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4-2 :やあ。
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「どうですかな。皆の者! これが俺が、裁縫班にオーダーして拵得て頂いたオーバーコートと、愛と勇気と朧げな知識と針城氏の協力を1対1対3対5の割合で振り絞って作った丸いレンズのサングラスのコーデの完成形ですぞ!」
振り返る勢いで服が空気を撫でるお度を聞かせ、見せびらかす。
「おー」
「おーて……博人的にはおー。でいいのかこれ? 俺は微妙だと思うんだが。何で左右のレンズの大きさが違うんだよ」
「なんですか……これ」
「いつまでも白衣やら、ジャージ的な単色服は味気ないと思いましてな。少しわがままを言ってしまったのですぞ。レンズは材料の配分をミスったのです。気にしないでいただけるとありがたい」
そう言って全身を見せつけて来る鉄田大樹が身に纏うのはグレーののオーバーコートとズボンをメインに、小物として同色の中折れ帽、鮮やかな赤のネクタイ、左右のレンズの大きさが違う丸いレンズのサングラスである。身体が引き締まってさえいれば格好は付いたのだろうが、お腹が出っ張っている鉄田大樹が来ているとただひたすらに胡散臭く感じる。
「近岡さんが「編み物の服を作れるのであって服を作れるってわけじゃないんだけど」って文句言いながら衣類に使えそうな物資と睨み合いをしてたわよ」
「私は機械を組み立てたり、機械を扱ったりするのに自身が有るだけで…………別に機械の部品を作れるわけでもないし、そこから発想を展開してサングラスもいけるかも? って持ち掛けられた時は、頭でも打ったのかと思った。…………実際にやってみたらものすごく難しくて寝不足になったから、持ち掛けたやつにはしばらくデザート抜きになることを覚悟してもらう」
「ははは、いやはやそれは申し訳ないでござるな。前にゴスロリを作ったと聞いたもので行けるものだとばっかり、まさかゴスロリの色と形状をまねただけの編み物だとは思いませんでしたぞ。針城氏、ティラミスがあったらそれだけは勘弁していただきたいですぞ」
「何? ティラミス好きなの?」
「ウイ、俺はこれでもティラミスを好んでおりましてな」
「そう、洒落てて生意気に感じたから、戦利品の中に合ったら問答無用でほとんど食べてやる」
「おう……針城氏は無慈悲ですな……」
しばらく、鉄田大樹は製作に携わった人達に、頭は上がりそうになさそうだと少し、面白く思って天月博人はクスリと笑う。
「それでねなんでみんなを集めてお披露目会をしたのかと言うとー。鉄田さんの提案で全員が着たい服を聞いて回って造ろうってことになったの。すっごい時間がかかるし、研究施設を襲撃した時に新人が入るだろうから終りが見えないけどね。趣味と勉強と練習、ちょっとした実益と手が空いた人の為の暇つぶしを兼ねた企画ってことで手を打ったわけ。それでね、博人君はどんな服を着たい?」
白衣の棟ポケットから戦利品の中にあったのだろうメモ帳とペンを手に取る屋宮亜里沙に迫られる天月博人は、「なんでもいいですから作りやすい物でいいですよ」と言いかけるが、針城誠子が「そいつに任せるようなことを言ったら、着せ替え人形になるぞ」と警告するような視線を送ってくる。
「き、決まらないので保留にしてください」
「そう? じゃあ、決まったらいいに来てね。それじゃあ次は中田さん」
「俺もなのか?」
「そうそう、皆もやるんだから俺君もやるんだよー。それで、どんな格好になりたい?」
中田文兵は、相手が自身をどう思って居ようと関係が無いと言わんばかりに詰め寄る屋宮亜里沙に顔をしかめて、何とも言えないやり辛そうな表情を作り「じゃあ俺は、スーツで良いよ。普通の黒い奴」と答えた。
面白げが無いほどに無難であった。そしてそれは製作するのが難しいのか屋宮亜里沙は一考した後に「編み物で模した奴でいい?」と尋ねた。
