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4-3 :やあ。
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子供たちから寄せ編みをもらって、あれから。襲撃方針が決まる。研究施設には天月博人達のように人々がモルモットとし捕らえられているため、襲撃部隊の編成は変わらず天月博人と中田文兵の2人。天月博人が捕らわれている人々を護り、中田文兵が襲撃する役割を持っている。
それ以外の施設、生産施設と育成施設は中田文兵だけが襲撃することになった。その間、天月博人は外を探索し、ここがどういった場所なのかをニコに地図を作らせながら探る役割を与えられた。
「お前ら逃げろ! ここは俺が食い止める!」
「おうおうおう、弟分や妹分、それと育ての親を身を挺して庇おうってか? ヒューかっこいいじゃねぇか。 まるで物語の主人公だなぁおい。いやぁ、きっとオメェは良い奴なんだろうなぁ……だが、俺にはオメェがどういった奴だろうが【どうでもいい】。ロロ=イアであれば、どんな背景があろうが一切合切殺す。だからかかってこい主人公! オメェの命を張った頑張りなんてぶち壊してやるからよぉ!」
中田文兵は襲撃中に何処と無く迷い、躊躇する事は無くなった。また、生まれた事自体は不幸でも何でもないという天月博人の考えに影響されて、ロロ=イア所属であろうと、価値が無いものの様に扱うことも無くなった。
「ちょっと! 私を無視しないで待ってよ! 待ってったら! ジャストモーメントって言ってんでしょ!」
「だあ! 今は戦ってんだから部屋の隅に座ってろストーカー女!」
「スト!? 言うこと欠いてストーカーとは何よこの野郎!」
なお、毎日湧いては、空気も読まず背中をチクチクと日に日に生長する槍で突く呪いの女は別で、雑に扱うのであった。
森から山へ木々生い茂るこの一帯を、最も高いであろう場所を目指して歩き続ける。レジスタンスが略奪した地図がどこまで正しいか、そして外でロロ=イア人員を発見した場合、どのような動きをしているのかを確認するために。
「あー道として想定されていない坂を踏みしめ続ける大変さを思い出したよ……3時間ぶっ通しで坂を歩き続けっぱなしできついから頂上に着いたら一旦休ませてくれ」
『はーい。頂上はもう直ぐだから頑張るんだよー! ヒロ、疲れたならもう休んでも良いんだよ?』
肉体疲労からくる雑談から、明るい声から一転して心配そうにうかがう声が聞こえる。その声に「頂上に着いたら休むって」と何て事の無いように天月博人は言った。「そう……」と1つの話の終りを括る声には、その深くからとても人工的とは思えない悲しそうな感情が垣間見えた。
次の会話を互いに待ち、互いに探っていると「ひやぁああああああ!」と天月博人、ニコ以外の声が山に響く。
『3つの熱源接近……来るんだよ』
天月博人達の様にモルモットが外に居るとは思えない。では限りなく可能性として高いのはロロ=イアに属する人間という事になる。的である可能性が高いのだ。
天月博人は敵と判断して拳銃とナイフを構え、対峙の時を待つ。
「だーれーかーたーすーけーてー!!」
木々の中から視界が見ることができる限界の先から飛び出す様に現れたのは男の少年を抱えて走る女と、それを追いかけているのであろう巨大で雷的な閃光を纏っている猪だった。
天月博人は一瞬、感覚的に救い出そうと飛び出しかけるが『あの2人を倒せても、今の装備とヒロの筋力じゃあ、化け物じみた猪を相手にするには火力が足りない! 逃げて! 死んじゃう!』とニコに叫ばれ、踵を返して相手から見て右のほうへと逃げる。猪であれば曲がることを苦手としているとふんでの判断である。
『後方用カメラから確認……さっきの人。こっちに向かって逃げてるんだよ。それで……』
後ろから強い衝撃音が聞こえる。
