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ロビン先生最後の授業
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「おはよう! ロッテ。今日の予定は?」
セディがにこにこと、いつものように私の予定を聞いてきます。
「朝はロビン先生の授業ですが、今日が最後の授業になるそうです。しばらく領地に戻ってそろそろナオを教えるって言ってました。頃合いだろうって」
「そうか。陰陽の姫たちは2人そろってこそ国が栄えるってのが、ロビンの持論みたいだからな。歴史上異界の姫が複数現れた事例がないっていうのに、どこからそんな結論になったのか、頭のいい奴の考えることはわからねえな。午後はリリーのサロンか?」
「ええ。ねぇセディ。私はどうもサロンが苦手ですわ。人間関係を上手にさばくリリーの手腕をみると、驚嘆してしまいます。本来ならきっと、私があれをやらないといけないはずなんですけれど」
「人間には得手不得手はあるものさ。リリーは案外そんなことを求めていないかも知れないぜ。ただいるだけで場が和むってこともあるんだから、そう考え込むな。気楽にね。愛してるよロッテ」
「まぁ」
これですよ。
このごろセディが会話の合間に、愛してるって言葉をぶっこんでくるので、その都度私は、照れてしまうんです。
「いつまでたっても慣れてくれないね。困った子猫ちゃんだ。まぁそれもかわいいんだけれどね。」
そう言いながら私の額にキスを落として、さっそうとお仕事にいってしまいました。
最近はセディが私を見つめたり、触れたりするたびに心臓がドキドキしてしまうんです。
前までは平気でしたのに、どうしてしまったんでしょうね。
「おはようございますロビン先生」
ロビン先生はいつものように、にこにこしています。
これが殲滅だの血まみれだの、と呼ばれている辺境伯とは思えない穏やかさです。
「最後の授業だねぇ。それじゃぁ聞いてみよう。今回の事件では、いろいろな間違いがあったね。過去はかえられないけれども、過去から学ぶことはできるからね。どんな間違いがあったと思う」
「お嬢さまに警告しておけばよかったんです。誰でも簡単に信用しないように」
ベッキーがそう言いました。
「そうだね。貴族には嘘や甘言で取り入ったり、利用しようとするやからが群がるものだ。君たち2人はロッテの側近だね。表向きはメイドでも、こうして最高の教育を受けさせてもらっているのだからね。それならその役割を、自覚しなければならないだろうね」
ロビン先生はメイドといえど容赦しません。
「私どもがロッテお嬢様の信頼を、得ていなかったことが問題でした。もし腹心の部下ならば、どうしようかしら? と聞いていただけた筈です。けれどもお嬢様は一番苦しい時に、ひとりになられました。これが今の私たちの現状です。お嬢様にもっと信頼して貰えるように努力します」
ジャンヌは悔しそうにそう言います
「確かにそうだ。異界から来たのだから頼れる親族は誰もいないのに、その最も近くにいた2人に頼ろうとしなかった。主の信頼を得られなかったというのは、部下として恥ずべきことですよ」
ロビン先生。耳が痛いです。
こんなにも、この2人に心労をかけてしまったなんて。
「私は人物を見誤りました。理想や憧れをナオに投影してしまったんです。等身大のナオをきちんと見ていれば、このような事態を引き起こしませんでした」
私がそう言うとロビン先生は叱責するようにきつい口調で私に言いました。
「いいですかロッテ。上にあるもののミスは、大きな弊害を生みます。心しておきなさい。平民なら自分や親族に迷惑をかけるだけで済む。けれど貴族のミスは多くの家族や部下、場合によっては国すらも危険にさらすことがあるのです。立場を自覚しなさい」
一息ついてロビン先生は言いました。
