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6-7:夢幻の様な今
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(なんかさっき見たのとはどう考えてもちげぇのが居んなぁ……遠目からでも見える桃色の長髪。親から貰った純粋な色を心無く変える都会の若者みてぇな髪色してんなオイ。いや、これは田舎者のドライバーである俺の勝手なイメージだが……さて)
意思などによる物で形成された都市にて、中田文兵は何かを探して居る風の女、【想いの海に佇む者】を見かけ、その目の前に瞬間移動を行い「俺は中田文兵ってんだ。言葉は解るか。解るならテメェはどんな存在か、俺の敵か味方かを教えろ」と尋ねた。
「突然目の前に来るなんてビックリしたよ……えっと。えぇ、人間の言葉は全て理解してるよ。粗暴ながらに声をかけたなら自分から名乗る最低限の礼儀はあるのね」
「あん、そりゃあ……おい、口が動いてねぇぞ。どうやって言葉を…………腹話術って奴か!」
想いの海に佇む者はクスリと笑う仕草と表情をして口を動かないまま「違うよ。これは私の能力の一部。想い、言葉を心に、脳に直接送っているんだよ。私が思わず面白い帰結だなって思ったのも分かるでしょ?」と返答した。中田文兵はこれに首を傾げ「あぁ、成程?」と自信なさげに理解する。
「それで、私がどんな存在かだけど。
私は今は敵でも味方でもない。強いて言うのなら私が人間大好きだから味方で。現の世界に存在しているあらゆる生命体の意識、夢で構成されたこの世界に好き好んで住んでいる元々は人だった想いの海に佇む者と呼ばれている存在の分霊。
つまりは人をやめて妖怪だとか八百万の神々だとか鬼だとかそんな感じの存在になった何かの若干劣化したコピーだと思ってくれればいいよ。あら、説明にいろんなものを入り混じりすぎちゃったか。解り辛くてごめんね」
「お、おーう……何かよく分かんねぇのになった元人間だって認識で良いな? そこらへんは後々聞くとして今は重要な事を聞かせてもらう。意識や夢で形成された世界だって言ったな? 俺は何でこんなところに居る。俺はどうやったら帰れるんだ?」
「そうだね……なんでこんなところに居るか。
それは現世の敵、ロロ=イア……だっけ? に属する男に落とされたの。そしてどうやって帰るか、あなたの様に悪意があって落とされることは珍しいけれど。
ここではない他の意識的世界にふとした拍子に人が落ちた前例が出来てから作られた装置が有るはずよ。
ここも……うん、大丈夫。私がその場所を覚えているから案内できる。……けれど。あなたは脱出よりも優先したい事が出来たみたいね」
「おうとも。俺をここに落とした奴が居る? そんなのとっちめねぇとだろ。
だがちょいと確認、ここで死んだらどうなる?」
「肉体ごと落ちて死んだのなら死ねば死ぬのは悲しいことだけれど当然。
そしてあなたみたいに精神体だけが落ちて死んだ場合は精神、魂と言えるものが消滅して天国にも地獄にも行けず生まれ変わることもできなくなって、現実世界にある肉体は生きながらにして決して目覚めないものになるよ。……気になるよね。
貴方を落とした男は精神体よ。でも、殺すのはやめてあげてね。捕らえて、しかるべき罰を与えて、比喩表現なく地獄に送る程度にしてあげて」
「……はいよ。一旦はオメェの言葉を信用して、従ってやるよ。男の特徴を教えろ。ボコボコにしてとっ捕まえればいいんだろ?」
「男の特徴は……教えなくても他に男って感じの存在は居ないからわかると思うよ。それじゃあ手分けして探そうね」
「この世は夢幻、幻想のような場所。俺の異能にとってはホームグラウンドなんだが。想いの海に佇む者よ、お前が出張るとそれは意味を失くすな」
「見付けた。もはやあなたに勝ち目はない。大人しく同行するのなら罰に慈悲を与えてあげるけど……」
中田文兵より先に男を見つけた想いの海に佇む者は、先端が尖っており、反対側の端が輪を作っている形状の赤黒い物を握りしめて。悲しそうにその先端を向ける。それでも男は、襲い掛かる隙を伺う悪夢めいた生命体たちを背にしながら、怯むことなく想いの海に佇む者を睨みつける。
「そう、自分の命を賭してでもやりたい事を突き通すんだね…………ごめんね。あなたの所属するロロ=イアと言う大きな家族がやろうとしていることが違う物なら、現の世界を消すものではなかったのなら、その在り方を応援してあげられたのに」
