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忍び寄る影
告白
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「2回目って…………どういう、?」
「…………………」
歴史書を閉じて息を吐き上を見る。
「前世、ってお前信じるか?」
「前世………」
「俺は前世の記憶がある。前世で俺は日本と似たような、けれども違う世界に居た。そこで普通の学生をしていた。…………で、いきなり転移した。この世界に当時のクラスメイトともに。およそ500年前」
「500年前…………………」
昔を少しずつ鮮明に思い出す。
「最初はみんな遊び感覚だったよ。頼まれて勇者になって、漫画の中だけだと思っていた魔法まで使えるようになって…………………………家に帰りたい気持ちはあったけどこの世界で魔法を使っているのは楽しかったんだよな……………………そしてその軽い気持ちで足をすくわれた」
死者が出て始めて気づいた。
この恐ろしい戦いをしなければいけないことを。
「クラスはバラバラになったよ。みんな自分の命最優先。自分より少しでも強いやつを前線にいかせたがり自分の身を守ろうとする。生け贄を作り、盾を作る。………………ま、人間の本能かもな」
そしてその生け贄となったのは、俺。クラスで1番強かった俺。
「毎日毎日明日自分は死ぬんじゃないかって、布団にくるまって泣いたり怯えたり……………朝になれば戦闘に出かけなければいけない。国民は応援してくれるサポーターとともに逃げることを許さない監視者だった。俺たちが失敗した時は………………………まるで犯罪者を見るような目だったなぁ…………………」
居心地は最悪。そこで戦っても地獄。逃げても地獄。
勝って、自分の世界に帰るしかなかった。
「クラスの中心的存在は一応居たには居たが…………まあ一言で言えばポンコツだったな。戦域状態を上手く把握できてない。そんなんで指示されても困るっつうの………………」
そしてそこで当時の姫さんから渡されたのが封印石。
「使う条件はあったけど何とかそれを魔王に行使することが出来た」
当時の戦いはトラウマレベルで心に染み付いている。
簡単に思い出せるが思い出したくもないものだ。
「その時に割れ、地方へ飛んだのが今探している封印石の欠片だ。………………………………その後弱った魔王討伐のために何度も動いた。そして長い年月の後、魔王討伐には成功したんだ」
「魔王を…………倒したのか…?」
「や、違うか………成功したと思い込んでいたんだ。実際ほぼ成功してたんだけどな」
「それはどう言う…」
「魔王には核があんだよ。魔王という存在を形成するためのもの。その核無くして魔王はな存在しないしその核があるから魔王が存在する」
そしてその核の存在を当時の俺たちー………いや、当時のその世界の全ての人間が知らなかった。
「ということは……………その核があれば魔王の身体は朽ちても魔王は生き返るって…こと?」
「正解。………………一応俺たちとの戦いでやつの核はかなり損傷していたらしい。だからこそ500年もの長い年月が経った今に魔王が再び現れるようになったんだと思う」
「だが当時の俺たちは討伐に成功したと思っていたし実際魔王が動かなくなるところも、魔王の身体から魔力が無くなるところを目にしていた。ま、その魔力で俺たちは元の世界に帰れたんだけど」
だからこそ気づかなかった。
そして核に関しては2回目、つまり今の時代に来てヴァイスに聞いたものだ。
「信じるか?……こんなバカみたいな話」
前世の記憶がある。
前世でもこの世界に転移させられて戦った。
本などに残っている勇者が今目の前にいる俺であること。
「前世、ねぇ……確かに日本にいた頃なら馬鹿みたいな話だと笑って終わってたんだろうけど…………転移なんてものがあってそれを体験している以上別にあっても不思議でもなんともねえんじゃねえの?」
「…………………………」
「経験してるからこそ色々知ってる。強さを持ってる。俺たちに教えてくれる。いいことだな、うん」
「……………怒んねえの?」
「なんで怒るんだよ………………」
「だって俺は今まで隠してた。お前らを捨てて俺だけ逃げた」
「まあなかなか話してくれなかったのは幼馴染としてはうーんってなるけど………………昔色々あったんだろ?別に今話してくれたからそれでいいし自分の人生は自分で決めるものだろ。別に勇者になるならないを決めるのは自分だし他人が強制するものでもない、だろ?」
「………………………………………」
「俺は別にお前が生きてさえいりゃそれでいいよ」
「………………………………」
「…………ん?…………………………おいおい………」
困ったような顔した徹の手が俺の頭の上に乗っかる。
「お前………割と泣き虫だな」
「泣いて、ねぇ……し……………」
「ははっ、嘘つくなよ」
「嘘じゃねぇ……………」
まったく、なんなんだこの涙腺の弱さは。
目からこぼれ落ちる涙が止まらない。
止まらせようと目を擦るが止まらない。