「クレメンタイン公爵閣下が、ご子息であるセドリックの転移魔法の被害者であるからと、ナオを断罪しませんでしたが、厳しくいえばあなたを陥れようとしたことは、クレメンタイン家を陥れようとしたのと同じことです。クレメンタイン公爵閣下はプリンスの称号を保持しています。この意味がわかりますか」
「王族への不敬罪」
私は絞りだすような声で答えました。
「そうです。あなたが相手を見極めもせずになれ合った結果、下手をすればナオやその取りまきとその家族、そして従業員であるカムイたちにまで、司直の手が及んだ可能性があるのですよ!」
ロビン先生は一息つくと優しい声音になって話をつづけました。
「クレメンタイン公爵に感謝しなさい。そのような断罪の旋風が吹き荒れれば、あなたは渦中の人としてその見識の甘さをさらすことにもなりましたよ。今回は両方とも異界の姫。まだまだ貴族としては未熟な赤子。そう判断して許されたのです。次はありませんよ」
「はい」
全然立場というものを自覚できていませんでした。
上に立つ者というのはこんなにも厳しいものなのですね。
ロビン先生はクックと笑いだしました。
「ロッテは貴族が、まともな紹介状を持たない人と会おうとしなかったり、目の前にいる人ですら紹介されないと言葉もかわさないことを、堅苦しくてつまらない形式主義だと思っていたのでしょう」
私は図星を刺されてドギマギしてしまいました。
「まぁ、いいでしょう。今回のことでその意味も分かったでしょう。こうして間違いをきちんと棚卸しすることで、次に備えることができます。私は領地に戻るので、この先は教えることができません。ですからこれからは自分で棚卸しをなさい。有能な部下もついているのですからね」
「エレノア・ベッキー・ドノフエ準男爵令嬢。マージョリー・ジャンヌ・フォレスト男爵令嬢。クレメンタイン公爵閣下が今回の授業の成績優秀者として、正式にシャーロット嬢の侍女として採用するとのことです。このあと公爵夫人の部屋に行くように。署名しなければならない書類がたくさんありますからね」
「2人にはシャーロット嬢の侍女として私室が与えられます。ベッキーの弟妹に関しては通いの家政婦がつくので安心なさい。給与も今までの3倍になりますし、それぞれの実家には契約金が既に支払われています」
2人があまりの幸運に返事も出来ないでいると、ロビン先生はにやりとして言いました。
「明日からの授業は、厳しいので有名なエバンス教授です。ついてこれなければ首になりますよ。もちろん今回のような事件などは論外です」
「はい。ありがとうございました」
「はい、がんばります」
私にも知らされていなかったので、私たちは抱き合って喜びあいました。
「良かったわねベッキー。ジャンヌ」
「これからもよろしくお願いします。お嬢様」
「精一杯お仕えします」
コホンと咳払いの音がしたので、私たちは慌てて席につき、真面目な顔になりました。
「さて、次はナオの棚卸しをしましょう。皆さん方は自分がナオになったつもりで、どう考えなにを感じたか答えてください」
「まずナオは異界から壁外にいきなり落ちました。そこで自分と同じように異界から落ちた女性が青銀の姫と尊ばれていることを知ります。どう思いましたか?」
「ずるいと思います。自分は壁外で苦労しているのに、のうのうとお姫様になっているなんて。自分だって異界の姫なのに」
ベッキーはナオの気持ちを掬いあげました。
「異界から来た人は黒髪・黒目が当たり前で、異界には青銀髪・菫色の瞳の人は誰も存在しません。その時ナオはどう思いましたか」
「偽物がのさばっていると考えます。そして自分こそが本物だと知らせなきゃて思うでしょう」
ジャンヌはナオが執拗にに私を偽物だと言った理由が理解できたようです。
「ところが青銀の娘も本物の異界の姫だとわかりました。自分はそれに巻き込まれた被害者だと知る事になります。犯人は爵位と贅沢な暮らしを、お詫びとして渡すと言います。どう感じましたか」
「ふざけんな!って思います。思い知らせてやりたくなるかもしれません」
私の答えにロビン先生はにっこりします。