「俺のお父様達はそんなことを……だが、そうであろうと。俺はお父様と兄弟と姉妹たち……ロロ=イアと共にある。勝ち目がない? 運命を司る神でもないお前にそれを決めるな! お前は強い。この幻想の世界に踏み入れることが出来る物ならば知っているとも! 人間では普通は2つ。どんなに頑張ろうとその2つにプラスアルファ程度。対して人間を超えたお前は夢、意識に関する事ならばすべての力を持つ。つまりはこの世界では比喩でも何でもなく何でもできるときた! 総合能力、その汎用性は、俺程度では100分の1に届きはしないだろう。
だからどうした! 総合能力、汎用性で勝てないのならば、今俺が持つ武器を精錬し。突き付けるだけだ! 追い詰められた弱者の力を想い知るといい!」
男はそうして幻影の如く消失していく。想いに佇む者は得物を振るい男が行った事を解除すると。男は出現するが。男は能力を解除されたことに動揺するどころか強い意思を瞳に宿らせ、薄ら笑いを浮かべると。世界、と言うよりも悪夢めいた生命体たちが歪んで男と同じ形を成していく。
「神にもなりえるそのまがい物よ。この世界を相手にしてみろ!」
「意志の強さによる力の成長。あぁ……気高くも何と悲しい事だろう。軽度の罪であれば許せたものを…………まがい物の私では破ることができない領域にまで……」
男は早々に男の姿を成した生命体たちの中に溶け込み。生命体たちは1人残らず想いの海に佇む者を見ていた。
「すべての生命体が本来の敵対種を同族のように見えるがゆえに敵対せず。私だけが別の種族故に敵対する。こんなところかな。なるほど、確かに世界を相手に私を戦わせることになるね。解除ができないなら上書きも…………やはりできないね。成長した力が問題なく使えるほどに馴染んでいないはずなのに。現状ではその体には力のコストオーバーが起きてるよね……膨大な力に命が削られているのか、命を膨大な力に変換しているのかわからないけれど。どちらにしても命を回復させる手段も、命の消費を抑える手段もないのに。凄く無茶をするね。いいよ。全力で相手してあげる」
想いの海に佇む者は得物を握りしめ、構えながら無表情で同じ姿をした自信の分身を発生させる。
「おいで」
人を超えた者はこの世界すべての生命体を相手に相対することとなった。。
「テメェら、殺し合ってただろ。 何で急に仲良しこよし、手を組んで俺を襲い来るんだ。こっちはまともな武器がねぇからまともに相手してられねぇぞ」
惑わされることにも耐性がある中田文兵は現状がどうなっているかもつゆ知らず。悪夢めいた生命体から引き抜いた鋭利な骨や爪を武器に。これに巻き込まれる。
「だぁ……面倒くせぇな! ロロ=イアの落とし子は何所だぁああああ!」
と言っても攻撃を受けても倒される事は無く。伸し掛かられ拘束されても取り押さえることもなく。ただ悪夢めいた生命体を返り討ちにあわせること半日が過ぎるた頃「苦しみたくねぇなら、さっさと出て来い! 腰抜けがぁ!」と苛立ち出てくるように煽るがそれに答える者はおらず。
「ッハ……出て行くわけがないだろ」
男が遠くで息も絶え絶えながらに嘲笑うだけである。
(だが掴まろうが掴まらなかろうが、もう、先はないのが分かる。
何かが燃え上がって居ると同時に削れていくのが分かるんだ。俺は死ぬ。これは間違いない。
……勝ち目は……見えた……いや、これは……負けないだけだな。
だが、お父様たちが世界の消滅を望むのならば……小さな頃に見た異世界への穴は……きっとそう言う事で…………あぁ、どうかこれが親孝行になれれば……兄弟と姉妹たちの道と成れれば……)
男は空を見て手を掲げ、燃え上がる炎に全ての命を注ぎ込んで自身の力をその空に行使する。
「破れろ世界の壁よ……そして、決して消えない傷と成れ」
その一瞬、男の中で燃え上がった炎の力は自身が届かないと認めていた筈の紙になりえる存在のまがい物を超えて、その言葉と意思のままに、一面の空の光景を破り大穴を開く。
この世界に居るすべての生き物が空を見る。見慣れぬものに興味を惹かれ者が居れば、見知っているがゆえに目を逸らせない者がいる。「ここまでやるんだね……天晴よ。本当に世界の敵じゃなかったら。【遥か高みへの先導者】が喜んだだろうに……良く半日も考え、その決断をしたね。さようなら、あなたの勝ちよ」と想いの海に佇む者は空を見て悲しそうに自身の敗北を認める。対して中田文兵は「何だよ……あれ……日本………俺の……俺達の故郷……どういう……ことだよ」と口ずさみながら空に浮かび小さく見える自身の故郷に涙して、奇しくも自身を閉じ込めたロロ=イアの落とし子、その男と同じように。空に向かって手を伸ばした
