下ろして、入れてしまったんです」
「いきなり?」
「二人で飲んでる時から興奮して、もう我慢できなかったんですよ。それに、彼女も十分すぎるくらい濡れていて、すんなり入ってしまったんです」
妻が、そんなにあっさりと他の男を受け入れてしまうなんて。
「酔っているとはいえ、声を出すのが恥ずかしかったのか、必死で声をこらえているようでした」
金曜日の夜の、声をこらえながら感じている妻の姿を思い出してしまう。
「でも、情けないことに、気持ちよすぎて、3分くらいでイッてしまいました」
「え、もしかして、いきなり生で中出し?」
「興奮して何も考えずにそのまま入れちゃったんですけど、さすがに最後は抜いてお尻に出しましたよ。でも、スカートを脱がせてなかったんで、少しかかってしまって……」
いきなり生で入れられたのか。
「彼女がシャワーを浴びに行っている間に、慌ててスマホのカメラをセットしておいたのが、さっき見せた動画です」
須田はバックから小さなケースを取り出した。
「データが大きかったので、SDカードに入れておきましたので、あとでゆっくり見てください」
ケースに入ったSDカードを受け取った。
「シャワーから出た後の2回戦目が、そこに映ってます」
「2回戦目が終わると、彼女が『そろそろ帰らないと』と言って、急いでシャワーを浴びて帰り支度を始めました。
私も着替えて、スマホを片付けて、洗面所に行ったんです。
彼女は仕事の時と同様に髪をまとめて、眼鏡をかけて身支度を整えていました。
それを見ていたら、『会社で堅物で通っているあの女性を自分は抱いたんだ』と思って興奮してきて、洗面所で立ったまま、後ろから襲ってしまったんです」
何だと。
ということは、妻はこの男と金曜日の晩に3回もしたというのか。
「でも、興奮しながらも変に冷静で、またスカートにかけてしまうとまずいので、襲う前に、ちゃんとゴムを取りに行って、装着してから、彼女を襲いました」
あのゴムの匂いは気のせいではなかった。
やっぱり、この男が使ったコンドームの匂いだったのだ。
「彼女からは、『もう時間がないのに』って怒られましたが、『ゴムつけてるから大丈夫』なんて訳の分からないことを答えていたのを覚えています」
どちらにせよ、妻はこの男を受け入れてしまったのだ。
しかも3回も。
「その女性と、今日、職場で会ったんですよね。どうでした?」
「いやぁ、完全に無視でしたよ。さすがに、向こうも気まずいのかもしれないけど、事務所に行った時に話しかけてみても、以前のように事務的で冷たい返事しかしてもらえず、帰り際に廊下ですれ違った時にも、他に誰もいなかったので声をかけてみたんですけど、完全に無視でした」
「酔っていて、あまり覚えてないのかもしれませんよ?」
「それなら、逆に無視はしないと思うので、やっぱり、あの淫乱な姿を見られてしまったのを意識してるんだと思いますよ」
「それじゃ、彼女との関係は今回限りに……」
「いや、あんないい女、1回だけで終わらせるなんて、そんなもったいないことしませんよ。それに、旦那以外の男で快感を覚えた女性は、もう他の男抜きでは満足できないと思いますよ。
しばらくは、こちらからは声をかけないようにしておこうと思いますが、今に、我慢できなくなって、彼女の方から声をかけてきますよ」
須田は自信満々にそう語る。
「それに、前にも言いましたけど、うちの会社、彼女のことを狙ってる男は結構いますからね。他の男に誘われて、ついていくとかあるかもしれませんよ」
まさか、妻がこれ以上……。
「今日だって、以前よりも色気が増して、フェロモンを振りまいてる感じでした。目つきも妙にエロくて」
確かに、金曜日の夜以降、妻が時折放つフェロモンにドキッとさせられることがあった。
でも、それは家の中だけのことだと思っていたのだが……。
「専務なんか、彼女の変化にいち早く気付いたらしく、むしゃぶりつかんばかりに彼女を見ていましたからね。彼女が専務に抱かれるのも時間の問題でしょう」
須田と別れ家に帰ると、妻はいつもと変わらぬ感じで迎えてくれた。
この妻が、他の男に抱かれたとは、いまだに信じられない。
須田にもらったSDカードがバックの中に入っているのを確認した。
妻が寝たら、パソコンで見るつもりだ。
自分で望んだことでありながら、後悔の思いが消えない。
だが、それと同時に、激しい興奮を感じてしまう。
妻は再び須田に抱かれてしまうのか?