「復讐相手はとても親切です。特に同じように異界から来た娘は、自分が平民として暮らす手伝いをせっせとしてくれます。どう思うでしょう」
「なんか、偽善者っぽく思います。結局自分だけ貴族で私を平民にしたいんだろうって」
ベッキーは自分でも意外な言葉が飛び出したらしく目を丸くしました。
「復讐計画がばれて、自分の取り巻きがさっていきます。親切だった人からは追い払われます。どうですか」
「人間なんてそんなもんだと思います。人なんて信じちゃいけないって」
ジャンヌはナオの孤独に気が付きました。
「それでは、ナオはどうしたらよかったんですか。何を間違えてしまったんでしょう」
「素直に怒れば良かったんだろうと思います。だってまだ異世界に来て日は浅いし、貴族とか平民の意味だってよくわからないんです。本気でおこって自分の気持ちをさらけ出さなければ次には進めないでしょう」
私はそう答えました。
あの時、ナオが本気でぶつかってきてくれたら、皆でナオの将来を考えられた筈です。
いきなり復讐しようとするなんて、思いもしませんんでした。
私もナオの立場なら恨んでいるかもしれないと、警戒しておくべきでした、
親切にしているつもりで、相手をさらに傷つけることがあるんですね。
「そういうことですね。相手の気持ちなんて言葉にしてくれないと通じないものです。修道院に入ったナオはそれこそ怒りと恨みで悪鬼みたいになっていたんですよ。人なんて欠片も信じられないくらいにね」
「それでロビン先生はナオが立ち直ると信じてらっしゃるのですか?」
私の質問にロビン先生はしばらく瞑目していましたが、やがてこう言いました。
「どうでしょうか。こればっかりは本人しだいですからね。他人が相手を変えられるなんて、そんな傲慢なことなどできるはずもありません。自分が変わりたいと思った時に、変化が始まるのでしょうからね」
「では何故ナオと向き合おうとなさるのですか」
「だって酷いじゃありませんか。誰も知らない場所で、誰からも本気で向き合って貰えないなんて」
ロビン先生はぽつりとそう言いました。
この英雄は頭が良すぎて孤独なのかもしれない、とそんなことを感じました。
セディがにこにこと、いつものように私の予定を聞いてきます。
「朝はロビン先生の授業ですが、今日が最後の授業になるそうです。しばらく領地に戻ってそろそろナオを教えるって言ってました。頃合いだろうって」
「そうか。陰陽の姫たちは2人そろってこそ国が栄えるってのが、ロビンの持論みたいだからな。歴史上異界の姫が複数現れた事例がないっていうのに、どこからそんな結論になったのか、頭のいい奴の考えることはわからねえな。午後はリリーのサロンか?」
「ええ。ねぇセディ。私はどうもサロンが苦手ですわ。人間関係を上手にさばくリリーの手腕をみると、驚嘆してしまいます。本来ならきっと、私があれをやらないといけないはずなんですけれど」
「人間には得手不得手はあるものさ。リリーは案外そんなことを求めていないかも知れないぜ。ただいるだけで場が和むってこともあるんだから、そう考え込むな。気楽にね。愛してるよロッテ」
「まぁ」
これですよ。
このごろセディが会話の合間に、愛してるって言葉をぶっこんでくるので、その都度私は、照れてしまうんです。
「いつまでたっても慣れてくれないね。困った子猫ちゃんだ。まぁそれもかわいいんだけれどね。」
そう言いながら私の額にキスを落として、さっそうとお仕事にいってしまいました。
最近はセディが私を見つめたり、触れたりするたびに心臓がドキドキしてしまうんです。
前までは平気でしたのに、どうしてしまったんでしょうね。
「おはようございますロビン先生」
ロビン先生はいつものように、にこにこしています。
これが殲滅だの血まみれだの、と呼ばれている辺境伯とは思えない穏やかさです。
「最後の授業だねぇ。それじゃぁ聞いてみよう。今回の事件では、いろいろな間違いがあったね。過去はかえられないけれども、過去から学ぶことはできるからね。どんな間違いがあったと思う」
