66 / 84
顔をあげれば古民家カフェ三日月 5
しおりを挟む
やがてお盆が近づいてもうすぐ夏休みも終わりだと周囲から孫の宿題がまだ終わらなくてと言う会話を良く耳にする頃、ツクツクホウシの鳴き声に理沙も残された課題を篠田の弟君に見てもらいながらこなしていた。
それを横目に保育園帰りに実桜さんは凛ちゃんを連れてお散歩に来るようになり、水撒きが凛ちゃんのお仕事になった。
いや、もう水遊び。
だけどもう少しすれば涼しくなってそれももうできなくなるので今だけでも楽しんでもらえればと思っている。
お母さんは毎度大絶叫しているけどね。
実桜さんの悲鳴はもうカフェ三日月の名物となっている。
だけど朝は植物のお世話に夕方は水やりとうちの植栽だけどお世話って大変だなあとおもいながら俺も世話の仕方を学んでいた。
「まず難しい事は考えずに表側の階段に葉っぱが落ちてないか、砂が被ってないか確認しましょう」
僅か数段の階段だけど葉っぱをふんで転んだり、砂で滑ったら大変な事になると言う言葉をメモりながら階段の掃除をする。
「駐車場側にも葉っぱが落ちてたり、雑草が生えてたら抜いてください」
コンクリで庭を埋めて駐車場にしたけどそれでも植物はコンクリを突き破って育つから注意してねと教えてもらった。
「とりあえずまずはこれぐらいから始めようか」
「つまり、俺に庭を触らせるつもりはないのですね」
「当たり前でしょ?こんなにも趣味のいいお庭、めちゃくちゃにしないでよね?」
きっぱりと言い切った実桜さんの言葉に泣きたくなったが
「だけど一年を通して園芸部に学ばせた後は園芸部に面倒見させるつもりだから。あの子もだいぶ植木の手入れを学んだからそろそろ担当を持っても良いと思うんだ」
ただし本職は家作りの方だから合間合間にしか出来ないけどと笑いながら言うも俺から見ればそれこそ趣味の庭いじりとして十分じゃないかと思う。
「楽しんでるなー」
「まあね。恩人だから可能な限りお礼をしたいと言う物よ」
ふーんと、どんな恩を貰ったのかわからないが、なんだかんだ年上と言う事でいろいろ愚痴を聞いてもらったり相談もしてもらってる実桜さんに
「実はさ、魔王、綾っちに家を建てるお金足りない分を出してもらってるみたいなんだよ。いくら返せばいいか判らないし、本当に良いのか心配なんだけど幾らを目安に包んだらいいと思う?あ、もちろんローンになるけど」
何て聞けば物凄い微妙な顔をされた。
何か悪かった?やっぱりあの集団みたいに綾っちといきなり呼んだのが悪かったのだろうかと思うも実桜さんは少し首を傾げて
「私達の家もそうだけど難しく考えなくても良いと思う」
「難しく考えなくて良いってどういうこと?」
おうむ返しに聞けば少し顔を歪め
「動画で家づくり上げてるでしょ?」
聞かれればうんと頷いた。店の宣伝も兼ねてって事で三百万人以上の登録者がいる有名動画で紹介されたのはかなり自慢だと思っている。
「あれ、ちゃんと広告収入も入ってるし再生数見てもらうとびっくりするくらいの収益上がってるから。
多分あの店のリフォーム費用全部そこから出ていると思う」
うちもそうだったと死んだ目で言われても暫くの間何も理解できなかた。
「確かにあの時お金なかったから助かったよ。多少家の中をネットで見られても時間と共に変るから全然気にしないよ?」
うちは店側は見せても自宅側は安全から紹介はしてもらうのはやめている。一人暮らしなのでそこは安全の為にと言えば当然のように納得はしてもらえた。
「だけど、安くない値段だし本当にいいのかな?
