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8-5 :何度繰り返しても歩みは止めない
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ループし、ミランダ・レインと仕事場に向かう道中で、本人が覚えていないにしても、ループを解決する際には記憶を思い出させてと言う約束はしたのだ。
少なくとも天月博人はその約束を覚えている。であるのならばできうる限り果たすべきだという判断の元に腕をつかみ今日は一日、アンナと一緒に家で過ごさないかと引き留める。
ミランダ・レインはこれに不信感を持ちつつも、仕事をしなければという使命感にでも駆られているのかこれを嫌がる。
……いや、頭を待っピンクにしたなら職場のブライアンに逢いたいというのもあるだろう。であるのならば何も開示せずして引き留めるのは難しいだろう。だから、素直に行こう。難しく考えるのは面倒だ。変に腹黒くあろうとするから時間がかかるんだ。
「職場で一緒に働いているブライアンと、絶賛両想い中なのに踏み込めない恋する乙女のミランダさん! オレは記憶を取り戻しています。どういった意図があるのかを知ってもらいたいので今日一日一緒に居てください!」
「…………君はなんでそんなことを大声で言うんだ!? バカじゃないのか!?」
バカとはひどいですね、職場で一緒に働いているブライアンと、絶賛両想い中なのに踏み込めない恋する乙女のミランダさんと言うとしたが途中で、その呼び方止めろと怒られた。
体調が悪いと連絡を入れて、関われる気がしないポーレッド・レインが外出するのを見計らって家に戻る。
「えっ!? 2人ともなんで帰ってきたの? 忘れ物? さっき掃除したときそういうの無かったよ? どうしたの? 大丈夫?」と困惑するアンナ・レインに「アンナお姉ちゃんと一緒に居たくなりました。そのついでにミランダを誘ったんだ」と虚実まぜた言い分で説得する。
「ん! んん! んー! ミランダお姉さま! デーヴィッドが可愛い!」
「あーうん、はいはいそうだね」
天月博人の行動を可愛いと言うアンナ・レインに、バシバシと肩を叩かれているミランダ・レインは適当に流し、内心、ホウン党は全然可愛くない奴だぞ―こいつと思っていそうな視線を向けてくる。
天月博人も自身は可愛くはないと思う。
自虐癖も混ざるが自身を可愛い、格好良いと言ってしまう人は何かしらおかしいのだろう。
容姿なんてほめられた日には眼科に行って眼鏡か目ん玉を替えてこいと言いたくなる。
「そのデーヴィッドに言われて私のところに来てくれるミランダお姉さまも可愛い! あはは、私は2人とも大好きなんだぁ」
「そ、そう……熱い、熱いからアンナ。はーなーしーて」
仲睦まじい光景が見える。
この家にやってきて時折見るさほど珍しくもない光景。
この光景を見れば見るほどに天月博人はやっぱり敵対できねぇなぁと確信が強くなる。
そしてアンナ・レインの体は熱でも出ているのかと聞きたくなるほど、触れれば触れるほどに熱い。
日の能力者であるがためだろうか。
話は大きく変わるが、どうしたらいいのだろう。
天月博人自身も体温は高い方であるから、今度ロシアに言ったときにクッキーを買いにソフィアにあった際「手が冷たい人は心が温かいらしい、それは逆説的に言えば手が温かいと、心が冷たいということで。
ジブンは心が冷え切った鬼畜外道である可能性がたかいな」なんて胸の内で温めていたネタを出しにくくなってしまったじゃないか。
「はー熱い……」
アンナ・レインを振りほどいたミランダ・レインが手で自身を仰いで涼ませながら、天月博人を見て「それで、結局。何のつもりなんだよ?」と尋ねられる。どうこたえるべきかがわからない、一からすべてを語るのは、少々面倒くさいが過ぎる。だから天月博人は「今日一日中、一緒にいてくれたらわかりますよ」と答えた。
記憶が甦る時まで、アンナ・レインにデーヴィッド・レインと言う束の間に家族として。ミランダ・レインからは不穏な……おそらく敵としての視線を向けられる。
