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忍び寄る影
書斎
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それから訓練は本格的に行うようになった。
自己の身体能力の向上から実践的な動きの訓練。こちらは俺たちが相手となり行う。
さらに徹と青木に関しては聖魔法が使えるということなので並行してそちらの訓練も行う。
俺たち騎士団がいつも暇って訳でもないためたまに彼らの相手は別の人間に行わせていた。勇者達の実力は日に日に伸びていった。さらにその勇者たちの相手となるこちら側もいい訓練となった。
故に双方でウィンウィンの関係になっていた。
そして、徹と青木の聖魔法の訓練も順調だった。飲み込みが早い上に才能もある。
なんと羨ましいことだろう。あっという間に使いこなせるようになっていた。まだ応用、とまではいかないが基礎基本はしっかりと使いこなせるようになった。
自由自在に応用出来るようになるのも時間の問題だろう。
彼らはセンスがあるから。
パーティーに2人も聖属性が使える者が存在し、さらにベテランともなればこの国一のパーティーとなるだろう。
きっとそれは近い未来に訪れることであると思われる。
ある日、俺が訓練後、軽く汗を流し本部内を歩いていた時ふと一室から明かりが漏れていることに気がついた。
「えーっ…と…あそこは……………書室?」
誰かいんのかな、とこっそり中を除くと様々な本に埋もれた徹がそこにいた。
「なんだ、お前か…何してんの?」
「え、…うおっ、びっくりした…………気配消して背後に立つなよ………………」
「わりぃな~気配消すのが癖になっててなぁ~」
「どんな癖だよ………」
若干呆れたような目をしたのは気の所為だろうか?
いや、気の所為だろう。
気の所為だ。
「………ん?歴史の本?」
徹が持っていた本の中身を後ろから除く。
丁度500年前くらいのものだ。
「どした?そんなん見て」
「んー…………いや、昔の事少しは知っとかなきゃなぁって思ってさ」
「…?」
俺の眉間に皺を寄せて首を傾げる姿を見て徹が頬を弛めながら開いていた本を閉じる。
「俺さぁ…………向こうで訓練ばっかしてきたんだよ」
「まぁ、、そうだろうな」
勇者だからな。戦い方を知らない勇者など話にならないし。
「この前蒼涼が色々教えてくれた時あったろ?」
「あぁ」
「あの時俺、なんも知らねえんだなって思ってさ…………ただただ魔王という存在を倒すために訓練を詰んでいただけ。魔王が悪、という認識だけを持ち日本じゃ使えなかった魔法をどこか楽しく学んでいただけ。現在の世界の状態、情報はあやふや。そんなんでよく戦おうとしてたよなほんと」
普通そうだろう。
俺も、一回目のクラスメイトも最初はそうだった。結局どこか軽い気持ちがあった。どこか楽しんでいた。どこか夢だと思っていた。
実際に痛い思いをしなければ実感が出来なかった。気が付かなかった。
無知は愚かということに。
「俺たちは戦うと決めたからには戦わなければならない。こちらの損傷なく相手を確実に倒すためには俺たち自身の力量をあげることと情報量を増やすこと、そう思ってさ…少しでも頭に知識を詰めようと思ってんだけど………久々にこんなに勉強したわ。受験期並だぞこれ」
「高校受験かぁ………懐かしいな……………ってもう大学受験迫ってたな…」
「うわぁ…………お前嫌なこと思い出させんなよ……………この前受験生終わったばかりだぞ…また受験生やんのか………」
「いや、お前が受験という言葉持ち出したからな????」
「うぐっ………まぁそれはそうだけどさぁ…………」
それまでに帰れるだろうか。
前と同じだったらこの世界とあちらの世界の時間の流れが違ってくる。
制限時間は短い…
「…………………そっかぁ…………………すごいなお前」
自分で気づき、行動している。知識を得るために。
「そんなことねえよ」
照れたように顔を背ける徹から歴史書を奪い取る。
「今どこらへんだ?」
徹から奪った歴史書のページをペラペラとめくる。
「あー……ここら辺かなぁ、でもあまり詳しく書いてないんだよなぁ」
徹が指さしたのは500年くらい前。つまり俺が一回目いた頃の時代。
なるほど、確かに大きな出来事でさえ詳細は書かれてない。
そして詳しくないのは魔王たちの行動が活発でそのような書物を事細かに残すことが難しかったからだ。
俺はよく知っている。
体験しているから。
「こいつなら、いいよな………………」
「ん??何が?」
こいつは、違うから…………