「あぁ……皆……」
誰よりも先に空を見るのをやめた男は、瞬く間に余韻も残すことなく消滅していった。
空を見る中田文兵の下にm想いの海に佇む者がやってくる。
「中田君……現の世界に行くよ。空に穴が開いた今なら装置なしで私が送り届けられる」
「お前は……なぁ……アレが、世界の穴って奴か? 何で突然開いて……」
「アレはあなたをここに連れて来た男が命を賭して開けたであろう穴だよ……私たちはある種の敗北をしたんだよ。
オリジナルならこんな事に成らなかっただろうけどね……さぁ、手を取って」
天月博人は「お、おう」とほんの少し狼狽えながら、想いの海に佇む者の手を取った。すると次の瞬間には中田文兵は自身が何かに引っ張られる感覚を覚え、一瞬の暗転の後。見慣れた天井を見たのだった。
「わぁ! おはようございます! ナカタニさん! ご主人様! ナカタニさんが目を覚ましましたよ!」
「グッドモーニング! ヒーローギガント!」
「遅刻も良い所だぜ? おかげでこっちはヒヤヒヤだ。色んな意味でよ」
「お、おう……ちょっと色々な……」
「起きるのおっそい! いつまで寝てるのよ寝坊助! 1日が無駄に消費されたわよアー……後ろの誰?」
「あん?……なんでテメェが居るんだ」
「ちょっと世界を救うお手伝いに来たよ」
寝続けたことに怒りをぶつけようとした蝗アヤメが途端に言葉に詰まり、背後を指さす。その言葉に中田文兵を覗き込んでいた3人が中田文兵の後ろを見て固まる。何故ならば、背後に想いの海に佇む者がいた為であった。
「ナカタニさん起きたって本当か? 1人で襲撃して尋問してた徒労感が……誰?」
「えへへ」
「笑い声出してるのに、表情だけで口が動いて居ないおおむね赤い人がいるんだけど」
「俺にもよくわからん。説明お願いできるか?」
「いいよ。最初からそのつもりだし。でもその前に……皆、外に出て空を見ようね。わかる人にはわかるお青ざめるようなものがあると思うから」
想いの海に佇む者の言葉のままに天月博人達は拠点の外に出てそれを見る。空に月ほどの穴、光景の中に張り付けたような別の光景がある。
「マジで破れて繋がってたのかよアレ……」
「そうだよあの穴は夢、意識が集合して作られた世界と繋がってしまった穴、1人の男が命を賭して開けたものだよ。
明日には地球に住む生きとし生けるもの、少なくとも全人類があの穴の存在を知覚すると思う。
……うん、しっかりとした説明をするからレジスタンスの仲間を全員招集してきてね」
何かを知っている風な中田文兵と。女に困惑しながらも。天月博人達は本拠地の仲間たちを呼び出すことにするのだった。
意思などによる物で形成された都市にて、中田文兵は何かを探して居る風の女、【想いの海に佇む者】を見かけ、その目の前に瞬間移動を行い「俺は中田文兵ってんだ。言葉は解るか。解るならテメェはどんな存在か、俺の敵か味方かを教えろ」と尋ねた。
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「あん、そりゃあ……おい、口が動いてねぇぞ。どうやって言葉を…………腹話術って奴か!」
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「お、おーう……何かよく分かんねぇのになった元人間だって認識で良いな? そこらへんは後々聞くとして今は重要な事を聞かせてもらう。意識や夢で形成された世界だって言ったな? 俺は何でこんなところに居る。俺はどうやったら帰れるんだ?」
「そうだね……なんでこんなところに居るか。
それは現世の敵、ロロ=イア……だっけ? に属する男に落とされたの。そしてどうやって帰るか、あなたの様に悪意があって落とされることは珍しいけれど。
ここではない他の意識的世界にふとした拍子に人が落ちた前例が出来てから作られた装置が有るはずよ。
ここも……うん、大丈夫。私がその場所を覚えているから案内できる。……けれど。あなたは脱出よりも優先したい事が出来たみたいね」
「おうとも。俺をここに落とした奴が居る? そんなのとっちめねぇとだろ。