ピリリとしながらも、暖かな時間の中で。天月博人は気持ちにゆとりができて、気持ちが緩み、普段考えようともしない事をふと思う。
彼女たちは敵である。
なのに、今回の場合、何処と無くトチ狂っているような気がするがそれでも、何かキッカケが有れば、こうやって柔らかな気持ちで触れ合える。敵なのに触れ合えるのだ。
知っている。わかっている。十人十色、敵にも絆を結びえるような人格の人がいるのを理解はしている。だけれど、殺し合わなければならない。何故ならば敵組織に所属しているから。
……それだけで絆を結べたかもしれない数多の理由を噛み潰して殺しあう理由になる。それだけ、本当にそんな簡単な理由でだ。
(何故、戦わなければならないのだろうたと言う疑問はない。的組織は世界消滅を願い、俺は仲間や友人、そして何よりも家族の幸せを願っている。
敵組織はその大切な存在の幸せになれたかもしれない未来も可能性さえも摘むごうとしている。
闘う理由は明白で、ちゃんと理解しているつもりだ。そこに迷いはない。
でも、蝗アヤメ、鬼童世界、いつかあった虫を増やし、操り蜂蜜をご馳走してくれた女と少年、そしてレイン3姉妹と、触れれば触れる程に。闘いたくないと言う気持ちが湧いてくる。
どうして世界の消滅を願うロロ=イアと言う組織に人の暖かみを感じられる者が居るのだろう、どうして……どうして俺は、家族や友、仲間が居なければ即刻、命ごと全てを投げ出したくなるような境遇を辿っているのだろう)そんな考えてもどうしようもない事が脳裏と胸をグルグルと回って、少しだけ気分が悪くなる。
「次は私の番だね。私の優れた平衡感覚を刮目して恐れおののくといいよ。見事この今にも崩れそうな塔から一片を引き抜いて見せるからね」
トランプやジェンガなどのテーブルゲームで遊んでいる。
……その内、天月博人は。これ以上思考しないほうがいい、ただでさえ鈍りやすい殺意が更に脆くなる。
そう思い至って、今をデーヴィッド・レインとして無邪気に楽しむことにした。
「君は……敵なの? 味方なの? どうして、私たちと一緒に居て、笑っていられるの?」
遊び疲れて隣で眠ったアンナ・レインと、眠っているアンナ・レインを見て仕方がないと1人で出かけに行ったポーレッド・レインが通った玄関をちらりと見て、今にも眠そうなミランダ・レインが尋ねる。
「敵ですよ。所属組織が違う以上どうしても敵です。でもどうして笑えるのか。それはきっと、オレは貴女たちがいい人だと思って、一緒に居て心地よく楽しいから。……ですかね。もう少し待ってください。多分、もう少しでわかりますから」
もう直ぐ、気を張りなおす時が来る。何度目か、たしか7度目の今日が終わって、7度目の明日を迎える時が来るのだ。
「……思い出させるにしてももうちょっと考えてよ。こう、アンナを職場見学に来させるとか……記憶が無い私だと職場見学だってまだ早いって突っぱねそうだけどそこは押し通る感じでさ」
「次があるならそうするよ。ついでにブライアンとのデートも取り付けて見せようか」
「………やめて……やめて」
「……ブライアン?」
「お願いだから気にしないで……」
(日を跨ぐと、以前の様に2人は記憶を取り戻した。解決までの状況的土台はできあがったと言えよう。であれば……}
電話が鳴り響く。
(……おっと、こっちに気をとられていて忘れていた)
「またいつものいたずら電話?」
「いや、オレの頼れる友達だ。対応してもいいかな?」
ミランダ・レインが訝し気に見て来る。
「疑わしいのは解るけど。信じてくれ。彼女はオレが説得してアンタ達に敵対しないように言うからさ。……頼むよ、絶対に力になるから」
「…………はぁ、どうぞ。お願いだから裏切らないでよ。アンナが悲しむから」
「勿論。ところで、家族大好きなオレからしたらその説得は効果抜群だぜ? 洗脳の件と言い、ミランダはオレを扱う才能が有るよ」
「そんな限定的すぎる才能はいらないわよ。ほら、さっさと受話器を取りなさい」
許可が下りて受話器を手に取る。
「よう久しぶりニコ」
『ヒロ!? ……え、あ、何で分かったの? じゃなくて、大丈夫!?』
「大丈夫大丈夫」
