2回目チート人生、まじですか

ゆめ

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動き出した影と光

ダンジョン⑤

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「…………ヒック……………」
「今でも獣人は人間に酷い仕打ちを受けてるんだな…」

 鼻を啜りながらコクン、と小さく頷く。

「俺は獣人好きだけどねぇ……………」

 ぼそっと、呟いた声に耳の良い獣人の少年はえ、と驚きの表情をした。

「や………だって耳とかしっぽとかふわふわして可愛くね…?」
「えぇ……………」

 獣人は第六感に優れている。
 本心から言ってることが分かったのか変人を見るような顔をしてきた。

 え、やだ。子供にもそんな顔されんの俺…?

「それよりなんでお前こんな所にいるんだ?ここダンジョンでわりと下の階層だぞ?」
「…………………………」

 まだ人間を信用出来ないのか話すことを躊躇っている。

「もうあんだけ泣いたんだからいいじゃねえか。恥ずかしいこともねえだろ」
「だ、黙れ!!」

 今度は顔を真っ赤にして叫ぶ少年。
 いやぁ、表情がコロコロ変わって忙しいねぇ。

「……………この前俺の村が人間に襲われたんだ…………それで、……母ちゃんと父さんと…姉ちゃんが殺された…………」
「よく生き延びれたな」
「………俺は男だから守らなきゃいけなかったのに逆に守られた…………」
「そっか…………愛されてたんだな」
「…………………………俺はみんな生きて欲しかったのに…」
「家族はお前に生きて欲しかったんだよ。いい家族じゃねえか」
「…………………うん………」

 悲しみもあるが少し嬉しそうに頷く。

「で、その村がもしかしてここら辺から近かったのか?」
「そう…………人間から逃げてる時…このダンジョンの入口を見つけた…ここはあまり人間は入ってこないダンジョンって聞いてたから隠れるのに丁度いいと思って入った」
「…………ん?、?、????ちょっっっとまって…え、ここって駆け出し冒険者達に人気のダンジョンって聞いてきたんだけど??」
「多分それはもう少し王都に近づいた方のだと思う。そっちは人が多いって聞いたことある」



 お?????


 まてまてまてまて。え、まって俺もしかしてオススメしない方のダンジョン間違って来てたってこと??難しい方???だから人いなかったの?え、嘘。

「どうかしたか?」
「い、いや、なんでもない…続きどうぞ」
「?……ダンジョンなんて入ったこと無かったからどこ行けばわかんなくてフラフラ歩いてたら気がついたらこの場所に来てて気持ち悪いのに襲われた」

 あーーー…もしやよくある転移系トラップに引っかかったということですね。なるほど。それでいきなり20階層まで来れたのか……なるほど。

「良く考えれば助けて貰ったんだったな………ありがとう………」
「………どういたしまして」

 なんだ、割と素直で可愛いやつじゃないか。
 
「お前、これからどうするんだ?」
「………………」

 困ったように口を閉じる。
 そりゃそうだろう。家族を失い、村を失う。たった10歳やそこらの子供がそれだけの事を経験して、その先に宛があるとは思えない。
 そしてそれを見逃すことも出来ない。

「んーーーー……………そうだなぁ……」

 色々な考えが浮かんでは消し去る。恐らくまだ人間への恐怖感などがかなり強く根付いてる。俺へはかなり警戒心も溶けてるようだが………ん?

 あ、そっか。

「よし、お前俺と来るか??」
「え、」
「俺さ、国の騎士団、まあ国を守る仕事してんだけどさ、見習いとして騎士団入るか?俺の弟子として」
「え……と」
「確かに他に人間もいるけど少なくとも騎士団の奴らは全員いい奴らだぞ!」
「……………」

 躊躇いがあるのか返答がない。

「お前が嫌っつーならいいんだけどさ、なんかここであったのも何かの縁だし、身寄りがねぇっつーなら俺が引き取ってやる!金は幸いめちゃくちゃあるしな!それに俺も、この世界に家族いないんだ」
「…死んだのか?」
「うーーーん…遠いところにいる?ここの世界とは違うところにな」

 わけが分かってない少年は首を傾げるのみ。

「まあとりあえず俺も家族いねぇんだよ!!それでさ、もしお前に家族になってくれたら嬉しい」

 この世界に家族はいない。地球というあまりにも離れたところにいる。仲間はいる。だが家族ではない。なんだかんだ、かなり寂しいものだ。

 そんな俺の願望も含め笑って手を差し伸べれば戸惑いながらもその手を取ってくれる。

「ほんとに…………いいのか…?」
「おう!せっかくの人生だ!楽しく過ごしたもん勝ちだからな!」
「………お前…面白いな………」

 初めて心の底からでた笑に俺は心が暖かくなった。
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