それどころか徹の頭に乗っかる手の暖かみにさらに涙が浮き出す始末。
気がついたら俺は徹の胸の中で大泣きしていた。
「…………………」
歴史書を閉じて息を吐き上を見る。
「前世、ってお前信じるか?」
「前世………」
「俺は前世の記憶がある。前世で俺は日本と似たような、けれども違う世界に居た。そこで普通の学生をしていた。…………で、いきなり転移した。この世界に当時のクラスメイトともに。およそ500年前」
「500年前…………………」
昔を少しずつ鮮明に思い出す。
「最初はみんな遊び感覚だったよ。頼まれて勇者になって、漫画の中だけだと思っていた魔法まで使えるようになって…………………………家に帰りたい気持ちはあったけどこの世界で魔法を使っているのは楽しかったんだよな……………………そしてその軽い気持ちで足をすくわれた」
死者が出て始めて気づいた。
この恐ろしい戦いをしなければいけないことを。
「クラスはバラバラになったよ。みんな自分の命最優先。自分より少しでも強いやつを前線にいかせたがり自分の身を守ろうとする。生け贄を作り、盾を作る。………………ま、人間の本能かもな」
そしてその生け贄となったのは、俺。クラスで1番強かった俺。
「毎日毎日明日自分は死ぬんじゃないかって、布団にくるまって泣いたり怯えたり……………朝になれば戦闘に出かけなければいけない。国民は応援してくれるサポーターとともに逃げることを許さない監視者だった。俺たちが失敗した時は………………………まるで犯罪者を見るような目だったなぁ…………………」
居心地は最悪。そこで戦っても地獄。逃げても地獄。
勝って、自分の世界に帰るしかなかった。
「クラスの中心的存在は一応居たには居たが…………まあ一言で言えばポンコツだったな。戦域状態を上手く把握できてない。そんなんで指示されても困るっつうの………………」
そしてそこで当時の姫さんから渡されたのが封印石。
「使う条件はあったけど何とかそれを魔王に行使することが出来た」
当時の戦いはトラウマレベルで心に染み付いている。
簡単に思い出せるが思い出したくもないものだ。
「その時に割れ、地方へ飛んだのが今探している封印石の欠片だ。………………………………その後弱った魔王討伐のために何度も動いた。そして長い年月の後、魔王討伐には成功したんだ」
「魔王を…………倒したのか…?」
「や、違うか………成功したと思い込んでいたんだ。実際ほぼ成功してたんだけどな」
「それはどう言う…」
「魔王には核があんだよ。魔王という存在を形成するためのもの。その核無くして魔王はな存在しないしその核があるから魔王が存在する」
そしてその核の存在を当時の俺たちー………いや、当時のその世界の全ての人間が知らなかった。
「ということは……………その核があれば魔王の身体は朽ちても魔王は生き返るって…こと?」
「正解。………………一応俺たちとの戦いでやつの核はかなり損傷していたらしい。だからこそ500年もの長い年月が経った今に魔王が再び現れるようになったんだと思う」
「だが当時の俺たちは討伐に成功したと思っていたし実際魔王が動かなくなるところも、魔王の身体から魔力が無くなるところを目にしていた。ま、その魔力で俺たちは元の世界に帰れたんだけど」
だからこそ気づかなかった。
そして核に関しては2回目、つまり今の時代に来てヴァイスに聞いたものだ。
「信じるか?……こんなバカみたいな話」
前世の記憶がある。
前世でもこの世界に転移させられて戦った。
本などに残っている勇者が今目の前にいる俺であること。
「前世、ねぇ……確かに日本にいた頃なら馬鹿みたいな話だと笑って終わってたんだろうけど…………転移なんてものがあってそれを体験している以上別にあっても不思議でもなんともねえんじゃねえの?」
「…………………………」
「経験してるからこそ色々知ってる。強さを持ってる。俺たちに教えてくれる。いいことだな、うん」
「……………怒んねえの?」
「なんで怒るんだよ………………」
「だって俺は今まで隠してた。お前らを捨てて俺だけ逃げた」
「まあなかなか話してくれなかったのは幼馴染としてはうーんってなるけど………………昔色々あったんだろ?別に今話してくれたからそれでいいし自分の人生は自分で決めるものだろ。別に勇者になるならないを決めるのは自分だし他人が強制するものでもない、だろ?」
「………………………………………」
「俺は別にお前が生きてさえいりゃそれでいいよ」
「………………………………」
「…………ん?…………………………おいおい………」
困ったような顔した徹の手が俺の頭の上に乗っかる。
「お前………割と泣き虫だな」
「泣いて、ねぇ……し……………」
「ははっ、嘘つくなよ」
「嘘じゃねぇ……………」
まったく、なんなんだこの涙腺の弱さは。
目からこぼれ落ちる涙が止まらない。
止まらせようと目を擦るが止まらない。
それどころか徹の頭に乗っかる手の暖かみにさらに涙が浮き出す始末。
気がついたら俺は徹の胸の中で大泣きしていた。
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