受話器から、彼女には少し悪いけれど安心さえ覚える。ニコの心配そうな声が聞こえる。天月博人が少年の時から、ほぼ毎日、互いの意志を言葉で、文字で、視線で交えてきた相手の存在を確かめ、安堵する。
「ところでさ、突然申し訳ないけれど。アンナ・レイン、ミランダ・レイン、ポーレッド・レインとは敵対できない。理由としては情が沸いたから。そして次に、現在非常に面倒な事になってる。アンナとミランダと協力してそれを何とかしようと思っているんだけれど、もしかしたらニコの力が必要になるかも知れない。そのときは、力を貸してほしい」
『……1C_1Bs_113、ポーレッドとは協力しないの?』
「あー、あの人は協力を仰ぐにはちょーと、ロロ=イア、もとい彼女の製作者への思いが強くてね。難しいんだ。それで……どうかな? 協力してくれるかい?」
『ふーん……わかったんだよ。ところで、なんかしゃべり方に違和感ある気がするんだよ。ニコの気のせいかな?』
「それは、記憶を消されてその代わりにレイン家の家族として作られた。もう一人のオレと言えるデーヴィッド・レインの感性と言うか、造られた記憶と言うか、そう言うのが混ざったからかな。うん、何の問題もない。これもオレだ。多分、そのうち元に戻るかな」
『問題大ありなんだよ!? ちょっとまって、それって用は記憶を全部改ざんされたわけだよね? 一体全体どう言う事なのか説明してほしいんだよ! ただでさえヒロの感性は影響されやすいのに、悪影響があったら其奴らたたじゃ───』
天月博人は話が進まなくなると思って電話を切り、アンナたちを見る。
「これで敵対しない。そして協力もしてくれる。今のところこれが万全だね」
背後で再び電話が鳴り響く。
「全部終わったらとても怒られるだろうなぁ。ニコがカンカンだ。ところで、一緒に怒られてくれるかい? 彼女は文句を言うとか突然大音量を流すとか、自作の服を着せてくれる母ちゃんに割ときつい服の案を提出したりとか、何らかの形で必ず罰してくるし、説教は、下手したら夕暮れが夜になるくらい長からあんまりおすすめはしないけど」
天月博人は苦笑いして、ニコにとりあえず半日は耳元でガミガミ言われるのを覚悟しながら肩をすくめるジェスチャーをした。
状況を解決する為に、その原因を天月博人は語る。
「要は今、ポーテッドお姉さまとアンナが追って居る子供達、おそらくコリンなる人物が時間を巻き戻す能力を獲得していると」
「そうですね。ですから解決方法は明確です。コリンなる人物、もしくはスペンサー、子供達を能力を行使できない状況にしたらいい」
「ねぇ、デイヴィ……ニコって人に言われて口調が」
「あとあとの怒りを出来うる限り削減しようと思ってね。それと」
天月博人は少し深呼吸して2人を見据える。
「オレ達はこのループを抜け出す為の協力者では有る。だけれど結局のところ敵同士なんですよ。故に……子供達の結末はジブンとアンタ達が競争して決めることになる」
「ふーん」
「……どう言うこと?」
天月博人の言葉にミランダ・レインはある程度の理解を示し、アンナ・レインは首を傾げて無理解を示す。
「つまりはアンタ達ロロ=イア陣営は逃げ出した子供達を捕まえて、逃げ出すほどの何かをしたいと見た。
そしてジブンはそんな子供達を助けたいと思っています。
だから双方が望む結末は迎えることはできない。競争するしかないのです。
すいませんね、全面的に救出する方向に持って行こうと考えましたが、その気が一切ないポーレッドがいる以上、取り逃がした際に与えられるだろう罰は、ジブンが完全に敵対して大いに邪魔し、その間に逃げられても仕方ないとかそんな感じに思われたりして、何とか出来ないかなと考えましたけれど仕方ないと済まされるわけもなく、だからと言ってほかに何かあるのかと考えても何も思いつきませんでした。
だから競争は、双方が納得出来そうな妥協策です。ジブンが先なら救い出す。アンタ達が先なら完全に身動きできないようにして捉える。如何でしょうか?」
「ちょっと提案して良い?」