何かあった時勝手に家の権利を主張してきたらどうしよう?!」
と言う事を言えば
「多分それないから。
麓の家も在るし、他にも近所に家も在るから気にしない方がいいよ」
それはどういう事かとも問いたかったが
「気にしない方がいいって、じゃあ俺の最初の資金は……」
「それはちゃんと使ってるから。『夜月が支払う事に意味があるから』って言いそうだし」
なんとなく微妙な魔王の声真似をしてきて笑いを誘うのはやめてくれと笑ってしまうも、確かにあいつならきっちり使うだろうなと思いながら
「だったら全額幾らになるんだろう……」
「あ、私がやった庭の手入れは十万程だったよ。
処分代や植木の購入費、そして土の入れ替えだったりここが一番お金がかかったね」
「ありがとうございまーす」
そんなにもしたのかと思うもあれだけ庭を大改造したのだ。むしろその程度で終わって良かったとおもおう。更にプライスレスの庭のお手入れもしてもらってるし、代わりにコーヒーチケットをプレゼントしておこうと思った。
「さて、そろそろ手を洗おうか」
夕方の時間、既にお客様の足は遠のいて暇になっていたので凛ちゃんの水撒きを見守りながら一緒に雑草取りをしていたけどそう言って立ち上がった実桜さんに倣う様に後片付けを始める。
庭に水道があって助かると言いながら無人の、エアコンの良く効いた店内で二人してお水を飲みながらクールダウンしていれば
カラン、カラン……
昔懐かし耳に優しい来店のお知らせが静かに響いた。
それを横目に保育園帰りに実桜さんは凛ちゃんを連れてお散歩に来るようになり、水撒きが凛ちゃんのお仕事になった。
いや、もう水遊び。
だけどもう少しすれば涼しくなってそれももうできなくなるので今だけでも楽しんでもらえればと思っている。
お母さんは毎度大絶叫しているけどね。
実桜さんの悲鳴はもうカフェ三日月の名物となっている。
だけど朝は植物のお世話に夕方は水やりとうちの植栽だけどお世話って大変だなあとおもいながら俺も世話の仕方を学んでいた。
「まず難しい事は考えずに表側の階段に葉っぱが落ちてないか、砂が被ってないか確認しましょう」
僅か数段の階段だけど葉っぱをふんで転んだり、砂で滑ったら大変な事になると言う言葉をメモりながら階段の掃除をする。
「駐車場側にも葉っぱが落ちてたり、雑草が生えてたら抜いてください」
コンクリで庭を埋めて駐車場にしたけどそれでも植物はコンクリを突き破って育つから注意してねと教えてもらった。
「とりあえずまずはこれぐらいから始めようか」
「つまり、俺に庭を触らせるつもりはないのですね」
「当たり前でしょ?こんなにも趣味のいいお庭、めちゃくちゃにしないでよね?」
きっぱりと言い切った実桜さんの言葉に泣きたくなったが
「だけど一年を通して園芸部に学ばせた後は園芸部に面倒見させるつもりだから。あの子もだいぶ植木の手入れを学んだからそろそろ担当を持っても良いと思うんだ」
ただし本職は家作りの方だから合間合間にしか出来ないけどと笑いながら言うも俺から見ればそれこそ趣味の庭いじりとして十分じゃないかと思う。
「楽しんでるなー」
「まあね。恩人だから可能な限りお礼をしたいと言う物よ」
ふーんと、どんな恩を貰ったのかわからないが、なんだかんだ年上と言う事でいろいろ愚痴を聞いてもらったり相談もしてもらってる実桜さんに
「実はさ、魔王、綾っちに家を建てるお金足りない分を出してもらってるみたいなんだよ。いくら返せばいいか判らないし、本当に良いのか心配なんだけど幾らを目安に包んだらいいと思う?あ、もちろんローンになるけど」
何て聞けば物凄い微妙な顔をされた。
何か悪かった?やっぱりあの集団みたいに綾っちといきなり呼んだのが悪かったのだろうかと思うも実桜さんは少し首を傾げて
「私達の家もそうだけど難しく考えなくても良いと思う」
「難しく考えなくて良いってどういうこと?」
おうむ返しに聞けば少し顔を歪め
「動画で家づくり上げてるでしょ?」
聞かれればうんと頷いた。店の宣伝も兼ねてって事で三百万人以上の登録者がいる有名動画で紹介されたのはかなり自慢だと思っている。
「あれ、ちゃんと広告収入も入ってるし再生数見てもらうとびっくりするくらいの収益上がってるから。
多分あの店のリフォーム費用全部そこから出ていると思う」
うちもそうだったと死んだ目で言われても暫くの間何も理解できなかた。
「確かにあの時お金なかったから助かったよ。多少家の中をネットで見られても時間と共に変るから全然気にしないよ?」
うちは店側は見せても自宅側は安全から紹介はしてもらうのはやめている。一人暮らしなのでそこは安全の為にと言えば当然のように納得はしてもらえた。
「だけど、安くない値段だし本当にいいのかな?