だがちょいと確認、ここで死んだらどうなる?」
「肉体ごと落ちて死んだのなら死ねば死ぬのは悲しいことだけれど当然。
そしてあなたみたいに精神体だけが落ちて死んだ場合は精神、魂と言えるものが消滅して天国にも地獄にも行けず生まれ変わることもできなくなって、現実世界にある肉体は生きながらにして決して目覚めないものになるよ。……気になるよね。
貴方を落とした男は精神体よ。でも、殺すのはやめてあげてね。捕らえて、しかるべき罰を与えて、比喩表現なく地獄に送る程度にしてあげて」
「……はいよ。一旦はオメェの言葉を信用して、従ってやるよ。男の特徴を教えろ。ボコボコにしてとっ捕まえればいいんだろ?」
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「この世は夢幻、幻想のような場所。俺の異能にとってはホームグラウンドなんだが。想いの海に佇む者よ、お前が出張るとそれは意味を失くすな」
「見付けた。もはやあなたに勝ち目はない。大人しく同行するのなら罰に慈悲を与えてあげるけど……」
中田文兵より先に男を見つけた想いの海に佇む者は、先端が尖っており、反対側の端が輪を作っている形状の赤黒い物を握りしめて。悲しそうにその先端を向ける。それでも男は、襲い掛かる隙を伺う悪夢めいた生命体たちを背にしながら、怯むことなく想いの海に佇む者を睨みつける。
「そう、自分の命を賭してでもやりたい事を突き通すんだね…………ごめんね。あなたの所属するロロ=イアと言う大きな家族がやろうとしていることが違う物なら、現の世界を消すものではなかったのなら、その在り方を応援してあげられたのに」
「俺のお父様達はそんなことを……だが、そうであろうと。俺はお父様と兄弟と姉妹たち……ロロ=イアと共にある。勝ち目がない? 運命を司る神でもないお前にそれを決めるな! お前は強い。この幻想の世界に踏み入れることが出来る物ならば知っているとも! 人間では普通は2つ。どんなに頑張ろうとその2つにプラスアルファ程度。対して人間を超えたお前は夢、意識に関する事ならばすべての力を持つ。つまりはこの世界では比喩でも何でもなく何でもできるときた! 総合能力、その汎用性は、俺程度では100分の1に届きはしないだろう。
だからどうした! 総合能力、汎用性で勝てないのならば、今俺が持つ武器を精錬し。突き付けるだけだ! 追い詰められた弱者の力を想い知るといい!」
男はそうして幻影の如く消失していく。想いに佇む者は得物を振るい男が行った事を解除すると。男は出現するが。男は能力を解除されたことに動揺するどころか強い意思を瞳に宿らせ、薄ら笑いを浮かべると。世界、と言うよりも悪夢めいた生命体たちが歪んで男と同じ形を成していく。
「神にもなりえるそのまがい物よ。この世界を相手にしてみろ!」
「意志の強さによる力の成長。あぁ……気高くも何と悲しい事だろう。軽度の罪であれば許せたものを…………まがい物の私では破ることができない領域にまで……」
男は早々に男の姿を成した生命体たちの中に溶け込み。生命体たちは1人残らず想いの海に佇む者を見ていた。
「すべての生命体が本来の敵対種を同族のように見えるがゆえに敵対せず。私だけが別の種族故に敵対する。こんなところかな。なるほど、確かに世界を相手に私を戦わせることになるね。解除ができないなら上書きも…………やはりできないね。成長した力が問題なく使えるほどに馴染んでいないはずなのに。現状ではその体には力のコストオーバーが起きてるよね……膨大な力に命が削られているのか、命を膨大な力に変換しているのかわからないけれど。どちらにしても命を回復させる手段も、命の消費を抑える手段もないのに。凄く無茶をするね。いいよ。全力で相手してあげる」
想いの海に佇む者は得物を握りしめ、構えながら無表情で同じ姿をした自信の分身を発生させる。
「おいで」
人を超えた者はこの世界すべての生命体を相手に相対することとなった。。
「テメェら、殺し合ってただろ。 何で急に仲良しこよし、手を組んで俺を襲い来るんだ。こっちはまともな武器がねぇからまともに相手してられねぇぞ」
惑わされることにも耐性がある中田文兵は現状がどうなっているかもつゆ知らず。悪夢めいた生命体から引き抜いた鋭利な骨や爪を武器に。これに巻き込まれる。
「だぁ……面倒くせぇな! ロロ=イアの落とし子は何所だぁああああ!」