天月博人が「どうぞ」と答えるとミランダ・レインは「明日の朝を迎えた時点で勝敗を察して、無駄に抵抗せず大人しく引き下がること」と。天月博人は少し考えて「わかりました。辛いですけどジブンが負けた場合、涙を飲んで子供達を諦めイギリスを脱出します」とこれを受け入れる。
「……よし、乗った。その条件でやるよ。恨みっこ無しだよ」
「勿論」
どんな結末になろうと今日に別れを告げよう。そう誓い、アンナ・レイン曰く子供達は見辛い夜に活動するので、夜が来るまでの残りの時間を過ごす。
「ねぇ……デイヴィ」
「何? アンナ姉ちゃん」
声をかけられた天月博人が振り返るとアンナ・レインは、自身の手首につけた花の髪留めを外し、ポケットから天月博人が持ち込んだ財布を取り出して、悲しそうにその2つを差し出す。
「これ、返すね。あと、ポーレッドお姉さまがゴーグル……私たちがデイヴィのゴーグル壊しちゃったんだ。……ごめんなさい」
天月博人は一瞬、花の髪留めを大事な存在ということでアンナ・レインにあげようかとも考えたが。
身体を強化する異能が付与される物の為、敵であるロロ=イアの強化に加担するのはどうかと、また上に所持していることをバレて没収される事を考慮して素直に受け取る。
「返していただきありがとうございます」
悲しそうな表情が強くなる。少し心が痛い。
……異能に関係しなければいいかと思い至って、天月博人は財布の中身を確認する。少し減ってはいるものの何とかなりそうだと考える。
「アンナ姉ちゃん、そんな悲しそうな顔するなら気分転換に出かけようぜ?」
「え? う、うん」
デーヴィッド ・レインの記憶から街の構造を把握する。大丈夫だ。迷い時はない。
「赤色が好き?」
「ううん、私の見た目こんなだけど、どっちかって言うと青色が好きだよ? なんで?」
「ちょっと参考にね。さてそろそろだ」
「えっそろそろ? どこに……え!?」
宝石店が見えてくる。そして止められそうな雰囲気を感じた為、有無を言わせずに来店し、目に付いた日本円にして3万円ほどの蝶々のように形作られたサファイアのペンダントを購入した。
「悪いよなんて思わないでくれよ? コレはデーヴィッド ・レインであるオレから、大好きなアンナ姉ちゃんへの家族としての贈り物なんだから。
多分、オレの事はすぐに忘れ流ことになるけれど、自分自身自己満足でしかないと思うけれど。アンナ姉ちゃんに例え忘れても一緒に傷んだよって形だけだけどその証としてあげるんだ」
「……うん、大事にするね」
天月博人は動けないでいるアンナ・レインの首に購入したばかりのサファイアのネックレスを身につけさせた。
偶然ではあるが天月博人にとって誕生石であるサファイアは、赤いアンナ・レインが身につけることによって映えて見える。
……帰った頃には競争開始の時間だ。別れの時である。
「それじゃあここまでだ」
「うん……バイバイ」
なるべく再開はしたくはない。その時はきっと殺しあわねばならない敵だから。それに天月博人はどうしても手を出せないからなんの因果もない第三者にその命を狩らせることになるから。だからここで、互いの幸せを祈って、バイバイと言う。
その後、子供達はポーレッド・レインと初めて捜索に参加したミランダ・レインによって確保される。
四肢を拘束され、手を包み、コリンとスペンサーは別々の檻に閉じ込められる。
そして自殺防止用に定期的にアンナ・レインが巡回する見張り係となる。
その牢屋の中で、少年、コリンはこのループの中で初めて聞く「ようコリン」と己を呼ぶ声を聞いた。
拘束された身体で振り返るといつの間に入ったのか大男を連れた、眠たげでボサボサ髪の男がそこにいたのだ。
「助けに来たぞ」
天月博人はニコの力を用いて延々と動きを追跡。どこに閉じ込められているのかと場所を探り出し、そして中田文兵を呼び寄せて……子供達をカガミナイトの本拠地に移す事で救出したのである。
アンナが何度目かの見回りの際に誰も彼もが拘束具を置いて居なくなっていることを発見。この状況は瞬く間に姉妹とポーレッドからロロ=イアへと広がっていく。
「負けたんだね」
「うん、しまったなぁ拘束した時点でこっちの勝ちってことにしたほうが良かった何て思うけどもう後の祭り。