何かあった時勝手に家の権利を主張してきたらどうしよう?!」
と言う事を言えば
「多分それないから。
麓の家も在るし、他にも近所に家も在るから気にしない方がいいよ」
それはどういう事かとも問いたかったが
「気にしない方がいいって、じゃあ俺の最初の資金は……」
「それはちゃんと使ってるから。『夜月が支払う事に意味があるから』って言いそうだし」
なんとなく微妙な魔王の声真似をしてきて笑いを誘うのはやめてくれと笑ってしまうも、確かにあいつならきっちり使うだろうなと思いながら
「だったら全額幾らになるんだろう……」
「あ、私がやった庭の手入れは十万程だったよ。
処分代や植木の購入費、そして土の入れ替えだったりここが一番お金がかかったね」
「ありがとうございまーす」
そんなにもしたのかと思うもあれだけ庭を大改造したのだ。むしろその程度で終わって良かったとおもおう。更にプライスレスの庭のお手入れもしてもらってるし、代わりにコーヒーチケットをプレゼントしておこうと思った。
「さて、そろそろ手を洗おうか」
夕方の時間、既にお客様の足は遠のいて暇になっていたので凛ちゃんの水撒きを見守りながら一緒に雑草取りをしていたけどそう言って立ち上がった実桜さんに倣う様に後片付けを始める。
庭に水道があって助かると言いながら無人の、エアコンの良く効いた店内で二人してお水を飲みながらクールダウンしていれば
カラン、カラン……
昔懐かし耳に優しい来店のお知らせが静かに響いた。
109
あなたにおすすめの小説
愛していました。待っていました。でもさようなら。
彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。
やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。
【12月末日公開終了】有能女官の赴任先は辺境伯領
たぬきち25番
恋愛
辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26)
ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。
そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。
そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。
だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。
仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!?
そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく……
※お待たせしました。
※他サイト様にも掲載中
理想の男性(ヒト)は、お祖父さま
たつみ
恋愛
月代結奈は、ある日突然、見知らぬ場所に立っていた。
そこで行われていたのは「正妃選びの儀」正妃に側室?
王太子はまったく好みじゃない。
彼女は「これは夢だ」と思い、とっとと「正妃」を辞退してその場から去る。
彼女が思いこんだ「夢設定」の流れの中、帰った屋敷は超アウェイ。
そんな中、現れたまさしく「理想の男性」なんと、それは彼女のお祖父さまだった!
彼女を正妃にするのを諦めない王太子と側近魔術師サイラスの企み。
そんな2人から彼女守ろうとする理想の男性、お祖父さま。
恋愛よりも家族愛を優先する彼女の日常に否応なく訪れる試練。
この世界で彼女がくだす決断と、肝心な恋愛の結末は?
◇◇◇◇◇設定はあくまでも「貴族風」なので、現実の貴族社会などとは異なります。
本物の貴族社会ではこんなこと通用しない、ということも多々あります。
R-Kingdom_1
他サイトでも掲載しています。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
夫が妹を第二夫人に迎えたので、英雄の妻の座を捨てます。
Nao*
恋愛
夫が英雄の称号を授かり、私は英雄の妻となった。
そして英雄は、何でも一つ願いを叶える事が出来る。
そんな夫が願ったのは、私の妹を第二夫人に迎えると言う信じられないものだった。
これまで夫の為に祈りを捧げて来たと言うのに、私は彼に手酷く裏切られたのだ──。
(1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。)
龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜
クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。
生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。
母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。
そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。
それから〜18年後
約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。
アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。
いざ〜龍国へ出発した。
あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね??
確か双子だったよね?
もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜!
物語に登場する人物達の視点です。
【完結】聖女の手を取り婚約者が消えて二年。私は別の人の妻になっていた。
文月ゆうり
恋愛
レティシアナは姫だ。
父王に一番愛される姫。
ゆえに妬まれることが多く、それを憂いた父王により早くに婚約を結ぶことになった。
優しく、頼れる婚約者はレティシアナの英雄だ。
しかし、彼は居なくなった。
聖女と呼ばれる少女と一緒に、行方を眩ませたのだ。
そして、二年後。
レティシアナは、大国の王の妻となっていた。
※主人公は、戦えるような存在ではありません。戦えて、強い主人公が好きな方には合わない可能性があります。
小説家になろうにも投稿しています。
エールありがとうございます!
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる