自己犠牲者と混ざる世界

二職三名人

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6-1:夢幻の様な今

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 ある日の襲撃。中田文兵は、黒く鈍い光沢を放っている盛り上がった筋肉と4本の腕、そしてヒルの様な口と、ギョロリとカメレオンそれが如くうごめいている1つ目。更には焼いたゴムの様な匂いを放つそんな異界の存在と思わしき化け物を相手に泥仕合を行なっていた。
 中田文兵の防御力は何であろうと耐え得る物だが、こと攻撃力に関しては人並みでしか無いためにナイフではこの化け物の肉はおろか皮すら切れず。外付け攻撃力である銃も今ある物では、銃弾がめり込むことはあれど、肉を貫くことはおろか抉り込ませることはできなかった。
 「だぁ! うっぜぇ! ぜんっぜん効かねぇ!」と黒光りの化け物に覚え「アハハ! どう? どう? 今、お前がそのどこぞから来た畜生に感じているのが。私がお前に感じている気持ちよ! アーホ!」と怒りを煽ってくる蝗アヤメに銃弾を放って銃弾の確かな殺傷力を確認したことで、自信の現状の能力では今の化け物はどうしようもないと悟り、天月博人が待機する地下牢へと瞬間移動して逃避した。

「リーダー。探索した後の戦利品回収は諦めて救出対象だけでも連れ出すぞ」
「えっ、どうして諦めるんですか?」

「悔しいことだが、今の俺の攻撃が通じねぇ奴がいるんだよ」
「なるほど……いつか防御に特化した存在と相対すると思っていましたが。今回がそうなんですね。わかりました。では一時退却としましょう」

 中田文兵は大概の存在を相手に勝利できる自信はある。だが自信と同じ防御能力が高い存在となると決め手がないことを知覚した。また防御能力に決め手がないことに関して、天月博人にもそれが当てはまる話であった。




「ワオッ! 俺たち本当に助かったみたいだぜ兄弟! 感謝感激雨あられってやつだな!」
「あぁそうだぜブラザー! それにしてもオレたちのヒーローたちも人が悪いぜ! 特にリーダー! なんでそんな怖い格好してんだよリーダー。オレ、最初に見た時怖くてしょんべんちびりそうになったぞ!」
「ジブンはこの格好を気に入ってましてね。子若田のなら申し訳ありませんがそれでもやめるつもりはありませんよ」
「おい、日本人ばっかりだったからそういうもんかと思ってたんだが。なんだそのうるっさい奴ら」

「え、えっと……お、面白黒人枠ってやつですかね……?」
「2人も要らねぇよ!」
「俺は日本人だぜ? ただ肌が焼けてるだけだ! だけど兄弟はー?」
「本当の黒人だぜ!イエーイ! 母国から日本に学びに来てたらロロ=イアに連れてこられたんだよ。日本で俺ハイエース? マジかよ……ってなったぜ」

「あぁ、わかった。わかったからテメェらの自己紹介は最後だ。テメェらの後で自己紹介するやつらが可哀そうだからな」

 中田文兵の指示で最後に自己紹介することになった2人は。考える時間があったせいか、2人で息の合った動きで踊りだし乗りに乗って自己紹介をしていく。

「俺の名前は黒岩統也くろいわ とうやってんだ! 黒い岩、統治する世の中と書いて黒岩統也だ!」
「そんでもっってオレの名前はニック・コールだ!」

「俺たち2人。出会いはロロ=イアに捕まってぶち込まれたあの牢屋!」
「そこで意気投合して今では魂の兄弟。ソウルブラザーになったのさ! ッフッフー!」

「俺達はこのレジスタンスで役に立てると思うぜ? 何てったって俺たち2人はヒーローたちと同じ能力者だからな!」
「ほう」

 うるっせぇなと思っていそうな顔で頬杖をついていた中田文兵と、牢屋を守護している時から絡まれているために疲労が出ている天月博人が反応を示す。

「俺たち2人の能力は同じ。あの研究施設で研究施設で研究されていたことの1つの成果だ」
「オレ達は眠っている間。現実世界に夢幻の様な別の体を実体化させることができるんだ。眠る前に装備を着込めばその姿そのままにな!」

「ふむ、それは倒しても大丈夫なのですか」
「ヒーローリーダー。ナイスクエスチョン! 答えは、俺らが寝ている間に作る第2の体は何度でも作り出すことができる」
「動かす感覚はリアルだからクッソ痛いけどな! ちなみに眠っている本体から離れれば離れるほど動きが鈍うなるぜ」」

 天月博人と中田文兵はその能力に覚えがあり。おおよその予測がついた。

「なるほど……夜間の警備員としていいですね……」
「なぁ、俺も質問いいか?」
「オーケーオーケー! どうぞヒーローギガント!」

「その能力ってよ。2人とも同じなんだろ? どうやって覚醒させた?」
「俺らを使ってた研究施設にある機械があれば、やり方は簡単だぜ? 明晰夢めいせきむを見るんだ。明晰夢ってのは夢だって自覚してる夢のことだぜ?」
「その夢の中で、自分が存在するものだと思えれば。10日もしない内に夢の中の自分以外、夢の世界が崩壊して夢で形成された自分が現実に出る……ってロロ=イアの奴らの研究員が言ってたぜ? そしてこれにはリスクがある。失敗すると夢にとらわれて目を覚ますことができなくなるんだ。オレたち以外はそうなっちまったから多分、そうなる可能性の方が高いぜ?」

「なるほどねぇ……オイ、博人」
「はい、なんですかナカタニさん?」

「テメェの加速能力は人から貰って、なおかつテメェ自信が本来持てる2つの能力の枠ってのは埋まってねぇんだよな?」
「はい、父上から聞いた話によればその筈です」

「よっしきた。攻撃力問題なんとかできるかもしんねぇ」

 中田文兵は嬉しそうにそう言って、次の瞬間には姿を消した。瞬間移動したのだ。

「オイ、ヒーローリーダー。ヒーローギガントがどこか行っちまったぞ!」
「なんか思いついたみたいですね」
「マジかよ! そりゃねーよ。オレたちまだ自分のプレゼンをしてる途中だってのによ!」

「ま、まぁ聞いてあげますから」
「おっリーダー! わかってんじゃーん! リーダーなだけはあるよー! 器が大きいねぇ!」

 天月博人は黒岩統也とニック・コールの対応をして、その後死んだように眠り、鬼童世界にツンツンと突かれる惨状となった。





「なんだ? 鉄田と言い。ここの男どもは、専門外の事を任せるのが習わしでもあるのか? 私は機械いじりに自信があるだけのしがないロリアラサーってだけだ。万物を理解し生成する紙のような学者ではないんだ…………実直に言おう。そろそろロロ=イア研究施設の異能に関した研究資料を読み漁る事で私の脳が休ませろと悲鳴を上げてる」
「たのむって。大幅な戦力アップにもつながんだよ! 俺の分のデザートをくれてやるからよ」

 中田文兵は針城誠子に頼んで異能力研究を行おうとしていた。

「むぅ……それなら……頑張らなくもない」
「おっしマジでありがてぇ。俺としては博人の加速能力みたく自身の異能の異能の枠を潰さずに異能を得る方法と。今、針城が読んでる資料にある『遺伝子接種による異能感染』って奴を重点的に調べ上げてほしいこれが字面的にも1番わかりやすかったし。何よりも丁度良さそうなのを見つけたんだよ」

 中田文兵はそう言いながら赤黒い何かが入っている密封容器を鞄から取り出し、針城誠子の前に並べる。その容器のラベルには『怪力』と書かれている。

「はぁ……わかった。この針城誠子が承った。まずは遺伝子紙接種ならロロ=イアが出した結果が本当かの確認だけれど……まずは別の異能力者の血液サンプル。血液サンプルはこの怪力のと同じ場所にある? あるならそれをとってきて。 それと確認用の動物。できれば哺乳類の小さな生き物を調達してほしい。その間に私は予習。時間が余ったら従来の自身が持つ異能の枠を潰さないで異能を得る方法を探すから」
「あいよ。わかった」

 針城誠子はこれらの研究を渋々承諾。中田文兵が強化されるための研究が始まった。
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