『猪が自分から木にぶつかって無理矢理こっち向きに曲がったんだよ』
「なんて怪物を引き連れてやって来たんだ!」
「そんなこと言わず助けてー!」
巻き込まれない様にと逃げたのに何の躊躇もなく即座に巻き込む判断をされれば文句くらい出る。
その後の結果として、猪から逃げ切れた時には天月博人は。
「こ、怖かったぁ。ほら、もう目を開けていいよ3Hl_38。私たち助かったんだよ」
「ん。ほんと? 2Hl_44姉ちゃん……」
「ホントもホント。怖い猪さんはもう居ないよ。……そのかわりみんなとはぐれちゃったけどね……」
現在、倒し辛い状況を醸し出す。少年を1人担いで走り続けた女を、体力温存という考えをかなぐり捨ててでも加速して突き放すべきだったと後悔していた。
「あの、巻き込まれたんですけど……何でついて来たんですか」
「え? どうせ死ぬかもしれないなら一緒にいる人は多いほうが寂しくないしいいでしょ? 結果論的には君が行く道の悉くが、あの猪に対して狭い木々の道だったり、足が乗り上げにくかったりする段差だったりと逃げ方がわかってるみたいで大世界だったけど」
後悔する天月博人に対して女はまるで我が道に悔い無しよ言わんばかりにニッコリとは笑っていた。
『何この人……道連れ上等でついて来てたってこと? ……いい度胸してるんだよ。でもロロ=イアの落とし子みたいだし、何か情報を持ってるかも……でも今までに遭遇したロロ=イアの落とし子から考えて異能を持ってる可能性が高いんだよ。引き出すのは難しいかも』
どことなく怒りを表すニコの声に(怒ってるなぁ)と思いつつ目の前の2人をどうしようかと思案していると、誰かがお腹を鳴らした。天月博人は至極面倒臭そうな顔で2人を見る。
「2Hl_44姉ちゃん……お腹減った」
「あ、あはは……もうすぐお昼だもんねお父様に怒られるかもだけど……うん、怒られるだろうけど帰ろっか……えっとどこの子かわからないけど巻き込んでごめんねそれじゃあ私は帰るけど君は帰り道…………あの、ここが何所かわかる?」
女は周囲をぐるりと見ると青ざめて、あまっ付き博人に尋ねられようとしたであろう言葉を自身が効くという形に置き換えて尋ねて来る。猪に追いかけ回され、天月博人の後を追いかけていたものだから今まだ通ってきた道など記憶する余裕が無かったのだろうと考えればわからなくもない。
「えっと……ですね」
懐のナイフに手を伸ばすべきかどうかを考えていると、またお腹が鳴る音が響いた。同情心が思考に侵食してくる。此奴らは敵だと頭を振って冷静になろうとする。
「ご飯……食べたい……」
「あっ、あぁゴメンね3Hl_38」
その発言、その幼い容姿から能吏に小さな少女が、半分血のつながる妹、朽無幸が自身の服を引っ張って飯をせがむ姿が思い浮かぶ。
敵だ。目の前にいる此奴らは敵のロロ=イアの落とし子なのだとは分かって居る。
だが、少年が感じているであろうその不安感が、その空腹の切なさが、どうしても天月博人が朽無博人であった頃の最も苦しかった時期の記憶を引き出し、照らし合わされ、被って見えていく。
何かが天月博人の中で揺れるのを己のことながらに感じる。
『ヒロは楽善みたいに優しすぎるよ……情報収集はもう無理、ヒロはこの子のこと救いたいってなってるでしょ? なら、その気持ちでいっぱいになる前に何も考えないで懐のナイフを手に取って、こいつら倒そう?』
天月博人は冷静に自身の心境を見て、確かにニコの提案に載って今すぐ目の前の二人に同情しきる前に始末するべきだとと思う。思いはする。わかってはいる。どのみちいつか倒さねばならない敵なのだと自身に言い聞かせてナイフに手を伸ばそうとする。
「えっとごめんね。君も分からないみたいだし。一緒に帰り道をさがそっか」
女は天月博人のナイフに手を伸ばそうとしていた手をとった。言葉を返す間もなく手を引かれて山道を歩き続ける。
駄目だ駄目だ駄目だ。ほだされるな、今ここで命を刈り取れ、今は優しさを押し込め、悪意だけを思考に満たせ。と天月博人は自分自身を必死に説得する。
「悪いが今ここで……」
「ところで家では見ない君、さっきは1人であんな所に居たけど君もはぐれちゃった感じ? それともそう言う訓練の途中だったりする? どのみち巻き込んで道も分からないこんなところに来ちゃったから申し訳が無いのは変わらないけど。私たち、お父様が決めた場所から出たことが無いから外の家族たちがどうやってるか知らないから教えて欲しいなって」
言葉を遮って紡がれた言葉を投げかける際に少年と女瞳がこちらに向けられる。相手の異能力が分からない現状、視界を向けられている今は大人しくするべきだろうと判断して、停滞反撃を覚悟してその首を握りつぶそうと構えかけた自由な手を降ろす。
「え、えっと……はぐれちゃった感じです」
「あはは! それはお互い奇遇だけど災難だね。巻き込んだ私が言うのもなんだけどさ」
視界に映るニコが『本当にお前が言うななんだよ』と怒る声が聞こえる。天月博人はニコの怒りと申し訳なさそうにしつつニヘヘと笑う様子に苦い笑顔で返す。
お腹が鳴る音が、また聞こえる。そう言えばもう昼だったと体が気がついたのか、それともただつられたのかお腹が鳴る。
「君もお腹が減った? うーん……私たちのところは外で勝手に食べると怒られるけど……迷惑かけたのとせっかく会えたから特別ね」
女はそう言ってポケットから一匹の蜂のような虫が入った瓶を取り出し、解放する。すると蜂は飛び出し手の平にらのる。
「私たちのおやつをとってきて」
女がそう言うと蜂は飛び立ち、そして分身して拡散していく。
「あの、今のは……」
「え? あぁ、別の家の子なんだから分かるわけが無いか。私の能力は虫に命令を従わせる能力、それと虫を増殖させる能力なの。命令と言っても虫の本能に訴えかけてるみたいなものだから難しいのは出来ないんだよね。私が持ってる私が手がけた子達は、帰巣本能は私に向いてるから、家で生まれた子に案内してとかは無理」
女は自身の能力を何の警戒もなしに口走って行く。
「おっと、無駄話してないで歩こうか。願わくばあの猪に出合わない様に」
そこに天月博人はとても悪意が感じられず。倒すことは取りやめ情報を引き出すという自身の心に従った選択をするのだった。
それ以外の施設、生産施設と育成施設は中田文兵だけが襲撃することになった。その間、天月博人は外を探索し、ここがどういった場所なのかをニコに地図を作らせながら探る役割を与えられた。
「お前ら逃げろ! ここは俺が食い止める!」
「おうおうおう、弟分や妹分、それと育ての親を身を挺して庇おうってか? ヒューかっこいいじゃねぇか。 まるで物語の主人公だなぁおい。いやぁ、きっとオメェは良い奴なんだろうなぁ……だが、俺にはオメェがどういった奴だろうが【どうでもいい】。ロロ=イアであれば、どんな背景があろうが一切合切殺す。だからかかってこい主人公! オメェの命を張った頑張りなんてぶち壊してやるからよぉ!」
中田文兵は襲撃中に何処と無く迷い、躊躇する事は無くなった。また、生まれた事自体は不幸でも何でもないという天月博人の考えに影響されて、ロロ=イア所属であろうと、価値が無いものの様に扱うことも無くなった。
「ちょっと! 私を無視しないで待ってよ! 待ってったら! ジャストモーメントって言ってんでしょ!」
「だあ! 今は戦ってんだから部屋の隅に座ってろストーカー女!」
「スト!? 言うこと欠いてストーカーとは何よこの野郎!」
なお、毎日湧いては、空気も読まず背中をチクチクと日に日に生長する槍で突く呪いの女は別で、雑に扱うのであった。
森から山へ木々生い茂るこの一帯を、最も高いであろう場所を目指して歩き続ける。レジスタンスが略奪した地図がどこまで正しいか、そして外でロロ=イア人員を発見した場合、どのような動きをしているのかを確認するために。
「あー道として想定されていない坂を踏みしめ続ける大変さを思い出したよ……3時間ぶっ通しで坂を歩き続けっぱなしできついから頂上に着いたら一旦休ませてくれ」
『はーい。頂上はもう直ぐだから頑張るんだよー! ヒロ、疲れたならもう休んでも良いんだよ?』
肉体疲労からくる雑談から、明るい声から一転して心配そうにうかがう声が聞こえる。その声に「頂上に着いたら休むって」と何て事の無いように天月博人は言った。「そう……」と1つの話の終りを括る声には、その深くからとても人工的とは思えない悲しそうな感情が垣間見えた。
次の会話を互いに待ち、互いに探っていると「ひやぁああああああ!」と天月博人、ニコ以外の声が山に響く。
『3つの熱源接近……来るんだよ』
天月博人達の様にモルモットが外に居るとは思えない。では限りなく可能性として高いのはロロ=イアに属する人間という事になる。的である可能性が高いのだ。
天月博人は敵と判断して拳銃とナイフを構え、対峙の時を待つ。
「だーれーかーたーすーけーてー!!」
木々の中から視界が見ることができる限界の先から飛び出す様に現れたのは男の少年を抱えて走る女と、それを追いかけているのであろう巨大で雷的な閃光を纏っている猪だった。
天月博人は一瞬、感覚的に救い出そうと飛び出しかけるが『あの2人を倒せても、今の装備とヒロの筋力じゃあ、化け物じみた猪を相手にするには火力が足りない! 逃げて! 死んじゃう!』とニコに叫ばれ、踵を返して相手から見て右のほうへと逃げる。猪であれば曲がることを苦手としているとふんでの判断である。
『後方用カメラから確認……さっきの人。こっちに向かって逃げてるんだよ。それで……』
後ろから強い衝撃音が聞こえる。
『猪が自分から木にぶつかって無理矢理こっち向きに曲がったんだよ』
「なんて怪物を引き連れてやって来たんだ!」
「そんなこと言わず助けてー!」
巻き込まれない様にと逃げたのに何の躊躇もなく即座に巻き込む判断をされれば文句くらい出る。
その後の結果として、猪から逃げ切れた時には天月博人は。
「こ、怖かったぁ。ほら、もう目を開けていいよ3Hl_38。私たち助かったんだよ」
「ん。ほんと? 2Hl_44姉ちゃん……」
「ホントもホント。怖い猪さんはもう居ないよ。……そのかわりみんなとはぐれちゃったけどね……」
現在、倒し辛い状況を醸し出す。少年を1人担いで走り続けた女を、体力温存という考えをかなぐり捨ててでも加速して突き放すべきだったと後悔していた。
「あの、巻き込まれたんですけど……何でついて来たんですか」
「え? どうせ死ぬかもしれないなら一緒にいる人は多いほうが寂しくないしいいでしょ? 結果論的には君が行く道の悉くが、あの猪に対して狭い木々の道だったり、足が乗り上げにくかったりする段差だったりと逃げ方がわかってるみたいで大世界だったけど」
後悔する天月博人に対して女はまるで我が道に悔い無しよ言わんばかりにニッコリとは笑っていた。
『何この人……道連れ上等でついて来てたってこと? ……いい度胸してるんだよ。でもロロ=イアの落とし子みたいだし、何か情報を持ってるかも……でも今までに遭遇したロロ=イアの落とし子から考えて異能を持ってる可能性が高いんだよ。引き出すのは難しいかも』
どことなく怒りを表すニコの声に(怒ってるなぁ)と思いつつ目の前の2人をどうしようかと思案していると、誰かがお腹を鳴らした。天月博人は至極面倒臭そうな顔で2人を見る。
「2Hl_44姉ちゃん……お腹減った」
「あ、あはは……もうすぐお昼だもんねお父様に怒られるかもだけど……うん、怒られるだろうけど帰ろっか……えっとどこの子かわからないけど巻き込んでごめんねそれじゃあ私は帰るけど君は帰り道…………あの、ここが何所かわかる?」
女は周囲をぐるりと見ると青ざめて、あまっ付き博人に尋ねられようとしたであろう言葉を自身が効くという形に置き換えて尋ねて来る。猪に追いかけ回され、天月博人の後を追いかけていたものだから今まだ通ってきた道など記憶する余裕が無かったのだろうと考えればわからなくもない。
