自己犠牲者と混ざる世界

二職三名人

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2-2:始まりは終わり、動き出す

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「アンタがぶつけてきた薬品。これはすごな。ジュワって溶けるように死ねるんだ。貴重な体験だぞ。一回浴びて見るといい」
「や、止めてくれぇ!」

「一回、アンタに殺されたから絶対に止めてあげない」

 ある男性は、やり返される形で酸を浴びせられた死亡した。



「御免なさい御免なさい御免なさい御免なさい御免なさい御免なさい御免なさい御免なさい御免なさい御免なさい御免なさい御免なさい御免なさい」
「見つけた。……所でこの部屋にあったカゴの中に……裾が赤い……ズボンが出て来たけど……あれ誰の? ……10秒……1……2……3……4……」」
「ヒ、ヒィ!? えっ、あの」

「10……さようなら……許さない」

 恐怖で戦意を失った女性は、天月博人の要望に応えられず全身をワインを作る様に踏み潰された。

 天月博人は初めて人を殺したのだ。なのに迷いも戸惑いも無く目に映った上村の仲間だと思った人間を手当たり次第。喉仏を、双眼を、脊髄を、背骨を。握り潰し、踏み潰し。奪った刃物の器具で怯える1人を執拗しつように動かなくなるまで突き刺し斬り裂いた。
 何度か、銃声とともに身体に穴が空き、絶命するが、暫くした後に天月博人は甦り、また、暴れ始める。
 甦った天月博人の顔を見た際に、人々はことごとく驚きを露わにする様だが、驚いた頃には目の前に天月博人がいると言うことになり、次の瞬間には天月博人の手によって殺害される。殺された人々は所持品をすべて奪われ、天月博人に利用される。
 この際、奪った物の1つに手帳があり、此処が実験する場所、研究する場所だと言う事と。所属している組織の名前が【ロロ=イア】だと言う事を知った。



「……こんな所にあったのか。良かった」

 暴れまわっていた最中、天月博人はとある一室で奪われていたゴーグル型携帯端末と花の髪留めを発見した。ゴーグル型携帯端末を目に、花の髪留めを腕に装着する。
 汚してしまわないよう、壊さないように気を付けよう。こんな姿をみんなに見られたら怖がり悲しむんだろうなぁ、等と思いながら、ほんの少しの冷静さを取り戻した状態で殺戮を続行した。この時、天月博人の死亡率は極端に下がる。



「なんだか騒がしいなと思えば」

 斬滅が終わりあてもなく彷徨い歩いて居ると。気がつけば地下、自身も囚われていた檻が並ぶ地下に天月博人は居た。
 その檻の一基から声をかけられ、天月博人の視線はゆっくりと檻に向けられる。天月博人は地下に入ってすぐ手前の檻に入れられていたので、少し奥に行くだけで顔も合わせたことのない他人に声をかけられたことになる。

「何で、こんなところに君みたいな子供がいるんですか?!……どうしてそんなに傷だらけで……」
「上がさっきから騒がしいし。それと何か関係あるんじゃないの?」

 檻の中には、男が2人いた2。薄汚い、少し力を入れて引っ張れば破れてしまいそうな同じ衣類を纏っている。この建物内にいる人間で明らかな下層階級にあたる風貌に投げかけた刃物をしまい込む。

「アンタ達は……ここ、ロロ=イアの人達の仲間?」

 頭が冷え切っていない天月博人は、尋ねて殺そうかを見定めようとする。

「んーどうだろうね、僕たちは……何と言うべきかなー、人体実験用だったり、変な力に覚醒して研究対象になったり、素材になったり。
 色んな用途の人がいるけど、基本は消耗品的な扱いだね。彼らが僕らの総称をどう呼んでいるかはわからない。基本はお前らとかそんな風に呼ばれている。個人で呼ばれるときは割り振られた英数字で呼ばれるかな……これらを踏まえて考えると、一応、この組織に属してはいるって考えてもいいかもしれないね。
 最低最悪で大嫌いな上司ばかりで嫌になるよ」