ちゃんと罰を受けようか。多分、処分とまではいかないけれど。罰を受けた後は持ち場は移動するかもね。もし離れ離れになっても私達は姉妹だよ」
「……うん」
勝負の結末は天月博人の勝利となり、そして世界はようやく今日を迎えた。
少なくとも天月博人はその約束を覚えている。であるのならばできうる限り果たすべきだという判断の元に腕をつかみ今日は一日、アンナと一緒に家で過ごさないかと引き留める。
ミランダ・レインはこれに不信感を持ちつつも、仕事をしなければという使命感にでも駆られているのかこれを嫌がる。
……いや、頭を待っピンクにしたなら職場のブライアンに逢いたいというのもあるだろう。であるのならば何も開示せずして引き留めるのは難しいだろう。だから、素直に行こう。難しく考えるのは面倒だ。変に腹黒くあろうとするから時間がかかるんだ。
「職場で一緒に働いているブライアンと、絶賛両想い中なのに踏み込めない恋する乙女のミランダさん! オレは記憶を取り戻しています。どういった意図があるのかを知ってもらいたいので今日一日一緒に居てください!」
「…………君はなんでそんなことを大声で言うんだ!? バカじゃないのか!?」
バカとはひどいですね、職場で一緒に働いているブライアンと、絶賛両想い中なのに踏み込めない恋する乙女のミランダさんと言うとしたが途中で、その呼び方止めろと怒られた。
体調が悪いと連絡を入れて、関われる気がしないポーレッド・レインが外出するのを見計らって家に戻る。
「えっ!? 2人ともなんで帰ってきたの? 忘れ物? さっき掃除したときそういうの無かったよ? どうしたの? 大丈夫?」と困惑するアンナ・レインに「アンナお姉ちゃんと一緒に居たくなりました。そのついでにミランダを誘ったんだ」と虚実まぜた言い分で説得する。
「ん! んん! んー! ミランダお姉さま! デーヴィッドが可愛い!」
「あーうん、はいはいそうだね」
天月博人の行動を可愛いと言うアンナ・レインに、バシバシと肩を叩かれているミランダ・レインは適当に流し、内心、ホウン党は全然可愛くない奴だぞ―こいつと思っていそうな視線を向けてくる。
天月博人も自身は可愛くはないと思う。
自虐癖も混ざるが自身を可愛い、格好良いと言ってしまう人は何かしらおかしいのだろう。
容姿なんてほめられた日には眼科に行って眼鏡か目ん玉を替えてこいと言いたくなる。
「そのデーヴィッドに言われて私のところに来てくれるミランダお姉さまも可愛い! あはは、私は2人とも大好きなんだぁ」
「そ、そう……熱い、熱いからアンナ。はーなーしーて」
仲睦まじい光景が見える。
この家にやってきて時折見るさほど珍しくもない光景。
この光景を見れば見るほどに天月博人はやっぱり敵対できねぇなぁと確信が強くなる。
そしてアンナ・レインの体は熱でも出ているのかと聞きたくなるほど、触れれば触れるほどに熱い。
日の能力者であるがためだろうか。
話は大きく変わるが、どうしたらいいのだろう。
天月博人自身も体温は高い方であるから、今度ロシアに言ったときにクッキーを買いにソフィアにあった際「手が冷たい人は心が温かいらしい、それは逆説的に言えば手が温かいと、心が冷たいということで。
ジブンは心が冷え切った鬼畜外道である可能性がたかいな」なんて胸の内で温めていたネタを出しにくくなってしまったじゃないか。
「はー熱い……」
アンナ・レインを振りほどいたミランダ・レインが手で自身を仰いで涼ませながら、天月博人を見て「それで、結局。何のつもりなんだよ?」と尋ねられる。どうこたえるべきかがわからない、一からすべてを語るのは、少々面倒くさいが過ぎる。だから天月博人は「今日一日中、一緒にいてくれたらわかりますよ」と答えた。
記憶が甦る時まで、アンナ・レインにデーヴィッド・レインと言う束の間に家族として。ミランダ・レインからは不穏な……おそらく敵としての視線を向けられる。
ピリリとしながらも、暖かな時間の中で。天月博人は気持ちにゆとりができて、気持ちが緩み、普段考えようともしない事をふと思う。
彼女たちは敵である。
なのに、今回の場合、何処と無くトチ狂っているような気がするがそれでも、何かキッカケが有れば、こうやって柔らかな気持ちで触れ合える。敵なのに触れ合えるのだ。