と言っても攻撃を受けても倒される事は無く。伸し掛かられ拘束されても取り押さえることもなく。ただ悪夢めいた生命体を返り討ちにあわせること半日が過ぎるた頃「苦しみたくねぇなら、さっさと出て来い! 腰抜けがぁ!」と苛立ち出てくるように煽るがそれに答える者はおらず。
「ッハ……出て行くわけがないだろ」
男が遠くで息も絶え絶えながらに嘲笑うだけである。
(だが掴まろうが掴まらなかろうが、もう、先はないのが分かる。
何かが燃え上がって居ると同時に削れていくのが分かるんだ。俺は死ぬ。これは間違いない。
……勝ち目は……見えた……いや、これは……負けないだけだな。
だが、お父様たちが世界の消滅を望むのならば……小さな頃に見た異世界への穴は……きっとそう言う事で…………あぁ、どうかこれが親孝行になれれば……兄弟と姉妹たちの道と成れれば……)
男は空を見て手を掲げ、燃え上がる炎に全ての命を注ぎ込んで自身の力をその空に行使する。
「破れろ世界の壁よ……そして、決して消えない傷と成れ」
その一瞬、男の中で燃え上がった炎の力は自身が届かないと認めていた筈の紙になりえる存在のまがい物を超えて、その言葉と意思のままに、一面の空の光景を破り大穴を開く。
この世界に居るすべての生き物が空を見る。見慣れぬものに興味を惹かれ者が居れば、見知っているがゆえに目を逸らせない者がいる。「ここまでやるんだね……天晴よ。本当に世界の敵じゃなかったら。【遥か高みへの先導者】が喜んだだろうに……良く半日も考え、その決断をしたね。さようなら、あなたの勝ちよ」と想いの海に佇む者は空を見て悲しそうに自身の敗北を認める。対して中田文兵は「何だよ……あれ……日本………俺の……俺達の故郷……どういう……ことだよ」と口ずさみながら空に浮かび小さく見える自身の故郷に涙して、奇しくも自身を閉じ込めたロロ=イアの落とし子、その男と同じように。空に向かって手を伸ばした
「あぁ……皆……」
誰よりも先に空を見るのをやめた男は、瞬く間に余韻も残すことなく消滅していった。
空を見る中田文兵の下にm想いの海に佇む者がやってくる。
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「お前は……なぁ……アレが、世界の穴って奴か? 何で突然開いて……」
「アレはあなたをここに連れて来た男が命を賭して開けたであろう穴だよ……私たちはある種の敗北をしたんだよ。
オリジナルならこんな事に成らなかっただろうけどね……さぁ、手を取って」
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「わぁ! おはようございます! ナカタニさん! ご主人様! ナカタニさんが目を覚ましましたよ!」
「グッドモーニング! ヒーローギガント!」
「遅刻も良い所だぜ? おかげでこっちはヒヤヒヤだ。色んな意味でよ」
「お、おう……ちょっと色々な……」
「起きるのおっそい! いつまで寝てるのよ寝坊助! 1日が無駄に消費されたわよアー……後ろの誰?」
「あん?……なんでテメェが居るんだ」
「ちょっと世界を救うお手伝いに来たよ」
寝続けたことに怒りをぶつけようとした蝗アヤメが途端に言葉に詰まり、背後を指さす。その言葉に中田文兵を覗き込んでいた3人が中田文兵の後ろを見て固まる。何故ならば、背後に想いの海に佇む者がいた為であった。
「ナカタニさん起きたって本当か? 1人で襲撃して尋問してた徒労感が……誰?」
「えへへ」
「笑い声出してるのに、表情だけで口が動いて居ないおおむね赤い人がいるんだけど」
「俺にもよくわからん。説明お願いできるか?」
「いいよ。最初からそのつもりだし。でもその前に……皆、外に出て空を見ようね。わかる人にはわかるお青ざめるようなものがあると思うから」
想いの海に佇む者の言葉のままに天月博人達は拠点の外に出てそれを見る。空に月ほどの穴、光景の中に張り付けたような別の光景がある。
「マジで破れて繋がってたのかよアレ……」
「そうだよあの穴は夢、意識が集合して作られた世界と繋がってしまった穴、1人の男が命を賭して開けたものだよ。
明日には地球に住む生きとし生けるもの、少なくとも全人類があの穴の存在を知覚すると思う。
……うん、しっかりとした説明をするからレジスタンスの仲間を全員招集してきてね」
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