 彼らの、この組織、組織名、ロロ=イアでの立場は、言葉を信用するならばいわゆるモルモット。
 敵か、手にかけるべき対象か。天月博人は眠たげな眼で睨みつけながら思考する。

「二治君、色々言いたいみたいだけどここは僕に任せて…………君、上から聞こえてきた騒ぎやその様子から見てここを襲撃しているここの敵でしょ? なら、取引をしよう。僕のかせの鍵を持っていないかい? 僕はちょっとした変な力を持ってる。今はこの僕専用の枷に封じられていてね……外してくれるなら、君の役に立つと思うよ?」

 鍵、カードキー等々、手にかけた人々から拝借した。鍵を保管している場所も確認してそこに鍵がある事を確認している。
 倒し損ねた人間がいたとしてその人間が鍵をもって、このビル状の建物から脱出していない限りはおおよそ開けられるだろう。
 もし、把握して居る鍵のなかでどれもが合わなくても、その建物内にある鍵穴に対応する鍵が、建物の外の別の場所にあるとは考え難く。
 天月博人の建物内の探索漏れと見て、この地下牢獄の奥など未探索区域を少しずつ探索して潰せばおのずと見つかると考えた。
 天月博人は相手の要件をかなえられる確率が高いとみてから尋ねる「ジブンがアンタたちを解放したとして、双方の利点、欠点は何か答えてください」と。

「僕たちにとっての利点、これは簡単、ある程度の自由、選択しを得ることができる。欠点はこれからの人生はロロ=イア絡みで命を懸けないといけない事。
 君にとっての利点は……そうだね、酷使しないなら、僕たちを好きに使うと良い。
 僕は触れた物を溶かすことが出来て溶かしたものを固めることが出来る。
 同居人の男は、僕……多分、君とも違ってただの人間だけど、人材として見るなら上等だと考えてほしい。
 頼り無いから他の檻の人たちも出すことになるけどね。
 欠点は食料や水、日用品などの消費が増えることと、こんな牢屋に入れられている僕たちをいまいち信用しきれていないように見える君の目線で考えて、後ろから刺される可能性。これらが大雑把ながらに見えている双方の利点と欠点だね。……どうかな? お気に召してくれると嬉しいんだけどね」

 簡単に言えば、異能者と普通の人、2人の大人の力が借りられる。この建物が世界のどこに有るのかもわからないのと、今後どうするべきかも考えていない子供の身である以上。天月博人にとっては大きな利点だと思える。利用される可能性や裏切り裏切られの可能性は考えたらきりが無いので今は度外視する。
 食糧事情はこの建物内の食糧庫、また、外に自然があれば、知識量に不安がある物の、何とかなる。

「わかった。うまくジブンを使うと良い。代わりにジブンに使われてほしい」
「はい、交渉成立だね」

 鍵穴に対応する鍵は持っていなかった。地下牢の廊下奥の壁に鍵束がありそれが対応していて、こちら側の要件は果たした。

「よろしくお願いします。ジブンは天月博人です」
「僕は、通堂進トンドウ ススムって名前だよ。よろしく」
「助けていただきありがとうございます。そして、これからよろしくお願いします。
 私は、楽善二治ラクゼン ツグハルと申します。……1つ、質問よろしいでしょうか?」

「はい、何でしょうか、

 簡単な紹介を終えて、次にどう動くべきかを考えて居ると楽善二治から尋ねられる。「君のような子供が、どうして戦って居るのですか」と。

「予備として無理やり連れ去られ、ジブンにとって身内と言っても過言でも無い尊い人がと、どうあがいても再会ができなかくなり、ロロ=イアに怒った。それだけですよ。
 頭がだいぶ冷めて来た今では、もう後戻りができないのに後悔していますけどね。戦うことが、あんなに喚きたくなるほど痛い何て思いもしなかったので」

 人を殺した。激情に任せて後戻りが出来ないところに来てしまった。天月博人は、井矢見懐木と同じ場所にいけないだろう。
 人に殺された。朧げな記憶の中、興奮状態の為か悉く鈍い痛み。鈍くとも死ぬほどの痛み。それが頭が冷えた今の状態だと、直接天月博人を襲う事に成る。考えただけで背筋が凍る。
 そんな思いを胸に、答える天月博人を、楽善二治は悲しそうに見つめた。





