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お見合い3

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「氷室、急ぎなさい」
迎えに来た氷室冬馬に知世は指示をすると車の後部座席に深く腰掛ける。
氷室は黙ったまま、静かに車を走らせた。

先程のお見合いはつつがなく終了した。そして父には知世の意向を伝えている。
正臣とのお見合いは問題なく成立するだろう。
元々ITのノウハウが弱い一条グループだ。知世が正臣と結婚することは、口には出さないが父の希望でもあった。
「私は反対です。片親なんて」
見合い話を聞いた母は大反対した。普段は夫の言うことに逆らわない母が珍しい意見だったが、父は強引に話を纏めた。
その性急さが、父の焦りと望みを雄弁に語っていた。

「知世さんは、よろしいのですか?」
母は別途集まりがあるとの事で、ホテルで別れた。今車の中は知世と氷室の2人だけだ。
氷室は一言だけ尋ねた。
知世は返事の代わりに答える。
「22時頃、ハーブティーを入れてくださる?」



「っふぅ……。あっん……」
「ハーブティーが冷めてしまいますよ」
そう言いながらも氷室は知世のネグリジェを捲り、クリトリスを舐める。
何度も何度も味わっている主人のクリトリスだ。
どういう風に責められるのが好きかは聞かなくても知っていた。
「……ならばっ……ん。さっさと……っひぁ……。イかせなさいっ。……んふぁっ」
知世の言葉を合図に氷室は舌の動きを変える。
激しく吸い付きながら、舌先でクリトリスをつつく。
全て飲み込むような吸引力に、知世は身を震わせ達する。
「んっ……んーっ!!」
声を押し殺しながら、知世は慣れ親しんだ氷室の舌で達した。

その時、知世の太ももに歯型がついていることに気づく。
知世の秘めた部分にあるホクロを更に目立たせるようについた歯型。
氷室がそこに触れるのはまだ許されていない。分かっていたが、気づいたら舐めていた。
「……ひむっろ!……そこは許した覚え……っつ……あっん!」
先程までの快楽の残りで敏感になっている知世は敏感に反応する。
半分怒っている声色だが、氷室は一切気にせずに先程まで味わっていたクリトリスにむしゃぶりつく。
「……っ!ひむっ……ろ!」
咎める声に刺すような視線で答える。他の男に秘めたる部分を見せたことに対する嫉妬だ。
恋人でもないただの自分にそんなことを持つ資格はないと分かっているが、感情は止まらなかった。


氷室の視線を受け止めた知世の顔には残酷な笑みが浮かぶ。
ふっと力を抜いた知世は氷室に見せつけるように足を大きく開いた。
「あっ……。……んっ……。とうまっ!」
その声に呼応するように、氷室は性急に知世を責め立てた。



2回続けて達した知世だったが、一呼吸置くとソファに深く腰掛ける。氷室は慣れた手つきでハーブティーを入れた。
小さい頃からの訓練の賜物か、先程まで自分の舌でヨガっていたことを微塵も感じさせない知世は、優雅な手つきでハーブティーを口に含む。
「本当に結婚されるのですか?」
差し出がましいとは思ったが、気づいたら言葉が滑りでていた。
知世が氷室を一瞥する。外では、いや、家族にも滅多に見せない冷たい目。
その目つきは、知世の父である兼近に瓜二つだ。
(知世が女でなければ、跡を継がせた)
一条グループのトップである兼近が評価するくらい、彼女の経営センスは二人いる兄より秀でていた。
だからこそ氷室は今回の見合い話は一条グループを更に大きくするための身売りのようなものだと思っていた。

「あなたにそれを言う資格はありません」
ピシャリと知世は答える。だが、氷室は怯むことなく言葉を続ける。
「知世さんが望むなら私は何もかも捨て、あなたと誰も知らないところで生きる覚悟はありますよ。私は知世さんを……」
すんでのところで、氷室は自分の感情を飲み込んだ。いや、知世の視線がそれ以上言うことを咎めたのだ。

氷室が知世に主人以上の感情を持っているのは知っている。
そして、その感情が父や兄に利用されていることも。
だからこそ、知世は氷室を傍に置いていた。
彼を守る為に。

そして、氷室に奉仕をさせる。
その行為が兼近や貴斗に筒抜けだとは知っている。いや、だからこそ奉仕をさせる。
夜や土日の時間は氷室の時間は知世の為にあるのだと思わせる為に。
でないと、優秀な彼を一条の人間は休みなど関係なく働かせるからだ。

そして、たまに家族に見せつけるように氷室を部屋に呼び出し、胸を愛撫させ、クリトリスを舐めさせる。一線は越えさせないその行為に、父達は氷室は一条の為に尽くす駒だと思い込んでいる。
知世は氷室に艶やかに微笑む。

「彼は壊してくれますから」
その言葉の意味は、氷室にきちんと伝わったようだ。
「私の小さい頃からの望みは変わりません。一条を壊すこと。
……付いて来るのが嫌になったのでしたら、あなたが一生困らないだけ仕事は用意しましょう」
どうします?と、知世の目が問いかける。

答えはいつもと同じだ。
「私は知世さんと共に」



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