「お嬢さまに警告しておけばよかったんです。誰でも簡単に信用しないように」
ベッキーがそう言いました。
「そうだね。貴族には嘘や甘言で取り入ったり、利用しようとするやからが群がるものだ。君たち2人はロッテの側近だね。表向きはメイドでも、こうして最高の教育を受けさせてもらっているのだからね。それならその役割を、自覚しなければならないだろうね」
ロビン先生はメイドといえど容赦しません。
「私どもがロッテお嬢様の信頼を、得ていなかったことが問題でした。もし腹心の部下ならば、どうしようかしら? と聞いていただけた筈です。けれどもお嬢様は一番苦しい時に、ひとりになられました。これが今の私たちの現状です。お嬢様にもっと信頼して貰えるように努力します」
ジャンヌは悔しそうにそう言います
「確かにそうだ。異界から来たのだから頼れる親族は誰もいないのに、その最も近くにいた2人に頼ろうとしなかった。主の信頼を得られなかったというのは、部下として恥ずべきことですよ」
ロビン先生。耳が痛いです。
こんなにも、この2人に心労をかけてしまったなんて。
「私は人物を見誤りました。理想や憧れをナオに投影してしまったんです。等身大のナオをきちんと見ていれば、このような事態を引き起こしませんでした」
私がそう言うとロビン先生は叱責するようにきつい口調で私に言いました。
「いいですかロッテ。上にあるもののミスは、大きな弊害を生みます。心しておきなさい。平民なら自分や親族に迷惑をかけるだけで済む。けれど貴族のミスは多くの家族や部下、場合によっては国すらも危険にさらすことがあるのです。立場を自覚しなさい」
一息ついてロビン先生は言いました。
「クレメンタイン公爵閣下が、ご子息であるセドリックの転移魔法の被害者であるからと、ナオを断罪しませんでしたが、厳しくいえばあなたを陥れようとしたことは、クレメンタイン家を陥れようとしたのと同じことです。クレメンタイン公爵閣下はプリンスの称号を保持しています。この意味がわかりますか」
「王族への不敬罪」
私は絞りだすような声で答えました。
「そうです。あなたが相手を見極めもせずになれ合った結果、下手をすればナオやその取りまきとその家族、そして従業員であるカムイたちにまで、司直の手が及んだ可能性があるのですよ!」
ロビン先生は一息つくと優しい声音になって話をつづけました。
「クレメンタイン公爵に感謝しなさい。そのような断罪の旋風が吹き荒れれば、あなたは渦中の人としてその見識の甘さをさらすことにもなりましたよ。今回は両方とも異界の姫。まだまだ貴族としては未熟な赤子。そう判断して許されたのです。次はありませんよ」
「はい」
全然立場というものを自覚できていませんでした。
上に立つ者というのはこんなにも厳しいものなのですね。
ロビン先生はクックと笑いだしました。
「ロッテは貴族が、まともな紹介状を持たない人と会おうとしなかったり、目の前にいる人ですら紹介されないと言葉もかわさないことを、堅苦しくてつまらない形式主義だと思っていたのでしょう」
私は図星を刺されてドギマギしてしまいました。
「まぁ、いいでしょう。今回のことでその意味も分かったでしょう。こうして間違いをきちんと棚卸しすることで、次に備えることができます。私は領地に戻るので、この先は教えることができません。ですからこれからは自分で棚卸しをなさい。有能な部下もついているのですからね」
「エレノア・ベッキー・ドノフエ準男爵令嬢。マージョリー・ジャンヌ・フォレスト男爵令嬢。クレメンタイン公爵閣下が今回の授業の成績優秀者として、正式にシャーロット嬢の侍女として採用するとのことです。このあと公爵夫人の部屋に行くように。署名しなければならない書類がたくさんありますからね」
「2人にはシャーロット嬢の侍女として私室が与えられます。ベッキーの弟妹に関しては通いの家政婦がつくので安心なさい。給与も今までの3倍になりますし、それぞれの実家には契約金が既に支払われています」