 血や汚れを、水道水で洗い流し、携帯端末と花の髪留めを綺麗にしてから。ロロ=イアの人達が来ていた白衣を羽織って、休憩室のような部屋に入り席に座る。
 通堂進や楽善二治以外に18人の人々がいた。

「御同輩の方々……結構いたんですね」
「私と通堂さんを合わせて18人ですね」

 食糧問題などの維持問題の規模が想定以上だった気がしてくる。

「ジブン合わせて総勢、21人ね。ジブンは今、人を信用しがたい状態にある。互いが互いを見張るようにお願いしたいと思っています。それでは資料室に……と行く前に、力に目覚めている人は居ませんか? 把握しておきたいです」

 問題を処理するのは後回しにして、いまするべき事、すぐできることから手を付けていく。威能力者に覚醒した人はと言う問いに、私が、と答える者はいなかった。
 21人を連れて資料室へ向かい、2人で1つの資料を目に通して、此処がどういった場所なのかを把握していく。
 結果、ロロ=イア人員は世界中に公務員、コンビニ店員、医者に学生等々として紛れ込んでいること。
 今いる場所は地図にも乗らない島にある、ロロ=イア日本支部I13研究所と言う場所らしい。また、この島にはロロ=イアの研究所などの施設が全部で280あり、その場所を記した資料を入手した。と言った成果を得た。

「最低限の知識は得られたことだし、今後のお話をしようかね。僕たちが歩める選択肢は簡単に、そして大きく分けて2つ」

 通堂進は「徹底抗戦をするか」と言って刃物を机の上に置き、「この島から逃げるための闘いをするか」と言って拳銃を机の上に置いた。

「僕からの意見、この島にはいい思い出が無い。できれば戦いたくもない。だから、逃げられる時になったら逃げたいと思ってる」

 わからなくもない意見である。天月博人としても、一刻も早く帰って、自身とロロ=イアの事を天月口成に話さなければいけないのだ。それに、見渡せば、同じ牢獄にいた人たちも暗い表情である。怒りは有る、だけれど、20人を巻き込んで危険で切り上げることが出来ない道を選ぶこともないだろう。そう思って拳銃を手に取って宣言しようと思い、拳銃に視線を向けようとしたところで、楽善二治が刃物に手を添えた。

「私は、この島で、徹底抗戦したいと思っています」
「二治君……何でだい?」

 通堂進に睨まれながらも、小さく深呼吸をして天月博人の目をしっかりと見る。

「感情で動けば、私だって逃げ道が見つかれば逃げたいです。でも、ロロ=イアの人員は世界中に散らばり紛れ込んでいる事を私たちは身を以て知っているはずです。そして管理される所有物かの様に英数字で呼ばれ、存在を知られている私たちは、日本に帰ることが出来たところで、どこに居るかわからないロロ=イアの恐怖に怯えることになると考え。私は敵がどこに居るかわかって、恐怖にあらがうことが出来るこちらをとりたいと思います」
「見えない敵に怯えるよりも、見えている敵と戦いたいと……なるほど」

 視線をその他大勢にやる。12人ほどはっとしたような表情になって居るのを確認し、双方の意見と自身の考え、その他大勢の様子をすり合わせて。刃物を手に取った。

「ジブンも徹底抗戦をします。ですが、言います。ジブンがこちらを選んだからと言って皆さんにそうであれと強制しません。皆さんの自由意思に任せます。どうか、後悔が無いように」

 こうして、天月博人はロロ=イアと戦うことに決めた。異能力によって友、家族の天月博人に関する記憶は消えた。であれば皆、天月博人の喪失に悲しむことはなく、毎日を過ごせる。気がかりがあるとするなら、ジブンの事を忘れた以上、元家族のことが心配ではあるが。現状どうしようもないので、天月口成がお金の動きから、朽無家を見つけ出し同情してくれるのを期待するしかない。
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