「えっと……ですね」
懐のナイフに手を伸ばすべきかどうかを考えていると、またお腹が鳴る音が響いた。同情心が思考に侵食してくる。此奴らは敵だと頭を振って冷静になろうとする。
「ご飯……食べたい……」
「あっ、あぁゴメンね3Hl_38」
その発言、その幼い容姿から能吏に小さな少女が、半分血のつながる妹、朽無幸が自身の服を引っ張って飯をせがむ姿が思い浮かぶ。
敵だ。目の前にいる此奴らは敵のロロ=イアの落とし子なのだとは分かって居る。
だが、少年が感じているであろうその不安感が、その空腹の切なさが、どうしても天月博人が朽無博人であった頃の最も苦しかった時期の記憶を引き出し、照らし合わされ、被って見えていく。
何かが天月博人の中で揺れるのを己のことながらに感じる。
『ヒロは楽善みたいに優しすぎるよ……情報収集はもう無理、ヒロはこの子のこと救いたいってなってるでしょ? なら、その気持ちでいっぱいになる前に何も考えないで懐のナイフを手に取って、こいつら倒そう?』
天月博人は冷静に自身の心境を見て、確かにニコの提案に載って今すぐ目の前の二人に同情しきる前に始末するべきだとと思う。思いはする。わかってはいる。どのみちいつか倒さねばならない敵なのだと自身に言い聞かせてナイフに手を伸ばそうとする。
「えっとごめんね。君も分からないみたいだし。一緒に帰り道をさがそっか」
女は天月博人のナイフに手を伸ばそうとしていた手をとった。言葉を返す間もなく手を引かれて山道を歩き続ける。
駄目だ駄目だ駄目だ。ほだされるな、今ここで命を刈り取れ、今は優しさを押し込め、悪意だけを思考に満たせ。と天月博人は自分自身を必死に説得する。
「悪いが今ここで……」
「ところで家では見ない君、さっきは1人であんな所に居たけど君もはぐれちゃった感じ? それともそう言う訓練の途中だったりする? どのみち巻き込んで道も分からないこんなところに来ちゃったから申し訳が無いのは変わらないけど。私たち、お父様が決めた場所から出たことが無いから外の家族たちがどうやってるか知らないから教えて欲しいなって」
言葉を遮って紡がれた言葉を投げかける際に少年と女瞳がこちらに向けられる。相手の異能力が分からない現状、視界を向けられている今は大人しくするべきだろうと判断して、停滞反撃を覚悟してその首を握りつぶそうと構えかけた自由な手を降ろす。
「え、えっと……はぐれちゃった感じです」
「あはは! それはお互い奇遇だけど災難だね。巻き込んだ私が言うのもなんだけどさ」
視界に映るニコが『本当にお前が言うななんだよ』と怒る声が聞こえる。天月博人はニコの怒りと申し訳なさそうにしつつニヘヘと笑う様子に苦い笑顔で返す。
お腹が鳴る音が、また聞こえる。そう言えばもう昼だったと体が気がついたのか、それともただつられたのかお腹が鳴る。
「君もお腹が減った? うーん……私たちのところは外で勝手に食べると怒られるけど……迷惑かけたのとせっかく会えたから特別ね」
女はそう言ってポケットから一匹の蜂のような虫が入った瓶を取り出し、解放する。すると蜂は飛び出し手の平にらのる。
「私たちのおやつをとってきて」
女がそう言うと蜂は飛び立ち、そして分身して拡散していく。
「あの、今のは……」
「え? あぁ、別の家の子なんだから分かるわけが無いか。私の能力は虫に命令を従わせる能力、それと虫を増殖させる能力なの。命令と言っても虫の本能に訴えかけてるみたいなものだから難しいのは出来ないんだよね。私が持ってる私が手がけた子達は、帰巣本能は私に向いてるから、家で生まれた子に案内してとかは無理」
女は自身の能力を何の警戒もなしに口走って行く。
「おっと、無駄話してないで歩こうか。願わくばあの猪に出合わない様に」
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