知っている。わかっている。十人十色、敵にも絆を結びえるような人格の人がいるのを理解はしている。だけれど、殺し合わなければならない。何故ならば敵組織に所属しているから。
……それだけで絆を結べたかもしれない数多の理由を噛み潰して殺しあう理由になる。それだけ、本当にそんな簡単な理由でだ。
(何故、戦わなければならないのだろうたと言う疑問はない。的組織は世界消滅を願い、俺は仲間や友人、そして何よりも家族の幸せを願っている。
敵組織はその大切な存在の幸せになれたかもしれない未来も可能性さえも摘むごうとしている。
闘う理由は明白で、ちゃんと理解しているつもりだ。そこに迷いはない。
でも、蝗アヤメ、鬼童世界、いつかあった虫を増やし、操り蜂蜜をご馳走してくれた女と少年、そしてレイン3姉妹と、触れれば触れる程に。闘いたくないと言う気持ちが湧いてくる。
どうして世界の消滅を願うロロ=イアと言う組織に人の暖かみを感じられる者が居るのだろう、どうして……どうして俺は、家族や友、仲間が居なければ即刻、命ごと全てを投げ出したくなるような境遇を辿っているのだろう)そんな考えてもどうしようもない事が脳裏と胸をグルグルと回って、少しだけ気分が悪くなる。
「次は私の番だね。私の優れた平衡感覚を刮目して恐れおののくといいよ。見事この今にも崩れそうな塔から一片を引き抜いて見せるからね」
トランプやジェンガなどのテーブルゲームで遊んでいる。
……その内、天月博人は。これ以上思考しないほうがいい、ただでさえ鈍りやすい殺意が更に脆くなる。
そう思い至って、今をデーヴィッド・レインとして無邪気に楽しむことにした。
「君は……敵なの? 味方なの? どうして、私たちと一緒に居て、笑っていられるの?」
遊び疲れて隣で眠ったアンナ・レインと、眠っているアンナ・レインを見て仕方がないと1人で出かけに行ったポーレッド・レインが通った玄関をちらりと見て、今にも眠そうなミランダ・レインが尋ねる。
「敵ですよ。所属組織が違う以上どうしても敵です。でもどうして笑えるのか。それはきっと、オレは貴女たちがいい人だと思って、一緒に居て心地よく楽しいから。……ですかね。もう少し待ってください。多分、もう少しでわかりますから」
もう直ぐ、気を張りなおす時が来る。何度目か、たしか7度目の今日が終わって、7度目の明日を迎える時が来るのだ。
「……思い出させるにしてももうちょっと考えてよ。こう、アンナを職場見学に来させるとか……記憶が無い私だと職場見学だってまだ早いって突っぱねそうだけどそこは押し通る感じでさ」
「次があるならそうするよ。ついでにブライアンとのデートも取り付けて見せようか」
「………やめて……やめて」
「……ブライアン?」
「お願いだから気にしないで……」
(日を跨ぐと、以前の様に2人は記憶を取り戻した。解決までの状況的土台はできあがったと言えよう。であれば……}
電話が鳴り響く。
(……おっと、こっちに気をとられていて忘れていた)
「またいつものいたずら電話?」
「いや、オレの頼れる友達だ。対応してもいいかな?」
ミランダ・レインが訝し気に見て来る。
「疑わしいのは解るけど。信じてくれ。彼女はオレが説得してアンタ達に敵対しないように言うからさ。……頼むよ、絶対に力になるから」
「…………はぁ、どうぞ。お願いだから裏切らないでよ。アンナが悲しむから」
「勿論。ところで、家族大好きなオレからしたらその説得は効果抜群だぜ? 洗脳の件と言い、ミランダはオレを扱う才能が有るよ」
「そんな限定的すぎる才能はいらないわよ。ほら、さっさと受話器を取りなさい」
許可が下りて受話器を手に取る。
「よう久しぶりニコ」
『ヒロ!? ……え、あ、何で分かったの? じゃなくて、大丈夫!?』
「大丈夫大丈夫」
受話器から、彼女には少し悪いけれど安心さえ覚える。ニコの心配そうな声が聞こえる。天月博人が少年の時から、ほぼ毎日、互いの意志を言葉で、文字で、視線で交えてきた相手の存在を確かめ、安堵する。