「構わねぇよ」
「それで構わないのなら私もスーツで願いします」
中田文兵の答えを聞いて、楽善二治が迫られる前に答える。
「はいはい、楽善君と中田君はスーツね。……中田君ゴツイし、楽善君は禿げてるし。スーツ着たらなんか怖い人達みたい」
「おいコラ、俺はしがない建築会社のトラック運転手だぞ、失敬な」
「私ってそんなに怖いですかね……中田さんに乗っかるなら、私もしがない清掃員なんですけれど」
「うん、怖い! えーとごめんね。ゴツイ人と、歳をそんなに取ってないのに髪が無い人って何かイメージ的にね」
「うん、私もそんなイメージある。それと完成度上げたいからってサングラス注文したら怒るから」
己は怖くない存在だと主張する2人は謝罪と共に一蹴され、要らない釘を刺されるのであった。
こんな感じで1人1人が半強制的に注文をうかがわれていく。途中からこれと言った面白味はなく終わった。と思いきや、屋宮亜里沙はまだ何かを続けるつもりなのか子供たちを集めて、天月博人と楽善二治、中田文兵を呼んだ。
「まだ何かあるんですか?」
「あはは、いい加減うんざりしちゃうか……でももう少し我慢して、これが最後で、ウチ的には今からが一番いい所だから。ほら皆」
屋宮亜里沙が後ろの子供たちに合図を送る。すると子供たちは前に出て、後ろ手に隠していたものを差し出した。
「せーの」
「「「博人君! 楽善さん! 中田さん! いつも僕達、私たちの為にありがとーございます! 頑張って造ったので! 受け取ってください!」」」
子供たちがそう言ってそう言って手渡されたのは、3枚の長方圭の編み物、その中心には平仮名でそれぞれ、ひろと、らくぜん、なかたと書かれており、不格好ながらに縫われることで綴られた文字列が寄せ書きの様にそこに在った。
『いつもあそんでくれてありがとう! しょうたより』
『いつもかえってくるのをしんじてまってます りょうかより』
『あのひ たすけてくれて あたらしいともだちと みんなと あわせてくれて ありがとうねリーダー キョウより』
そこに在った物をみて天月博人は震える。まるで何かが報われたようで、感慨深くて、暖かな物がにじむ。そんな天月博人の隣で、楽善二治が膝から崩れ落ちるのが分かった。
「ありがとう、ありがとう……ございます。ずっと、ずっとずっと、大切にしますね」
恥かしげも無く、楽善二治は天月博人がこらえていた暖かな物を流して、感謝を述べた。それが横目に見えて、天月博人も堪え切れなくなって感情があふれ出た。
「ありがとう、皆。宝物にする」
「えへへへ」
「粋なことすんじゃねぇか。なぁおい」
中田文兵もこれには素直に喜んで、子供の一人の頭を乱暴に撫でじゃくった。
「この子たちがウチに持ち掛けて来たんだ。これから何人かにも配っていくけど最初は君達が良いっていうから」
屋宮亜里沙が経緯を放し、子供たちのほとんどは何所か照れ臭そうな仕草をして、楽善二治に抱擁され、中田文兵に頭を撫でられ、天月博人と戯れるのであった。
子供たちの寄せ書きならぬ寄せ編みは、泣き崩れる者、己なんかがこんなものを貰っていいのかと困惑する者、報いるように為になる話をする者、等々、多くの反応を引き出すことが出来た。勿論、その対象は屋宮亜里沙、彼女も例に漏れない。
「実際に渡されるとクルものがあるね……よーし、今晩の御飯にはデザートを出すから楽しみにね!」
「ぬっ 私の分はあるのか?」
「うわっ!? 何所から湧いて来たの」
「最初からずっと気が付かれなかったという自身のロリっぷりに涙が出そうだ」
「えっと……もしかして子供たちのタオル配りに最初から居たの?」
「うん、ちなみに博人君たちの次にもらったのが私だったりする。内容が『デザートとらないで』『ショウくんよりせがひくくてかわいい』など、思わず人混みのいない場所に連れこんで、熱いお礼をかましたくなるくらいに感動するものとなっている。おい子供たち、どうして私から遠ざかる?
