上 下
31 / 237
《裏技》マスター、魔族と戦う

▶︎最強の魔王が仲間になった! ……マジで?

しおりを挟む
「……」

「……」

 現在、反対派の幹部と、支持派の幹部、そして俺が、一つの大きなテントの中に、机を挟んで座っている。

「まず……見た事の無い奴がいるんだが、そいつは何なんだ」

 ガタイの良い大男のリダラス・ベントが俺を見てそう言う。

「彼はイイジマさん。君らと戦う為に来てくれた援軍だった人だ。今はもう戦かわないよ」

「はっ! 援軍を呼ばないといけないほど戦力が無くなってきたって事だろ? 今俺らを呼んでるのは何かの罠かもしんないぜ?」

 金髪の魔族のザラス・ヒョードが俺らを睨む。

「そういうのはない、その証拠として我々は今武装していない」

 アルスがそう言った事により向こうの警戒が少し落ち着く。

「早速本題に入らせて貰う。今回貴方達と会う事にしたのは他でもない、我々の争う理由が無くなったからだ」

「つまり……人族に攻めるのをやめた、という事だな?」

「そうだ、まず元々魔王様は人族を攻めるつもりなんて無いそうだ」

「じゃあなんで今人族攻めてんだよ!?」

「リレオ……彼が裏で攻めさせたらしい」

「リレオが!?」

「アイツが……? 何の為に……?」

「分かっていない……」

「肝心のリレオは?」

「……逃げられた……」

「……本当の話なのかよそれ」

 確かにこれじゃあ嘘を言っていると思うよな。

「そう言うと思って、こいつを取っておいた」

 拷問した時に取れた〝爪〟を机に置く。

「うっ!?」

「つっ、爪ぇ……!?」

「リレオのな」

「なっ!?」

 皆がドン引きした顔で俺を見る。

「拷問しただけだ。それに、あいつは自分でそういう傷を直せるからな」

「直せる?」

「サイボーグだからか、何故かすぐにパパッと直せるらしい」

「サイボーグってそんな感じなのか……?」

「そんな事より、この爪が本当にリレオのなのか調べ……」

「魔力で分かるだろう、よく見ろ」

「……ほ、本当だ……本当にリレオのだ……」

「これがリレオと俺らが戦ったって証拠だ」

「流石にこれ見たら信じるしかねぇ……か……」

「そうだな、それで、人族に攻めるのをやめてはいるんだな?」

「ああ、さっきアルスが言ったように、俺らの争う理由は無くなったって事だ」

「それで、我々にどうして欲しいのだ?」

「争う目的が無くなった訳だし、また一つの魔王軍となって欲しいんだ……よーするに、仲直りってやつだ」

「仲直り……か……」

 彼らがお互い目で合図する。

「確かに我々の争う理由は消えた、イイジマ殿の言う通り仲直りするとしよう」

 そう言ってアルスとリダラスが握手をする。

「うし、じゃあ皆軍を引き上げよう、その他諸々はそれやってからだ」

「ああ」

 お互い自身の拠点の方へと帰る。

「さてと、軍を引き上げるとかそういうのは任せるよ。というか俺らは援軍として来たんだし元々いた町に帰ったりしても良いんじゃないか?」

「流石にもうちょっといた方が良いとは思うけれど……」

「イイジマ帰るのー?」

 レカがトテトテと近づいてくる。

「まあもうちょっとしたらなー」

「なら私も付いてくー!」

「「……え!?」」

「付いてくるって……いや無理だろ、お前は一応王なんだぞ?」

「行くったら行くー!」

「魔王様」

 アルスがレカの近くに行く。

「どうしたのー?」

「イイジマさんについて行きたいのですか?」

「うん!」

 ……アルスが周りの皆を見る。

 その皆もまた、アルスと魔王を見る。

「この中に、魔王様の判断を止める者はいませんよ」

 そう言って全員がうんと頷く。

「ちょっ、待て! 良いのか!? 王だぞ!? てか幼女だぞ!?」

「まあイイジマさんの旅に魔王様がついて行ったら色々と学んで来そうですし……そういう期待を込めて……」

「マジか……」

 なんか無知な子供の世話係を任された気がするが……まあ、戦力増強な事に変わりはないから目を瞑るとしよう。

「分かったよ、付いてきても良いぞ」

「わーい!」

 はぁ~……この先少し心配だなぁ……。

 もう連れてくしかないんだけど。

「んじゃあ俺はその引き上げとかそういうの見届けてからレカと一緒に帰るよ」

「是非そうしてくれ、魔王様の事、頼むぞ」

「分かったよ」

 俺の旅……というか未来……大丈夫かなぁ……?

 と思いつつ、自室のベットに入り、寝る事にした。

 途中、レカが上に乗って抱きついてきて苦しかったが、何故だか心地が良かった。

 俺はMじゃないんだけどな……じゃないよな?
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

疑う勇者 おめーらなんぞ信用できるか!

uni
ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:468pt お気に入り:246

異世界に転生をしてバリアとアイテム生成スキルで幸せに生活をしたい。

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:205pt お気に入り:802

手乗りドラゴンと行く追放公爵令息の冒険譚

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:4,914pt お気に入り:2,510

カフェへの依頼

キャラ文芸 / 連載中 24h.ポイント:513pt お気に入り:11

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:2,059pt お気に入り:2,423

凄い人を決めよう

キャラ文芸 / 連載中 24h.ポイント:662pt お気に入り:2

処理中です...