「ところでさ、突然申し訳ないけれど。アンナ・レイン、ミランダ・レイン、ポーレッド・レインとは敵対できない。理由としては情が沸いたから。そして次に、現在非常に面倒な事になってる。アンナとミランダと協力してそれを何とかしようと思っているんだけれど、もしかしたらニコの力が必要になるかも知れない。そのときは、力を貸してほしい」
『……1C_1Bs_113、ポーレッドとは協力しないの?』
「あー、あの人は協力を仰ぐにはちょーと、ロロ=イア、もとい彼女の製作者への思いが強くてね。難しいんだ。それで……どうかな? 協力してくれるかい?」
『ふーん……わかったんだよ。ところで、なんかしゃべり方に違和感ある気がするんだよ。ニコの気のせいかな?』
「それは、記憶を消されてその代わりにレイン家の家族として作られた。もう一人のオレと言えるデーヴィッド・レインの感性と言うか、造られた記憶と言うか、そう言うのが混ざったからかな。うん、何の問題もない。これもオレだ。多分、そのうち元に戻るかな」
『問題大ありなんだよ!? ちょっとまって、それって用は記憶を全部改ざんされたわけだよね? 一体全体どう言う事なのか説明してほしいんだよ! ただでさえヒロの感性は影響されやすいのに、悪影響があったら其奴らたたじゃ───』
天月博人は話が進まなくなると思って電話を切り、アンナたちを見る。
「これで敵対しない。そして協力もしてくれる。今のところこれが万全だね」
背後で再び電話が鳴り響く。
「全部終わったらとても怒られるだろうなぁ。ニコがカンカンだ。ところで、一緒に怒られてくれるかい? 彼女は文句を言うとか突然大音量を流すとか、自作の服を着せてくれる母ちゃんに割ときつい服の案を提出したりとか、何らかの形で必ず罰してくるし、説教は、下手したら夕暮れが夜になるくらい長からあんまりおすすめはしないけど」
天月博人は苦笑いして、ニコにとりあえず半日は耳元でガミガミ言われるのを覚悟しながら肩をすくめるジェスチャーをした。
状況を解決する為に、その原因を天月博人は語る。
「要は今、ポーテッドお姉さまとアンナが追って居る子供達、おそらくコリンなる人物が時間を巻き戻す能力を獲得していると」
「そうですね。ですから解決方法は明確です。コリンなる人物、もしくはスペンサー、子供達を能力を行使できない状況にしたらいい」
「ねぇ、デイヴィ……ニコって人に言われて口調が」
「あとあとの怒りを出来うる限り削減しようと思ってね。それと」
天月博人は少し深呼吸して2人を見据える。
「オレ達はこのループを抜け出す為の協力者では有る。だけれど結局のところ敵同士なんですよ。故に……子供達の結末はジブンとアンタ達が競争して決めることになる」
「ふーん」
「……どう言うこと?」
天月博人の言葉にミランダ・レインはある程度の理解を示し、アンナ・レインは首を傾げて無理解を示す。
「つまりはアンタ達ロロ=イア陣営は逃げ出した子供達を捕まえて、逃げ出すほどの何かをしたいと見た。
そしてジブンはそんな子供達を助けたいと思っています。
だから双方が望む結末は迎えることはできない。競争するしかないのです。
すいませんね、全面的に救出する方向に持って行こうと考えましたが、その気が一切ないポーレッドがいる以上、取り逃がした際に与えられるだろう罰は、ジブンが完全に敵対して大いに邪魔し、その間に逃げられても仕方ないとかそんな感じに思われたりして、何とか出来ないかなと考えましたけれど仕方ないと済まされるわけもなく、だからと言ってほかに何かあるのかと考えても何も思いつきませんでした。
だから競争は、双方が納得出来そうな妥協策です。ジブンが先なら救い出す。アンタ達が先なら完全に身動きできないようにして捉える。如何でしょうか?」
「ちょっと提案して良い?」
天月博人が「どうぞ」と答えるとミランダ・レインは「明日の朝を迎えた時点で勝敗を察して、無駄に抵抗せず大人しく引き下がること」と。天月博人は少し考えて「わかりました。辛いですけどジブンが負けた場合、涙を飲んで子供達を諦めイギリスを脱出します」とこれを受け入れる。
「……よし、乗った。その条件でやるよ。恨みっこ無しだよ」