専務や、職場の他の男たちにも……。
そう考えただけで、気も狂わんばかりの興奮が襲ってくる。
着替えてリビングに行くと、テーブルの上には、いつもと変わらぬ美味しそうな料理が並んでいた。
妻の愛情を感じながら食べていると、妻が口を開いた。
「今度の土曜日、友達と出かけてきていい?」
<おわり>
それを知るには、須田から聞くしかない。
しかし、土日は仕事が休みなので会って聞くことができない。
連絡先は聞いているので、メールや電話で聞くことも可能だが、どう聞けばいいのか。
どうせなら、須田の方から「聞いてくださいよ」と連絡をくれたらいいのに。
そんなことを思いながら週末を過ごした。
結局、須田からの連絡はなく、ましてや自分から聞くこともできないまま月曜日になった。
待ちきれず、午後は無理やり得意先のアポを取り、いつもの飲み屋に少しでも早く行けるように外出した。
そんな思いもむなしく、店に須田の姿は無かった。
まさか今日は来ないのか?
少し不安になりながら飲みはじめる。
何時計と店の入り口を交互に何度も見ていた。
いっそのこと、今から職場に行けば会えるかもしれない。
などということまで考え、席を立とうとしたところで、須田が店に入ってきた。
「お久しぶりです」
彼もすぐにこちらに気づいたらしく、隣に座った。
「こんばんは。今日は休肝日かと思いましたよ」
自分の焦りを悟られないよう、余裕がある風を装って言った。
「いや、機械の故障があって、業者の修理が終わるのを待たなきゃ行けなくて」
「それは大変でしたね」
「いやぁ、ただ待ってただけなんで、何もしてないんですけどね。でも、森山さんに早くこれを見せたくて、気が気じゃなかったんですよ」
と言って操作しながらスマホを差し出した。
画面には、薄暗い部屋を横から撮った画像が映っている。
画面の外からバスタオルを体に巻いた女性が入ってきた。
妻だ。シャワーから出てきたところらしい。
少し遅れて、腰にタオルを巻いた男が入ってきて、妻を背後から抱きしめる。須田だ。
「この女性ですよね。この間森山さんが写真を見せてくれた女性」
動画にくぎ付けになったまま、黙ってうなづく。
「やっぱり。これが、この間言っていた職場の女性です」
須田はいきなり起動画面に切り替え、自分の元に戻した。
店員さんがビールを運んできたのだ。
「とりあえず、乾杯をしましょう。……穴兄弟になった記念に」
後半は、周りに聞こえないよう小声で言った。
この男が妻と寝たのであれば、そういうことになる。
複雑な思いで頭が切り替えられないまま、ビールを飲み干した。
須田も半分くらい一気に空けると、話し始めた。
「金曜日に約束通り飲みに行ったんですけど、店を出てから、少し酔いを醒ますために公園に寄ったんです。人目がないところで、彼女を抱きしめてキスしたら、抵抗はありませんでした。
それで、もう一度キスして、舌を入れてみたら、彼女も舌を絡めてきたんです。キスしながら彼女の息が荒くなってくるのを感じました。それで、『行こうか』と言うと、彼女も黙ってうなづいたので、そのままホテルに向かいました」
ビールを一口飲んで続ける。
「部屋に入ってもう一度キスしながら、胸や下半身を触っていたら、股間はストッキングの上からでも分かるくらい蒸れて湿っていました。
僕はもう我慢できなくなって、彼女を後ろ向きにさせてスカートをまくり上げて、ストッキングとパンティを膝まで下ろして、入れてしまったんです」
「いきなり?」
「二人で飲んでる時から興奮して、もう我慢できなかったんですよ。それに、彼女も十分すぎるくらい濡れていて、すんなり入ってしまったんです」
妻が、そんなにあっさりと他の男を受け入れてしまうなんて。
「酔っているとはいえ、声を出すのが恥ずかしかったのか、必死で声をこらえているようでした」
金曜日の夜の、声をこらえながら感じている妻の姿を思い出してしまう。
「でも、情けないことに、気持ちよすぎて、3分くらいでイッてしまいました」
「え、もしかして、いきなり生で中出し?」
「興奮して何も考えずにそのまま入れちゃったんですけど、さすがに最後は抜いてお尻に出しましたよ。でも、スカートを脱がせてなかったんで、少しかかってしまって……」