なんだ? もしかしてロリアラサーとはあらゆる存在、それも純粋無垢であるはずの子供達にすら距離を置かれて淘汰されて然るべき存在だったりするのだろうか?」
「誰も言ってないわよそんなこと。子供達がひいてるのは、たぶんその絡み方が面倒臭いからだと思う」
「む、歯に衣着せない姿勢は評価したいが、君に面倒臭いと言われるのはなんだか癪だな」
「えっなんでウチに面倒臭いって言われたら癪なの?」
「マジか君」
屋宮亜里沙の感情は最終的に、子供の中に混じっていた針城誠子によって塗りつぶされたが|概ね成功と言えるだろう。
余談ではあるがこの後、針城誠子は屋宮亜里沙に絡まれ、それを天月博人に愚痴っていると「誠子さんみたいに、自分が面倒臭いことを自覚して絡んでくる人の方が稀有かと」と言われて「マジか」と驚くのであった。
「まさか、子供たちが配っていたタオルを俺がもらえるとは、思いませんでしたな。俺はただ知っていることを雑学的に話していただけにすぎませんから」
「鉄田さんの知識は聞いてて楽しいですし、役に立つときがありますから子供たちにも印象が強く残ったのでしょうね」
子供たちが配っていた不格好なタオルを片手に鉄田大樹と桑原信二が、壁にもたれて座り駄弁っている。
「そうであればうれしいことですな。ですがそうなると次があるとするなら俺はもうもらえそうにありませんな。もう俺が教えられそうなことは全部教えて……小、中学の先生をやってみましょうかな」
「鉄田さん、結構欲しがりですね」
「ウイ、嬉しかったですからな。そう言う桑原氏はどうでしたかな? 何やら複雑そうでしたが」
「複雑……そうですね。僕なんかが貰ってもよかったのかと。どうしても思ってしまって」
鉄田大樹は桑原信二の言葉に「そんなことでしたか」と返した。
「驚きの顔をされましても困りますな。だってそうでしょう? 桑原氏は俺の見立てですと桑原氏、あなたはレジスタンスの誰よりも子供たちと戯れ、笑わせているのですぞ? 子供というのは遊び道具はともかく、遊び相手、笑わせてくれる相手は強く印象に残って大事にするものですからな。タオルをあげたいと思えるほどに大事な人と思割れるのも不思議ではないですぞ」
桑原信二は寄せ編みのタオルを握りしめ「そういう、ものでしょうか」と自信なさげにつぶやき、鉄田大樹が「そういうものですぞ」と肯定した。
振り返る勢いで服が空気を撫でるお度を聞かせ、見せびらかす。
「おー」
「おーて……博人的にはおー。でいいのかこれ? 俺は微妙だと思うんだが。何で左右のレンズの大きさが違うんだよ」
「なんですか……これ」
「いつまでも白衣やら、ジャージ的な単色服は味気ないと思いましてな。少しわがままを言ってしまったのですぞ。レンズは材料の配分をミスったのです。気にしないでいただけるとありがたい」
そう言って全身を見せつけて来る鉄田大樹が身に纏うのはグレーののオーバーコートとズボンをメインに、小物として同色の中折れ帽、鮮やかな赤のネクタイ、左右のレンズの大きさが違う丸いレンズのサングラスである。身体が引き締まってさえいれば格好は付いたのだろうが、お腹が出っ張っている鉄田大樹が来ているとただひたすらに胡散臭く感じる。
「近岡さんが「編み物の服を作れるのであって服を作れるってわけじゃないんだけど」って文句言いながら衣類に使えそうな物資と睨み合いをしてたわよ」
「私は機械を組み立てたり、機械を扱ったりするのに自身が有るだけで…………別に機械の部品を作れるわけでもないし、そこから発想を展開してサングラスもいけるかも? って持ち掛けられた時は、頭でも打ったのかと思った。…………実際にやってみたらものすごく難しくて寝不足になったから、持ち掛けたやつにはしばらくデザート抜きになることを覚悟してもらう」
「ははは、いやはやそれは申し訳ないでござるな。前にゴスロリを作ったと聞いたもので行けるものだとばっかり、まさかゴスロリの色と形状をまねただけの編み物だとは思いませんでしたぞ。針城氏、ティラミスがあったらそれだけは勘弁していただきたいですぞ」