2人があまりの幸運に返事も出来ないでいると、ロビン先生はにやりとして言いました。
「明日からの授業は、厳しいので有名なエバンス教授です。ついてこれなければ首になりますよ。もちろん今回のような事件などは論外です」
「はい。ありがとうございました」
「はい、がんばります」
私にも知らされていなかったので、私たちは抱き合って喜びあいました。
「良かったわねベッキー。ジャンヌ」
「これからもよろしくお願いします。お嬢様」
「精一杯お仕えします」
コホンと咳払いの音がしたので、私たちは慌てて席につき、真面目な顔になりました。
「さて、次はナオの棚卸しをしましょう。皆さん方は自分がナオになったつもりで、どう考えなにを感じたか答えてください」
「まずナオは異界から壁外にいきなり落ちました。そこで自分と同じように異界から落ちた女性が青銀の姫と尊ばれていることを知ります。どう思いましたか?」
「ずるいと思います。自分は壁外で苦労しているのに、のうのうとお姫様になっているなんて。自分だって異界の姫なのに」
ベッキーはナオの気持ちを掬いあげました。
「異界から来た人は黒髪・黒目が当たり前で、異界には青銀髪・菫色の瞳の人は誰も存在しません。その時ナオはどう思いましたか」
「偽物がのさばっていると考えます。そして自分こそが本物だと知らせなきゃて思うでしょう」
ジャンヌはナオが執拗にに私を偽物だと言った理由が理解できたようです。
「ところが青銀の娘も本物の異界の姫だとわかりました。自分はそれに巻き込まれた被害者だと知る事になります。犯人は爵位と贅沢な暮らしを、お詫びとして渡すと言います。どう感じましたか」
「ふざけんな!って思います。思い知らせてやりたくなるかもしれません」
私の答えにロビン先生はにっこりします。
「復讐相手はとても親切です。特に同じように異界から来た娘は、自分が平民として暮らす手伝いをせっせとしてくれます。どう思うでしょう」
「なんか、偽善者っぽく思います。結局自分だけ貴族で私を平民にしたいんだろうって」
ベッキーは自分でも意外な言葉が飛び出したらしく目を丸くしました。
「復讐計画がばれて、自分の取り巻きがさっていきます。親切だった人からは追い払われます。どうですか」
「人間なんてそんなもんだと思います。人なんて信じちゃいけないって」
ジャンヌはナオの孤独に気が付きました。
「それでは、ナオはどうしたらよかったんですか。何を間違えてしまったんでしょう」
「素直に怒れば良かったんだろうと思います。だってまだ異世界に来て日は浅いし、貴族とか平民の意味だってよくわからないんです。本気でおこって自分の気持ちをさらけ出さなければ次には進めないでしょう」
私はそう答えました。
あの時、ナオが本気でぶつかってきてくれたら、皆でナオの将来を考えられた筈です。
いきなり復讐しようとするなんて、思いもしませんんでした。
私もナオの立場なら恨んでいるかもしれないと、警戒しておくべきでした、
親切にしているつもりで、相手をさらに傷つけることがあるんですね。
「そういうことですね。相手の気持ちなんて言葉にしてくれないと通じないものです。修道院に入ったナオはそれこそ怒りと恨みで悪鬼みたいになっていたんですよ。人なんて欠片も信じられないくらいにね」
「それでロビン先生はナオが立ち直ると信じてらっしゃるのですか?」
私の質問にロビン先生はしばらく瞑目していましたが、やがてこう言いました。
「どうでしょうか。こればっかりは本人しだいですからね。他人が相手を変えられるなんて、そんな傲慢なことなどできるはずもありません。自分が変わりたいと思った時に、変化が始まるのでしょうからね」
「では何故ナオと向き合おうとなさるのですか」
「だって酷いじゃありませんか。誰も知らない場所で、誰からも本気で向き合って貰えないなんて」
ロビン先生はぽつりとそう言いました。
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