いきなり生で入れられたのか。
「彼女がシャワーを浴びに行っている間に、慌ててスマホのカメラをセットしておいたのが、さっき見せた動画です」
須田はバックから小さなケースを取り出した。
「データが大きかったので、SDカードに入れておきましたので、あとでゆっくり見てください」
ケースに入ったSDカードを受け取った。
「シャワーから出た後の2回戦目が、そこに映ってます」
「2回戦目が終わると、彼女が『そろそろ帰らないと』と言って、急いでシャワーを浴びて帰り支度を始めました。
私も着替えて、スマホを片付けて、洗面所に行ったんです。
彼女は仕事の時と同様に髪をまとめて、眼鏡をかけて身支度を整えていました。
それを見ていたら、『会社で堅物で通っているあの女性を自分は抱いたんだ』と思って興奮してきて、洗面所で立ったまま、後ろから襲ってしまったんです」
何だと。
ということは、妻はこの男と金曜日の晩に3回もしたというのか。
「でも、興奮しながらも変に冷静で、またスカートにかけてしまうとまずいので、襲う前に、ちゃんとゴムを取りに行って、装着してから、彼女を襲いました」
あのゴムの匂いは気のせいではなかった。
やっぱり、この男が使ったコンドームの匂いだったのだ。
「彼女からは、『もう時間がないのに』って怒られましたが、『ゴムつけてるから大丈夫』なんて訳の分からないことを答えていたのを覚えています」
どちらにせよ、妻はこの男を受け入れてしまったのだ。
しかも3回も。
「その女性と、今日、職場で会ったんですよね。どうでした?」
「いやぁ、完全に無視でしたよ。さすがに、向こうも気まずいのかもしれないけど、事務所に行った時に話しかけてみても、以前のように事務的で冷たい返事しかしてもらえず、帰り際に廊下ですれ違った時にも、他に誰もいなかったので声をかけてみたんですけど、完全に無視でした」
「酔っていて、あまり覚えてないのかもしれませんよ?」
「それなら、逆に無視はしないと思うので、やっぱり、あの淫乱な姿を見られてしまったのを意識してるんだと思いますよ」
「それじゃ、彼女との関係は今回限りに……」
「いや、あんないい女、1回だけで終わらせるなんて、そんなもったいないことしませんよ。それに、旦那以外の男で快感を覚えた女性は、もう他の男抜きでは満足できないと思いますよ。
しばらくは、こちらからは声をかけないようにしておこうと思いますが、今に、我慢できなくなって、彼女の方から声をかけてきますよ」
須田は自信満々にそう語る。
「それに、前にも言いましたけど、うちの会社、彼女のことを狙ってる男は結構いますからね。他の男に誘われて、ついていくとかあるかもしれませんよ」
まさか、妻がこれ以上……。
「今日だって、以前よりも色気が増して、フェロモンを振りまいてる感じでした。目つきも妙にエロくて」
確かに、金曜日の夜以降、妻が時折放つフェロモンにドキッとさせられることがあった。
でも、それは家の中だけのことだと思っていたのだが……。
「専務なんか、彼女の変化にいち早く気付いたらしく、むしゃぶりつかんばかりに彼女を見ていましたからね。彼女が専務に抱かれるのも時間の問題でしょう」
須田と別れ家に帰ると、妻はいつもと変わらぬ感じで迎えてくれた。
この妻が、他の男に抱かれたとは、いまだに信じられない。
須田にもらったSDカードがバックの中に入っているのを確認した。
妻が寝たら、パソコンで見るつもりだ。
自分で望んだことでありながら、後悔の思いが消えない。
だが、それと同時に、激しい興奮を感じてしまう。
妻は再び須田に抱かれてしまうのか?
専務や、職場の他の男たちにも……。
そう考えただけで、気も狂わんばかりの興奮が襲ってくる。
着替えてリビングに行くと、テーブルの上には、いつもと変わらぬ美味しそうな料理が並んでいた。
妻の愛情を感じながら食べていると、妻が口を開いた。
「今度の土曜日、友達と出かけてきていい?」
<おわり>
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