「何? ティラミス好きなの?」
「ウイ、俺はこれでもティラミスを好んでおりましてな」
「そう、洒落てて生意気に感じたから、戦利品の中に合ったら問答無用でほとんど食べてやる」
「おう……針城氏は無慈悲ですな……」
しばらく、鉄田大樹は製作に携わった人達に、頭は上がりそうになさそうだと少し、面白く思って天月博人はクスリと笑う。
「それでねなんでみんなを集めてお披露目会をしたのかと言うとー。鉄田さんの提案で全員が着たい服を聞いて回って造ろうってことになったの。すっごい時間がかかるし、研究施設を襲撃した時に新人が入るだろうから終りが見えないけどね。趣味と勉強と練習、ちょっとした実益と手が空いた人の為の暇つぶしを兼ねた企画ってことで手を打ったわけ。それでね、博人君はどんな服を着たい?」
白衣の棟ポケットから戦利品の中にあったのだろうメモ帳とペンを手に取る屋宮亜里沙に迫られる天月博人は、「なんでもいいですから作りやすい物でいいですよ」と言いかけるが、針城誠子が「そいつに任せるようなことを言ったら、着せ替え人形になるぞ」と警告するような視線を送ってくる。
「き、決まらないので保留にしてください」
「そう? じゃあ、決まったらいいに来てね。それじゃあ次は中田さん」
「俺もなのか?」
「そうそう、皆もやるんだから俺君もやるんだよー。それで、どんな格好になりたい?」
中田文兵は、相手が自身をどう思って居ようと関係が無いと言わんばかりに詰め寄る屋宮亜里沙に顔をしかめて、何とも言えないやり辛そうな表情を作り「じゃあ俺は、スーツで良いよ。普通の黒い奴」と答えた。
面白げが無いほどに無難であった。そしてそれは製作するのが難しいのか屋宮亜里沙は一考した後に「編み物で模した奴でいい?」と尋ねた。
「構わねぇよ」
「それで構わないのなら私もスーツで願いします」
中田文兵の答えを聞いて、楽善二治が迫られる前に答える。
「はいはい、楽善君と中田君はスーツね。……中田君ゴツイし、楽善君は禿げてるし。スーツ着たらなんか怖い人達みたい」
「おいコラ、俺はしがない建築会社のトラック運転手だぞ、失敬な」
「私ってそんなに怖いですかね……中田さんに乗っかるなら、私もしがない清掃員なんですけれど」
「うん、怖い! えーとごめんね。ゴツイ人と、歳をそんなに取ってないのに髪が無い人って何かイメージ的にね」
「うん、私もそんなイメージある。それと完成度上げたいからってサングラス注文したら怒るから」
己は怖くない存在だと主張する2人は謝罪と共に一蹴され、要らない釘を刺されるのであった。
こんな感じで1人1人が半強制的に注文をうかがわれていく。途中からこれと言った面白味はなく終わった。と思いきや、屋宮亜里沙はまだ何かを続けるつもりなのか子供たちを集めて、天月博人と楽善二治、中田文兵を呼んだ。
「まだ何かあるんですか?」
「あはは、いい加減うんざりしちゃうか……でももう少し我慢して、これが最後で、ウチ的には今からが一番いい所だから。ほら皆」
屋宮亜里沙が後ろの子供たちに合図を送る。すると子供たちは前に出て、後ろ手に隠していたものを差し出した。
「せーの」
「「「博人君! 楽善さん! 中田さん! いつも僕達、私たちの為にありがとーございます! 頑張って造ったので! 受け取ってください!」」」
子供たちがそう言ってそう言って手渡されたのは、3枚の長方圭の編み物、その中心には平仮名でそれぞれ、ひろと、らくぜん、なかたと書かれており、不格好ながらに縫われることで綴られた文字列が寄せ書きの様にそこに在った。
『いつもあそんでくれてありがとう! しょうたより』
『いつもかえってくるのをしんじてまってます りょうかより』
『あのひ たすけてくれて あたらしいともだちと みんなと あわせてくれて ありがとうねリーダー キョウより』
そこに在った物をみて天月博人は震える。まるで何かが報われたようで、感慨深くて、暖かな物がにじむ。そんな天月博人の隣で、楽善二治が膝から崩れ落ちるのが分かった。