「勿論」
どんな結末になろうと今日に別れを告げよう。そう誓い、アンナ・レイン曰く子供達は見辛い夜に活動するので、夜が来るまでの残りの時間を過ごす。
「ねぇ……デイヴィ」
「何? アンナ姉ちゃん」
声をかけられた天月博人が振り返るとアンナ・レインは、自身の手首につけた花の髪留めを外し、ポケットから天月博人が持ち込んだ財布を取り出して、悲しそうにその2つを差し出す。
「これ、返すね。あと、ポーレッドお姉さまがゴーグル……私たちがデイヴィのゴーグル壊しちゃったんだ。……ごめんなさい」
天月博人は一瞬、花の髪留めを大事な存在ということでアンナ・レインにあげようかとも考えたが。
身体を強化する異能が付与される物の為、敵であるロロ=イアの強化に加担するのはどうかと、また上に所持していることをバレて没収される事を考慮して素直に受け取る。
「返していただきありがとうございます」
悲しそうな表情が強くなる。少し心が痛い。
……異能に関係しなければいいかと思い至って、天月博人は財布の中身を確認する。少し減ってはいるものの何とかなりそうだと考える。
「アンナ姉ちゃん、そんな悲しそうな顔するなら気分転換に出かけようぜ?」
「え? う、うん」
デーヴィッド ・レインの記憶から街の構造を把握する。大丈夫だ。迷い時はない。
「赤色が好き?」
「ううん、私の見た目こんなだけど、どっちかって言うと青色が好きだよ? なんで?」
「ちょっと参考にね。さてそろそろだ」
「えっそろそろ? どこに……え!?」
宝石店が見えてくる。そして止められそうな雰囲気を感じた為、有無を言わせずに来店し、目に付いた日本円にして3万円ほどの蝶々のように形作られたサファイアのペンダントを購入した。
「悪いよなんて思わないでくれよ? コレはデーヴィッド ・レインであるオレから、大好きなアンナ姉ちゃんへの家族としての贈り物なんだから。
多分、オレの事はすぐに忘れ流ことになるけれど、自分自身自己満足でしかないと思うけれど。アンナ姉ちゃんに例え忘れても一緒に傷んだよって形だけだけどその証としてあげるんだ」
「……うん、大事にするね」
天月博人は動けないでいるアンナ・レインの首に購入したばかりのサファイアのネックレスを身につけさせた。
偶然ではあるが天月博人にとって誕生石であるサファイアは、赤いアンナ・レインが身につけることによって映えて見える。
……帰った頃には競争開始の時間だ。別れの時である。
「それじゃあここまでだ」
「うん……バイバイ」
なるべく再開はしたくはない。その時はきっと殺しあわねばならない敵だから。それに天月博人はどうしても手を出せないからなんの因果もない第三者にその命を狩らせることになるから。だからここで、互いの幸せを祈って、バイバイと言う。
その後、子供達はポーレッド・レインと初めて捜索に参加したミランダ・レインによって確保される。
四肢を拘束され、手を包み、コリンとスペンサーは別々の檻に閉じ込められる。
そして自殺防止用に定期的にアンナ・レインが巡回する見張り係となる。
その牢屋の中で、少年、コリンはこのループの中で初めて聞く「ようコリン」と己を呼ぶ声を聞いた。
拘束された身体で振り返るといつの間に入ったのか大男を連れた、眠たげでボサボサ髪の男がそこにいたのだ。
「助けに来たぞ」
天月博人はニコの力を用いて延々と動きを追跡。どこに閉じ込められているのかと場所を探り出し、そして中田文兵を呼び寄せて……子供達をカガミナイトの本拠地に移す事で救出したのである。
アンナが何度目かの見回りの際に誰も彼もが拘束具を置いて居なくなっていることを発見。この状況は瞬く間に姉妹とポーレッドからロロ=イアへと広がっていく。
「負けたんだね」
「うん、しまったなぁ拘束した時点でこっちの勝ちってことにしたほうが良かった何て思うけどもう後の祭り。
ちゃんと罰を受けようか。多分、処分とまではいかないけれど。罰を受けた後は持ち場は移動するかもね。もし離れ離れになっても私達は姉妹だよ」
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