「俺さぁ、2回目なんだよ。この世界に転移させられんの」
「………………………………………………え?」
自己の身体能力の向上から実践的な動きの訓練。こちらは俺たちが相手となり行う。
さらに徹と青木に関しては聖魔法が使えるということなので並行してそちらの訓練も行う。
俺たち騎士団がいつも暇って訳でもないためたまに彼らの相手は別の人間に行わせていた。勇者達の実力は日に日に伸びていった。さらにその勇者たちの相手となるこちら側もいい訓練となった。
故に双方でウィンウィンの関係になっていた。
そして、徹と青木の聖魔法の訓練も順調だった。飲み込みが早い上に才能もある。
なんと羨ましいことだろう。あっという間に使いこなせるようになっていた。まだ応用、とまではいかないが基礎基本はしっかりと使いこなせるようになった。
自由自在に応用出来るようになるのも時間の問題だろう。
彼らはセンスがあるから。
パーティーに2人も聖属性が使える者が存在し、さらにベテランともなればこの国一のパーティーとなるだろう。
きっとそれは近い未来に訪れることであると思われる。
ある日、俺が訓練後、軽く汗を流し本部内を歩いていた時ふと一室から明かりが漏れていることに気がついた。
「えーっ…と…あそこは……………書室?」
誰かいんのかな、とこっそり中を除くと様々な本に埋もれた徹がそこにいた。
「なんだ、お前か…何してんの?」
「え、…うおっ、びっくりした…………気配消して背後に立つなよ………………」
「わりぃな~気配消すのが癖になっててなぁ~」
「どんな癖だよ………」
若干呆れたような目をしたのは気の所為だろうか?
いや、気の所為だろう。
気の所為だ。
「………ん?歴史の本?」
徹が持っていた本の中身を後ろから除く。
丁度500年前くらいのものだ。
「どした?そんなん見て」
「んー…………いや、昔の事少しは知っとかなきゃなぁって思ってさ」
「…?」
俺の眉間に皺を寄せて首を傾げる姿を見て徹が頬を弛めながら開いていた本を閉じる。
「俺さぁ…………向こうで訓練ばっかしてきたんだよ」
「まぁ、、そうだろうな」
勇者だからな。戦い方を知らない勇者など話にならないし。
「この前蒼涼が色々教えてくれた時あったろ?」
「あぁ」
「あの時俺、なんも知らねえんだなって思ってさ…………ただただ魔王という存在を倒すために訓練を詰んでいただけ。魔王が悪、という認識だけを持ち日本じゃ使えなかった魔法をどこか楽しく学んでいただけ。現在の世界の状態、情報はあやふや。そんなんでよく戦おうとしてたよなほんと」
普通そうだろう。
俺も、一回目のクラスメイトも最初はそうだった。結局どこか軽い気持ちがあった。どこか楽しんでいた。どこか夢だと思っていた。
実際に痛い思いをしなければ実感が出来なかった。気が付かなかった。
無知は愚かということに。
「俺たちは戦うと決めたからには戦わなければならない。こちらの損傷なく相手を確実に倒すためには俺たち自身の力量をあげることと情報量を増やすこと、そう思ってさ…少しでも頭に知識を詰めようと思ってんだけど………久々にこんなに勉強したわ。受験期並だぞこれ」
「高校受験かぁ………懐かしいな……………ってもう大学受験迫ってたな…」
「うわぁ…………お前嫌なこと思い出させんなよ……………この前受験生終わったばかりだぞ…また受験生やんのか………」
「いや、お前が受験という言葉持ち出したからな????」
「うぐっ………まぁそれはそうだけどさぁ…………」
それまでに帰れるだろうか。
前と同じだったらこの世界とあちらの世界の時間の流れが違ってくる。
制限時間は短い…
「…………………そっかぁ…………………すごいなお前」
自分で気づき、行動している。知識を得るために。
「そんなことねえよ」
照れたように顔を背ける徹から歴史書を奪い取る。
「今どこらへんだ?」
徹から奪った歴史書のページをペラペラとめくる。
「あー……ここら辺かなぁ、でもあまり詳しく書いてないんだよなぁ」
徹が指さしたのは500年くらい前。つまり俺が一回目いた頃の時代。
なるほど、確かに大きな出来事でさえ詳細は書かれてない。
そして詳しくないのは魔王たちの行動が活発でそのような書物を事細かに残すことが難しかったからだ。
俺はよく知っている。
体験しているから。
「こいつなら、いいよな………………」
「ん??何が?」
こいつは、違うから…………
「俺さぁ、2回目なんだよ。この世界に転移させられんの」
「………………………………………………え?」
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