「ありがとう、ありがとう……ございます。ずっと、ずっとずっと、大切にしますね」
恥かしげも無く、楽善二治は天月博人がこらえていた暖かな物を流して、感謝を述べた。それが横目に見えて、天月博人も堪え切れなくなって感情があふれ出た。
「ありがとう、皆。宝物にする」
「えへへへ」
「粋なことすんじゃねぇか。なぁおい」
中田文兵もこれには素直に喜んで、子供の一人の頭を乱暴に撫でじゃくった。
「この子たちがウチに持ち掛けて来たんだ。これから何人かにも配っていくけど最初は君達が良いっていうから」
屋宮亜里沙が経緯を放し、子供たちのほとんどは何所か照れ臭そうな仕草をして、楽善二治に抱擁され、中田文兵に頭を撫でられ、天月博人と戯れるのであった。
子供たちの寄せ書きならぬ寄せ編みは、泣き崩れる者、己なんかがこんなものを貰っていいのかと困惑する者、報いるように為になる話をする者、等々、多くの反応を引き出すことが出来た。勿論、その対象は屋宮亜里沙、彼女も例に漏れない。
「実際に渡されるとクルものがあるね……よーし、今晩の御飯にはデザートを出すから楽しみにね!」
「ぬっ 私の分はあるのか?」
「うわっ!? 何所から湧いて来たの」
「最初からずっと気が付かれなかったという自身のロリっぷりに涙が出そうだ」
「えっと……もしかして子供たちのタオル配りに最初から居たの?」
「うん、ちなみに博人君たちの次にもらったのが私だったりする。内容が『デザートとらないで』『ショウくんよりせがひくくてかわいい』など、思わず人混みのいない場所に連れこんで、熱いお礼をかましたくなるくらいに感動するものとなっている。おい子供たち、どうして私から遠ざかる?
なんだ? もしかしてロリアラサーとはあらゆる存在、それも純粋無垢であるはずの子供達にすら距離を置かれて淘汰されて然るべき存在だったりするのだろうか?」
「誰も言ってないわよそんなこと。子供達がひいてるのは、たぶんその絡み方が面倒臭いからだと思う」
「む、歯に衣着せない姿勢は評価したいが、君に面倒臭いと言われるのはなんだか癪だな」
「えっなんでウチに面倒臭いって言われたら癪なの?」
「マジか君」
屋宮亜里沙の感情は最終的に、子供の中に混じっていた針城誠子によって塗りつぶされたが|概ね成功と言えるだろう。
余談ではあるがこの後、針城誠子は屋宮亜里沙に絡まれ、それを天月博人に愚痴っていると「誠子さんみたいに、自分が面倒臭いことを自覚して絡んでくる人の方が稀有かと」と言われて「マジか」と驚くのであった。
「まさか、子供たちが配っていたタオルを俺がもらえるとは、思いませんでしたな。俺はただ知っていることを雑学的に話していただけにすぎませんから」
「鉄田さんの知識は聞いてて楽しいですし、役に立つときがありますから子供たちにも印象が強く残ったのでしょうね」
子供たちが配っていた不格好なタオルを片手に鉄田大樹と桑原信二が、壁にもたれて座り駄弁っている。
「そうであればうれしいことですな。ですがそうなると次があるとするなら俺はもうもらえそうにありませんな。もう俺が教えられそうなことは全部教えて……小、中学の先生をやってみましょうかな」
「鉄田さん、結構欲しがりですね」
「ウイ、嬉しかったですからな。そう言う桑原氏はどうでしたかな? 何やら複雑そうでしたが」
「複雑……そうですね。僕なんかが貰ってもよかったのかと。どうしても思ってしまって」
鉄田大樹は桑原信二の言葉に「そんなことでしたか」と返した。
「驚きの顔をされましても困りますな。だってそうでしょう? 桑原氏は俺の見立てですと桑原氏、あなたはレジスタンスの誰よりも子供たちと戯れ、笑わせているのですぞ? 子供というのは遊び道具はともかく、遊び相手、笑わせてくれる相手は強く印象に残って大事にするものですからな。タオルをあげたいと思えるほどに大事な人と思割れるのも不思議ではないですぞ」
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